著者
安梅 勅江 篠原 亮次 杉澤 悠圭 伊藤 澄雄
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 = JAPANESE JOURNAL OF PUBLIC HEALTH (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.681-687, 2006-09-15
被引用文献数
6

<b>目的</b> 本研究は,大都市近郊の農村に居住する65歳以上の者全数801人に対する1998年から2005年までの追跡調査により,社会とのかかわり状況と死亡率との関連を社会関連性指標を用いて明らかにしたものである。社会関連性指標は,地域社会の中での人間関係の有無,環境とのかかわりの頻度などにより測定される,人間と環境とのかかわりの量的側面を測定する指標である。<br/><b>方法</b> 1998年に配票留置の質問紙に回答した者の死亡に関するデータを2005年まで集計した。有効回答は,回答者のうち事故死および死亡理由不明者,転出者,基準年の介護状態不明者を除いた669人とした。7 年間の死亡者は139人(12.7%)であった。調査内容は,年齢,性別,罹患,介護,ADL,社会関連性指標であった。<br/><b>結果</b> 1) 社会関連性指標の項目のうち,「家族以外との会話」,「訪問の機会」,「活動参加」,「テレビの視聴」,「新聞の購読」,「本・雑誌の購読」,「役割の遂行」,「近所づきあい」,「趣味」,「ビデオ等の利用」,「健康への配慮」,「生活の工夫」,「積極性」,「社会貢献への意識」が乏しい場合,7 年後の死亡率が有意に高くなっていた。<br/> 2) 多重ロジスティック回帰分析を用い,基準年の年齢,性別,罹患,介護,移動機能,感覚機能,身辺処理機能を調整変数として社会関連性指標の各項目の死亡に対するオッズ比を算出した。「活動参加」,「趣味」,「役割の遂行」,「積極性」,「ビデオ等の利用」の項目が有意となり,調整変数に関わらず,社会関連性が乏しいと死亡率が高いという関連が示された。<br/><b>結論</b> 社会関連性は生命予後との関連がみられた。具体的な行動と活動状況を評価基準とする社会関連性指標を用いることにより,地域で生活する高齢者の日常生活における社会とのかかわり状況を把握し,介護予防マネジメント等に活用可能なことが示唆された。
著者
恩田 陽子 篠原 亮次 杉澤 悠圭 童 連 田中 笑子 冨崎 悦子 平野 真紀 渡辺 多恵子 望月 由妃子 川島 悠里 難波 麻由美 徳竹 健太郎 安梅 勅江
出版者
日本保健福祉学会
雑誌
日本保健福祉学会誌 (ISSN:13408194)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.23-28, 2010-11-30 (Released:2017-09-15)

目的:本研究は、子育ち・子育て支援における評価指標として活用が可能な「就学前児用社会的スキル尺度」の「かかわり指標」との基準関連妥当性について明らかにすることを目的とした.方法:対象は2〜6歳の保育士により気になる子どもとしてあげられた全国98か所の認可保育園に在籍する保育園児121名であり、担当保育士による「就学前児用社会的スキル尺度」の評価、および同一検査者による「かかわり指標」子ども側面を用いた観察を合わせて分析した.就学前児用社会的スキル尺度の各因子得点、総合得点とかかわり指標の各領域得点、子ども総合得点との相関係数を算出した。結果と考察:「協調因子」と<応答性領域><共感性領域>、「自己制御因子」と<運動制御><感情制御>、「自己表現因子」と<主体性領域>で有意な関連がみられ、基準関連妥当性が示された。「就学前児用社会的スキル尺度」及び「かかわり指標」はともに子どもの社会性を短時間の行動観察により客観的に測定できるツールであり、場面により使い分けることで、子育ち・子育て支援に携わるあらゆる分野における、今後の幅広い活用が期待される。
著者
高木 雅昭 原 亮一 佐藤 敏之 大山 力
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.125, no.12, pp.1177-1186, 2005 (Released:2006-03-01)
参考文献数
15

It is very effective to enhance the robustness of control over the faults occurred in power system in order to realize stable and reliable power supply. The sliding mode control based on the Variable Structure System (VSS) theory is paid attentions as one of the promising robust control scheme. In the sliding mode control, the structure of the control system is changed across the hyper plane (switching plane) in state space so that the state variables of the system are kept on the hyper plane.This paper proposes a novel control method of generator's excitation system in which the concept of sliding mode control is employed. More specifically, the proposed method switches the reference voltage used in AVR according to the sign of switching function. This paper also discusses the systematic design procedure of the optimal hyper plane. Performance and effectiveness of the proposed control method are investigated through both numerical studies and experimental tests using the single-machine infinite-bus system simulator. Both results show that the proposed control method can damp the transient swing caused by a fault effectively.
著者
岡田 昭宏 川原 亮一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.9, pp.17-20, 2003-04-10
被引用文献数
11

