著者
NGUYEN T. Hanh 石島 健太郎 菅原 敏 長谷部 文雄
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.1149-1167, 2021

<p> インドネシアのビアクで行われたCoordinated Upper-Troposphere-to-Stratosphere Balloon Experiment in Biak (CUBE/Biak)観測キャンペーンの一環として行われたクライオジェニックサンプリング実験による大気サンプルから推定された平均大気年齢(mean age)の成層圏高度分布について、大気大循環モデルに基づく化学輸送モデル(Atmospheric general circulation model-based Chemistry Transport Model: ACTM)を用いたBoundary Impulse Evolving Response (BIER)法とラグランジュ後方流跡線解析の二つの方法を適用して検証した。ACTMは、大気大循環モデルをEuropean Centre for Medium-Range Weather Forecasts Reanalysis-Interim (ERA-Interim)にナッジングすることにより、1時間間隔の現実的な気象場を提供した。BIER法では陽に解像されない拡散混合過程を考慮することが可能であり、後方流跡線解析では空気塊が観測地点に到達するまでの経路を区別できる。ACTMによって再現された共通の輸送場に対して二つの方法を適用することは、CO<sub>2</sub>とSF<sub>6</sub>から推定された平均年齢を評価する上で有用である。計算に用いた輸送場の信頼性は、ラグランジュ法によって再現されたCO<sub>2</sub>、SF<sub>6</sub>、および水蒸気の鉛直分布を観測結果と比較することで評価した。二つの方法による平均年齢をCO<sub>2</sub> ageと比較すると、ラグランジュ法の結果が比較的良い再現性を示した。ラグランジュ法の平均年齢はやや小さくなるバイアスが見られたが、このことは流跡線計算を一定の有限時間で停止させているためであると考えられる。一方、BIER法の平均年齢は、高度25km以上においてCO<sub>2</sub> ageよりも大きくなっており、モデルの拡散の効果が大きい可能性が示唆された。これとは対照的に、SF<sub>6</sub> ageとの比較では成層圏下部のみで再現性が良いものの、SF<sub>6</sub> ageはラグランジュ法の平均年齢よりもかなり大きくなった。ラグランジュ法では中間圏起源の空気塊が含まれていないことや、観測された上層のSF<sub>6</sub>濃度が流跡線から再現された濃度よりもかなり低くなっていることから、観測された大気サンプルがSF<sub>6</sub>消失の影響を受けた中間圏大気との混合の影響を受けているために平均年齢が過大評価になっているという仮説を裏付けている。</p>
著者
中野 晋 内田 剛 石ヶ森 勲 菅原 敏 新田 慶治
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.64, no.617, pp.107-114, 1998-01-25
参考文献数
9

It is necessary to develop a small positive pressure control system for the closed ecology experiment facilities because of the needs to prevent contamination from the atmosphere and to protect against over differential pressure loading. In the present study, a numerical analysis method was developed to calculate the quantity of state of the closed module which is fitted with rubber buffers for the small positive pressure control system. Experiments to examine the pressure change of the closed module caused by rapid temperature control of an air conditioner were carried out at Biosphere-J. Comparison of calculated and experimental results showed that the present dynamic simulation is suited to estimating the quantity of state of the closed module.
著者
吉田 昌弘 笠原 敏史 田辺 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.129, 2003

