著者
原 正則 柳原 俊雄 高田 恒郎 山本 格 川崎 克俊 木原 達
出版者
The Japanese Society for Pediatric Nephrology
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.71-77, 1996
被引用文献数
1 2

糸球体上皮細胞 (GEC) は非常に機能分化した細胞であるためにCytokinesisを伴う細胞増殖を起こしにくいとされている。また糸球体硬化につながる管外性病変の形成に重要な役割を演じていると考えられている。これらのことより我々は"尿中に剥離脱落したGECを算定すれば管外性病変や硬化性病変の進行を予測できる"という仮説を設定した。本研究ではこの仮説の妥当性を実験的半月体形成腎炎および小児期IgA腎症で検討した。ラットの腎不全に陥るような100%半月体形成腎炎では多数のGECが尿中に出現していた。経過中の全GEC数を算定すると60万個にもなり,これはラットの糸球体の総GEC数1,000万個の約6%に相当した。小児期IgA腎症患児では種々の程度に尿中にGECが出現していた。このうち2症例で経時的腎生検施行期間中の尿中GEC数を算定した。症例1では1,350万個のGECが脱落し,これは人の糸球体の総GEC数6億の約2%に相当した。さらにこの症例では管外性病変が進行しており,尿中GEC数より病変の進行を予測できた。一方,管外性病変の見られなかった症例2は尿中剥離数も少数であった。以上,小児期IgA腎症例,実験腎炎における尿中に剥離脱落したGECを算定し,管外性病変形成および進行についての我々の仮説の妥当性を検討した結果,経時的に尿中剥離GEC数を算定すれば糸球体硬化を予知できる可能性があるという結論に達した。
著者
境 隆一 笠原 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.212, pp.131-138, 2002-07-12
被引用文献数
4

2001年7月開催のISEC研究会で同一題目の発表を行い,ペアリングの双線形性を利用した幾つかの暗号方式を紹介し,新しい署名方式も提案した.また,筆者等はID情報に基づく公開鍵暗号方式も幾つか提案した.本論文では同様に,ペアリングの双線形性を利用した新しい形の公開鍵暗号方式および署名方式を提案する.そして,提案方式と従来のペアリングを用いた方式との差について考察する.
著者
佐竹 賢治 笠原 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.702-710, 1996-03-25
被引用文献数
2

RSA 暗号は高いセキュリティレベルを有し, またディジタル署名も可能な優れた暗号方式として, 活発に研究されてきている. しかしこの暗号方式は暗号化, 復号にべき乗および剰余演算を繰返し実行する必要があるため, その処理時間が膨大になるという実用上の欠点を有している. 本論文では, このRSA暗号システムに適用可能な高速化べき乗剰余演算法を提案している. この手法は剰余演算に用いる法 (合成数) を工夫することによって, 剰余演算の処理ステップを大幅に削減し, 高速化を実現するものである. この手法をRSA暗号に適用した場合, 演算処理の高速化に加え, 公開鍵情報の短縮化といった著しい特徴を有する暗号システムの実現が可能となる. 本論文では, この高速べき乗剰余演算手法を適用したRSA暗号を, ユーザインタフェースとしての簡便さと安全性とを, トレードオフの関係のもとに自由に設定し得る実用的な暗号方式として論じ, その安全性等について考察を加えている.
著者
山来 寧志 猪原 正守
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, 1999-04-15

ある配色から受ける感情の背後にある潜在的特性と物理量との因果関係を知るためには, 最初に因子分析法によって潜在因子を抽出し, 回帰分析法によってそれらの因果関係を解明する方法が一般的である.本研究では, 感情を引き起こす対象としてお菓子のパッケージを取り上げ, パッケージから受ける印象をアンケート調査により評価, それに対して因子分析法と実験計画法を適用することで, 潜在因子と設計特性の関係を明らかにする方法を提案した.
著者
大河原 正文 塚脇 真二
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.341-359, 2002
被引用文献数
5 8

