著者
石川 耕資 南本 俊之 一村 公人 本田 進 蕨 雄大 古川 洋志
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.22-26, 2014 (Released:2014-01-01)
参考文献数
14

壊死性筋膜炎と重症蜂窩織炎の鑑別に LRINEC (Laboratory Risk Indicator for Necrotizing Fasciitis) score の有用性が報告されている。われわれは 2005 年から 2012 年までの間に経験した壊死性筋膜炎 11 例と重症蜂窩織炎 110 例を後ろ向きに解析し,LRINEC score の有用性について検討した。壊死性筋膜炎群の LRINEC score (6~12,平均 9.2)は,重症蜂窩織炎群(0~10,平均 2.7)と比較して有意に高値であった。LRINEC score 6 以上を壊死性筋膜炎とするためのカットオフ値とした場合,感度 100%,特異度 85.5%,陽性的中率 40.7%,陰性的中率 100%であった。LRINEC score は,臨床,画像所見に加えた壊死性筋膜炎の補助的診断ツールとして有用であると考えられた。
著者
古川 洋和
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.213-222, 2010-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、歯科恐怖症に対する認知行動療法(CBT)の効果研究について展望を行うことであった。文献検索の結果、12編の研究が抽出された。主な結果は、以下のとおりであった。(1)CBTの技法として、エクスポージャー、リラクセーション(応用リラクセーションを含む)、認知的再体制化、ストレス免疫訓練、系統的脱感作が行われていた。(2)すべての治療技法は、治療前後にかけて主要評価項目の値を改善していた。(3)治療後において、エクスポージャーと系統的脱感作は、統制条件と比較して大きな効果サイズが認められた。(4)治療後において、応用リラクセーションは、統制条件と比較して中程度以上の効果サイズが認められた。(5)治療後において、認知的再体制化は、統制条件と比較して中程度以下の効果サイズが認められた。最後に、わが国においても統制研究を行うことの必要性が提示された。
著者
古川 洋和 大沼 泰枝
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.155-163, 2013-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、長野県において、うつ病に対する認知行動療法(CBT)についての研修プログラムを実施し、その効果を検討することであった。21名(平均年齢35.57歳)の実践家が研修プログラムに参加した。プログラムでは、6回(計18時間)のワークショップと個別のスーパービジョンが行われた。研修プログラムの効果については、認知療法認識尺度(CTAS)を用いて、プログラム実施前(Pre)、プログラム終了直後(Post)、プログラム終了4ヵ月後(Follow-up)の3時点でCBTの知識についての評定を求めた。また、PreとPost時点において、CBTの実践可能性(0〜100)についての評定を求めた。本研究の結果、CTAS合計得点はPreの値と比較してPostの値が有意に高く、その効果はFollow-up時点においても維持されていた。さらに、CBTの実践可能性についてもPreの値と比較してPostの値が有意に高いことが示された。最後に、本研究の結果をもとに、地域単位で実施するうつ病に対する実証に基づく心理療法の普及と推進について議論した。

3 0 0 0 OA 少年騎兵物語

著者
古川洋三 著
出版者
川津書店
巻号頁・発行日
1943
著者
古川 洋子 平田 京子 石川 孝重
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.80, no.713, pp.1587-1596, 2015 (Released:2015-08-18)
参考文献数
22
被引用文献数
3 4

This study estimates the number of evacuees that can be accommodated in 32 shelters in Bunkyo Ward and investigates shelters' refugee-acceptance preparations. Across shelters, the estimated evacuee number ranges from 500 to 2,500, with 2 shelters having an excess of approximately 1,000 people, who arrive because of house destruction and fires. Some shelters underestimate the number of these evacuees. Regarding the check-in procedure, counter-plans prove insufficient for large-scale evacuations and for shelters that do not follow the local government's policy regarding stranded commuters. Therefore, each shelter must estimate the number of refugees and establish an appropriate situation-based individual system.
著者
古川 洋和 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.889-895, 2008-10-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

本研究の目的は,自律訓練法(AT)によるリラクセーション効果の妨害要因である不安感受性の操作が,ATによるリラクセーション効果に及ぼす影響を明らかにすることであった.健常大学生を対象に,(1)不安感受性が高く,AT指導前に不安感受性の緩和を目的とした認知行動プログラムが行われる介入群(10名),(2)不安感受性が高く,AT指導前に不安感受性に対する介入は行われないH統制群(5名),(3)不安感受性が低いL統制群(40名),の3群についてATによるリラクセーション効果の差異を検討した結果,H統制群は,ATによるリラクセーション効果が得られないことが明らかにされた.本研究の結果から,不安感受性の高い者においても,AT実施前に不安感受性を緩和することで,ATによるリラクセーション効果を促進できることが示され,不安障害の治療にATを用いる際は,不安感受性を緩和させてからATを指導する必要性が指摘された.
著者
鈴木 崇伸 堀 宗朗 古川 洋之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
応用力学論文集 (ISSN:13459139)
巻号頁・発行日
no.10, pp.631-638, 2007
被引用文献数
3

