著者
村山 雅史 谷川 亘 井尻 暁 星野 辰彦 廣瀬 丈洋 富士原 敏也 北田 数也 捫垣 勝哉 徳山 英一 浦本 豪一郎 新井 和乃 近藤 康生 山本 裕二 黒田郡 調査隊チーム一同
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

黒田郡遺構調査の目的で,高知県浦ノ内湾の最奥部(水深10m)から採取した堆積物コアを解析した。当時の海洋環境や生物相の変遷履歴も復元することもおこなった。高知県土佐湾の中央部に位置する浦ノ内湾は,横浪半島の北側に面し,東西に細長く,12kmも湾入する沈降性の湾として知られている。高知大学調査船「ねぷちゅーん」を用いて、バイブロコアリングによって4mの堆積物コアが採取された。採取地点は,周囲からの河川の影響はないため,本コア試料は,湾内の詳細な環境変動を記録していると考えられる。採取されたコア試料は,X線CT撮影,MSCL解析後,半割をおこない肉眼記載や頻出する貝の採取,同定をおこなった。 堆積物の岩相は,olive色のsity clayであり,全体的に多くの貝殻片を含む。コア上部付近は,黒っぽい色を呈し強い硫化水素臭がした。また,コア下部に葉理の発達したイベント堆積物が認められ,その成因について今後検証する予定である。
著者
辻 順行 高野 正博 久保田 至 徳嶺 章夫 嘉村 好峰 豊原 敏光
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.1026-1032, 1995 (Released:2009-06-05)
参考文献数
12
被引用文献数
12 7

1994年1月から12月までに当院外来を受診した症例の中で,直腸肛門病変を有しない20歳代から70歳代までの男性50例,女性49例を対象として,直腸肛門機能検査を行い以下の結果を得た.(1)肛門管最大静止圧,肛門管最大随意圧,排出圧は,男女ともに20歳代から60歳代までは,有意な差を認めなかった.しかし,70歳代では他の年齢と比較して男女ともに有意な低下を認めた.また性差で比較すると肛門管最大静止圧においては70歳以上では,有意な差を認めなかったが,69歳以下においては有意に女性の方が男性より低かった.肛門管最大随意圧と排出圧においては,69歳以下や70歳以上の群でも有意に女性が男性より低かった.(2)機能的肛門管長では,男女ともに20歳代が他の年齢群と比較して有意に短く,30歳代から70歳代では男女ともに有意な差を認あなかった.また性差で比較すると29歳以下や30歳以上の群においてもそれぞれ女性が男性より有意に短かった.(3)直腸感覚閾値,最大耐用量,直腸コンプライアンス等は,20歳代から70歳代までの,どの年齢群においても,男女ともに有意な差を認めなかった.以上より,肛門機能は直腸機能に比べて性差や加齢による影響が及びやすく,直腸肛門の手術の際には性や年齢を加味して手術術式の選択をすべきであると思われた.
著者
鈴木 由希子 稲富 雄一郎 米原 敏郎 平野 照之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.8-12, 2015 (Released:2015-01-19)
参考文献数
5
被引用文献数
2 5

症例は77歳の女性である.パソコンのキーボード入力操作においてタッチタイピング(ブラインドタッチ)を獲得していたが,左中大脳動脈領域の脳梗塞を発症した.右前頭葉には陳旧性脳梗塞をみとめた.軽度の右麻痺,喚語困難,仮名・漢字・アルファベット1文字の読み書き障害は急速に改善したが,キーボード入力が困難になった.失行や視知覚障害はなく,ローマ字の読み書き障害をみとめた.アルファベットをみて確認しながらであればキーボード入力ができるまで改善したが,タッチタイピングは再獲得できなかった.本例のキーボード入力操作に選択的な行為障害には,ローマ字の読み書き障害がもっとも影響していると考えた.
著者
小笠原 敏記 岩間 俊二 堺 茂樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_301-I_305, 2014 (Released:2014-11-12)
参考文献数
6

