著者
釜崎 とも子 上原 亮太
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.90-93, 2013-08-30 (Released:2019-09-10)
参考文献数
21

紡錘体は染色体を正しく二分するための構造である.機能的な紡錘体は,分裂期に微小管が高度に組織化されることにより形成される.これまでに,紡錘体微小管を生成する微小管形成中心として,中心体と染色体が知られてきた.近年,これらに加えて,紡錘体内部の微小管自身も,紡錘体微小管の生成・増幅に重要であることが分かってきた.このような微小管依存的微小管生成過程で中心的な役割を果たすのが“オーグミン複合体”である.我々はごく最近,ヒト紡錘体を電子線トモグラフィーおよび三次元モデリングにより解析した.その結果,オーグミン依存的な新規微細構造“エンドリンク”を介して微小管の枝分かれが形成されていることを突き止め,紡錘体における微小管依存的微小管生成過程に関する重要な知見を得た.
著者
田村 温美 筒井 英光 伊藤 純子 小原 亮爾 星 雅恵 久保田 光博 矢野 由希子 池田 徳彦
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.269-273, 2021 (Released:2022-02-22)
参考文献数
15

甲状腺・副甲状腺手術の後出血は1~2%の頻度とされている。頸部は狭い空間であることから,少量の出血でも血腫による静脈潅流障害により喉頭浮腫から気道閉塞に至る可能性がある。このため,甲状腺・副甲状腺手術において後出血は最も緊急性の高い合併症である。当科では,後出血予防の様々な取り組みにより,後出血に対する再開創率は0.5%と好成績であった。しかしながら,手術を行う限り後出血はどうしても一定の頻度で発生してしまうため,発生防止と同時に,早期発見と迅速な対応を行う取り組みが必要である。当科ではその取り組みのひとつとして,頸部マーキングを行っている。ひも1本でできる危機管理をコンセプトにこの頸部マーキングを「東京医大ひも法」と名付けて行っている。「簡便」かつ「安価」で導入可能であること,安全が「見える化」「数値化」することでチーム内での情報共有や早期発見に有用な方法である。ひも法における「マーキングが2cmずれたら主治医コール」は妥当な基準と考えている。
著者
竹之内 修 鳥原 亮 林 則行
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集 2019年度電気・情報関係学会九州支部連合大会(第72回連合大会)講演論文集
巻号頁・発行日
pp.461, 2019-09-19 (Released:2020-01-20)

長期間運用されたPVストリングは複数の劣化要因が絡んで,そのI-V特性が複雑な様相を呈することがある。本報告では出力が著しく低下し,かなり劣化が進行していることが考えられる太陽光発電所において実測で得られた太陽電池ストリングのI-V特性を、遺伝的アルゴリズム、機械学習および回路シミュレータLTspiceを組み合わせて利用することで、実測したI-V特性と細部までよく一致する劣化状態を推定した。計算ではモジュールの等価回路で光誘起電流、直列抵抗、並列抵抗を変化させた。その結果、構成するモジュールをいくつかの劣化が進行したグループに分けて計算することでI-V特性の比較的良い一致を得ることができた。
著者
原中 喜源 石合 嘉紀 栗原 亮
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.551-557, 2010 (Released:2010-06-16)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本実験ではサーキットを運転中のプロドライバの前頭前野の脳波活動を高精度携帯型脳波計により計測した. その結果, 単独走行と他車との間に追い越しがある混走では前頭前野のα波とβ波の活動が異なることが示唆された. また, 単独走行のβ波とラップタイムの関係のレース車両開発への応用の可能性を検討した.
著者
佐原 亮 遠藤 和博 五十嵐 絵美 浜田 純一郎 矢野 雄一郎
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.758-761, 2014 (Released:2014-11-21)
参考文献数
8
被引用文献数
1

肩疾患では屈曲と比べ外転しづらい.本研究の目的は屈曲と外転を比較することである.健常者11名22肩を対象とし,三次元動作解析を用い安静下垂位から屈曲・肩甲骨面挙上・外転し,上腕外旋角度,水平肩甲上腕角度,肩甲骨内旋角度を算出した.屈曲の上腕外旋角度は55°であり直線的に増加し,外転では挙上初期から外旋角度が大きく100°まで屈曲より多かった.屈曲では肩甲骨はまず内旋しその後外旋したが,外転は常に外旋した.水平肩甲上腕角度は外転で常に大きい.肩甲骨の外旋制限のある肩関節疾患では外転しづらい.屈曲では僧帽筋を弛緩し前鋸筋を収縮するが,外転では両筋を同時に収縮させる.棘下筋・小円筋も外転では筋長の短い状態での筋収縮が必要である.屈曲に対し外転は,(1)挙上初期から上腕外旋角度が大きく,(2)肩甲骨は常に外旋し,(3)水平肩甲上腕角度は常に大きい.
著者
季 思雨 藤原 亮 谷口 景一朗 芹川 真緒 佐藤 誠 高瀬 幸造 前 真之 井上 隆
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.26, no.64, pp.1025-1030, 2020-10-20 (Released:2020-10-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1