【はじめに】スポーツ・リハビリテーションの中で受傷部位の回復を評価するにあたって,機能レベルのテスト項目のほかに,10M走や垂直跳び,反復横跳びなどの能力レベル(いわゆるパフォーマンス)のテスト項目も行われる.中でも,垂直跳びの能力はジャンプ競技(バレーボールやバスケットボールなど)の重要な要素である.これまでのジャンプ研究の報告から,垂直跳び動作は下肢および上肢や体幹の運動を使った全身運動であると言われている.下肢傷害の機能回復を垂直跳びの結果より判断する場合,上肢や体幹運動を考慮して実施する必要がある.しかし,上肢の運動が垂直跳びに影響を及ぼすことは知られているが,どのような上肢運動が垂直跳びの成績や力学的な要素に関与しているのか十分に明らかにされていない.本研究はこの点を解明するために調査を行い,若干の知見を得たので報告する.【対象と方法】対象は健常男子名(平均年齢21±1[SD]歳,身長173±5cm,体重58±5kg,BMI19±1).「垂直跳び」は助走なくその場で出来るだけ高く飛び,壁面に設置した垂直跳び計測用ボードにあらかじめチョークの粉をつけた指先をつけるよう指示し測定した.対象は,肩関節屈曲0度(T1),肩関節屈曲90°(T2),肩関節屈曲180度から伸展運動させ(T3),続いて屈曲運動を行わせた.肩関節屈曲30度(T4),肩関節120度(T5)から屈曲運動のみ行わせた.これらと,肩関節180度で固定(T6)して行ったときとを比較した.各課題5回ずつ行わせ,うち最高と最低値を除く3回のデータを用いた.なお,各運動課題はランダムに行った.さらに,同時に,床反力計を使って垂直方向の力も計測した.【結果】垂直跳びの成績はT1=58±6cm, T2=56±7cm,T3=55±8cm,T4=55±7cm,T5=51±7cm,T6=49±7cmであった.フォースプレートからZ方向の大きさは,各被検者ごとの差を取り除くため,ノーマライズを行い,各被検者の体重を引き,体重で除したものを用いた.その結果,T1=14.4±0.3,T2=13.9±0.4,T3=14.3±0.3,T4=13.4±1.2,T5=12.9±0.3,T6=13.1±0.5であった.【考察】本研究では,垂直跳びにおける上肢の振りの関与について,上肢運動に条件を設定して行った.T1からT3は上肢を振り下ろす運動範囲に条件をつけて行い,上肢を固定した場合に比べ,垂直とびの高さは大きく,z方向の力成分も大きかった.このことから,上肢を振り下ろす運動により,床からの反力を得ている可能性がある.T4とT5は上肢を振り上げる運動範囲に条件をつけ,運動範囲が小さい場合,垂直跳びの高さが減少し,z方向の力成分も減少していた.同様に,上肢を振りあげるも高く飛ぶために必要な床からの反力を得ているものと考える.
著者
山寺 静子 大谷 明 小船 富美夫 小松 俊彦 鈴木 一義 中山 幹男 萩原 敏且 松本 美弥子 山本 紀一 ルナール 純子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.379-386, 2007
被引用文献数
1

厚生労働省のインフルエンザ対策の一環として一般市民を対象にFax, E-mailを含む電話相談を行った.<BR>相談件数は2003/04シーズンは2,813件, 2004/05シーズンは2, 444件であった.月別は10~11月が最も多く, 相談者は女性が72.5%を占め, 特に30代が最も多かった.相談者の居住地別では東京都が最も多く, 神奈川, 千葉, 埼玉, 長野の順であった.職種別では主婦が1,114件 (45.6%) を占め, 次に民間企業が447件 (18.3%), 医療従事者が227件 (9.3%) であり, 2003/04シーズンと同様の傾向がみられた.相談の内容はワクチンに関するものが1545件で62.2%を占め, その内訳はワクチン接種の是非, 副反応, 接種回数が主であった. また妊婦, 乳幼児, 授乳中の接種については296件 (19.2%) であった.2004/05シーズンはワクチン不足についての問い合わせ (7件), 重症急性呼吸器症候群: SARS (22件) また鳥インフルエンザ (22件) についての相談は前シーズンに比べ減少したが, 抗ウイルス薬 (209件) に関する相談が増加していた.<BR>毎年の相談内容は, インフルエンザの医療事情を強く反映しており, 医療従事者からの間合せも相当数みられることから, 対応する担当者の知識や情報の確保は重要な課題であると考えられた.また, 具体的な内容としては, 厚生労働省および感染症情報センターから出されている「一般向けのインフルエンザQ&A」で「妊産婦及び授乳中あるいは育児中の方へ」のようなセクションをもうけて, 解説することの必要性を提案した.
著者
山原 敏朗
巻号頁・発行日
pp.22-31, 2012-03-31

