著者
杉原 厚吉 小柳 義夫 山本 博資 室田 一雄 今井 浩 杉原 正顯 村重 淳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は,従来から開発されつつある分野ごとの個別のロバスト計算技術を横断的に整理し,分野の境界を超える共通で普遍的なロバスト計算のためのアルゴリズム設計パラダイムを構築することであった.この目的のために,本研究参加者がそれぞれの手法を持ち寄り,交流をくり返す中で,五つの設計原理を抽出することができた.その第一は,「計算対象の背後に存在する構造不変性の利用」で,位相構造の優先による幾何不整合の防止,物理法則を継承する数値解法,因果律に反しない計算順序の選択などの技術を含む.第二の原理は,「対象世界の拡大による計算の安定化」で,図形を超図形へ拡張することによるミンコフスキー演算の安定化,離散対象の連続緩和による整数計画法の高効率化,記号摂動による例外解消などの技術を含む.第三の原理は,「対象世界を制限することによる計算の安定化」で,連続関数の格子点への制限による計算の安定化,実数計算を整数計算へ制限することによる幾何計算の無誤差化,などの技術を含む.第四の原理は,「不確定性のモデル化による計算の安定化」で,物理パラメータを値から領域へ置き換えることによる制御安定化,値を区間に置き換えることによる特異積分方程式の解法などの技術を含む.第五の原理は,「仮定の排除による汎用性の確保」で,発生確率に関する仮定を排除することによるユニバーサル符号技術や異常検出技術などを含む.さらに,抽出した原理を指針に用いて,新しいロバスト計算技術も開発できた.その中には,第一の原理に基づいて,対象の背景構造をディジタル画像近似を介して統一的に抽出して利用する「ディジタル位相優先法」,第二の原理に基づいて,望みの例外のみを選択的に解消することによって摂動の副作用を防ぐことのできる「超摂動」などの技術がある.これらの活動を通してロバスト計算技術を新しく生み出すことのできるパラダイムが構築できた.
著者
榊原 正幸 上原 誠一郎
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.3-10, 2006-01-20
被引用文献数
3 1

The term asbestos is a generic designation given to six types of naturally occurring mineral fibers that are or have been used in commercial products. These fibers belong to two mineral groups: serpentines and amphiboles. The serpentine group contains a single asbestiform variety: chrysotile. The amphibole group contains five asbestiform amphibole varieties: anthophyllite, grunerite (amosite), riebeckite (crocidolite), tremolite and actinolite.<br>     These fibrous minerals share several properties which qualify them as asbestiform fibers. They are bundles of fibers which can be easily cleaved into thinner fibers. Several properties that make asbestos so versatile and cost effective are high tensile strength, chemical and thermal stability, high flexibility, and low electrical conductivity.<br>     Asbestos fibers have been used in a broad variety of industrial application; some 3000 applications such as roofing products, gaskets, and friction products. 80% of imported asbestos is used for cement products such as asbestos boards and slates which are used for building materials, 7% for friction materials, and less than 3% for asbestos textile. Nearly all of the asbestos produced worldwide is chrysotile. Historically, chrysotile has accounted for more than 90% of the world's asbestos production, and it presently accounts for over 99% of the world production. Two types of amphiboles, commonly designated as amosite and crocidolite are no longer mined. With the onset of the health issues concerning asbestos in the late 1960s and early 1970s, world production and consumption began to decline during the 1980s. Japan used approximately 6.7 million tons between 1974 and 2004. About 67% of this amount was used since 1930.<br>     The relationship between workplace exposure to airborne asbestos fibers and respiratory diseases is one of the most widely studied subjects of modern epidemiology. The research efforts resulted in significant consensus that asbestos fibers can be associated with diseases of asbestosis, lung cancer and mesothelioma. Its carcinogenic nature, an overall lack of knowledge of minimum safe exposure levels, and the long latency for the development of lung cancer and mesothelioma are the main contributing factors to these controversies.
著者
市原 正隆
出版者
岐阜医療科学大学
雑誌
岐阜医療科学大学紀要 (ISSN:18819168)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.45-59, 2010
被引用文献数
1

