著者
南雲 秀次郎
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.346-351, 1982
被引用文献数
2

東京大学千葉演習林の人工林の施業計画を策定した結果に基づいて,森林の法正状態をいかに規定すべぎかという問題について考察した。これまでの諸条件は,法正状態に対して厳しすぎるものであり,これらが満たされない場合でも法正状態にあると考えてよい森林が存在しうることがわかった。そこで,齢級配置からつくられる累積分布を定義し,これに基づいて法正状態か否かを判定する方法を考えた。この方法は森林施業計画を策定するのに有効であることがわかった。
著者
鈴木 秀和 南雲 保
出版者
日本プランクトン学会
雑誌
日本プランクトン学会報 (ISSN:03878961)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.60-79, 2013-08-25 (Released:2019-06-20)
参考文献数
35

The diatoms are one of the most successful microalgal groups in both aquatic and terrestrial habitats. They possess architecturally complex and unique siliceous cell walls (valves and girdle bands). There are probably well over ca. 105 species, the vast majority of which are not uniquely identified as such. Historically, most diatomists have long assumed that the diatoms contain two groups, the centrics and the pennates, which can be distinguished by their pattern centres or symmetry and mode of sexual reproduction. Round et al. (1990), however, recognized three classes—Coscinodiscophyceae (centric diatoms), Fragilariophyceae (araphid pennate diatoms) and Bacillariophyceae (raphid pennate diatoms)—giving equal ranking to the raphid pennate diatoms and the araphid pennate diatoms. Recently, an alternative classification to that of Round et al. has been formally presented by Medlin and Kaczmarska (2004), primarily based on molecular data. By combined molecular and morphological support, they proposed two new subdivisions (Coscinodiscophytina and Bacillariophytina), emend the classes Coscinodiscophyceae and Bacillariophyceae and proposed a new class, the Mediophyceae (the CMB hypothesis, Theriot et al. 2009). Howeber, the CMB hypothesis is not universally accepted. The most recent taxonomic revision of the diatoms gives class status to the radial centrics, the multipolar centrics (including the Thalassiosirales), and the pennates. The diatoms have an extensive fossil record and wealth of morphological features upon which to base their systematics and so they are an ideal group in which to study the congruence of molecular, morphological and fossil data sets. Here the current diatom classification at the generic rank (413 genera) is presented based on the taxonomical and nomenclatural information.
著者
中山 裕司 高橋 浩二 宇山 理紗 平野 薫 深澤 美樹 南雲 正男
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.163-174, 2006-06-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
23
被引用文献数
2

音響特性による嚥下障害診断の重要な手掛かりとなる嚥下音について, その産生部位や部位に対応した音響特性は明らかとされていない.そこで嚥下音の産生部位と音響特性を明らかにする目的で, 画像・音響分析プログラムを新たに構築し, 健常者を対象として嚥下音産生時の造影画像と嚥下音音響信号データの同期解析を行った.対象は健常成人12名で, 各被験者8嚥下ずっ計96嚥下にっいて食塊通過時間の測定, 食塊通過音の識別と出現頻度の解析, および最大ピーク周波数の評価を行った.食塊通過時間は喉頭蓋通過時間 (121.7±92.4msec), 舌根部通過時間 (184.8±70.6msec), 食道入口部通過時間 (342.9±61.1msec) の順で長くなり, 舌根部通過音, 喉頭蓋通過音, 食道入口部通過開始音, 食道入口部通過途中音および食道入口部通過終了音が識別された.このうち喉頭蓋通過音が最も出現頻度が高く (96嚥下中94嚥下), 嚥下ごとの通過音の出現状況では舌根部通過音, 喉頭蓋通過音, 食道入口部通過開始音, 食道入口部通過途中音の4音が出現するパターンが96嚥下中22嚥下 (22.9%) と最も多くみられた.また最大ピーク周波数の平均値の比較では食道入口部通過開始音 (370.7±222.2Hz) が最も高く, 続いて食道入口部通過途中音 (349.1±205.4Hz), 舌根部通過音 (341.2±191.3Hz), 喉頭蓋通過音 (258.6±208.2Hz), 食道入口部通過終了音 (231.2±149.8Hz) の順であった.本研究により嚥下音の産生部位と産生喜附に対応した音響特性が明らかとなった.
著者
南雲 秀雄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.16-22, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)