新しいアイヌ史の構築 : 先史編・古代編・中世編 : 「新しいアイヌ史の構築」プロジェクト報告書2012
著者
相原 敏則
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.97-121, 2017 (Released:2018-04-11)
参考文献数
9

You, physicians, have always said, “All officials are idiots in the field of child abuse protection”.You sometimes said, “I did NOT know that!, but We DID our best!”By the way, do you know the ABC of criminal procedure law to determine the facts in criminal cases?
著者
星月 久昇 松浦 和成 光藤 誠太郎 出原 敏孝 北野 彰洋 石橋 淳一 西 裕士
雑誌
遠赤外領域開発研究
巻号頁・発行日
vol.5, pp.207-213, 2004-03

Boron carbide (B4C) is one of advanced materials and is being used in a wide rage of applications. The unique feature of this material is its large neutron-absorbing cross-section. Some of its most prominent applications are controlling rods in nuclear reactors and radiation protection. 24 GHz microwave processing for B4C ceramics were performed under flowing argon gas using the sintering system. The sintered samples were characterized by the density and SEM micrographs of fracture surface. The SEM shows the sintering process for small pores occur at the early stage of sintering below the temperature 2,100℃.
著者
小笠原 敏記 佐々木 信也 堺 茂樹 古川 隆
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1346-1350, 2006
被引用文献数
1

ワークショップ (WS) を通して, 避難上の問題点を明確にし, その対策案に基づいた行動計画を実施するまでの過程を報告して, 自主防災力の意識向上に対するWS効果を検討する. さらに, アンケート調査より平成15年十勝沖地震と平成17年11月の三陸沖の地震で発令された津波注意報に伴う避難の実態を明確にし, 同時に避難行動に及ぼすWSの影響も明らかにする. その結果, 視覚的に理解し易い情報・資料の提供や, 計画を立て実際に歩くという行為, 同じ問題を参加者で考えて行動に移すことができる場がワークショップの重要な役割と言える. しかし, 避難行動の意識向上にWS効果が見られたにも関わらず, 避難行動に及ばない実状が明白となった.
著者
木曽 昭典 川嶋 善仁 大戸 信明 周 艶陽 屋敷(土肥) 圭子 村上 敏之 新穂 大介 神原 敏光 水谷 健二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.267-273, 2009-12-20 (Released:2011-12-21)
参考文献数
22
被引用文献数
2

皮膚の潤いを保つには,表皮の角層における水分保持機能およびバリア機能が不可欠である。これらの機能を発揮するため,セラミド,コレステロールおよび遊離脂肪酸から構成される角層細胞間脂質が重要な役割を果たしている。本研究では,セラミドの産生促進作用を指標にして,皮膚の潤いを保つのに有効な植物抽出物の検索を行った結果,甘草葉抽出物に表皮角化細胞においてセラミドの合成に関与する酵素であるセリンパルミトイルトランスフェラーゼおよびスフィンゴミエリナーゼの遺伝子発現を促進する作用,3次元培養皮膚モデルおよびヒト皮膚においてセラミド産生促進作用を見出した。さらに他の角層細胞間脂質であるコレステロール合成の律速酵素として知られるHMG-CoA還元酵素の遺伝子発現促進作用や表皮ヒアルロン酸の合成を促進する作用も認めた。また,甘草葉から単離した活性成分についても検討したところ,6-prenyl-naringeninが活性成分の一つであることが示唆された。これらの結果から甘草葉抽出物は,角層細胞間脂質や表皮ヒアルロン酸の合成を高め,多角的に皮膚機能を維持・改善するスキンケア素材である可能性が示唆された。
著者
栗原 敏夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.760-761, 1995-12-20 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
1