東南アジア最大の湖であるトンレサップ湖は雨季と乾季とでその水深・冠水面積が大きく変化し, このような季節的変動に支配された特異な堆積作用の発生が予期される。そこで同湖における堆積作用の解明へ向けて, 同湖に堆積物を供給する関連水系や同湖周辺に分布する沖積層の堆積物の粘土鉱物組成にもとづき, 同湖北部湖底堆積物に含まれる粘土鉱物の起源およびその時間的変化を調べた。<BR>トンレサップ湖北部の表層堆積物ならびに懸濁物からは, カオリン鉱物, イライト, スメクタイトおよび緑泥石が検出される。同湖とメコン河とを連絡するトンレサップ川の堆積物からもイライトおよび緑泥石が検出されるにもかかわらず, 同湖北部周辺の水系や沖積層の堆積物にこれらがほとんど含まれないことから, 同湖北部に分布するイライトおよび緑泥石はメコン河本流を起源とするものと判断される。<BR>一方, トンレサップ湖北部湖底から採集された柱状試料では, その上部約50cmの堆積物からはイライトならびに微量の緑泥石が検出されるものの, 同試料下部にはこれがまったく認められない。したがって, イライトおよび緑泥石がメコン河水系に由来するという表層堆積物解析結果にもとづき, 同湖における堆積物の供給源に大きな変化が発生したことが推定され, その年代は今から約5,000年前と考えられる。
著者
萩原 正人 小川 泰弘 外山 勝彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.22, pp.71-78, 2005-03-11
参考文献数
16
被引用文献数
2

大規模コーパスから語の類似関係を得るためには,語の共起関係や文脈などの特徴を利用する方法が一般的である.しかし,語に関する表層的な特徴をそのまま用いる手法には,ノイズの混入やスパースネスなどの問題がある.本稿では,確率論・情報理論に基づく潜在意味モデルであるPLSIを用い,語の潜在意味を推定することによって名詞間の類似関係を求める.評価実験の結果,tf・idfやLSIなどの従来手法と比較してPLSIの性能が最も高く,シソーラス自動構築におけるPLSIの有用性を明らかにした.また,PLSIを類義語の自動獲得へ適用する際の様々な基礎的利用技術についても報告する.A common way to obtain synonym relationships from large corpora is to utilize the features such as cooccurrence and words' context. However, methods based on direct use of surface information concerning to words suffer from noises and sparseness. This paper describes how to utilize PLSI, which is a latent semantic model based on probability theory and information theory, to infer the meaning of words and obtain synonym relationships between nouns. An experiment has shown that PLSI achieves the best performance compared to conventional methods such as tf・idf and LSI, which shows the effectiveness of PLSI for automated construction of thesauri. Various useful techniques when applying PLSI to automatic acquisition of synonyms are also discussed.
著者
浅原 正幸 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.685-695, 2002-03-15
参考文献数
19
被引用文献数
10

自然言語処理の分野で最も基本的な処理として形態素解析がある.近年大量のタグ付きコーパスが整備され,コーパスに基づいた統計的形態素解析器が開発されてきた.しかし単純な統計的手法ではコーパスに出現しない例外的な言語現象に対処することができない.この問題に対処するため,本論文ではより柔軟な拡張統計モデルを提案する.例外的な現象に対応するために単語レベルの統計値を利用する.この拡張により,細かく分類された大量のタグを扱う際,必要なコーパスの量は増加する.一般に適切なコーパスの量で学習するために複数のタグを同値類へとグループ化することによりタグの数を減らすことが行われる.我々はこれを拡張し,マルコフモデルの条件付き確率計算について,先行する品詞タグ集合と,後続する品詞タグ集合とで,別々の品詞タグの同値類を導入するようにした.コーパスの量が不足する場合にtri-gramモデルを構築すると,学習データへの過学習が起きる.これを回避するために選択的tri-gramモデルを導入した.一方,これらの拡張のため,語彙化するタグやtri-gram文脈の選択を人手で設定することは困難である.そこで,この素性選択に誤り駆動の手法を導入し半自動化した.日本語・中国語形態素解析,英語品詞タグ付けについて評価実験を行い,これらの拡張の有効性を検証した.Recently, large-scale part-of-speech tagged corpora have becomeavailable, making it possible to develop statistical morphologicalanalyzers trained on these corpora.Nevertheless, statistical approaches in isolation cannot coverexceptional language phenomena which do not appear in the corpora.In this paper, we propose three extensions to statistical modelsin order to cope with such exceptional language phenomena.First of all, we incorporate lexicalized part-of-speech tags into the modelby using the word itself as a part-of-speech tag.Second, because the tag set becomes fragmented by the use of lexicalized tags, we reduce the size of the tag set by introducing a new type of grouping technique where the tag set ispartitioned creating two different equivalent classes for the events in theconditional probabilities of a Markov Model.Third, to avoid over-fitting, we selectively introduce tri-gram contexts into a bi-gram model.In order to implement these extensions, we introduce error-driven methods to semi-automatically determine the words to be used as lexicalized tags and the tri-gram contextsto be introduced.We investigate how our extension is effective through experiments onJapanese, Chinese and English.
著者
浅原 正幸 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.4, pp.49-56, 2003-01-20
被引用文献数
1

