著者
中村 達 古川 誠一
出版者
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

寄生蜂が様々な方法で寄主の免疫作用に対抗し、寄生に成功するのが知られているのに対して、同じ捕食寄生性昆虫である寄生バエについてはほとんど研究されていない。本研究では、ヤドリバエがどのように寄主免疫作用をくぐり抜けて寄生成功するのか明らかにするため、寄主体内での幼虫周辺や寄主の変化について経時的に調査した。寄主に侵入後、ハエ幼虫はバリア構造物と名付けた寄主組織からなる構造物に包囲されることがわかった。このバリア構造物は内側が寄主の血球由来、外側が脂肪体細胞由来で、ハエ幼虫はこの構造により、寄主によるメラニン化などの免疫反応から逃れていると考えられた。
著者
川瀬 貴博 古瀬 充宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-13, 2019

<p><tt>腸内細菌叢は、迷走神経刺激、免疫系あるいはホルモン分泌を介して、宿主の脳機能を変化させて行動を調節する。近年、我々は腸内細菌が宿主脳内における遊離アミノ酸濃度にも影響を及ぼすことを報告した。乳酸菌の機能性に関する報告が増す一方で、学習能力に対する役割は不明である。加齢に伴う認知機能不全は、ヒト、イヌまたネコにおいても問題視されている。本研究では、</tt><i>Lactobacillus delbrueckii </i><tt>subsp. </tt><i>bulgaricus 2038</i><tt> 及び </tt><i>Streptococcus thermophilus 1131</i><tt> 乳酸菌株を利用したヨーグルトの長期投与が、マウスの空間記憶や大脳皮質における遊離アミノ酸及びモノアミン濃度に及ぼす影響を調査した。その結果、ヨーグルトの長期投与が8方向放射迷路試験における空間参照記憶のスコアを改善し、大脳皮質中のセロトニン、L-アラニン、D-およびL-セリン、L-バリン、L-イソロイシン濃度を増加させた。以上より、ヨーグルトを長期摂取することで、大脳皮質における数種のアミノ酸やセロトニンの代謝が変化し、マウスの</tt><tt>空間参照記憶が改善し得る可能性が推察された。</tt></p>
著者
古荘 義雄
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、「電荷支援型水素結合」と呼ばれる極めて強い非共有結合的相互作用を用いて、新たなソフトマテリアルを構築する方法論の開拓に取り組んだ。特に、合成高分子を基盤とする超分子ポリマーゲルの構築に集中的に取り組み、アミジン基をもつポリマーとカルボキシ基をもつポリマーを溶液中で混合したのちに溶媒を留去するだけで簡単に、電荷支援型水素結合の三次元ネットワーク構造を有する超分子ポリマーゲルが得られることを見出した。これらの超分子ポリマーゲルは温度変化に対して可逆的に粘弾性を変化させ、また、多くの場合、低温では流動性を示さず、貯蔵弾性率が1 MPa以上のゴム状領域を示すことがわかった。
著者
浅田 春比古
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.500-505, 1983-06-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
1 6

Robot manipulators and mechanical arms have complicated behavior including interactions among multiple joints, nonlinear effects such as Coriolis and centrifugal forces, and varying inertia depending on the arm configuration. In this paper, a new approach to the geometrical representation of manipulator dynamics is presented. The inertia ellipsoid, which is used to represent dynamic characteristics of a single rigid body, is extended to a series of rigid bodies in order to represent the manipulator dynamics. The geometrical representation of the generalized inertia ellipsoid (GIE) represents the characteristics of the manipulator as a whole. One can understand the complicated inertia effect and nonlinearity of multi-degree-of-freedom motion by simply investigating the GIE configuration. In the latter half of the paper, the presented method is applied to aid the design of a mechanical arm, in which dimensions of an arm structure and its mass distribution are optimized through the evaluation and graphical representation of the arm dynamics.
著者
フォルクマー グレーフ 古屋 悦子 西風 脩
出版者
一般社団法人 日本臨床化学会
雑誌
臨床化学 (ISSN:03705633)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.182-188, 1977