In the Great East Japan Earthquake, we clarified that Ohtanabe fishing ports have fully function as tsunami mitigation using tsunami simulation. The process in which tsunami develops or propagates is very different depending on the presence or absence of the fishing ports. Especially, if there were not the fishing ports, the tsunami height increases more than 60% at the front of Ohtanabe seawall and the inundation height increases twice at the area inside the seawall. Furthermore, there will be also strongly possibility that the large amount of water is stored within the seawall for a long stretch of time. Therefore, we learned from the disaster that a multilayered defense system should be built to minimize damage in the event of a disaster that overwhelms disaster prevention infrastructures.
著者
栁原 敏昭
巻号頁・発行日
no.21,
著者
上原 敏夫 長谷部 由紀子 山本 和彦
出版者
有斐閣
雑誌
別冊jurist (ISSN:13425048)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.2-8,1-217, 2020-01
著者
寺澤 英夫 清水 洋孝 上原 敏志 喜多 也寸志 島 さゆり 武藤 多津郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.33-36, 2019 (Released:2019-01-30)
参考文献数
8
被引用文献数
2

症例は48歳男性である.発熱の先行症状の後に急性脊髄炎を発症した.脊髄MRIでは,C6よりTh8レベルまで連続する長大な脊髄病変をみとめ,免疫療法に奏功して脊髄病変は消退し,神経症状も軽快した.血清抗aquaporin-4(AQP4)抗体,抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体は陰性であったが,血清と髄液の両者より抗lactosylceramide(LacCer)抗体が急性期に陽性で回復期に弱陽性に低下した.抗中性糖脂質抗体は,脳炎・脳症を欠く急性脊髄炎で陽性になる既報告はなく,急性脊髄炎の病態の鑑別に本抗体を考慮する必要があると考えられた.
著者
橋本 洋一郎 米村 公伸 寺崎 修司 稲富 雄一郎 米原 敏郎 Teruyuki HIRANO 平野 照之 内野 誠
出版者
一般社団法人日本脳神経超音波学会
雑誌
Neurosonology:神経超音波医学 (ISSN:0917074X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.55-61, 2004 (Released:2007-09-26)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

Ocular ischemic syndrome can be of either the acute type (amaurosis fugax, retinal artery occlusion and ischemic optic neuropathy) or the chronic type (venous stasis retinopathy and ischemic oculopathy). We carried out etiological studies on 35patients (19men, 16women, aged 62±16years) with retinal artery occlusion and 21patients (13men, 8women, aged 47±19 years) with amaurosis fugax. In all patients, carotid ultrasonography was performed to clarify the extent of carotid artery disease ipsilateral to the retinal artery occlusion and amaurosis fugax. All the patients underwent electrocardiography and transesophageal echocardiography. Arterial stenosis exceeding 50% of the diameter of the internal carotid artery ipsilateral to the symptomatic eye was more frequent in patients with retinal artery occlusion than in those with amaurosis fugax. Patent foramen ovale more frequent in the latter than in the former. Patients with venous stasis retinopathy and ischemic oculopathy (neovascular glaucoma) had occlusion of the ipsilateral carotid artery with reversed ophthalmic artery or severe stenosis of the ipilateral carotid artery with stenosis of the ipsilateral ophthalmic artery. Neurosonologic studies can provide valuable clinical data on ocular ischemic syndrome.
著者
前島 伸一郎 土肥 信之 梶原 敏夫 佐野 公俊 神野 哲夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.480-483, 1990-10-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