インターネットにおけるトラヒック特性は,インターネットの利用形態などの影響を強くうける.従来,インターネットにおけるトラヒックはwebベースのHTTPによるトラヒックが主流と考えられていた.そして,その前提のもとでネットワークの設計,運用がおこなわれてきた.本稿では,先ず,インターネットのトラヒック測定から,ファイル共有ソフト間のトラヒックが主流を占めていることを示し,HTTPとの比較においてトラヒック特性を分析した.次に,ネットワークの運用・設計に関わるいくつかのトラヒック特性を分析した.ここでは,統計多重化の効果が期待できること,自己相似性の度合いは高くないことを示した.最後に,トラヒックの1日周期の変化について分析し考察した.
著者
猶原 亮介 青矢 睦月
出版者
島根大学
雑誌
島根大学総合理工学部紀要. シリーズA (ISSN:13427113)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.63-73, 1997-03-25
被引用文献数
3

In the Besshi district of the Sambagawa metamophic belt,basic schist layers o㏄ur crossing the middle portions of the Seba valley,there are two texture types of prograde eclogites.One is fomed by contact metamorphism of emplacement of high grade tectonic-block. They occur in the area that is only a few 1O m from the tectonic-block.They are randomly oriented and have coarse-grained omphasite porphyroblastes. The other type has fine-grained omphasites forming schistosity and lineation. Some eclogites retain eclogite facies mineralgg,and they occur in wide area of the Sebadani area. Therefore there is a possibility that the Sambagawa schist in this area were reached to the eclogite facies P-T conditions.
著者
植原 亮
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.57-76, 2014-02-10

道徳心理学をめぐる最近の議論において,人間の道徳を生得的と見る道徳生得説が力を増しつつある.パトリシア・S・チャーチランドは『脳がつくる倫理』においてその批判を試みているが,彼女の批判は十分には明確なものではない.そこで本稿では,彼女の道徳生得説批判を検討し,その射程と課題を明らかにすることを目指す.そのために,まずは準備として道徳生得説をめぐる議論を概観する.次にその概観の中に,チャーチランドの議論を再構成して位置づける.最後に,そうして再構成された議論に対して突きつけられることが想定される反論を検討することで,チャーチランドが今後取り組まねばならない課題は何かを探る.Recent discussions on moral psychology have increasingly focused on moral nativism, which is the perspective that human morality is innate. Although Patricia Churchland argued against this viewpoint in her book, Braintrust, her overall argument was unclear. Therefore, this paper examines her argument and clarifi es its scope and issues in a three-step process. First, it provides a general overview of the debates on the innateness of morality. Next, it reconstructs Churchland’s argument within this overview. Finally, it investigates the possible objections to the reconstructed argument and related argumentative issues.
著者
笹原 亮二
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

九州周辺には各地に島嶼が存在する。それらの島嶼は古来、国内外を巡る航路以上に位置し、また、歴史的に中国・朝鮮半島・沖縄(琉球)といった「異国」と接する境界領域に位置したことから、各島嶼の民俗芸能は国内外から政治的・文化的等、様々なかたちで多大なる影響を蒙ってきた。こうしたことは、これらの島嶼の多種多様な民俗芸能の理解にあたっては、それらを、文化的・歴史的・地域的に形作られてきた多様性に富む存在として、それぞれの島嶼の文脈において精確に見ていくことが必要となることを示している。
著者
森 達哉 木村 達明 池田 泰弘 上山 憲昭 川原 亮一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.287, pp.5-10, 2010-11-11

本研究は分散コンピューティングシステムにおいてMapReduceによる大規模データ処理を実行した際にシステム全体に生じるワークロードをネットワークの観点から分析した結果を報告する.12台の計算機で構成されるHadoopクラスタを利用し,Masterサーバおよび各々のSlaveサーバで取得したMapReduce Jobのログ,およびSlaveサーバ間の通信をキャプチャしたデータを収集した.はじめにMapReduceジョブを構成する各々のタスクとネットワークに生じ得る負荷の関係をケーススタディによって明らかにする.つぎに,MapReduceに与えるパラメタによって,ノード間のデータ転送に用いられるTCPフローのサイズ,持続時間,レートの分布が変わることを示す.最後にMapReduceジョブによるネットワーク負荷を計測する際に注意すべき点について論じる.
著者
笹原 亮二
出版者
国立民族学博物館
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

