著者
貝原 亮 KAIHARA Ryo
出版者
名古屋大学高等研究教育センター
雑誌
名古屋高等教育研究 (ISSN:13482459)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.153-170, 2011-03

本稿の目的は、国立大学を例に、我が国の大学におけるティーチング・アシスタント(以下、TA)制度の問題点を、事務的側面から明らかにし、今後のTA 制度改革への一つの示唆を与えることである。TA に関する先行研究から明らかにした問題点は、TA の事務的取り扱いが多くの国立大学において限定的かつ画一的ともいえる運用になっていること。TA 制度自体が、一方的に各大学に与えられた制度であり、それに対する大学の姿勢が受身になっていることなどである。TA 制度の歴史的変遷をみると、TA の従事に対する意義が、「労働」から「TA への教育効果」へ変化している。また、現在の制度にとらわれない新たな制度の設計が可能であることもわかった。新しいTA 制度を設計するには、各大学がTA の意義を再確認し、TA に対する教育効果を明確にすることが求められる。そしてTA への報酬の在り方を見直し、時間給制度にとらわれない支給方法を設定することも考慮するべきである。これらによりTA 制度そのものPDCA サイクルにあてはめて運用することが可能となる。The purpose of this paper is to clarify certain issues of the Teaching Assistant (TA) system in Japanese national universities from the viewpoint of the management governance in those universities and to suggest areas for TA system reform regarding those issues. This paper reveals some problems of TA system: the current management system for handling TAs has become limited and same at many universities. This system was unilaterally granted to national universities by the Ministry of Education. Examining the historical development of the TA system, it turned out that the reason behind the development of the TA system has changed from providing “Labor” to the “Educational effect of TAs.” Pursuing this line, it is possible to design a new system without the restrictions of the current system. If a new TA system is to be designed, the following three points must be considered in its design: (1) Universities must reconfirm the purpose of their TAs. (2) Universities must clarify what the educational effect [purpose?] of their TAs is. (3) Reexamine the payment system for TAs under this new system and not be restricted to a fixed hourly wage system. These considerations will enable the TA system to be applied to a PDCA cycle and be more rationally managed.
著者
阿比留 友樹 藤原 和志 則竹 賢人 浅原 亮太 新野尾 嘉孝 友田 秀紀 小泉 幸毅 森山 雅志 梅津 祐一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48102062, 2013 (Released:2013-06-20)

