著者
古賀 道明
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1322-1324, 2013-11-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
4
被引用文献数
2 3

ビッカースタッフ型脳幹脳炎(BBE)の発症機序として,先行感染にともない誘導された自己免疫的機序がギラン・バレー症候群と同様に推測されている.一方で,三主徴(眼球運動障害,運動失調,意識障害)が急性進行性に一過性の経過でみられるという臨床像で規定される“症候群“としても捉えられており,ことなる病因に起因する症例も一定の割合でふくまれることが予想される.筆者らが世界的にもはじめておこなった,BBEに関する本邦での全国疫学調査では,BBEの年間発症数などの疫学的な情報に留まらず,BBEの病因の多様性を示すデータがえられており,その知見を中心にBBEを概説した.

1 0 0 0 共古日録抄

著者
山中共古 [著] 廣瀬千香編
出版者
青裳堂書店
巻号頁・発行日
1981
著者
古川 薫 吉崎 修
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.291-298, 1978-05-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

ε-カプロラクタムの単純な加圧重合によるナイロン6の連続製造法において, 初期組成と重合条件による反応生成物の特性との定量的相関を見いだすため本研究を行った. 粘度安定剤としては酢酸又はブチルアミン, あるいはこれらの両者を0.05モル比以下で用い, 水分量0.3モル比以下とともに密閉容器中でラクタムを重合した. 十分平衡に達した生成物の物性を分析した. 粘度安定剤とポリマー末端基との間に等反応性を仮定して主反応の平衡定数を求めた. この定数は上の組成の範囲では組成による変化はほとんど見られなかった. 平衡での直鎖状分子数ST, 数平均重合度P, および残存ラクタム量xが平衡定数と初期組成を用いて理論的に導かれた. 得られた理論値は実測値によく一致し, 粘度安定剤と分子末端基の等反応性を仮定した平衡反応の取扱いが妥当であることが示された.
著者
古野 真実子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
2019-10-10

はじめに 取り組みの背景 静岡県伊豆の国市は伊豆半島の付け根に位置している(図1)。2019年4月1日現在,高齢化率:32.6%(地区幅:25.5〜52.6%),65歳以上ひとり暮らし世帯率:18.2%,高齢者のみ世帯率:31.5%,高齢者に占める要介護認定率:13.9%で,65歳以上の12人に1人は認知症(介護認定を受けて把握している者のみ)である。 また,1つの市とはいえ,市街地・中山間地・山間地と区分けられ,人口・産業・移動問題と地域課題が地区により分化されている特徴がある。そのため,地区課題は市内51地区(住民自治組織単位)により全く異なり,個別性を持った対策が各地区単位で必要となっている。 静岡県伊豆の国市では,地域コミュニティ再生のきっかけとして,市内に「手づくりベンチ」を設置するベンチプロジェクトを進めてきた。「地域の見守りの目の発掘」やベンチの製作者と活用者との出会い・交流も意図したこの取り組みを紹介する。
著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 布谷 美樹 近藤 克征 加古原 彩 鈴木 俊明 森原 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.A1290, 2008