大学で使用する学習用の電子書籍は,単なる紙の書籍の電子版ではない。電子書籍ビューアーを含めたシステムは,教科書コンテンツが組み込まれた学習管理システムに近いものである。その中には,授業グループの管理,アンケートの使用,付箋・メモの追加・共有,独自教材の追加など様々な学習のための機能が備わっており,工夫次第で,効果的な学習活動を実現できる。本稿では,大学の授業で使用する学習用の電子書籍について,ビューアーの特徴,使用に際して必要な設備・機器をまとめた上で,活用事例を紹介し,さらに普及のために検討すべき点について述べる。
著者
羽賀 里御 浦辺 俊一郎 深澤 桃子 加藤 亜輝良 松沢 翔平 加藤 基子 檜山 英己 栗井 阿佐美 南雲 三重子 尾崎 美津子 古森 くみ子 清水 美智江 水品 伊津美 山本 茉梨恵 白鳥 恵 巽 亮子 倉田 康久 兵藤 透
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.465-470, 2020 (Released:2020-09-28)
参考文献数
13

当院はCOVID-19感染者の多い神奈川県にある無床外来維持血液透析クリニックである. 透析患者は学会指針のマスク着用, 手洗い等の標準予防策を遵守し通院している. 今回, 血液透析患者1例がCOVID-19に罹患していることが判明した. この普段からの標準予防策に加えて, 発生から2週間, 感染者が出た透析時間帯の患者は時間帯を固定, 同一メンバーとし, 不要不急の検査, 受診, 手術は延期し, 感染防御対策を行うこと (集団的隔離透析) を補完的に加えることで, 二次感染が防止できたと考えられる事例を経験した. 特にマスク, 手洗い等の普段からの学会指針の基本を遵守することが二次感染防止に非常に有効と考えられた.
著者
南雲 芳夫
出版者
日本科学者会議
雑誌
日本の科学者 (ISSN:00290335)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.p318-322, 1995-06
著者
高田 嘉尚 高橋 浩二 中山 裕司 宇山 理紗 平野 薫 深澤 美樹 南雲 正男
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.68-74, 2006-03-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
11

本研究は嚥下音と呼気音の音響特性を利用して嚥下障害を客観的に鑑別することを目的として企画されたものである.対象は嚥下障害を有する頭頚部腫瘍患者26名である.VF検査中嚥下音ならびに嚥下直後に意識的に産生した呼気音をわれわれの方法によって採取し, 嚥下と呼気産生時の動態のVF画像とともにデジタルビデオレコーダーに記録した.嚥下音と呼気音の音響信号はわれわれの音響解析コンピュータシステムによって分析を行い, 嚥下音については持続時間を計測し, 呼気音については1/3オクターブバンド分析により, 中心周波数63Hzから200Hzまでの6帯域の平均補正音圧レベルを求めた.嚥下音と嚥下後に意識的に産生した呼気音92サンプルずつについて, これらの分析が行われ, VF所見との比較が行われた.その結果, 嚥下音の持続時間では, Abnorma1群 (誤嚥あるいは喉頭侵入のVF所見を示した群) はSafety群 (前記のVF所見のない群) に比べ, 持続時間が延長する傾向がみられ, 呼気音の補正音圧レベルでは, Abnorma1群はSafety群に比べ, 音圧レベルが大きい傾向を示した.次に嚥下障害を鑑別するために嚥下音の音響信号の持続時間の臨界値として0.88秒を設定し, 同様に呼気音の音響信号の補正音圧レベルの臨界値として17.2dBを設定した.嚥下音と呼気音の分析値の両者がともにこれらの臨界値を超えた場合, そのときの嚥下は障害があると評価した.これらの評価とVF所見との判定一致率は感度82.6% (38/46), 特異度100% (46/46), 陽性反応的中度100% (38/38), 陰性反応的中度85.2% (46/54), 判定-致率91.3% (84/92) となった.以上の結果より嚥下音の持続時間と呼気音の補正音圧レベルは嚥下障害を検出するために利用できることが示唆された.
著者
南雲 正 村越 昌彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.757-759, 1963-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
3
被引用文献数
1