【目的】アメリカスポーツ医学会は、健常者の体力改善には高度の運動強度で20~25分以上、週3回以上の実施を推奨している。また少なくとも10分以上の運動を断続的に実施し、1日の合計運動が推奨時間に達するものは同様の効果があるとしている。そこで今回、少量・頻回のトレーニングによる全身持久力への効果を検証することを目的とした。【方法】対象は、健常成人男性10名(年齢23.3±0.9歳、BMI22.5±3.2kg/m²)とし、日本光電社製自転車エルゴメータを用い直線的漸増負荷試験を行った。負荷方法は、3分間の安静後、回転数は50~60rpmとし、20wattで3分間のウォームアップ後、20watt/分で漸増負荷を実施した。中止基準は予測最大心拍数(以下予測HRmax)に達するか、自覚的に運動継続が困難となるまでとした。運動負荷試験はアニマ社製AT-1100を用いbreath by breath方式で酸素摂取量(以下V(dot)O2)、最高酸素摂取量(以下peak V(dot)O2)、無酸素性作業閾値(以下AT)、分時換気量(以下VE)、心拍数(以下HR)等を算出した。またBorg Scaleにより1分毎の自覚症状を測定した。運動負荷試験終了後、アークレイ社製ラクテート・プロ2を用い乳酸値を測定した。筋力は、アニマ社製ハンドヘルドダイナモメーターを用い膝伸展筋力を測定した。トレーニングは、自転車エルゴメータ駆動を1日に10分間を3セット、週3回、1ヶ月間実施し、運動強度は運動負荷試験より酸素摂取予備能の80%とした。トレーニング終了後、同様の運動負荷試験、筋力測定を行った。またV(dot)O2-HR関係式と予測HRmaxから予測最大酸素摂取量(以下予測V(dot)O2max)を算出した。さらに漸増負荷中の仕事率に対する相対HRの増加率を回帰直線で示し、相対HR/仕事率係数を算出した。解析方法として、Wilcoxon符号順位検定を用いトレーニング前後で比較、分析し、有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 本研究の各被験者には、ヘルシンキ宣言に基づき研究内容の趣旨を説明し本人の承諾および署名を得た。【結果】トレーニング前後の予測V(dot)O2maxは前34.5±6.8、後36.3±5.4ml/min/kgで、有意差は認めなかったが、向上傾向にあった。また、peak V(dot)O2の時間(前483±88.8、後539.5±94.6sec)、ATの時間(前328±152.8、後423.8±134.4sec)、症候限界時間(前548.4±109.1、後681.6±160.1sec)に有意差を認めた(P<0.05)。相対HR/仕事率係数(前0.6326±0.0927、後0.5994±0.1184)は、有意差は認めなかったが、傾きが緩やかになる傾向にあった。膝伸展筋力、peak V(dot)O2、AT時のV(dot)O2、VEに有意差は認めなかった。また、全対象者で乳酸値データから最大努力を示していたことが確認された。【考察】 一般的にV(dot)O2maxに影響する要因は肺の換気機能、肺拡散機能、心臓の循環機能、末梢組織での代謝機能であり、今回の結果では予測V(dot)O2max やpeak V(dot)O2時のVE、AT時のVEに有意差を認めず、肺機能の改善には至らなかったが、予測V(dot)O2maxが向上傾向にあり、少なからず全身持久力は向上したと考えられる。また、相対HR/仕事率係数は緩やかになる傾向にあり、漸増負荷中の同一仕事量におけるHRは減少したことが示唆された。一方、Clausenらは「全身持久力トレーニングは、筋血管拡張機能の向上や毛細血管網の発達により活動筋最高血流を高める」と報告しており、本研究でもATや症候限界時間の延長から、末梢の活動筋血流量が向上し、代謝機能が改善したと推測される。以上より、今回の少量・頻回のトレーニングは、全身持久力の改善に一定の効果があり、特に末梢組織での代謝機能改善に寄与すると思われた。【理学療法学研究としての意義】少量・頻回のトレーニングは末梢組織での代謝機能改善に有効であることが示唆された。したがって、長時間の運動継続が困難なものや持久力向上を目的としたアプローチを実施する際の一手段として有用であると思われる。
著者
青木 歳幸 大島 明秀 ミヒェル ヴォルフガング 相川 忠臣 今城 正広 海原 亮 小川 亜弥子 金子 信二 田村 省三 保利 亞夏里 山内 勇輝 吉田 洋一 鷲﨑 有紀
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

3年間の種痘伝来科研において、1849年8月11日(嘉永2年6月23日)に到来した牛痘接種が九州各地へ伝播した様子が明らかになった。たとえば、佐賀藩では全額藩費による組織的な種痘を実施した。大村藩では、牛痘種子継料を全村から徴収し種痘を維持していた。中津藩では長崎から痘苗を得た民間医辛島正庵らが文久元年(1861)医学館を創設した。福岡藩領では、武谷祐之が、嘉永2年の末から種痘を始めた。小倉藩では、安政5年(1858)に再帰牛痘法を試みていた。九州諸藩における種痘普及により、洋式医学校の設立など地域医療の近代化をめぐる在村蘭方医の人的ネットワークが主要な役割を果たしていた実態が判明した。
著者
峯 光一 石田 憲 福原 亮史
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
CANCER (ISSN:09181989)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.17-20, 2019-08-01 (Released:2019-09-03)
参考文献数
22

This report covers two malformations among coconut crabs Birgus latro observed on islands of Okinawa, Japan: an extra pleopod recorded in Iriomote Island, and an abnormal ambulatory leg found in Hatoma Island. A total of 328 crabs was investigated in Iriomote Island, two individuals that have an abnormal pleopod were found. Normally, female coconut crabs have three pleopods on the left side of the second to the fourth abdominal somites. However, the abnormal individuals had an additional pleopod on the right side of the third abdominal somite. This malformation is the first report within the species. We also found one coconut crab with an abnormal ambulatory leg, having a trifid tip on the dactylus of the left second thoracic appendage, among 156 crabs observed in Hatoma Island. This abnormality is probably caused by the battles within the species or against natural predators.
著者
植原 亮
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.41-56, 2018-10-15