本研究は,居住環境と医療・福祉の関係を居住福祉学の立場を踏まえながら,建築学・環境学や医学・福祉学等の知見を収集した資料を整理・分析し,居住環境整備が本来求めるべき新たな方向性を見出すことを目的とする。先行研究・関連研究については,引用文献・参考文献のとおりであるが,従来,居住環境の整備については,居住医療・福祉にかかわるサイドからの研究は少ない。本稿は,従来の物理的な整備による住宅環境の整備から,医療・福祉といった生活の中の生理的要素に焦点を当て,ICFの分類にしたがい,居住環境における様々な環境因子を分析しハード要因・ソフト要因を見直し,整備の統合を目指す。その結果,居住環境整備における様々な科学の環境因子の総合化,統合化の手法を,ハウスアダプテーションに見出すことができた。すなわち,すべての生活空間を福祉化するユニバーサルデザインときめ細かなパーソナルデザインを獲得しうる手法である。今後の課題は,わが国のハウスアダプテーション政策の進展とそのサービスを実行する社会システムの構築がいまだ発達途上にあることから,西欧諸国の実践に学びつつ,わが国の居住環境整備の個別具体的な実践の構造化が重要となる。
著者
小笠原 正幸
出版者
宇都宮大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

リンゴでは,伐採跡地に植えた苗木の生育は劣り,樹冠の拡大が悪いため思うように園地を充実できないことが多い.本研究では,改植障害を回避し樹勢をコンパクトに生育させ,省力的で高品質な果実生産のできる新たな栽培技術の可能性を検討した.供試品種は'ふじ'とし,伐根後定植5年目の地植区,伐根後植穴に遮根シートを埋設した定植5年目の遮根区,伐採後伐根はせず株間の中間に植穴を掘り,そこに不織布ポットを埋設した定植4年目の不織布区を設けた.調査方法は,生育特性,生育中の果実品質,収穫果の果実品質,収量,剪定時間および剪定枝重を調査した.生育特性についてみると満開時期は遮根区・不織布区で4月22日,地植区で4月24日,収穫時期は遮根区・不織布区とも満開後202日目,地植区においては満開後204日目であった.生育中の果実についてみると,果色は遮根区が優れた.収穫果実についてみると,硬度は遮根区で14.4ポンドと高かった.糖度は全処理区において15.3%前後,酸度においては,遮根区で0.227%と低かった.収量,剪定時間および剪定枝重についてみると,総収量は地植区で37.3kg,遮根区で22.9kgおよび不織布区では19.4kgとなったが,上物率からみると地植区で94%,不織布区で71%および遮根区50%と地植区が優れた.剪定枝生体重は不織布区で2,767gと多く,遮根区では140gと少なかった.剪定時間は地植区で19分24秒,遮根区で13分37秒と短くなった.以上の結果から地植区と比較すると,遮根区は遮根により根の伸長が抑制され,新梢長の早期停止による葉数の減少と葉面積の減少が着色を向上させたと思われる.不織布区はポットの側面は根が貫通する不織布のためか,地植区と同等の果実品質を示しており,樹勢の衰弱もなかった.以上のことから,根域の違いの影響は地上部の生育に顕著に現れたためであり,今後更なる検討を行い,本農場リンゴ園における改植更新からの早期成園化の適切な技術を明らかにして行く予定である.
著者
笠原 正雄 平澤 茂一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.444, pp.419-426, 2010-02-25