The rate of hydrolysis of steroid glucuronides (poregnanediol-, and 17-hydroxycorticosteroid- glucuronides) is increased by an addition of sodium sulfate to the incubation medium, when usinng &beta;-glucuronidase preparations from bovine liver.<BR>But, sodium sulfate inhibits the enzyme hydrolysis of pregnanediol-, and estriol-glucuronides with preparations from Helix pomatia and from E. coli.<BR>The rate of hdrolysis of nonsteroid glucuronides (P-nitrophenyl-and phenolphthaleinglucuronides) is increased by sodium sulfate when using Preparations from bovine liver and Helix pomatia, it is inhibited with preparations from E. coli.<BR>The preparation from Helix pomatia consists of four glucuronidase fractions, none of which hydrolyzes steroid glucuronides specifically.
著者
瀬古 潤一
出版者
関東学院大学法学部教養学会
雑誌
関東学院教養論集 = Journal of arts and sciences (ISSN:09188320)
巻号頁・発行日
no.27, pp.95-111, 2017-01

「J・アルフレッド・プルーフロックの恋歌」と「風の夜の狂詩曲」は「ある貴婦人の肖像」、「前奏曲集」とならんでT・S・エリオットの初期詩篇の代表作であり、1911年、パリ遊学中に書き上げられた。本稿では両作品におけるエドガー・アラン・ポオの存在について論じることにする。特に注目するのは「モルグ街の殺人事件」との関係である。 エリオットはパロディやアリュージョンを駆使した特異な文学技法をどこで学んだのか。これはエリオット文学の根本、さらには、モダニズム文学の根本に属する問題であるにもかかわらず、いまだに結論は出ていない。ここにポオがどの程度関与したのか。エリオット研究においてポオの扱いは小さい。ポオ研究の領域ではすでにエリオットの詩論がポオの大きな影響下で書かれたという指摘がなされている。だが、この指摘に対するエリオット専門家の反応は鈍い。詩論ばかりか、エリオットがその特徴的な文学技法をある程度ポオから学んだ可能性が高い。ポオとの関係を探ることで、エリオット文学の核心に迫ることが出来るかもしれない。エリオット研究においてまだほとんど手つかずの問題である。そもそも、小説とエリオットの関係自体がこれまであまり問題になってこなかった。アメリカ文学者との関連についても議論は手薄である。 本稿の分析はあくまでも手始めである。初期詩篇におけるポオの存在を整理し、今後の探求の足がかりにすることが目的である。一部内容の重なる「J・アルフレッド・プルーフロックの恋歌」及び「風の夜の狂詩曲」と主としてポオの「モルグ街の殺人事件」との関連を指摘することになる。この作業にかかる前に、やや詳細にグローバー・スミスの論考を検討する。
著者
荻原 彰 佐古 裕史 寺島 隆志
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.177-187, 2018 (Released:2018-10-27)
参考文献数
9

The purpose of this study was to clarify the roles of stakeholders (such as teachers or researchers) in the development of competency of high school students through a case study of school science club activities.For this purpose, we investigated students and their teacher at a high school science club based on the Modified Grounded Theory Approach. Analysis of the results clarified the following points.1. The teacher set up a framework, but made students think about the detailed plan by themselves.2. The teacher imposed strict guidelines about adopting a sincere attitude and rigorous methodology toward research as well as encouraging students to select methods that met the purpose of the research.3. The teacher provided an opportunity for students to communicate with researchers and enlighten the public.4. Researchers provided research guidance and helped to motivate the students.5. Students of other schools served as good models for the students.6. Outreach activities offered a chance for students to enrich their knowledge and devise means of communication.
著者
坂本 清子 綱脇 恵章 津波古 充朝 田中 和男 小林 正光
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1990, no.4, pp.363-369, 1990
被引用文献数
1