本稿の目標は,徳と人間本性をめぐるアリストテレス的な主題に関連する現代的な議論の見取り図を描き出すことである.そのために,この主題を構成する要素のうちの三点を取り上げて批判的に検討を加える.第一に,卓越した性格特性としての徳という見方に関する状況主義論争を手短に振り返る.第二に,人間本性にもとづく特定の徳のセットやそれがもたらす繁栄という概念の抱える困難を指摘する.第三に,人間本性という考えそのものを発生システム論などの現代の理論的枠組みから吟味する.
著者
垣迫 健二 桑原 亮彦 多田 出 森本 章生 小林 迫夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.2097-2101, 1993-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22
被引用文献数
1

Chilaiditi症候群は,右横隔膜と肝臓の間に消化管の一部が嵌入した総称であるが,本症候群には特有の症状がなく,偶然に発見されることが多いと言われている.今回われわれは,右横隔膜下に回腸が嵌入し,絞扼性イレウスを呈した症例を経験した.症例は67歳男性で,右季肋部痛を主訴に近医により紹介され入院となった.腹部所見,腹部X線検査, CT検査などの結果,絞扼性イレウスを合併したChilaiditi症候群と診断し,緊急手術を施行した.肝右葉と腹膜との間に既往の肝炎によると思われる索状物を認め,同部に回腸の一部が嵌入,絞扼し壊死を伴っていた.小腸型のChilaiditi症候群は稀な疾患であり,文献検索上,本例では13例を数えるに過ぎないが,そのうち7例で絞扼性イレウスが認められた.小腸型のChilaiditi症候群では,絞扼性イレウスを合併することが多く,注意が必要であると考えられる.
著者
大澤 絵里 秋山 有佳 篠原 亮次 尾島 俊之 今村 晴彦 朝倉 敬子 西脇 祐司 大岡 忠生 山縣 然太朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.67-75, 2019-02-15 (Released:2019-02-26)
参考文献数
26

目的 日本での乳幼児の予防接種は,個別接種化,種類や回数の増加により,接種スケジュールが複雑化している。本研究では,目的変数である乳幼児の適切な時期の予防接種行動と,かかりつけ医の有無,社会経済状態など(個人レベル要因)および小児科医師数など(地域レベル要因)の関連を明らかにする。方法 本研究は,「健やか親子21」最終評価の一環として,1歳6か月児健診時に保護者および市町村(特別区・政令市も含む,以下市町村)を対象に行われた調査,市町村別医師数などの既存調査のデータを用いた分析である。本研究で必要な変数がすべて揃った430市町村23,583人を分析対象とした。分析はBCG, DPT,麻疹の予防接種の適切な時期での接種を目的変数として,個人レベル変数(かかりつけ医の有無,社会経済的状況など)を投入したモデル1,地域レベル変数(市町村の小児科医師数など)をいれたモデル2,モデル2に市町村の取り組みに関する変数をいれたモデル3として,マルチレベル・ロジスティック回帰分析を行った。結果 88.3%の保護者が,適切な時期に乳幼児の予防接種行動をとっていた。かかりつけ医がいない(オッズ比[95%信頼区間],0.45[0.36-0.55]),第2子以降(第4子以降で0.23[0.19-0.28]等),母親の出産時年齢が29歳以下(19歳以下で0.17[0.13-0.24]等),母親が就労(常勤で0.52[0.47-0.58]等),経済状況が苦しい(大変苦しいで0.66[0.57-0.77]等)者では,適切な時期に予防接種行動をとる者が少なかった。地域レベルの要因では,市町村の小児科医師数四分位最大群(15歳未満人口1,000人対),15歳未満人口1,000人対の診療所数,予防接種率向上の取り組み,かかりつけ医確保の取り組みは,適切な時期の予防接種行動に関連していなかった。市町村の予防接種情報の利活用は,適切な時期の予防接種の完了と負の関連がみられた(0.84[0.73-0.96])。結論 乳幼児期にかかりつけ医をもたないこと,若年の母親,出生順位が遅いこと,経済的困難,母親の就労が,複数の予防接種の不十分な接種との関連要因であった。乳幼児の予防接種において,不十分な接種のリスクがある家庭への特別な配慮と,乳幼児がかかりつけ医をもつことができるような環境整備が必要である。
著者
千代原 亮一
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.49-57, 2012-04-05 (Released:2017-08-07)

