著者
関 隆 有澤 正義 二河田 雅信 寺西 貴英 古谷 正敬 持丸 文雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.23-28, 1999-01-01
参考文献数
15

羊水細胞より抽出したDNAを用いて胎児RhD血液型の診断を試みた. RhD陰性(RhD(-))妊婦12例およびRhD陽性(RhD(+))妊婦30例より超音波ガイド下に羊水5mlを採取した. また妊婦血液5mlを採取し, それぞれ核酸抽出剤SepaGeneを用いてDNA抽出を行った. PCRを行うにあたり次の四つのプライマーを作成した. RhCE遺伝子とRhD遺伝子に共通した136 base pair(bp)のPCR産物を得るためA1(5'-TGTGTTGTAACCGAGT-3'), A2(5'-ACATGCCATTGCCG-3')を合成し, またRhD遺伝子に特異的な186bpのPCR産物を得るためA3(5'-TAAGCAAAAGCATCCAA-3'), A4(5'-ATGGTGAGATTCTCCT-3')を合成した. PCRは25μlの反応系で35回のサイクルを行った. PCR産物は3%アガロースゲルで電気泳動を行い解析した. RhD(+)血液試料では136bpと186bpの複バンドが検出され, RhD(-)血液試料では136bpのみの単バンドが検出された. 羊水細胞による分析では136bpと186bpの両者が検出された症例をRhD(+)胎児, 一方136bpのみが検出された症例をRhD(-)胎児と判定した. その結果40例がRhD(+)胎児, 2例がRhD(-)胎児で判定不能な症例はなかった. またすべての症例において, 羊水細胞によるDNA判定は臍帯血による血清学的判定と完全に一致した. 以上より羊水細胞による胎児RhD血液型のDNA診断は信頼性が高く臨床応用への道が開かれた.
著者
古賀 靖敏 ポバルコ ナターリア 西岡 淳子
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Klotho遺伝子のノックアウトマウス(KlothoKOマウス)では、ヒトの老化に類似した種々の症状を来すことから、老化現象に関わる重要な遺伝子として報告された。我々は、KlothoKOマウスにおける老化現象と正常加齢マウス(CD-1)を比較検討し、老化機構におけるKlotho遺伝子とミトコンドリア機能障害のネットワークを解明するために腎および脳組織における病理学的、生化学的解析を行った。正常加齢マウスでは、腎腫大が診られ、糸球体の減少と総タンパクの低下、ミトコンドリアの酸素消費の低下と電子伝達系酵素活性の全般的な低下が観察された。一方、KlothoKOマウスでは、正常糸球体数の減少と総タンパクの増加を伴う電子伝達系酵素活性の比活性の低下を来した。また、電子伝達系の酵素活性の中で、複合体IIが選択的に早期に低下する事を見いだした。終脳では、正常加齢のマウスでは電顕的なミトコンドリア腫大がみられミトコンドリア電子伝達系低下を伴っていた。KlothoKOマウスでは、その加齢減少に伴い、正常加齢マウスでは診られない、腎と脳でミトコンドリア機能不全を来し、その原因は、異常たんぱくの蓄積によると考えられた。
著者
加藤 尚吾 古屋 雅康 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-14, 2004
参考文献数
25
被引用文献数
8

不登校児童生徒11名を対象に,電子メールカウンセリングを実施し,実施前と後で不登校状態を比較したところ,ほぼすべての児童生徒に改善がみられた.そこで,電子メールカウンセリングが不登校状態の改善に果たした役割を検討した.児童生徒が送信した電子メール文の内容分析の結果,改善の大きかった児童生徒の電子メール文中の「学校・学習関連」,「友達関連」語が,改善の小さかった児童生徒よりも多かった.また,それらは前半に送信した電子メールに比べ,後半に送信した電子メール文中により多かった.保護者へのアンケート及びカウンセラーヘのインタビューから,電子メールカウンセリングのための家庭へのパソコンの導入が家族の共通の話題を生み,家庭内のコミュニケーションが増加したことが分かった.また,インターネットを使って興味の対象を深く調べたり,パソコンを使って自己表現をしたりと,児童生徒の活動方法が広かったことが分かった.
著者
岡田 和隆 柏崎 晴彦 古名 丈人 松下 貴惠 山田 弘子 兼平 孝 更田 恵理子 中澤 誠多朗 村田 あゆみ 井上 農夫男
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.61-68, 2012-10-15 (Released:2012-10-19)
参考文献数
31
被引用文献数
2