一般化された(u,u+v)構成法,g(u,u+v)構成法,に基づいて少数の情報記号数に対する最適2元線形符号の大きなクラスを構成している.そしてこの構成法に基づいて(3(2^m-1,m+1,3・2^m-1)符号,(3(2^m-1),m+1,3・2^m-1)符号,(3(2^m-1),m+1,3・2^m)符号を構成し,これらの符号がBrouwer-Verhoeffのテーブル(BVテーブル)に記載の最小距離にn≦125の範囲で一致し,それ故に最適2元線形符号であること且つn≧126の範囲においても最適2元線形符号であることが予測されることを述べる.さらに情報記号数k=2,符号長n,最小距離dの(n,2,d)線形符号および情報記号数3の(n,3,d)線形符号を与えている.そして(n,2,d)符号がn≦125の任意の符号長に対しBVテーブル記載の最小距離限界に一致すること,即ち理論的限界式を完全に満たすことを示している.同様に(n,3,d)符号もn=8+7μ(μ=1,2,…)を除く任意の符号長において(BVテーブル)理論的限界式を満たすことを示している.これらの符号nη≧126の範囲においても最適性を満たすことが強く予想される.さらに情報記号数k=4,5,6および7に対する最適符号を構成し,具体例を示している.
著者
今村 主税 金納 明宏 光岡 ちほみ 北島 俊一 井上 秀顕 岩原 正宜 松本 陽子 上岡 龍一
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.116, no.12, pp.942-950, 1996-12-25
被引用文献数
12

Remarkably high inhibitory effects of the hybrid liposomes composed of L-α-dimyristoyl-phosphatidylcholine (DMPC) and polyoxyethylenealkyl ether (C_<14> (EO)_n, n=6-8 and C_<12> (EO)_n, n=8-12)) on the growth of human lymphoma-human B-lymphocyte hybridoma (HF) cells in vitro were obtained. The hybrid liposomes composed of 90 mol% DMPC/10mol% C_<14> (EO)_n (n=6-8) or C_<12> (EO)_n (n=8-12) were more fluid as compared with 90mol% DMPC/10 mol% C_<14> (EO)_4 or C_<12> (EO)_n (n=4,23) hybrid liposomes on the basis of fluorescence polarization measurements. These results suggest that the inhibitory effects of the hybrid liposomes on the growth of HF cells should be related to the membrane fluidity. No toxicity to normal rats in vivo was observed in the experiment using 90mol% DMPC/10mol% C_<14> (EO)_7 or 90mol% DMPC/10mol% C_<12> (EO)_<12> hybrid liposomes.
著者
相島 健助 松尾 宇泰 室田 一雄 杉原 正顕
出版者
一般社団法人日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:09172246)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.97-131, 2007-06-25
被引用文献数
3

Convergence theorems are established with mathematical rigour for two algorithms for the computation of singular values of bidiogonal matrices: the differential quotient difference with shift (dqds) and the modified discrete Lotka-Volterra with shift (mdLVs). Global convergence is guaranteed under a fairly general assumption on the shift, and the asymptotic rate of convergence is 1.5 for the Johnson bound shift. This result for the mdLVs algorithm is a substantial improvement of the convergence analysis by Iwasaki and Nakamura. Numerical examples support these theoretical results.
著者
芦高 直哉 原 正之 反保 紀昭 黄 健 藪田 哲郎
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.75, no.752, pp.1000-1008, 2009-04-25
被引用文献数
2