A lot of vicious acts under the cover of the Great East Japan Earthquake are reported. For example, they are vicious email and chain mail, wild rumors without grounds or false rumors. About a nuclear power generation accident and radioactive contamination, various false rumors and wild rumors have flowed on internet, and it was argued a deletion request and dispatch regulation of wild rumors without grounds or false rumors. In this paper, through analysis of a legal side of the false rumor and chain mail related to the Great East Japan Earthquake I consider possibility of laws and regulations for wild rumors on Internet.
著者
千代原 亮一
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.88-98, 2010
参考文献数
18

In Korea, with the rapid spread of the Internet, "cyber violence" has been a social problem such as the spread of a falsehood, revealing of a real name and personal information on the Net. The suicide of a famous actress in October 2008 caused by cyber violence led the Korean government to propose "a cyber contempt charge" that imposed a severe punishment of a slander on the Internet. In this paper, based on the investigation of socio-cultural background of cyber violence in Korea and the trend of law development by the Korean government, the author examines the propriety of the cyber contempt charge. Furthermore, on the basis of consideration of the recent court cases of libel on the Internet in Japan, the author proposes a recommendation of the method for protecting the freedom of speech on the Net from the viewpoint of "information ethics".
著者
山﨑 さやか 篠原 亮次 秋山 有佳 市川 香織 尾島 俊之 玉腰 浩司 松浦 賢長 山崎 嘉久 山縣 然太朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.334-346, 2018-07-15 (Released:2018-07-31)
参考文献数
38

目的 健やか親子21の最終評価における全都道府県の調査データを使用し,母親の育児不安と母親の日常の育児相談相手との関連を明らかにすることを目的とした。方法 対象は,2013年4月から8月の間に乳幼児健診を受診した児の保護者で調査票に回答した75,622人(3~4か月健診:20,729人,1歳6か月健診:27,922人,3歳児健診:26,971人)である。児の年齢で層化し,育児不安(「育児に自信が持てない」と「虐待しているのではないかと思う」の2項目)を目的変数,育児相談相手および育児相談相手の種類数を説明変数,属性等を調整変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した。結果 育児に自信が持てない母親の割合と,虐待しているのではないかと思う母親の割合は,児の年齢が上がるにつれて増加した。すべての年齢の児の母親に共通して,相談相手の該当割合は「夫」が最も多く,相談相手の種類数は「3」が最も多かった。また,「夫」,「祖母または祖父」を相談相手として選んだ母親は,選ばなかった母親と比べてオッズ比が有意に低かった。一方,「保育士や幼稚園の先生」,「インターネット」を相談相手として選んだ母親は,選ばなかった母親と比べてオッズ比が有意に高かった。育児不安と相談相手の種類数との関連については,すべての年齢の児の母親に共通した有意な関連はみられなかった。一方,児の年齢別にみると,1歳6か月児と3歳児の母親において,相談相手が誰もいないと感じている母親は,相談相手の種類数が「1」の母親と比べてオッズ比が有意に高く,「虐待しているのではないかと思う」の項目では,相談相手の種類数が「1」の母親と比べると,相談相手の種類数が「3」,「4」,「5」の母親はオッズ比が有意に低かった。結論 相談相手の質的要因では,すべての年齢の児の母親に共通して有意な関連がみられた相談相手は,夫または祖父母の存在は育児不安の低さと,保育士や幼稚園教諭,インターネットの存在は育児不安の高さとの有意な関連が示された。相談相手の量的要因(相談相手の種類数)では,幼児期の児を持つ母親においては,相談相手の種類数の多さが育児不安を低減させる可能性が示唆された。
著者
藤原 亮
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュータ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.841, pp.102-105, 2013-08-22