The potential of using Phase Change Material in wooden house has been proved. Since the cost of the PCM is high, searching for a laying position with high heat absorption and dissipation efficiency has been shown as a problem. In this study, we examine the laid position that maximizes the heat absorption and dissipation of the PCM when the PCM is set under the floor finishing material by utilizing the direct gain in winter.
著者
植原 亮
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.41-56, 2018-10-15

本稿の目標は,徳と人間本性をめぐるアリストテレス的な主題に関連する現代的な議論の見取り図を描き出すことである.そのために,この主題を構成する要素のうちの三点を取り上げて批判的に検討を加える.第一に,卓越した性格特性としての徳という見方に関する状況主義論争を手短に振り返る.第二に,人間本性にもとづく特定の徳のセットやそれがもたらす繁栄という概念の抱える困難を指摘する.第三に,人間本性という考えそのものを発生システム論などの現代の理論的枠組みから吟味する.
著者
中村 勇太 原 亮一 北 裕幸 田中 英一
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.138, no.2, pp.107-115, 2018-02-01 (Released:2018-02-01)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1

From growing interests in the environment issues, promotion of photovoltaic power generation (PV) is accelerated in the world. Meanwhile, rapid chargers (RCs) for popularized electric vehicles are being installed in urban areas. These two trends in distribution system might cause severer voltage fluctuation problems. On the other hand, a RC can provide the reactive power support, which is capable of voltage regulation. Based on this viewpoint, this paper proposes a new framework of voltage regulation, in which the reactive power compensation by RCs is actively utilized. The proposed voltage regulation method combines two different control functions with consideration for over-compensation avoidance. This paper ascertains the validity of proposed voltage regulation method through numerical simulations.
著者
島谷 康司 島 圭介 菴原 亮太 長谷川 正哉 金井 秀作 田中 聡 小野 武也 沖 貞明 大塚 彰 Psiche Giannoni Pietoro Morasso Paolo Moretti
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1228, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】我々は,初期歩行直後の乳幼児にヘリウムガス入り風船(浮力:約2g)の紐を把持させると歩行時の身体動揺が減少し,そのために歩行距離が延長することを報告した。この現象は,Jekaらが報告した「指尖でカーテンに軽く触れることによって姿勢制御に有効に働くこと(Light Touch Contact)」に類似していると考えた。本研究では,初期歩行期の乳幼児に対してヘリウムガス入り風船の紐を把持(以下,風船把持)させることにより姿勢制御を最適化する支援方法を提案するために,まず風船把持の静止立位姿勢制御について検証することを目的とした。【方法】対象は,健常成人60名(男性:30名 女性:30名)であった。重心動揺計測には,アニマ社製重心動揺計(GP-6000)を使用した。また,全対象者のうち無作為に抽出した30名に対して頭部,風船を把持した右手部,仮想身体重心を想定した腹部の位置関係を検証するために,KINECT for Windowsを用いて3次元画像解析を行った。計測条件は,何も把持しない条件(以下,把持なし条件),風船を右手で把持する条件(以下,風船条件)の2条件を設定し,被験者ごとにランダム化して60秒間の計測を行い,データを比較した。計測肢位は閉眼タンデム立位とし,把持なし条件の右上肢はあたかも風船を把持しているかのような肢位とした。計測は被験者が十分に安定したと感じた際に「はい」と合図をさせて開始した。統計処理には,総軌跡長,実効値面積(以下,RMS),外周面積,左右軌跡長,前後軌跡長について,把持なし条件と風船条件の2群間で対応のあるt検定を行った。また,頭部・右手部・腹部の3次元座標から変動係数を算出し,2群間比較には対応のあるt検定を,群内比較にはKruskal Wallis検定および多重比較にはSteel-Dwass検定を行った。なお,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り,対象者には本研究の趣旨を十分に説明し,書面にて同意を得た後に実験を行った。【結果】重心動揺については,把持なし条件と比較して風船条件は,総軌跡長(p<0.01),左右軌跡長(p<0.01),前後軌跡長(p<0.01),RMS(p<0.05)で有意に低値を示した。外周面積に有意差は見られなかった。各身体部位の変動のばらつきについては,把持なし条件・風船条件ともに頭部と右手部は腹部よりも有意にばらつきが大きく,頭部と右手部に有意差は見られなかった。また,把持なし条件と風船条件の群間比較をした結果,すべての身体部位間に有意差は見られなかった。【考察】本研究の結果,風船把持によって前後・左右の重心動揺速度が減少し,動揺のばらつきを抑えて身体重心を一定範囲内に収めていることが示唆された。しかし,風船の有無によって身体部位の位置関係に有意差が見られなかったことから,風船把持による静止立位姿勢制御の機序までは明らかにすることができなかった。しかし,山本らは,ヒトは各身体部位を前後・左右に微妙に動かしながら立位姿勢を制御すると述べており,本研究では風船把持によってフィードバック制御を賦活し,各身体部位を微動させることによって,より重心動揺を減少させる立位姿勢制御が行われているものと推察した。風船把持の立位姿勢制御が固定点に指尖で軽く触れるLight Touch Contactとは異なるため,今後は風船特有の揺らぎが静止立位姿勢制御に与える影響について詳しく解析し,初期歩行期の乳幼児に対する歩行支援の可能性について検証していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】現在,初期歩行発達遅延の乳幼児に対する確立した歩行支援方法はない。風船は口頭指示が難しい乳幼児にとって歩行練習を行う動機づけに有用な歩行支援用具となりうる可能性があり,健常成人においては,風船把持による静止立位姿勢制御が重心動揺を減少させることが示唆された。
著者
松本 美佐子 田中 笑子 篠原 亮次 渡辺 多恵子 冨崎 悦子 望月 由妃子 杉澤 悠圭 酒井 初恵 安梅 勅江
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.3-13, 2014