サルコペニア(筋肉減少症)は 80 歳以上の高齢者の約半数にみられる加齢変化であり,顎口腔領域にも現れるといわれている。本研究ではサルコペニア予防プログラムに参加した自立高齢者を対象とし,介入前調査として栄養状態と口腔内状態および口腔機能との関連を明らかにすることを目的とした。自立高齢者 62 名(69〜92 歳,男性 27 名,女性 35 名)を対象者とした。口腔内状況と口腔機能に関する聞き取り調査は事前に質問票を配布して行い,口腔内診査と口腔機能評価は歯科医師が行った。聞き取り調査質問項目,口腔内診査項目,口腔機能評価項目と血清アルブミン値(Alb)との関連を検討した。Alb は 4.3±0.3 g/dl であり,対象者の栄養状態は良好であった。口腔機能に関する2つの質問項目,主観的口腔健康観,下顎義歯使用の有無において Alb に有意差が認められた。残根を除く現在歯数,現在歯による咬合支持数およびオーラルディアドコキネシス(ODK)の/ka/の音節交互反復運動において,Alb と有意な関連が認められたが弱い相関関係であった。義歯満足度,口腔清掃状態,上顎義歯使用の有無,口唇閉鎖力,RSST,ODK の/pa/および/ta/,口腔粘膜保湿度,唾液湿潤度では関連は認められなかった。自立高齢者では現在歯数,咬合支持,義歯の使用の有無,口腔の健康や機能に対する自己評価が良好な栄養状態と関連する可能性が示唆された。
著者
古川園 智樹 井庭 崇
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.21, pp.1-5, 2013-02-20

本論文の目的は,戦後日本の防衛政策を立案してきた防衛庁内の政策ネットワークを明らかにすることである.そのために,本論文では,1954 年から 2005 年までの防衛庁内の人事異動データを分析する.課をネットワークのノード,人事異動をネットワークのエッジとして捉えれば,人事異動は課同士のネットワークとして分析することができる.我々はこのネットワークを 「課ネットワーク」 と呼ぶ.この課ネットワークを分析した結果,このネットワークがスモールワールドネットワークであることも明らかになった.The main point in this paper is to clarify policy network in the Defence Agency, who have planed security policies of postwar Japan. To this end, we explore personnel changes in the Defence Agency from 1954 to 2005. By defining sections as nodes, and personnel changes as edges, it becomes possible to look at policy network as directed networks, which we call "the Section Network". In this paper, we explore the characteristics of the section network. The results show that By our analysis, it was made clear that the section network is a small-world network.
著者
下邑政弥, 古屋厚一 編
出版者
高田クラブ
巻号頁・発行日
vol.1965年版, 1965
著者
古賀 健司 櫻井 宏昭 越崎 直人 平澤 誠一 飯塚 飯塚
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

Cu-Au 合金ナノ粒子の気相中熱酸化によって生成された、精密構造制御された2種類のAu-Cu_2O ハイブリッドナノ粒子について、閉鎖循環反応装置による CO 酸化触媒活性の定量測定を行った。その結果、Cu_2O に対して相対的に Au が小さい目玉型形態を示す粒子よりも、Auが相対的に大きいドングリ型形態の粒子の方が、著しく高い触媒活性を示し、触媒活性と構造形態との強い相関を示す予備的な結果を初めて得ることができた。
著者
古瀬 奈津子
出版者
お茶の水女子大学比較日本学教育研究センター
雑誌
お茶の水女子大学比較日本学教育研究センター研究年報
巻号頁・発行日
no.8, pp.143-146, 2012-03

