著者
名古屋 春満 武田 英孝 傳法 倫久 加藤 裕司 出口 一郎 福岡 卓也 丸山 元 堀内 陽介 棚橋 紀夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.59-66, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
23
被引用文献数
7 5

2002年8月から2009年10月までの間に埼玉医科大学国際医療センター・埼玉医科大学病院を受診した特発性頸部内頸動脈解離症例10例(年齢は36~70歳,男性8例,女性2例)について臨床的検討を行った.診断にはSASSY-Japan脳動脈解離ワーキンググループの「脳動脈解離の診断基準」をもとに,頭部MRI・MRA,3D-CTA,脳血管撮影,頸動脈超音波検査などの検査を用いて行った.脳虚血発症例は8例,頸部痛のみの症例が1例,無症候性が1例であった.発症時に頭痛または頸部痛を伴った症例は4例(40%)であった.10例中4例で発症後3カ月以内に画像上解離血管の改善が認められた.発症3カ月後のmodified Rankin Scale(mRS)は7例がmRS 1であり,3例がmRS 2と全例で転帰が良好であった.平均観察期間17.2カ月において,全例で脳卒中の再発を認めなかった.本邦においても特発性頸部内頸動脈解離症例は決して稀ではなく,内頸動脈の閉塞または狭窄を来した症例に遭遇した際には,常に本疾患を念頭においた複数の検査を可及的速やかに行う必要がある.
著者
石田 貴文 古澤 拓郎 大橋 順 清水 華
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

インドネシアで新たな公衆衛生的課題となっているストレスやうつ病を進化医学的に分析し、リスク要因としての遺伝的多型と、社会の個人主義化の影響を明らかにする研究である。セロトニン・トランスポーター遺伝子やオピオイド受容体遺伝子等の多型がうつ病やストレスと関係することが知られているが、最近の研究によればこのリスク型はアジアの集団主義的社会に多く、そのような個人が個人主義社会に移住することや、人間関係の急変により疾病を発症する可能性が指摘されている。個人主義化が進むインドネシアにおいて、国立中核病院等を拠点としたケース・コントロール研究と、地域社会での横断的研究を用いた研究デザインにより、この因果関係を検証する画期的研究であると同時に、その成果から健康社会の在り方を提案する社会実装型研究である。現在、マカッサルのハサヌディン大学と共同研究を推進しているが、他の研究協力校を開発するため、スマトラのメダンを訪問した。また、トラジャ族を調査対象集団としているが、マカッサルの南西に住むカジャン族の集落の現状を視察した。セロトニントランスポーターをコードするSCL6A4遺伝子のプロモーター領域内に位置する挿入欠失多型(5-HTTLPR)は、うつ病との関連が、μオピオイド受容体をコードするOPRM1 遺伝子エクソン1に位置するアミノ酸置換(rs1799971) は統合失調症との関連が報告されている。インドネシア人患者サンプル46名について、SCL6A4遺伝子の5-HTTLPR 多型をPCRと電気泳動 により、OPRM1 遺伝子のrs1799971をTaqMan法により遺伝子型を決定した。一方、ストレス指標としてテロメア長をPCRで定量した。
著者
古川 顕
出版者
京都大學經濟學會
雑誌
経済論叢 (ISSN:00130273)
巻号頁・発行日
vol.166, no.5, pp.337-371, 2000-11
著者
古山 彰一 藤島 政樹 竹内 克輝 永井 孝 奥村 浩
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.491-496, 2019-07-05 (Released:2019-08-03)
参考文献数
7

比色法を用いた水質調査をより簡便にするために,スマートフォンなどのスマートデバイスのアプリケーションを含めた人工知能による濃度判定を行うシステム開発を行った.色の同定,濃度算出に人工知能技術を利用することで,外光などを遮断するための冶具と色彩—濃度検量線の作成を不要とした.また,個々のスマートデバイス上で濃度測定を行うのではなく,ネットワーク上に構築した人工知能サーバによって濃度判定を行うこととした.このことで個々のデバイスにインストールされるアプリケーションの機能を最小限とし機種依存性を極力排除することを試みた.さらに観測位置情報も同時に取得・保存することで,広域環境調査に有効な水質測定システムになりうる可能性を示した.
著者
長峰 孝文 中澤 宗生 古谷 修 伊藤 稔 小堤 恭平
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.331-338, 2007 (Released:2008-02-25)
参考文献数
17

645の堆肥について,食中毒の原因となる代表的な細菌であるサルモネラおよび志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157の検出を行った.堆肥化の過程によって損傷を受けたそれらの細菌を賦活化させるため,選択培地による試験の前に,堆肥サンプルを緩衝ペプトン水とともに37℃にて18~24時間インキュベートした.サルモネラが検出された堆肥は8件(1.2%)であり,3件から分離された株が公衆衛生上問題のある血清型であった.STEC O157は,検出されなかった.堆肥からサルモネラが検出された原因は,堆肥生産の際の低い処理温度もしくは堆肥化後の原料の混入が考えられた.
著者
河津 弘二 槌田 義美 本田 ゆかり 大田 幸治 緒方 美湖 吉川 桂代 山下 理恵 山鹿 眞紀夫 古閑 博明 松尾 洋
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-29, 2008-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
18