[工夫した点](1)試験紙を用いることで感覚効果を高めた。(2)希硫酸を陽極に銅板, 陰極に炭素棒を用いることで, 陽極で酸素の発生がなく銅が溶出する。(OH^-よりCuが酸化されやすい)陰極では水素発生の後, Cu^<2+>が還元され銅が析出する。
著者
小林 省蔵 大河原 敏文 斉藤 渉 中村 ゆり 大村 三男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.453-458, 1997-12-15
参考文献数
21
被引用文献数
2 20

細胞融合により3倍体を作出する目的で, '十万'ウンシュウ, '大三島'ネーブルオレンジおよび'トロビタ'スイートオレンジの珠心起源カルスのプロトプラストとクレメンティンの半数体 (No. 1およびNo. 2)の葉肉起源のプロトプラストを, 3組合せ (ウンシュウ+半数体No. 1, ネーブルオレンジ+半数体No. 2およびスイートオレンジ+半数体No. 1) で電気的に融合させた.得られた植物体の根端細胞の染色体数調査を行ったところ, 2倍体 (2n=18) と3倍体 (2n=27) が混在したが, いずれの組合せにおいても3倍体が存在した. これら植物体についてRAPD法により雑種性を調査したところ, 3倍体はいずれも両親に特異的なバンドの両方を含んでおり, 体細胞雑種個体であることが確認された.
著者
福原 敏彦
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.45-50, 1998-06-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
21
著者
小川 基彦 萩原 敏且 岸本 寿男 志賀 定祠 吉田 芳哉 古屋 由美子 海保 郁夫 伊藤 忠彦 根本 治育 山本 徳栄 益川 邦彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.359-364, 2001-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
5 7

1998年にツツガムシ病と診断された患者416人の臨床所見について解析を行った. 主要3徴候である刺し口, 発熱, 発疹は, それぞれ86.5%, 97.7%, 92.3%の患者に, またCRP, GOT, GPT, LDH上昇が, それぞれ957%, 84.8%, 777%, 90.7%に認められた. これらの所見はほとんどの患者に認められ, 診断に有用であることが示された. また汎血管内凝固症候群が21人に認められ, 命を脅かす疾病であることがうかがわれた. リンパ節腫脹は49.7%の患者に認められ, そのうち74.6%は局所にのみ腫脹が認められた.さらに, 腫脹した部位が刺し口の近傍に認められる傾向があった. また, 大部分の刺し口は痂皮状で, 腹部や下半身 (特に下肢) などに認められた. 一方, 刺し口, 発疹が, それぞれ13.5%, 77%の患者には認められず, 風邪などと誤診されやすいことも示唆された. また, 血清診断で陰性であった患者においては, 主要3徴候は約半数に, 刺し口は約70%の患者に認められた.したがって, 現在の血清診断法では診断できないツツガムシ病が存在する可能性が推察された.今回の解析によって全国レベルでの臨床医学的側面があきらかとなり, 今後の診断および治療に役立つものと考えられる. 一方で, 臨床所見だけからは診断が難しいケースが明らかとなり, 血清診断法の改良の必要性も示唆された.
著者
内野 隆之 栗原 敏之 川村 信人
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.249-252, 2005 (Released:2005-08-01)
参考文献数
23
被引用文献数
22 27

Early Carboniferous radiolarians were newly discovered from siltstone of the Nedamo Complex in the Hayachine Terrane, Northeast Japan. This siltstone and other clastic rocks along with greenstone and chert are the components of an accretionary complex. Radiolarian fauna contains Palaeoscenidium cladophorum Deflandre that ranges in age from Early or Middle Devonian to Early Carboniferous. Since the Fe-Mn chert intercalated in a MORB-type basalt of the Nedamo Complex was assigned an age of Late Devonian (Hamano et al., 2002), the accretionary age of the Hayachine Terrane is no older than Late Devonian, most probable Early Carboniferous. This is the first report of an Early Carboni-ferous accretionary complex recognized by biostratigraphic data in Japan.