本年度の調査は、前年度までの調査成果を踏まえて、未調査の地域の祭や民俗芸能、及び補充調査の必要な地域の祭や民俗芸能について実施した。本年度新たに調査を行ったのは、岩手県の三陸海岸地方南部で行われている虎舞である。虎舞は宮古市域や釜石市域を中心に20ヶ所以上で行われている芸能である。虎舞は、文楽や歌舞伎で有名な国姓爺合戦に因んだもので、中国を舞台として和藤内の虎退治の話を仕組んだストーリーが演じられるものである。同様の内容を有する芸能は神奈川県三浦半島や瀬戸内地方にも若干見られるが、分布の密度は三陸地方のほうがはるかに濃い。また、三陸地方の虎舞の芸態や音楽が、他地域の虎舞よりも三陸や岩手に多数分布している剣舞や山伏神楽とむしろ共通性を感じさせる。三陸地方の虎舞の調査研究はそれほど進んでおらず、関連資料の蓄積があまり見られない。従って、どのようなかたちで現在の分布状況や芸態が掲載されたかは、今回の調査では明らかにすることができなかった。基本的なデータの集積が待たれる。補充調査としては、南九州の琉球人踊について調査を行った。本年度は、琉球人踊の分布が知られていたにも関わらず、昨年度まで調子をしていなかった種子島の琉球人踊について調査を行った。従来の研究では、鹿児島本土では琉球から島津家にやってくる使節に因んだ琉球人踊が行われているのに対し、種子島では一般の人々が江戸期から盛んに琉球と行き来してきたということがあり、そうした直接交渉に因んだ琉球人踊が行われているとされてきた。確かに、鹿児島本土とは異なるかたちで種子島の人々が琉球人に扮した踊が行われていたが、琉球の人々を写実的に真似たのではなく、鹿児島とは異なるかたちでではあるが、かなり変形した奇妙なかたちで琉球人の姿態を演じていた。直接的な琉球の人々との交渉が相当ありながら、何故こうした変形させて演じられているのか、興味を惹かれるところである。また、種子島では、北部の西之表市から南部の南種子町まで各地に琉球人踊に類するものが分布していて、内容は場所によってかなり違っていた。更に詳細な実態調査の必要性を感じた。本年度はそのほか、長崎地方の獅子浮流、佐賀地方の面浮流、伊勢地方の唐人踊と鯨船神事、沖縄地方の唐踊と獅子舞などに関する調査を実施し、関連資料を収集した。
著者
田原 亮二
出版者
福岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では方向転換を伴う足部でのトラップ動作について、映像とセンサーを用いた動作分析を行い最適なトラップ動作を探索した。その結果、方向転換を伴うトラップ動作に関しては膝の外旋動作よりも、足関節の外反動作によってボールスピードが減衰されていることが明らかとなった。
著者
横川 公子 田口 理恵 角野 幸博 佐藤 浩司 笹原 亮二 森 理恵 井上 雅人 佐藤 健二
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

国立民族学博物館所蔵の大村しげコレクションは、元の所有者が日々の暮らしの中で蓄積した生活財のほぼ全容をもって構成される。今までの調査によって、個々の生活財について詳細な情報が記録され、全体像を表すエクセルファイルと画像データのCDを発行すると同時に、調査の過程で発見された特徴的な傾向や、研究者の問題意識にしたがってモノから見えてきた見解等について、『国立民族学博物館研究報告書SERS68』(2007.3)を発刊した。その主たる内容は以下のように一覧できる。「大村しげの都心居住」「収納家具とその中身の配置について」「おばんざいの道具立て」「おばんざいの流布について」「おばんざいの思想について」「大村しげの衣類・履物について」「文筆家としての大村しげの思想について」等々である。さらにもうひとつの課題である、生活主体が抱いているモノをめぐる生活の価値については、関係者へのインタビューと著作を参照することによって再現し、これについても取りまとめて公刊する(横川公子編『大村しげ京都町家暮らし』河出書房新社、2007.6予定)。以下のような見通しを得ることができた。所有者の生活の経時的変化に対応する生活財のまとまり、および生活財の空間的な所在を再現することによって、所有者と時間的・空間的な生活財の位置との関わりや暮らしの思想を再現できた。さらに拝観チケット・食べ物屋のメニューやチラシなどの遺品から、所有者のお出かけ行動の内容と京都市内外における行動範囲や行動スタイルが判明し、都心居住者としての生活を再現することができた。同様に、主にインタビュー調査とフィールド調査によって晩年に居住したバリ島における行動や行動範囲・行動スタイルを再現した。物書きとしての用品として大量の原稿や校正刷り、原稿用紙、筆記用具、著書など、及び父親の家業であった仕出し屋の道具類や多様な贈答品の蓄積から、京都や祇園という地域の固有の暮らしを再現、等々。モノと著作による暮らしの内側からの発信は、観光都市・京都イメージとは異なる、都会暮らしの現実感覚があぶりだされてくる。
著者
藤原 亮一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.144-145, 2023 (Released:2023-02-01)
参考文献数
2

日本の薬学教育は、特に6年制になってからはアメリカのそれと似たものであると認識していた。しかし、2019年に異動しアメリカの薬学教育に直接携わるようになってからと言うもの、筆者は日米間での薬学教育の違いを目の当たりにする日々が続いている。そこで本コラムでは、アメリカ薬学部にて教鞭をとる立場から、アメリカの薬学教育、日本での薬学教育との違い、またそれぞれの特色について筆者が感じ取ったことをシリーズで伝える。今回はアメリカの薬学教育におけるDiversity, Equity, and Inclusion (DEI) への取り組みについて紹介する。