【はじめに】<BR>肩関節疾患症例において肩甲上腕リズムが破綻している症例を頻繁に経験する。Ludewigらは僧帽筋上部線維の過剰収縮が肩甲骨の異常な運動を引き起こすとしており、理学療法では僧帽筋上部線維の過剰収縮を抑制することが重要である。一方、我々は上肢挙上に伴う肩甲骨の安定化と上方回旋機能の役割として僧帽筋下部線維が重要であることを報告してきた。よって上肢挙上時の僧帽筋各線維の協調した肩甲骨の上方回旋機能を改善させていくには過剰収縮している僧帽筋上部線維の抑制と僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促す方法を考慮していく必要性がある。 <BR>そこで、我々は肩甲胸郭関節の安定化に対するアプローチとして運動肢位に着目している。今回、側臥位という運動肢位で肩関節外転保持を行った時の僧帽筋各線維の筋活動を筋電図学的に分析し、肩甲胸郭関節の安定化に対する理学療法アプローチを検討したので報告する。<BR>【対象と方法】<BR>対象は健常男性5名両側10肢(平均年齢29.0±4.2歳、平均身長177±9.3cm、平均体重68.8±7.2kg)である。対象者には事前に本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。測定筋は僧帽筋上部線維、中部線維、下部線維とし、筋電計myosystem1200(Noraxon社製)を用いて測定した。電極貼付位置は、Richard(2003、2004)、下野らの方法を参考にした。具体的な運動課題は側臥位において肩関節を30°、60°、90°、120°、150°外転位を5秒間保持させ、それを3回施行した。3回の平均値を個人データとした。分析方法は座位での上肢下垂位の筋電図積分値を求め、これを基準に各角度での筋電図積分値相対値(以下、相対値)を算出した。統計処理には角度間での分散分析(tukey多重比較)を行った。<BR>【結果と考察】<BR>外転角度の増大に伴い僧帽筋上部、中部線維の相対値は漸減傾向を、下部線維の相対値は漸増傾向を示した。上部、中部線維は30°と比較して120°以降有意に減少し、下部線維は30°~90°と比較して150°で有意に増加した。側臥位での肩関節外転保持は90°を境に抗重力下から従重力下へと変化する。このことから90°以降では上肢自重に伴い肩甲骨には挙上方向に対する制動が必要になると考えられる。90°以降では肩甲骨は上方回旋位を呈していることから、鎖骨、肩峰、肩甲棘上縁に停止する上部、中部線維の筋活動は減少し、拮抗作用を有する下部線維が肩甲骨の制動に関与したのではないかと考える。 <BR>臨床上、上肢挙上角度の増大に伴う、僧帽筋上部線維の過剰収縮と僧帽筋下部線維の収縮不全によって肩甲骨の上方回旋不良が生じている症例に対し側臥位での外転120°以降では僧帽筋上部線維の抑制が、外転150°保持では僧帽筋上部線維の抑制及び僧帽筋下部線維の筋活動促通が可能であることが示唆された。<BR><BR><BR>
著者
深川 智恵 古土井 春吾 高橋 英哲 山田 周子 渋谷 恭之 古森 孝英
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.605-608, 2010-10-20 (Released:2013-10-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Lemierre syndrome is a potentially life-threatening disease caused by an acute oropharyngeal infection with secondary septic thrombophlebitis of the internal jugular vein, frequently associated with abscess formation in distant organs.We report the case of a 78-year-old woman who received surgical therapy, chemotherapy, and radiation therapy for malignant lymphoma in 2001. She visited our hospital because of a swelling and pain of the left submandibular region in August 2009. The patient was immediately hospitalized to control the pain and infection. PET images showed tracer uptake in the lung. Bilateral multiple septic emboli of the thorax were detected on CT. On the basis of these findings, Lemierre syndrome was diagnosed. The patient was treated with antibiotics intravenously, and surgical drainage was performed. All symptoms improved, and she was discharged after 32 days.
著者
嶌本 樹 古川 竜司 鈴木 圭 柳川 久
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 = Mammalian Science (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.201-206, 2014

タイリクモモンガPteromys volansは,フィンランドやエストニア,韓国などでは森林分断化の影響による個体数の減少が危惧されている.北海道の十勝地方においても,過去の森林分断化によって生息地が減少した上に,現在でもさらに生息地の分断化・減少が進行している.本種に対する森林分断化の影響を評価するには,生息確認方法を確立し,生息状況をモニタリングする必要がある.本研究では,糞による簡便かつ効率的な生息確認方法を確立するために,糞が頻繁に発見される場所の特徴や糞の発見効率を検討した.11ヶ所の樹林地(面積0.42–13.69 ha)において,それぞれ10 mの調査ラインをランダムに12本引き,両側4 m(片側2 m)の範囲で糞の有無を確認した.全ての樹林地で本種の糞が発見され,1ヶ所の樹林地あたりの発見糞塊数は平均9.7個,発見ライン数は平均6.2本であった.糞は胸高直径が太い樹木の近くでよく発見され,胸高直径24 cm以上の樹木から20 cm以内の範囲で糞を探すことが効率的であることがわかった.一方で,樹林面積は糞の発見ライン数に影響しなかった.そのため,樹林面積の大きさによって,調査努力量を変える必要はないと考えられた.本調査の結果から,面積に関わらず1ヶ所の樹林地につき5本程度のラインを引いて糞を探すことで,簡便かつ効率的に本種の生息を確認できることがわかった.
著者
嶌本 樹 古川 竜司 鈴木 圭 柳川 久
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.201-206, 2014 (Released:2015-01-30)
参考文献数
25