藤原道長(966-1027)は、摂関政治を代表する政治家である。道長は、長徳元年(995)に内覧で左大臣となって以降、朝廷における実権を把握した。道長の権力の源泉は天皇の外戚であることにあり、娘彰子は一条天皇中宮となって後一条天皇・後朱雀天皇を生み、道長の外戚としての地位を確立した。 道長は当時最大の消費者であった。道長による最大の消費は、邸宅や寺院の造営であろう。本発表では、道長の邸宅や寺院の造営など消費のもつ意義について考察してみたい。邸宅の造営としては、火事で焼失した本邸である土御門第の造営をあげることができる。その造営について、道長に対する批判的な言説で著名な藤原実資の日記『小右記』では、「造作の過差(度を越した華美やぜいたく)」を非難している。また、土御門第寝殿の造営は、受領一人に一間(いっけん)ずつ割り当てて行われた。道長が行った寺院の造営としては、土御門第の東側に位置する法成寺の造営をあげることができる。法成寺は、浄土信仰に基づく阿弥陀堂の造営から始まったが、金堂や講堂も備えており、鎮護国家をも目的としていた。法成寺の造営において、道長は受領ばかりでなく、公卿たちにも負担を課して、講堂や薬師堂の礎石の据え付けを命じている。 このような邸宅や寺院の造営など道長の消費のもつ意義について様々な角度から考えてみたい。
著者
清田祥太 川崎洋 古川亮 佐川立昌
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.488-495, 2011-07-20

アクティブステレオによる形状計測における問題点として,一視点から観測可能な形状しか計測できないことや静的なシーンしか計測できないことが挙げられる.本論文では,多視点のプロジェクタ・カメラシステムを利用して,動的シーンの形状を全周囲から計測する手法を提案する.高いフレームレートで形状を計測するためには,プロジェクタから照射するパターンを切替えずに静的なパターンを投影することが望ましい.しかし,従来の静的パターンによるアクティブステレオは,複雑なパターンを利用することが多く,パターンの重なりによる相互干渉の問題から,全周囲計測に適用することは難しかった.本研究では,単純な平行線によるパターンを利用し,むしろ干渉から得られる情報を利用して形状を復元する.具体的には,各プロジェクタは一方向の少数(1または2個)の色を持つ平行線のみを投影し,その直線同士の交点から連立線形方程式を多数構成して解く.我々は,6台のカメラと6台のプロジェクタから成るシステムを実際に構築し,運動する人物の密な3次元形状復元に成功した.
著者
片岡 健 中塩 文行 寺本 正明 竹内 寛 川崎 順二郎 江口 彌 平田 彰 古崎 新太郎 藤縄 勝彦 原田 誠
出版者
大阪府立大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

乳化粘膜による分離濃縮プロセスの開発においては, 1.二本の長鎖アルキル基を有する新しい界面活性剤が合成され, 分離濃縮プロセスの見地から望ましい界面活性剤であることが実証され, 実用化へ前進した. 2.溶存クロムの連続槽型分離濃縮操作には, 滞留時間とその分布が影響し, 並流操作が実用的であることが判明した. 3.向流接触塔による分離濃縮プロセスのシミュレーションにより, pH変化を拌う分離濃縮系にはpH調節が重要であることを明らかにし, 塔内濃度分布の推算および装置設計が可能となった. 4.乳化液膜の電気解乳化速度式が提案され, 液滴合一の限界電場条件が示唆されるとともに, 試作した連続解乳化装置の操作条件が明らかにされた. 支持液膜による分離濃縮プロセスの開発においては, 1.多孔性支持液膜に使用する有機物として, 直鎖系炭化水素が膜の安定性に優れ, 支持液膜の連続再生方式を提案した. 2.新しい膜形態として流動液膜が提案され, スパイラル型, plate-and-frame型各モジュールが試作され, 好成績を示した. 3.Ga・In湿式製錬プロセスに, 支持液膜法あるいは乳化液膜法が導入できることを明らかにした.液膜分離技術の応用開発においては, 1.希土類, 特にランタンの分離に適用できることを明らかにし, 分離濃縮の基礎的設計指針を見出した. 2.バイオプロセスへの液膜法の検討が行われ, Z-APMの連続合成に適用可能であることを見出した. 3.(O/W/O)液膜による有機物の分離選択性を高める方法を提案し, 転相による新しい機械的解乳化法を見出した. これらの諸成果を基盤とすれば, 実用的な連続分離プロセスは可能であり, パイロット・プラントの試作・操作が望まれる. なお一連の開発研究の過程より新たにマイクロエマルションを応用した液膜分離の技術開発の重要性が萌芽してきた.
著者
古谷 大輔
出版者
大阪外国語大学
雑誌
IDUN (ISSN:02879042)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.225-244, 2005-02-28