一般的に日本語固有表現抽出で提案されている手法は形態素解析とチャンキングの組み合わせによる.形態素解析出力結果をそのままチャンカーの入力にすると,形態素解析結果より小さい単位の固有表現を抽出することは困難である.そこで,文字単位でチャンキングを行う手法を提案する.まず,統計的形態素解析器で入力文を冗長的に解析を行う.次に,入力文を文字単位に分割し,文字,字種および形態素解析結果のn次解までの品詞情報などを各文字に付与する.最後に,これらを素性として,サポートベクトルマシンに基づいたチャンカーにより決定的に固有表現となる語の語境界を推定する.この手法により,1次解のみを用いる場合より豊かな素性をチャンカーに与えることができ,固有表現抽出の精度を向上させることができた.CRL 固有表現データを用いて評価実験(交差検定 5-fold)を行った結果,F 値約 88% という高精度の結果が得られた.Named Entity (NE) extraction is a task in which proper nouns and numerical information are extracted from texts. A method of cascading morphological analysis and chunking is usually used for NE extraction in Japanese. However, such a method cannot extract smaller NE units than morphological analyzer outputs. To cope with the unit problem, we propose a character-based chunking method. Firstly, input sentences are redundantly analyzed by a statistical analyzer. Secondly, the input sentences are segmented into characters. The characters are annotated redundantly with the character types and POS tags of the top n best answers that are given by the statistical morphological analyzer. Finally, we do chunking deterministically based on support vector machines. The method can introduce richer features for chunkers than the method based on single morphological analysis result. We apply our method to IREX NE task using CRL Named Entities data. The cross validation result of the F-value being 88% shows the effectiveness of the method.
著者
原 正一郎 杉森 裕樹 古海 勝彦 東福寺 幾夫 窪寺 健 河合 正樹 吉田 勝美
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.32-52, 2003
被引用文献数
1

健康審査(健診)には多数の施設が関わっており,これらの施設の健診情報システム間でデータを交換する必要がある.ところが健診に関わるデータ構造は多様であり,健診依頼元へ検査結果を電子的に還元することすら容易ではない.そこで平成8年より,日本総合健診医学会情報委員会は,健診データの有効利用を図るために日本保健福祉医療情報システム工業会と合同委員会を組織し,標準健診データ交換規約(HDML:Health Data Markup Language)とツールの開発に着手した.HDMLはSGML/XMLを基礎とし,既存の医療情報交換規約との互換性を考慮しつつ,健診に特化したデータ交換規約である.本稿ではHDMLの構造と,HDMLツールを用いた評価試験の結果について述べる.HDMLの導入によりデータ交換にかかわるコストの削減が可能となる.さらにデータ交換の段階でデータ構造が標準化されるため,複数の医療施設で発生した健診データを生涯健康管理データベースとして集積・管理できるようになり,生活習慣病などの予防医学にも大きく貢献することが期待される.
著者
榊原 正幸 上原 誠一郎
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.3-10, 2006 (Released:2006-03-01)
参考文献数
29
被引用文献数
2 1

The term asbestos is a generic designation given to six types of naturally occurring mineral fibers that are or have been used in commercial products. These fibers belong to two mineral groups: serpentines and amphiboles. The serpentine group contains a single asbestiform variety: chrysotile. The amphibole group contains five asbestiform amphibole varieties: anthophyllite, grunerite (amosite), riebeckite (crocidolite), tremolite and actinolite.     These fibrous minerals share several properties which qualify them as asbestiform fibers. They are bundles of fibers which can be easily cleaved into thinner fibers. Several properties that make asbestos so versatile and cost effective are high tensile strength, chemical and thermal stability, high flexibility, and low electrical conductivity.     Asbestos fibers have been used in a broad variety of industrial application; some 3000 applications such as roofing products, gaskets, and friction products. 80% of imported asbestos is used for cement products such as asbestos boards and slates which are used for building materials, 7% for friction materials, and less than 3% for asbestos textile. Nearly all of the asbestos produced worldwide is chrysotile. Historically, chrysotile has accounted for more than 90% of the world’s asbestos production, and it presently accounts for over 99% of the world production. Two types of amphiboles, commonly designated as amosite and crocidolite are no longer mined. With the onset of the health issues concerning asbestos in the late 1960s and early 1970s, world production and consumption began to decline during the 1980s. Japan used approximately 6.7 million tons between 1974 and 2004. About 67% of this amount was used since 1930.     The relationship between workplace exposure to airborne asbestos fibers and respiratory diseases is one of the most widely studied subjects of modern epidemiology. The research efforts resulted in significant consensus that asbestos fibers can be associated with diseases of asbestosis, lung cancer and mesothelioma. Its carcinogenic nature, an overall lack of knowledge of minimum safe exposure levels, and the long latency for the development of lung cancer and mesothelioma are the main contributing factors to these controversies.