デザイン思考が5ステップから成ることは、本連載の第2回で簡単に触れた。(1)共感、(2)問題定義、(3)創造、(4)試作、(5)試験(検証)、から成る(図1)。この順に沿って、本プロジェクトの進捗を振り返っていく。
著者
吉崎 邦夫 佐原 亮 遠藤 和博 浜田 純一郎 古川 勉寛 渡邉 哲朗 諸角 一記
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0722, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】上肢挙上に関する多くの研究は,肩甲骨面において肘関節伸展位で挙上(挙上)している。しかし,日常生活でよくみられる動作は,上肢を肘関節屈曲から伸展しながら挙げる運動(挙手)である。本研究の目的は,挙手における利き手と非利き手間において,肩甲上腕リズム(SHR)と肩甲骨周囲筋の筋活動ついて違いがあるか調査することである。【方法】肩痛の既往がない健常成人 男性15名,平均年齢24歳(19~30歳)を対象とした。体表マーカーは,烏口突起,肩峰角,肩甲棘内縁,上腕骨外側および内側上顆,Th2,Th7及びL5棘突起に挙手動作の中間位で触知し体表に貼付した。測定は,基本的立位姿勢から挙手を利き手と非利き手を自然に3秒間で最大となるように3回試行した。その画像データを三次元動作解析装置で取り込み解析した。筋電図は,三角筋中部線維(DM),僧帽筋上部線維(TU),僧帽筋下部線維(TL)及び前鋸筋下部線維(SA)上の皮膚表面を前処理して表面電極を貼付し,運動中にテレメトリー筋電計を用いて取り込み,三次元動作解析装置と同期した後,多用途生体情報解析システムを用いて解析した。SHRは上腕骨外転角度と肩甲骨上方回旋角度から算出した。筋電図は0度から10度ごとに抽出し,各波形はフィルタ処理,基線算出したのち振幅積分を行い各角度間の筋電図積分値を求めた。4筋の積分筋電図を比較するため,上腕骨外転角度100~110度における4筋の積分値を合計し,各筋の角度間の積分値を除して百分率(%IEMG)で表した。各筋の0度から130度まで10度毎の%IEMGの変化を比較した。統計解析はIBM SPSS Statistics 22を使用し,反復測定の分散分析(P<0.05)を用いた。【結果】挙手動作におけるSHRは,setting phaseとされている0~60度までは不安定で数値が安定せず,また安定した60~130度では利き手側平均3.4非利き手側平均3.2であり有意な差はなかった。筋活動においては,利き手側と非利き手側ではTUに有意な差があり交互作用がみられた。TUの利き手側筋活動は非利き手側に比較して挙手動作の初期から100度まで高く110~130度で逆転して利き手側が高くなる傾向がみられた。DM,TLおよびSAでは有意な差がなかった。【結論】挙手におけるSHRの解析では,利き手側と非利き手側では差がないが,筋活動ではTUは上腕骨外転角度の増加に伴いの%IEMGパターンに差があり交互作用がみられた。従って,挙手動作では,関節可動域の評価において利き手と非利き手または左右の比較を行うことは妥当であることが推察される。しかし,筋活動は,利き手側と非利き手側においてTUに差があっり,一概に両腕を同一とみて比較することはできないことが示唆された。今後は,棘上筋,棘下筋,肩甲下筋,小円筋について調査し,setting phaseと個人差についての詳細な検討が必要である。
著者
植原 亮
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-13, 2016-08-10

貨幣のような制度的対象はしばしば特別な存在であると見なされる.制度的対象についての有力な見解である集団的志向説によれば,それらは人々の集団的志向性なしには存在しえないがゆえに,他の通常の人工物とは存在論的に異なっており,またその存在論な固有性が認識論的・方法論的な独自性に反映されているという.本稿で目指すのは,制度的対象に対するこの種の哲学的態度のやめ方を描き出すことである.そのためにまず,集団的志向説を批判的に検討する.次いで,その代替的な見方として「ふるまい説」を提出し,その妥当性を示すことを試みる.そして最後に,ふるまい説について想定されるふたつの疑問に応答する.