アルミニウム鉱物または鉄(III),アルミニウムの多量を含有するガリウム濃縮物を塩酸で分解し,得られる溶液を少量のTBPで溶剤抽出してガリウムを濃縮する場合,ガリウムの抽出性は溶液の組成と密接に関連する。この問題を解明する目的で,模型溶液につき基本的な平衡図の作成を行なった。その結果,溶液の組成,特に塩化物の塩素イオン濃度,遊離塩酸濃度を適当にえらべば,ガリウムは能率よく高濃度濃縮できることがわかった。この方法は鉄(III)の多量を含有するガリウム濃縮物の塩酸分解液に適用する場合,有利な方法であると思われる。
著者
水澤 有香 辰本 明子 伊藤 晋平 小宮山 浩大 小泉 章子 永島 正明 谷井 博亘 南雲 美也子 酒井 毅 山口 博明 呉 正次 岡崎 英隆 手島 保 櫻田 春水 日吉 康長 西崎 光弘 平岡 昌和
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement4, pp.11-17, 2005-11-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
3

症例は66歳,男性.1987年西アフリカのシエラレオネから帰国後ラッサ熱を発症し,収縮性心膜炎を合併したため心膜剥離術を施行した.2003年8月より心房細動あり,他院にてIc群抗不整脈薬を投与された.その後持続する心房粗動を認めたため,2004年5月カテーテルアブレーション目的にて入院した.電気生理学的検査を行ったところ,三尖弁輪を反時計方向に旋回する通常型心房粗動であった.三尖弁一下大静脈間峡部への高周波通電中に頻拍周期が延長し,心房興奮順序の異なる心房頻拍へと移行した.頻拍中に右房内をマッピングしたところ,右房後側壁にP波より60ms先行する最早期興奮部位を認めた.同部位への通電により頻拍は停止し,以後心房頻拍,心房粗動ともに誘発されなくなった.きわめてまれなラッサ熱による心膜炎術後例に多彩な心房性不整脈を合併した症例を経験した.
著者
堀切園 裕 石垣 久美子 西村 麻紀 飯塚 恵悟 南雲 隆弘 関 真美子 枝村 一弥 賀川 由美子 浅野 和之
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3+4, pp.20-25, 2018 (Released:2019-06-27)
参考文献数
20

前胸部腫瘤を主訴に、12歳齢、去勢雄のチワワが来院した。初診時に患者は無症状であったが、約5ヶ月間で腫瘤が増大するとともに発咳を呈するようになった。第184病日に胸骨正中切開による前胸部腫瘤摘出術を実施した。腫瘤は前大静脈や気管を圧迫し、周囲組織と癒着していた。摘出した腫瘤の内部は広範囲で壊死が起こっていた。病理組織学的診断は甲状舌管遺残腺腫であり、腫瘤摘出後に患者の臨床症状は改善し、良好な経過が得られた。本疾患は犬の前縦隔腫瘍の鑑別診断として考慮する必要があると考えられた。
著者
南雲 秀次郎 田中 万里子
出版者
日本林學會
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.278-286, 1981
被引用文献数
3