本研究は,地域における一般高齢者向けの,介護予防を目的とした運動プログラム「長寿きくちゃん体操」の紹介をするとともに,地域主体での教室運営による運動プログラム介入前後の身体機能面と精神活動面で変化がみられたことを報告する。教室の対象は,老人クラブの21名(74.1 ± 3.7歳)で,期間は3ヶ月問であり,教室は他機関の健康運動指導士が運営した。身体機能面の変化に対し,教室の前後で,10m全力歩行,開眼片脚立ち,握力,長座位体前屈,Timed Up & GO Test(TUGT),6分間歩行を評価した。また,日常生活活動や精神活動の変化に対し,アンケート調査で,主観的健康観,Falls Efficacy Scale(FES),MOS Short-Form-36-Item Health Survey(SF-36),グループインタビューを実施し,また痛みの変化ではNumeric Rating Scale(NRS)を実施した。結果は,身体機能面で,10m全力歩行,TUGT,6分間歩行,握力で有意な改善を認めた。また,精神活動面は,主観的健康観で有意な変化を認め,他項目でも改善傾向があった。地域リハビリテーションでの介護予防教室に対し,ポピュレーションアプローチでの間接的な運動プログラムの提供により,心身の変化の可能性を示唆したと考えられた。
著者
名古屋市 編
出版者
名古屋市
巻号頁・発行日
vol.第17回, 1926
著者
古田 公人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.121-126, 1972-09-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

潜伏発生の昆虫個体群に働く環境抵抗を,接種によって人為的に野外に構成した個体群を解析することにより検討した。1971年,札幌市豊平区美園の林業試験場北海道支場樹木園に接種したマイマイガ個体群は,3齢末期から始まったカラフトスズメなどの鳥の捕食によってほぼ絶滅するほどまでに減少した。捕食は多くの鳥で観察されているように,最初は木1本あたりの生息数に無関係に生じたが,その後すぐに密度依存的となり,接種をくり返えして幼虫を追加すれば,6齢までそのまま密度依存的に経過した。鳥による捕食以外にブランコサムライコマユバチ,ヤドリバエの1種による寄生が認められたが,それらは量的にも少ないうえに,鳥の捕食のあとに死亡をひき起こすため重要な要因とは考えられなかった。
著者
中嶋 彩乃 古屋 正貴
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 2019年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.11, 2019 (Released:2019-07-03)
参考文献数
3

2018 年の宝石学会(日本)でカラーチェンジ・ガーネットについて考察した中で、マダガスカル Bekily から産出するパイロープ-スペサルティン・ガーネットには、バナジウムを多く含有することで、ガーネットには存在しないとされた青色を、D65 光源下では示すものを紹介した。それはまさにアーサー・コナン・ドイルの小説 「The adventure of the blue carbuncle」 で描かれた青いカーバンクルを連想させるものだった。しかし、その内容や時代背景を考えるとドイルのブルー・カーバンクルは、青いカーバンクル(ガーネット)というよりブルー・ダイアモンドとして有名なホープ・ダイアモンドがそのモデルとなっていると考えられ、検証を行った。ドイルが描いたブルー・カーバンクルにはガーネットより、ホープ・ダイアモンドとの多くの共通点が見られる。第一に、青いカーバンクル(ガーネット)は、当時存在を知られていなかったこと。第二に、その宝石についてホープ・ダイアモンドと共通する記述が多くあること。第三に、その小説が発表された 1892 年以前に、ホープ・ダイアモンドはドイルの住むイギリスで所有されており、人々の注目を浴びるものであったことである。第一の、青いガーネットの存在が知られていなかったことは、Bekily のカラーチェンジ・ガーネットの発見が 1999 年のことであり、他のカラーチェンジ・ガーネットについて報告されたのも 1970 年代以降のことであることから、当時は青いガーネットは認識されていなかったことがわかる。(K. Schmetzer 1999)第二のホープ・ダイアモンドとの共通点については、結晶した炭素であること(”crystallized charcoal”)、ガラスをパテのようにカットすること(”It cuts into glass as though it were putty”)、ブリリアンシーのあるシンチレーションが強い青い石であること(”brilliantly scintillating blue stone”)などの記述が当てはまることなどである。第三の時代背景については、この小説が発表されたのは 1892 年であるが、それ以前のホープ・ダイアモンドについて調べると、1851 年のロンドン万国博覧会で公開されており、広く人々の注目を集めている。そして 1887 年には Henry Thomas Hope 氏の孫の Francis Hope 氏が相続することが裁判で決定される中、相続問題と裁判が数多く報道された。そのため、執筆時のドイルの目に触れたことは容易に想像できる。このような観点から、ドイルが小説の中で描いたブルー・カーバンクルは、ホープ・ダイアモンドがモチーフになったと考える。