混合型超皮質性失語を呈した1例を報告し, 局所脳血流からみた責任病巣と発現機序について考察した.症例は67歳の右利き女性で, 左内頚動脈・前脈絡叢動脈分岐部の動脈瘤クリッピング術後, 右片麻痺と失語症のリハビリ目的で当科を受診した.初診時, 意識は清明で, 右顔面神経麻痺と右片麻痺を認め, 右半身の知覚鈍麻を認めた.言語学的には自発話に乏しく, 呼称や語の想起は著しく障害をうけていた.しかし復唱は良好で, 5~6語の短文でも可能であった.言語の聴覚的理解や文字の視覚的理解はともに単語レベルで障害をうけ, 書字は全く不可能であった.CTでは左前脈絡叢動脈領域に低吸収域を認めたほか, 左中前頭回皮質~皮質下にも低吸収域を認めた。123I-IMP SPECTでは左大脳半球全体に血流低下を認めるが, 言語野周囲の血流は比較的保たれていた.本症例は言語野が2ヵ所の病変によって周辺の大脳皮質から孤立した状態であると推定された.
著者
宮原 敏郎 廣川 光昭 上田 幹夫 吉田 寛
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.497-503, 1994-07-15 (Released:2009-11-12)
参考文献数
17
被引用文献数
10 10

気泡塔を用いて, 温度とpHが調整された水中にオゾンを含む空気を送入することにより, 水中へのオゾンの吸収特性を実験的に検討した.水中のオゾン濃度はオゾン送入後しばらくして定常値に達した.この定常濃度は送入ガス速度には依存せず, pH, 送入ガスのオゾン濃度および温度の関数となり, pHが小さいと大きく, 温度が低く, 送入ガスのオゾン濃度が大きいと高い値を示した.水中に溶解したオゾンは自己分解するが, その自己分解反応次数はおよそ1.5であった.自己分解速度定数の実験式および秋田らにより報告されている液側物質移動容量係数を用い, ヘンリ一定数を推算する案験式を得た.これらの結果を用い, オゾンの水中への吸収に関する物質収支式をRunge-Kutta-Gill法で解き, オゾンの水中での濃度の時間的変化が推測できることが判明した.
著者
福原 敏男
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-23, 1994-03-31

筆者はこれまでに、祭礼芸能である一つもの・細男について考察し、これを平安末期に成立した田楽・王の舞・獅子舞・十列・巫女神楽・競馬・流鏑馬・神楽・舞楽・神子渡等からなる一連の芸能として位置づけた。京都・奈良の古社の祭礼において、「日使」と称する役が、上記の諸芸能とともに、祭礼に参加する事例がある。従来の日使に関する先行研究は、春日若宮祭礼に限られ、ここに神聖性が指摘された。日使は黒袍表袴に長い裾をひいた姿で、奉幣を主な役割とし、芸能的所作がないからであった。本稿では、春日祭・春日若宮祭礼、東大寺八幡宮転害会、大山崎離宮八幡宮の日使神事、山城宇治田原三社祭に参加する日使を対象にした。史料と絵画に基づく検討の結果、日使の成立を楽人の風流に求めた。日使が伝播した地における宗教性は、その所役を荷った人々の階層の問題である。
著者
福原 敏行
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.209-218, 2015
被引用文献数
1

健全な(病徴のない)イネやピーマンなどの植物(作物)から約15 kbp(千塩基対)の直鎖状2本鎖RNAが頻繁に検出される.これらの2本鎖RNAは,宿主植物のゲノムDNAからの転写物ではなく,巨大な単一のオープンリーディングフレーム(ORF)をコードし,プラス鎖に切れ目(ニック)を有するユニークな2本鎖RNAウイルスであることが塩基配列および分子系統解析により判明し,新たなウイルスとしてEndornaviridae科Endornavirus属に分類された.これらのエンドルナウイルスは,一般的な1本鎖RNAウイルスとは異なり,全ての組織で一定の低コピー数(細胞あたり約100コピー)で検出され,宿主に明確な病徴を与えない.また,日本晴品種などの栽培イネから検出されるエンドルナウイルスでは,花粉や卵から95%以上の高率で次世代に伝播する.すなわち,一般的なウイルスが爆発的に増殖し宿主に病気を引き起こし水平感染するのに対し,エンドルナウイルスは,宿主植物と共生関係を保ち,宿主に病徴を与えず,花粉や卵から効率よく次世代に垂直伝播する究極の共生ウイルスといえる.
著者
堀切 豊 日吉 俊紀 川平 和美 田中 信行 渡邊 智 藤原 敏雄 川崎 義巳
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.95-100, 1998 (Released:2010-04-30)
参考文献数
15