地位の異なるスギ林分から採取した樹幹解析木の資料によってスギ林木の相薄幹形を分析し,その結果にもとついて材積表を調製した。中央相対直径&eta;<sub>0.5</sub>の値は,地位が高いほど大ぎくなる。また,林齢に関しては, 40年生までは林齢に応じて高くなりその後は変化を示さないことがわかった。このことは,同一胸高直径,同一樹高の林木でも地位の高いもののほうが,また, 40年生ごろまでは林齢が高まるにつれて,樹幹がより完満になることを意味している。以上の結論と&eta;<sub>0.5</sub>の変化の大きさを考慮して, 40年生以上と以下の2群に分けて吉田式によって相対幹曲線式を決定し村積表の調製をおこなった。また,同一資料に対して山本一シューマッカー式を適用してその精度を比較した。その結果,相対幹曲線武にもとつく方法のほうが精度が若干よいことがわかった。
著者
澤 俊二 磯 博康 伊佐地 隆 大仲 功一 安岡 利一 上岡 裕美子 岩井 浩一 大田 仁史 園田 茂 南雲 直二 嶋本 喬
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.325-338, 2003 (Released:2014-12-10)
参考文献数
41
被引用文献数
3

目的 慢性期脳血管障害者における種々の障害の長期間にわたる変化の実態を明らかにする目的で,心身の評価を入院から発病 5 年までの定期的追跡調査として実施した。調査は継続中であり,今回,慢性脳血管障害者における入院時(発病後平均2.5か月目)および退院時(発病後平均 6 か月目)の心身の障害特性について述べる。対象および方法 対象は,リハビリテーション専門病院である茨城県立医療大学附属病院に,平成11年 9 月から平成12年11月までに初発の脳血管障害で入院した障害が比較的軽度な87人である。その内訳は,男64人,女性23人であり,年齢は42歳から79歳,平均59歳であった。方法は,入院時を起点とした,退院時,発病 1 年時,2 年時,3 年時,4 年時,5 年時の発病 5 年間の前向きコホート調査である。結果 入院から退院にかけて運動麻痺機能,一般的知能,痴呆が有意に改善した。また,ADL(日常生活活動)と作業遂行度・作業満足度が有意に改善した。一方,明らかな変化を認めなかったのは,うつ状態であり入退院時とも40%と高かった。また,麻痺手の障害受容度も変化がなく,QOL は低いままであった。逆に,対象者を精神的に支える情緒的支援ネットワークが有意に低下していた。考察 発病後平均 6 か月目である退院時における慢性脳血管障害者の特徴として,機能障害,能力低下の改善が認められたものの,うつ状態,QOL は変化がみられず推移し,また,情緒的支援ネットワークは低下したことが挙げられる。したがって,退院後に閉じこもりにつながる可能性が高く,閉じこもりに対する入院中の予防的対策の重要性が示唆された。
著者
渡部 秀文 南雲 拓 一宮 和正 斎藤 隆文 宮村(中村) 浩子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.48, no.15, pp.176-188, 2007-10-15
参考文献数
7
被引用文献数
3

本論文では,階層的クラスタリング結果の安定性を解析するための新しい数理モデルを提案する.また安定性とクラスタ要素の広がり度合いを可視化してクラスタの最適な分割数を求める手法について提案する.階層的クラスタリングは,未知のデータ集合から意味のある分類を得る目的でしばしば用いられる.しかし,結果の安定性に関する研究は十分なされているとはいえず,安定性を手軽に求める手法も開拓されていない.本論文では,従来手法のような統計的処理を用いずに,仮想要素の追加によって幾何学的に安定性を測る手法を提案する.この手法では,要素を1個追加して階層的クラスタリングを行い,得られた結果の階層構造変化に着目する.追加要素の位置によって,本質的な階層構造変化が起こる場合と起こらない場合とがある.そのうち,構造変化が起こらない要素の割合を算出することで階層安定度を得る.一方,クラスタ分割を決定するための指標として,クラスタ要素の広がり度合いについて述べる.さらに,階層安定度と要素の広がり度合いを樹形図上に可視化する手法についても提案する.また,提案手法と従来手法にサンプルデータを適用し,提案手法の有効性および問題点について比較検証する.We propose a new mathematical model for analyzing the stability of hierarchical clustering results. In this paper, a method for deciding the most suitable number of clusters with visualization of stability and density of cluster elements is also proposed. Hierarchical clustering is often used in order to obtain meaningful classification from an unknown dataset. However, the stability of the clustering results is not studied enough, and the techniques for simply calculating the stability measure have never been developed. In this paper, the stability is measured geometrically by adding a temporary element, without using a statistical analysis. In this method, we focus on the change of hierarchical structures when an element is added. If there is more stable region of the added element without structure change, the structure is more stable. In this context, the hierarchical stability is obtained by calculating the ratio of the stable area. On the other hand, the density of clusters elements as an indicator for deciding the dividing of the cluster is presented. Moreover, the method to visualize stability and density of the elements of the clusters is proposed. We demonstrate the effectiveness and problems of the proposed method by applying it to the sample data.
著者
寺山 直樹 中曽根 和樹 牛嶋 将大 安井 英子 宮下 正昭 南雲 紳史
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 56 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Poster60, 2014 (Released:2018-07-19)