目的 本研究は保育園で気がつく3歳時の気になる行動の推移、および2年後の社会能力を予測する行動の抽出を目的とした。方法 対象は全国32か所の認可保育園に在籍する幼児である。すでに障害の診断がついている児を除外した2007年、2008年の3歳児(485人、509人)を2年間追跡し主要な項目に欠損のない276人、243人をパネル化した519人を分析対象とした。調査内容は「気になる行動チェックリスト」と「就学前児用社会的スキル尺度」の記入を担当保育士に依頼した。対象者の内訳は男児274名(52.8%)、女児245名(47.2%)、きょうだいは無200名(38.8%)、有315名(61.2%)不明4名であった。5歳時の社会性を目的変数、3歳時の気になる行動を説明変数、性別ときょうだいの有無を調整変数としてロジスティック回帰分析を実施した。結果 5歳の社会能力の低さは3歳時の気になる行動で「音に対する反応の異常」が見られる場合Odds比38.86(95%信頼区間4.21-358.85)(以下同様)、「光に対する反応の異常」が見られる場合14.21(2.69-75.10)、「不自然な関係性」がみられる場合14.10(3.99-49.78)、「無関心」がみられる場合4.06(1.64-10.03)、「こだわり」がみられる場合5.53(2.33-13.12)、「激しいかんしゃく」がみられる場合2.44(1.10-5.40)、「多動」がみられる場合3.46(1.75-6.86)、「けんかが多い」がみられる場合2.47(1.02-5.98)「反抗がひどい」がみられる場合6.00(2.13-16.95)、「言葉に関する問題」がみられる場合6.34(2.97-13.53)、「ルール逸脱行動」がみられる場合9.10(3.73-22.22)、「年齢相応の生活習慣の遅れ」がみられる場合4.93(2.11-11.51)と有意に高くなる傾向が示された。結論 3歳時に音や光に関する反応の異常、不自然な関係性、無関心、こだわり、激しいかんしゃく、多動、けんかが多い、反抗がひどい、言葉に関する問題、ルールの逸脱行動、年齢相応の生活習慣の遅れなどの行動がみられた際は、後の社会能力の獲得に困難を示す可能性があり、幼児期早期から社会能力を育むための支援が求められる。
著者
吉崎 邦夫 佐原 亮 瀬川 大輔 浜田 純一郎 遠藤 敏裕 藤原 孝之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0685, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】肩関節疾患治療において肩関節内旋運動(以下内旋運動)制限が問題となる。なかでも日常生活活動では結帯動作に支障を来すことが多い。上肢運動は複合的運動であり,肩甲上腕関節,肩甲骨,鎖骨,胸郭,体幹の運動が関与している。これらの運動を考慮した上腕骨頭(以下骨頭)の内旋運動と肩甲骨運動について三次元動作解析装置(3D-MA)を用いて検討した。本研究の目的は,骨頭が内旋する肩関節の第1肢位(1st)内旋,第2肢位(2nd)内旋,第3肢位(3rd)内旋,結帯動作における骨頭の内旋角度と肩甲骨運動を調査すること,また肩関節内旋制限を有する症例の理学療法確立の一助とすることである。【方法】対象は肩関節痛の既往がなく,野球などの球技スポーツ歴のない,書面で同意を得られた健常者9名(男性9名,平均年齢21歳,19~23歳)であり,利き手側を計測した。