Multimedia services such as an audio and visual media have been advanced rapidly. And now we can employ several multimedia services via the Internet in which audio and visual information is exchanged. In addition to them, physical force information is expected as the next multimedia service. However, there are several fundamental issues for interactive force telecommunication, which do not appear in the conventional teleportation. We study on basic issues of force telecommunication from human sensory aspect by using two haptic interfaces with 3' DOF that have an orthodox parallel linkage, and propose a hybrid control of Master/Slave system for force telecommunication between Human beings, which has position/force feedback loop directly. Results show that both hybrid and compliance control of Master/Slave System are suitable candidates for the force telecommunication system because both force and position serve functions are essential for the system. Moreover, recognition of an operator coordinate system is clarified to be important because of force communication strong interaction, which is discussed from human sensory aspect.
著者
ANATOL N. Kirillov 有木 進 中島 啓 野海 正俊 山田 泰彦 前野 俊昭 柏原 正樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度〜17年度にわたり採択された本研究課題について私ならびに研究分担者は優れた数学雑誌に14の論文を発表した。また、研究集会を自ら組織するとともに研究遂行上必要な打ち合わせのため、国内外の研究集会に参加した。討論や共同研究は定期的に行った。15年度の主なものとして、私とGuest氏(首都大学東京)が組織した国際ワークショップ「Quantum Cohomology」(於:京大数理研6月実施)があげられる。このワークショップにはこの分野での著名な数学者中島啓氏(京都大・理学研究科)、齋藤恭司氏(京都大・数理研)、B.Kim(S.Korea)、A.-L.Mare(Canada)、A.Buch(Sweden)をはじめ国内からもおよそ50人の参加者があった。16年度の主なものとして、私と野海氏(神戸大)が組織した国際ワークショップ「Tropical algebraic geometry and tropical combinatorics」(於:京大数理研8月実施)があげられる。このワークショップには「トロピカル数学」において世界をリードする数学者、A.knutson(UC Berkeley, USA)、E.Miller(Univ.ofMinnesota, USA)、G.Mikhalkin(Toronto Univ., Canada)、D.Speyer((UC Berkeley, USA)、O.Viro(Uppsala Univ., Sweden)、柏原正樹(数理研)、尾角正人(阪大)、山田泰彦(神戸大)をはじめとして約60名の参加者があった。両ワークショップともに盛況で日本におけるトロピカル数学と量子コホモロジーに対する関心を高めることとなった。その他、中国南海大学での国際ワークショップ「Combinatorics, Special Functions and Physics」に招聘され、講演を行った。本研究課題の主目標の一つである放物型コストカ多項式については一般化されたsaturation conjectureを証明した他、放物型コストカ多項式やSchur関数の新しい興味深い性質を示した。Schubert Calculusと非可換微分法の関係についてはいくつかの重要な結果が、私と前野氏によって示された。特にある種の非可換代数多様体に対し平坦接続の生成する代数を記述することに成功しB_n型非可換Schubert多項式のMonk公式を証明した。
著者
榊原 正幸 井上 雅裕 佐野 栄 堀 利栄 西村 文武
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,カヤツリグサ科ハリイ属マツバイなどの有害金属に対する重金属超集積植物を用いたファイトレメディエーション技術を実用化するため,スクリーニング調査,ラボ実験,室内・温室栽培実験,フィールド実験およびエンジニアリング設計ならびに経済性評価を行った.その結果,マツバイを用いたファイトレメディエーションが重金属汚染された土壌・水環境の浄化に有効であることが明らかになった.
著者
金子 猛 磯部 潔 笠原 正男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.46-50, 2003-01-01
参考文献数
9
被引用文献数
4

術前腹部CTで石灰化を伴う小腸腫瘤性病変を認め,開腹手術で小腸間膜に異所性膵組織を認めた1例を報告する.症例は54歳の男性.1996年9月25日より腹痛出現し,入院精査で小腸に石灰化を伴う腫瘤性病変をCTで認めた.保存的治療で腹痛軽快するが,2週間後のCTでも縮小した腫瘤性病変を小腸に認めた.小腸造影では異常所見を認めなかった.1996年11月7日,再び腹痛が出現し救急外来受診・CTでは前回と同様に小腸壁の肥厚と石灰化病変を認めた.開腹手術を施行し,トライツ靱帯より50cm直肛門側に,小腸に接する小腸間膜内に4cm大の腫瘤性病変を認めた・小腸とともに切除した.H.E染色および特殊染色において腺房.1組織,導管とランゲルハンス島を検索され,HeinrichI型の異所性膵組織と診断された.好酸球浸潤を認め,異所性膵組織が膵炎を引き起こしたものと考えられた.
著者
塩谷 雅人 河本 望 藤原 正智 JOACHIM Urban
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

成層圏における熱バランスやオゾン化学に対して決定的な影響を与える水蒸気の変動について調べた. 特に熱帯域に注目して, いくつかの衛星観測データと定点観測ながら精度の高い水蒸気ゾンデデータとの比較・検討をおこない, 衛星観測のデータ質についての知見を得た. さらに, 熱帯下部成層圏における水蒸気混合0比の過去約15年にわたる年々変動について見たところ, さまざまな変動要因は存在するものの, 全体としては増加傾向を示すことがわかった.