Efter det stora nordiska kriget borjade en period som i Sverige kallas for Frihetstiden och en ny konstitution antogs med riksdagen som beslutande organ istallet for kungen. Nar riksdagen, i vilken alia standerna deltog, oppnade eller avslutade sina moten brukade biskoparna (eller arkebiskopen) halla en predikan. De redogjorde for de politiska och sociala problem vilka Sverige var stallt infor och visade den ideologiska bild av Sverige som alla svenskar skulle dela som undersatar. Malet for uppsatsen ar att undersoka de predikningar som holls i olika riksdagar under Frihetstiden och att forklara hur manniskors medvetenhet om sin identifikation i det tidiga moderna Sverige grundlades-en medvetenhet som var annorlunda an en modern nation. Identifikationen som den svenska statsledningen hade tvingat sina invanare till var beroende av begreppet "fadernesland", vilket prasterna som tillhorde den lutherska kyrkan visade i sina predikningar. Begreppet var grundat pa en tolkning i Bibeln att Sverige hade varit lika med Israel i Gamla testamentet. Predikanterna i riksdagen brukade tala om de religiosa plikter som alia invanare som bekande sig till den lutherska kyrkan skulle fullgora. Manniskor som inte delade ursprung eller sprak utan bara trosbekannelse tillhorde en grupp som predikanterna kallade for "Swea barn". Nar vi tanker pa hur det tidiga moderna Sverige, som var en konglomerat-formation bade politiskt och kulturellt, varit integrerat som "Ostersjovaldet", blir medvetenheten om "karleken till faderneslandet" en nyckel for att forsta en sadan integration. Den har medvetenheten uppkom inte ur patriotism. Den var grundad pa den religiosa plikt som den lutherska kyrkan hade insisterat pa i riksdagen. En av plikterna var att man skulle vara lojal mot fosterlandet och mot den kristna kyrkan genom att alska faderneslandet. Denna lojalitet blev inte bara en plikt for de goda kristna utan ocksa villkoret for manniskorna under senare halften av 1700-talet. Detta begrepp spred sig bland de svenska invanarna genom medvetenheten att tillhora en social och religios gemenskap baserad pa kristna karleken till medmanniskorna.
著者
古池 弘隆
出版者
宇都宮大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

本研究は高所から撮影したビデオ画像とパ-ソナルコンピュ-タを組み合わせて、静止した画面上に表示された対象物の位置を、ディジタイザ-により読みとる装置を開発し、それを実際の交通流現象の調査解析に応用しようとするものである。昨年度のビデオカメラの精度に関する基礎実験、座標変換のソフトウエアの開発、商店街での歩行者や自転車の実測調査・分析に続き、本年度は応用研究に力点を置いた。宇都宮市内には3ヵ所のスクランブル交差点があるが、そのひとつが高校生の通学路にあたっており、スクランブル現示時に多くの学生が自転車に乗ったまま交差点を横断し、スクランブル交差点として機能しているかどうか疑問であった。そこで本研究で開発された調査手法により、ビルの屋上から交差点をビデオカメラで撮影し、その画像を解析した。比較のためにもう一ヵ所の典型的なスクランブル交差点においても同様な調査を行った。解析の結果、高校生通学時の自転車交通が交通量の9割を占め、スクランブル交差点の特徴である斜め横断率が比較交差点では30%台であるのに対して、当該交差点ではわずか数%にすぎず、スクランブル本来の機能を果たしていないこことが明らかになった。この結果に基づき栃木県警では当交差点を一般交差点に改めた。その結果自転車・歩行者の安全な横断が確保され、また自転車に対する青信号時間が増加して交通容量も増大した。本研究では開発された手法は、以上述べたように一応初期の目的を達成したが、ビデオ画像の対象物をディジタイザ-を用いて座標変換する際に判読者の負担が大きく、自転車や歩行者など大量の点を時系列で追跡していくのはかなりの困難さを伴うことが判明した。今後は画像処理技術を用いるなど効率的なデ-タ入力の自動化を図る方法の開発に向けてさらに研究を進めていく必要があろう。