五酸化ニリンと水酸化アルミニウムとの反応によるリン酸アルミニウムの生成における3種の結晶形の異なる五酸化ニリン(H型,0型および0'型)の反応性の相違,および水酸化アルミニウム分子内のヒドロキシル基がリン酸アルミニウムの生成におよぼす効果について,粉末X線回折,示差熱分析および熱重量分析法を用いて検討した。1.生成するリソ酸アルミニウムの種類およびその生成量は,五酸化ニリソと水酸化アルミニウムの混合割合(R=P205A1(OH)3),加熱温度および加熱時間によって異なった。すなわち,R=0.5ではオルトリン酸アルミニウムAIPO4のberliniteとcristobalite型およびメタリン酸アルミニウムAl・(PO3)3のA型,R=1.5では三リン酸二水素アルミニウムAIH2P3O10.のI型およびA1(PO3)3のA型とB型,R=3ではA1(PO3)3のA型.B型およびE型が生成した。2・水酸化アルミニウムに対する五酸化ニリンの反応性は,H型五酸化ニリンが一番高く,次にO'型,0型五酸化ニリンの順であった。この傾向は五酸化ニリンの加水分解速度の順序と一致した。3.水酸化アルミニウム分子内のヒドロキシル基は五酸化ニリンの加水分解に寄与し,それは五酸化ニリソとα-アルミナとの反応においてあらかじめ添加した水分と同様に重要な役割を果した。
著者
津野 陽子 尾形 裕也 古井 祐司
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.291-297, 2018-08-31 (Released:2018-08-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的:従業員の健康・医療の問題を経営課題と捉え,経営戦略に位置付ける「健康経営」が推進されている.健康経営とは,健康と生産性のマネジメントを同時に行う手法である.健康と生産性の関連および職場要因と生産性に関する研究動向から健康経営と働き方改革について考察する.内容:職場における健康関連の生産性指標として,病欠,病気休業を指すアブセンティーイズムと何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し,業務遂行能力や生産性が低下している状態であるプレゼンティーイズムがある.この二つを合わせて生産性と捉えた場合,特にプレゼンティーイズムの損失が大きいことが注目されている.生産性と健康状態の間に相関があることを示す研究蓄積があり,健康リスクが多くなるほど生産性が低下することが示されている.健康と生産性の関連における研究枠組みには職場要因が含まれており,職場要因は生産性指標に直接的・間接的関連の両方を有していることが示されている.結論:健康と生産性を合わせてマネジメントするためには,職場要因への介入が必須であり,健康経営推進のためには働き方改革と一体として取り組むべきである.働き方改革といっても,各企業・組織の特性によって取り組むべき内容は異なる.各企業・組織において健康課題を可視化し,職場環境や仕事特性との関連性をデータを活用し検証することで,有力なエビデンスを持ってPDCAサイクルを回していくことが期待される.
著者
山田 淳 櫻井 高太郎 栗田 紹子 山中 啓義 賀古 勇輝 嶋中 昭二 浅野 裕
出版者
市立室蘭総合病院
雑誌
市立室蘭総合病院医誌 = Journal of Muroran City General Hospital (ISSN:02892774)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-20, 2003-03

統合失調症は、患者の社会生活にも大きな影響を与えてしまうことの多い疾患であるが、その具体的な状況に関して調査した報告は少ない。今回は、平成14年6月の時点で当科で治療中の統合失調症患者の病状・経過・生活状況などについて調査した。協力が得られたのは474人で、男性242人、女性が232人であった.治療形態としては外来が376人、入院が98人であった.調査結果からは、統合失調症は10歳代半ばから30歳代半ばまでに好発して就学の妨げとなり、その後も再発を繰り返して複数回、長期の入院を必要とし、そして病状が落ち着いたとしても残遺症状を残し、就労、結婚の大きな障壁になっていることが改めて確認された。このような状況を改善する為には、退院や就労を支援する社会的資源の充実など、行政レベルでなければ解決できないと思われる面も多かった。平成14年12月24日に障害者基本計画が閣議決定され、それに沿って障害者施策推進本部が定めた重点施策実施5カ年計画では、精神障害者に対するホームヘルパー、共同住居、授産施設などを充実させていく事がもりこまれている。今回の、当院にて治療中の統合失調症患者の調査結果から導き出された課題に合致する点も多く、これらの計画が実行されることにより、統合失調症患者のハンディキャップが少しでも緩和されることを期待したい。
著者
古家 泰三
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.125-134, 1990-04-15 (Released:2017-10-04)

この究明を通じて,日本の火災統計のうちで,「死因別の火災による死者数の推移」は,その集計過程に問題点があると指摘した, この分析結果から,焼死者発生の問題点は,集積した易燃性可燃物の急激な延焼拡大である.建物内に合板内装材,プラスチック,紙類,繊維類が集積していると,これらに火源から着火して急激に拡大 する。 このような急激な延焼拡大は,必然的に酸素不足の不完全燃焼になるので,出火建物内に高濃度の一酸化炭素を含んだ煙が充満する。この煙に取りまかれた滞在者は,短時問でCO中毒になり,行動不能 で倒れ,避難することができなくなる. この事例研究から,火災による死者発生要因を究明するうえで,消防が行う火災原因調査事務は,重要な役割を果たすことができる、そのためには,調査過程では監察医による死体検案結果をぜひとも参考にすべきである.また,焼死者の煙中における,短時間での行動不能原因についても,究明されるべ きである.