タイリクモモンガPteromys volansは,フィンランドやエストニア,韓国などでは森林分断化の影響による個体数の減少が危惧されている.北海道の十勝地方においても,過去の森林分断化によって生息地が減少した上に,現在でもさらに生息地の分断化・減少が進行している.本種に対する森林分断化の影響を評価するには,生息確認方法を確立し,生息状況をモニタリングする必要がある.本研究では,糞による簡便かつ効率的な生息確認方法を確立するために,糞が頻繁に発見される場所の特徴や糞の発見効率を検討した.11ヶ所の樹林地(面積0.42–13.69 ha)において,それぞれ10 mの調査ラインをランダムに12本引き,両側4 m(片側2 m)の範囲で糞の有無を確認した.全ての樹林地で本種の糞が発見され,1ヶ所の樹林地あたりの発見糞塊数は平均9.7個,発見ライン数は平均6.2本であった.糞は胸高直径が太い樹木の近くでよく発見され,胸高直径24 cm以上の樹木から20 cm以内の範囲で糞を探すことが効率的であることがわかった.一方で,樹林面積は糞の発見ライン数に影響しなかった.そのため,樹林面積の大きさによって,調査努力量を変える必要はないと考えられた.本調査の結果から,面積に関わらず1ヶ所の樹林地につき5本程度のラインを引いて糞を探すことで,簡便かつ効率的に本種の生息を確認できることがわかった.
著者
亀谷 裕志 金井 哲男 Jianliang DENG 堤 千花 古関 潤一
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.19-30, 2010 (Released:2013-03-31)
参考文献数
14
被引用文献数
4 2

2004年新潟県中越地震で斜面崩壊が生じた2地点において, すべり面の力学特性の評価に重点をおいた調査を行い, その結果に基づき崩壊メカニズムについて考察した. いずれの崩壊地点も地層傾斜15~20°程度の流れ盤の緩い斜面であり, 平滑に近い層理面に沿って弱面が発達していた. 弱面を含む不攪乱試料を用いた室内試験では35~40°の内部摩擦角が得られ, 粘着力は不飽和状態では10kPa程度で飽和状態では0kPaであった. これらの強度に基づく安定解析によれば, 常時の水位変動に対して斜面は十分に安定であったこと, 地震前の降雨による飽和化が崩壊に寄与したことがわかった. 一方, 斜面が長距離移動したという崩壊の形態を考えると地震動によって弱面の強度が低下したことが想定された. 室内で実施した単純せん断試験によれば載荷方向の反転を伴う繰り返し荷重を与えることにより弱面の強度が低下することが確認された. したがって, 崩壊の原因のひとつとして地震による繰り返し荷重が緩い斜面に作用することにより荷重の方向が反転し, その影響により弱面の強度が低下したことが考えられる.
著者
吉野 純 中田 勇輝 古田 教彦 小林 智尚
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_493-I_498, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1

台風1610号は,2016年8月30日午後6時頃に北西進することで統計開始(1951年)以降初めて東北地方太平洋側に上陸した.本研究では,このような特異な進路をとった台風1610号の進路形成メカニズムを解明することを目的として,渦位部分的逆変換法に基づいて,台風周辺の擾乱が励起する指向流ベクトルを渦位偏差毎に分解することで推定した.台風1610号が岩手県大船渡市付近に上陸した時間帯には,台風の西側に位置した上層の寒冷渦が作り出す南東風に加えて,それに伴う積乱雲活動(非断熱加熱)により発達した下層低気圧(湿った正渦位偏差)が作る南風や上層高気圧(湿った負渦位偏差)が作り出す東風が同時に作用することで,約20 m/sの南東風の指向流ベクトルにより北西進したことが明らかとなった.
著者
古松 丈周
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.315-329, 2017-12-10