Phthalides and ligustilide in Senkyu extract and limonene and fravonoids in Chimpi extract have been reported to have strong vasodilation effects.In the present study the circulatory effects of Senkyu and Chimpi extract (crude drug extract) were studied as bath agent in 40.0°C bath water (Senkyu ext. 224mg and Chimpi ext. 272mg/2001). Thirteen healthy men (36.2±5.8 years old) took a bath at 40.0°C for 10 min with and without (only with flavor and dye) crude drug extract and the circulatory effects were followed for 30 min after bathing.Heart rate and cardiac output were increased equally by 10 min bathing either with or without crude drug extract. Although systolic blood pressure was slightly increased during bathing, diastolic blood pressure and total peripheral resistance were significantly decreased during and after bathing with and without crude drug extract. Forehead skin blood flow and sublingual temperature were significantly increased during bathing, and remained at higher level for 10-30 min after bathing with crude drug extract. Venous blood pO2 and pH were significantly increased and pCO2 was decreased equally with and without crude drug extract. Plasma NE was significantly increased by bathing with crude drug extract.Bath agent with Senkyu and Chimpi extract are considered favorable as bath agent to keep high skin blood flow and sublingual temperature probably due to its vasodilating effects.
著者
渡邊 智 今西 宣行 藤原 敏雄 川崎 義巳 大塚 吉則
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.135-140, 1998 (Released:2010-08-06)
参考文献数
11
被引用文献数
1

In this study, we investigated the effect of bathing with cut crude drugs on thermal preservability, water holding capacity, and smoothness of the feel. After immersion with cut crude drugs of 5min at 41°C, the forearm skin core temperature was significantly higher than after plain water bathing. Water sorption-desorption tests on the skin in vivo with cut crude drug extract for the functional assessment of the stratum corneum revealed that the GARENIAE FRUCTUS extract, all of cut crude drugs extract, and FOENICULI FRUCTUS extract are significantly superior to plain water bathing in water holding capacity.Furthermore, an evaluation using a skin model revealed that cut crude drugs have effects significantly superior to that of plain water bathing in increasing the smoothness of the feel. The above results clarified that bathing with cut crude drugs has a stronger effect on thermal preservability and that their extract increases water holding capacity and smoothness of the feel.
著者
篠原 敏雄
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.45-80, 2009

本論文は, 我が国の基礎法学における重要な理論的潮流である「市民法学」の観点から, 「市民」像および「市民社会」像に関して, 従来の論点を一層理論的に考察することを目的とする.第一章においては, 「市民法学」における「市民」像を, 個人と共同体との関連に関する三つの類型に即して, 明らかにする. そして, 現代では, 第三番目の類型こそ, 「市民法学」における「市民」像に適合的であるということを論ずる. 第二章においては, 「市民法学」における「市民社会」像を, 第一に, 平田清明市民社会論, 第二に, へーゲル市民社会論, 第三に, 市民法学としての川村泰啓法学, に即して検討し, 市民社会論の持つ法律学的射程の広大な領野の在りようを考察する.Das Ziel dieses Aufsatzes ist die Erklärung der grundrechtswissenschaftliche Bedeutung über das Bild von "Bürger" und "die bürgerliche Gesellschaft" in der theoretischen Rechtswissenschaft. Im ersten Kapitel erklärt dieser Aufsatz die rechtsphilosophische Bedeutung über das Bild von "Bürger". Hier handelt es sich um die Beziehung zwischen das Individuum und Gemeinwesen. Diese Beziehung ist sehr wichtig für unsere theoretische Rechtswissenschaft. Im zweiten Kapitel erörtern wir erstens die Theorie über die bürgerliche Gesellschaft von HIRATA Kiyoaki, zweitens die Hegelsche bürgerliche Gesellschaft, und drittens die Rechtswissenschaft von KAWAMURA Yasuhiro.
著者
小川 基彦 萩原 敏且 岸本 寿男 志賀 定祠 吉田 芳哉 古屋 由美子 海保 郁夫 伊藤 忠彦 根本 治育 山本 徳栄 益川 邦彦
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.353-358, 2001-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