1. 序論抗がん剤による化学療法で深刻な問題となっている一つに多剤耐性がある。抗がん剤治療を続けていくうちに、多くの抗がん剤が効かなくなるというもので、ABCトランスポーター、アポトーシス抑制、細胞生存シグナルなどと関係するいくつかの機構が知られている。瀬戸らは新規多剤耐性克服活性物質の探索研究を続ける中で、1991年に埼玉県秩父周辺の土壌から採取したSaccharothrixide sp. CF24の発酵培地よりSekothrixideを見出した。1) この化合物はコルヒチン耐性を獲得したKB細胞(KB-C2)に対して、コルヒチンとともに相乗的な阻害活性(IC50 = 6.5 mg/mL)を示した。その構造は4つのメチル基を有する14員環マクロラクトンと、C13位から分岐した7連続不斉中心を持つ側鎖からなる (Fig. 1)。最初の論文では二次元構造のみが報告されていたが、第38回の本討論会において2のような立体構造が示された。2) 側鎖部の7連続不斉中心の相対配置は、天然物を化学分解することで得られたC11-C21断片の詳細なNMR解析により決定している。一方、ラクトン環上に関する立体配置の決定方法は、計算化学によるコンフォメーション解析が利用されており曖昧さが残っていた。このような背景のもと、我々はその化学構造と生理活性に興味を持ち、閉環メタセシス反応によるマクロライド構築を基盤とする合成研究を検討してきた(Scheme 1)。その結果、Sekothrixideの初の全合成を達成することができ、また真の立体構造は2ではなく4, 6, 8位の配置が全て逆の構造1であることを見出したのでここに報告する。3) 2. セグメントC1-C10の合成最初に我々は、瀬戸らが提唱していた構造2を目的物質として合成検討を行った。まずマクロラクトン部に相当するセグメントC1-C10 (14)の合成を進めた(Scheme 2)。既知のアルコール34) をIBX酸化後、光学活性アミドを組み込んだHorner-Emmons反応に付し共役アミド5へ導いた。接触還元により6とした後、そのメチル化反応を試みたところ、収率、選択性、ともに良好な結果で7が得られた。化合物7はLiBH4による還元に付し、生じた一級水酸基をTBDPS基で保護することでシリルーテル8へ導いた。化合物8のPMB基の脱保護後、ヨウ素/Ph3Pの条件でヨウ素化し9を得た。これにTHF溶媒中-20℃、イソプロペニルグリニャール試薬4.5当量と、ヨウ化銅を1.5当量用いイソプロペニル基を導入し10を得た。化合物10はTBAF処理によりTBDPS基を脱保護しアルコール11へ変換した。ちなみに、鏡像異性体のent-11は既知物質で、そのNMRは我々が合成したものとよく一致していた。また、ent-11の比旋光度は-26.4 (CHCl3)であるのに対し、合成した11は+33.9 (CHCl3)であった。次に、化合物11のIBX酸化を行い、得られたアルデヒド12に対して向山アルドール反応を行った。その結果、カップリングが進行すると同時に、生じた水酸基にシリル基が移り良好な収率で13が得られた。さらに、13をアルカリ加水分解に付しセグメントC1-C10 (14)を合成した。3. セグメントC11-C21の合成次に、セグメントC11-C21 (25)の合成を以下のように行った。既知の(View PDFfor the rest of the abstract.)