本稿は、ポール・M・スウィージーの資本主義発展論を、彼のローザ・ルクセンブルク論の検討を通して明らかにするものである。ローザ・ルクセンブルクの『資本蓄積論』は、資本主義の枠内での資本蓄積の可能性を否定し、剰余価値実現のための需要を非資本主義世界に求めた。この理論は多くのマルクス主義者によって否定されてきたが、スウィージーはこの理論を否定しながらも、彼女を高く評価し、彼女の問題意識を引き継ぎながら自らの理論を構築していった。初期の主著『資本主義発展の理論』のローザ・ルクセンブルク論、そしてローザ・ルクセンブルク『資本蓄積論』のイタリア語版によせた序文にはルクセンブルクに対する批判とともに、彼女の問題意識をどう引き継ぐかという問題意識が示される。そして『資本主義発展の理論』の16章「世界経済」では、ルクセンブルクの理論を世界経済分析に発展させ、非資本主義地域が資本主義地域の資本輸出の対象となり、資本蓄積の源泉となることを明らかにしたのである。
著者
古川 誠志 斉藤 仲道 丸山 義隆 小田 東太
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.1091-1094, 1996-08-10

薬剤性膵炎のなかでエストロゲン製剤の占める割合は約5%であり,また高脂血症が膵炎に合併する頻度は4〜53%と報告されている.なかでもIV型高脂血症の患者にエストロゲン製剤投与後に急性膵炎を発症している報告が多い1).近年トリグリセライドと凝固線溶系,動脈硬化との関係やエストロゲン投与がもたらす血清脂質変化が明らかにされた.本症例は高トリグリセライド血症の患者に起きたエストロゲン誘発性急性膵炎であるが,エストロゲン,高トリグリセライド血症.膵炎の関係を考えるうえで興味ある症例と思われた.また本例を通じて,エストロゲン製剤を多用する産婦人科領域でもその適切な使用と代謝に及ぼす影響についての調査の必要性を感じた.
著者
田内 広 和久 弘幸 屋良 早香 松本 英悟 岩田 佳之 笠井(江口) 清美 古澤 佳也 小松 賢志 立花 章
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.79, 2010 (Released:2010-12-01)

高LET放射線に特異な生物現象として、体細胞突然変異や細胞癌化において線量率が非常に低くなると逆に生物影響が大きくなるという逆線量率効果が知られている。この現象は1978年にHillらによって初めて報告されたものであるが、その原因はいまだに明らかになっていない。我々は、マウスL5178Y細胞のHPRT欠損突然変異における核分裂中性子の逆線量率効果が、低線量率照射による細胞周期構成の変化と、G2/M期細胞が中性子誘発突然変異に高感受性であることに起因することを報告し、さらに放医研HIMACの炭素イオンビーム(290 MeV/u)を用いて同様の実験をおこなって、放射線の粒子種ではなくLETそのものがG2/M期細胞の突然変異感受性に大きな影響を与えていることを明らかにした。また、各細胞周期において異なるLETによって誘発された突然変異体のHprt遺伝子座を解析した結果、G2/M期細胞が高LETで照射された時に大きな欠失が増加することがわかり、G2/M期被ばくではDNA損傷修復機構がLETによって変化していることが示唆された。さらに、正常ヒトX染色体を移入したHPRT欠損ハムスター細胞を用いた突然変異の高感度検出系を開発し、総線量を減らすことによってHIMACのような限られたマシンタイムでの低線量率照射実験を可能にした。実際、この系を用いてLET 13.3 KeV/μmと66 KeV/μmの炭素イオンビーム(290 MeV/u)で突然変異の線量率依存性を比較した結果、66 KeV/μmで明らかな逆線量率効果が認められたのに対して13.3 KeV/μmでは逆線量率効果は認められなかった。これらのことから、高LET放射線による逆線量率効果は低線量照射による細胞周期の部分同調とG2/M期における高LET放射線損傷に対する修復機構の変化に起因していると考えられる。