ツツガムシ病の全国の発生状況について, 1998年に実施した調査票をもとに解析を行った. 1998年の患者は416人で, 24の都道府県で発生し, 過去3年間とほぼ同数であった. 患者には性差は認められず, 51歳以上の割合が723%と高かった. また, 患者の32.0%および1a5%が農作業および森林作業に従事しており, 高い割合を占めた. 患者の発生は, 九州地方で全体の56.2%を占め, 続いて関東地方の20.7%, 東北・北陸地方の19.0%となり, これらの地方だけで全国の959%の発生があった.また, 月別にみると, 東北, 北陸地方では4~6月と10~12月の両方に発生がみられ, 九州, 関東などそれ以外の地域では10~12月に発生が多くみられ, 地方ごとの流行時期が示された. さらに, 九州地方における流行株を患者血清の抗体価から推測した結果, 新しい血清型のKawasaki, Kuroki株がこの順に多く大部分を占め, 地域差は認められなかった. また, この地方では標準株 (Kato, Karp, Gilliam株) ではなく, 新しい血清型を使用しないと診断できない患者が24人認められた. この結果から, 他の地域でも流行株の調査および診断に使用する株を検討する必要が示唆された. 今回初めてツツガムシ病のわが国における全体像が明らかになり, 今後の発生予測, 適切な診断と治療および予防を行うにあたり極めて重要な情報が得られた.
著者
今村 栄次 山下 拓史 福原 敏行 長嶋 和郎 郡山 達男 時信 弘
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.172-178, 2009 (Released:2009-05-13)
参考文献数
15
被引用文献数
6 7

症例は76歳女性である.発語の減少,意欲低下で発症し,意識障害の進行と平行して両側耳介腫脹が出現した.発熱,項部硬直をみとめ,髄液細胞数,蛋白,IgG indexの上昇,頭部MRIで進行性の大脳白質病変と脳萎縮をみとめた.耳介軟骨生検の病理所見から再発性多発軟骨炎(RP)と診断した.意識障害と炎症所見は,ステロイド治療にて一時的に改善したが,ふたたび増悪し,多剤による免疫抑制療法をおこなったが改善しなかった.剖検脳では,軟膜および脳実質の血管周囲にびまん性のリンパ球浸潤と炎症性髄鞘破壊をみとめた.RPに関連した髄膜脳炎の剖検例はきわめてまれであるが,病変の主座は炎症性血管周囲炎であることが示唆された.
著者
飯田 洋介 早川 倫子 原 祐一 高岡 敦史 酒向 治子 笠井 俊信 桑原 敏典
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.167, pp.101-109, 2018

本研究は,教科内容構成の考え方に基づいて小学校の授業づくりのあり方を検討するとともに,それをふまえることで大学の教員養成プログラムの授業が具体的にどのように改善されるかを明らかにしようとしたものである。教科内容構成とは,教員養成において従来から課題とされてきた教科の内容に関わる知識・技能と教科の指導法に関わる知識・技能の分離という問題を克服するために提案されたものである。教科内容構成は,教科の内容と指導法に関わる知識・技能を統合し,それらを応用して,教師が自ら「どのような内容をどのように教えるべきか」を考え,授業づくりに取り組むことができるようになるための考え方を示すものであり,本研究では教員養成プログラムにおける具体的な授業プランを提示してそれを明らかにしていく。本稿では,特に,小学校の社会科,音楽科,体育科,情報モラル教育を事例として論じていくことにしたい。