8台の赤外線カメラを用いた三次元動作解析装置(MAC 3DSystem,Motion Analysis corp.)にて,基本的立位姿勢から開始し肩関節1st・2nd・3rd内旋,結帯運動を計測した。直径10mmの赤外線マーカーを,体幹(C7,L5,胸骨柄,胸骨剣状突起および両側の腸骨稜と上前腸骨棘),肩関節周囲(いずれも利き手側の骨頭前方および後方,肩峰角,肩甲棘内縁),肘関節(上腕骨内側・外側上顆),手関節(内・外側)合計16ヵ所の皮膚ランドマークに,できるだけスキンアーティファクトが少なくなるよう調整し貼付した。データ統合解析プログラム(KineAnalyzer,キッセイコムテック)を用い,各運動面上で上記のマーカーから導出した運動軸の変化を抽出し,体幹運動(屈曲・伸展,側屈,回旋)を差し引いた1st・2nd・3rd内旋運動の骨頭内旋角度と肩甲骨運動角度(内・外旋,上方・下方回旋,上方・下方傾斜)を算出した。結帯動作の骨頭内旋角度は,骨頭中心から骨頭前方および後方を結ぶ線と直交しかつ上腕軸と直交する線を作成し,この線と上腕骨内・外側上顆を結ぶ線の成す角度を基に算出した。肩甲骨運動は,肩峰角,肩甲棘内縁,骨頭後方が作る三角形の面に直行する軸を各運動面に投射し,各基本軸と成す角度を基に算出した。体幹運動は,屈曲・伸展および側屈はC7とL5を結ぶ直線と各運動面における基本軸とのなす角度から計測した。体幹回旋は,C7とL5を結ぶ直線の中点と胸骨剣状突起を結ぶ直線と水平面上の基本軸との成す角度を基に算出した。【結果】最大運動角度における1st内旋の骨頭内旋角度は68.6±17.3度,肩甲骨内旋角度は5.0±2.9度であった。2nd内旋の骨頭内旋角度は55.6±11.0度,肩甲骨前方傾斜角度は14.5±5.2度であった。3rd内旋の骨頭内旋角度は15.5±4.7度,肩甲骨上方回旋角度は7.1±6.3度であった。結帯動作における骨頭内旋角度は39.2±5.0度,肩甲骨前方傾斜角度は14.0±4.7度,肩甲骨内旋角度は5.0±5.6度,上腕骨伸展角度は36.3±9.2度,肘関節屈曲角度は100.0±11.2度であり,母指指先はTh7±2椎体レベルであった。【考察】各運動で骨頭内旋角度を比較すると,1st内旋が最も大きく,2nd内旋,結帯動作が続き,3rd内旋が最も小さかった。結帯動作に着目すると1st内旋と比較し上腕骨が屈曲位にあるか伸展位にあるかの違いで骨頭内旋角度の差が大きく(47.5±15.1度),結帯動作障害のある症例には,1st内旋の制限がなく,また結帯動作に伴う肩甲骨上方回旋および前方傾斜にも制限がないことが多い。以上から骨頭内旋制限が結帯動作の障害因子であると推察され,上腕骨伸展位で何らかの軟部組織が骨頭内旋制限に関与すると考えられる。われわれは第41回日本肩関節学会(2014年)において解剖学的・臨床的知見から骨頭内旋制限に烏口上腕靭帯肥厚・瘢痕形成が関与すると報告した。特に結帯動作の上腕骨伸展に伴い,烏口上腕靭帯が緊張し骨頭の内旋制限を生じることが確認された。今後は,骨頭内旋運動に伴う腱板筋の筋活動と,烏口上腕靭帯の肥厚・瘢痕形成に対する理学療法を考案してゆく予定である。【理学療法学研究としての意義】肩関節疾患において肩関節内旋運動制限が問題となることが多く,特に結帯動作の改善は困難である。内旋運動は多関節の複合的運動であり肢位により違いがあるものの,各内旋運動を区別して検討することは理学療法のターゲットを明確にし,治療効果を向上させるためにも重要である。