This paper presents calculation method for displacement from acceleration record in easy way. Using recursive digital filter is good for easy calculation, so simple formula is proposed, which is combined of integration and low-cut filter. Shaking table test is carried out in order to investigate accuracy of calculated displacement The movement of the shaking table is measured by laser displacement meter, and two acceleration meters are installed on the table. Though data from laser meter include long period noise, calculated displacement is rather consistent with laser meter, after filtering noise. Proposed digital filter is useful for on-site health monitoring measurement.
著者
齋藤 寛 吉永 馨 塩路 隆治 古川 洋太郎 有川 卓 齋藤 喬雄 永井 謙一 道又 勇一 佐々木 康彦 古山 隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.1371-1383, 1975
被引用文献数
4

明治初年以来高度のカドミウム環境汚染をうけてきた秋田県小坂町細越地域の35才以上の住民137人(男58人,女79人)の健康調査を行なつた.昭和47年1月から昭和49年10月にいたる期間の4回の検尿において尿蛋白,尿糖同時陽性者の検出率は常時13%以上であり,対照地域の同時陽性率2.5%に比し著しい高率であつた.この4回の検尿により尿蛋白・尿糖同時陽性者33例(男18例,女15例)を見出し,かつこのなかから腎機能検査の結果10例(男5例,女5例)の多発性近位尿細管機能異常症(multiple proximal tubular dysfunctions)を診断した.この10例についてその原因疾患を検討した.特発性,遺伝性疾患,ならびに慢性重金属中毒以外の後天性疾患はいずれも否定された.多発性近位尿細管機能異常症を含む尿蛋白・尿糖同時陽性者の大部分が尿中カドミウム排泄の異常高値(10.0~45.0&mu;g/d)を示した.小坂町細越地域の土壌,産米などにはこれまでくりかえし高濃度のカドミウムが検出されており,また同地域住民の多数が尿中カドミウムの異常高濃度(10.0&mu;g/<i>l</i>以上)を示すことが秋田県の調査により明らかにされている.すなわち同地域住民は長年にわたり異常カドミウム曝露をうけてきたことが確実であつた.以上により同地域住民の多数に認めた蛋白尿,糖尿の多発,さらには多発性近位尿細管機能異常症にまでいたる一連の腎障害は長年にわたり,主に食物を介して体内に異常大量摂取されたカドミウムによる慢性カドミウム中毒であると結論した.
著者
高山 哲治 五十嵐 正広 大住 省三 岡 志郎 角田 文彦 久保 宜明 熊谷 秀規 佐々木 美香 菅井 有 菅野 康吉 武田 祐子 土山 寿志 阪埜 浩司 深堀 優 古川 洋一 堀松 高博 六車 直樹 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.93-114, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
62

Cowden症候群/PTEN過誤腫症候群は,PTEN遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とする常染色体優性遺伝性の希少疾患である.消化管,皮膚,粘膜,乳房,甲状腺,子宮内膜,脳などに過誤腫性病変の多発を特徴とする.巨頭症および20歳代後半までに多発性皮膚粘膜病変を発症することが多い.ときに小児期に多発する消化管病変,自閉スペクトラム症,知的障害が診断の契機となる.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある.乳癌,甲状腺癌,子宮内膜癌,大腸癌,腎細胞癌などの悪性腫瘍を合併するリスクが高く,適切なサーベイランスが必要である. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう,基本的事項を解説し,4個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
古川 洋章 由井薗 隆也
出版者
日本創造学会
雑誌
日本創造学会論文誌 (ISSN:13492454)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-21, 2018 (Released:2018-04-01)

本研究では、分散ブレインストーミングの継続的な創造活動を支援することを目的としている。その方法として、ゲーミフィケーション要素を用いた分散ブレインストーミング支援ツールを提案した。ゲーミフィケーション要素として、アイデア投稿のフィードバック、アバターの生成、アバターの変更、他のプレイヤーとの競争、アバター図鑑、の 5つの機能を実装した。提案機能の有効性を確認するため、「ゲーミフィケーション要素ありツール(GE有)」と「ゲーミフィケーション要素なしツール(GE無)」を用意し、比較を行った。さらに GE有を用いて、 9日間の継続的なブレインストーミングを実施し、内因性モチベーションがアイデア創出に与える影響を調査した。実験の結果、 GE有と GE無では、 GE有がアイデアの量、アイデアの流暢性・独自性にて評価が高かった。また GE有を用いた場合に、同一テーマにて 5日目まで持続してアイデアが創出されることが確認された。
著者
古川 洋和 松岡 紘史 樋町 美華 小林 志保 庄木 晴美 本谷 亮 齊藤 正人 安彦 善裕 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.363-372, 2009-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
33

本研究の目的は,歯科治療恐怖に対する認知行動療法(CBT)の有効性をメタ分析によって検討することであった.(1)研究デザインとして無作為化比較試験(RCT)が用いられている,(2)CBTによる介入が行われている,(3)プラセボ群,あるいは未治療統制群との治療効果の比較検討が行われている,(4)不安・恐怖に関する評価項目の平均値と標準偏差が記載されている,(5)英語で書かれている,という5つの選定基準を満たす論文を対象にメタ分析を行った結果,CBTが実施された群の治療効果は有意に大きかった(d=2.18).したがって,CBTは歯科治療恐怖の改善に有効であることが示された.本研究の結果は,歯科治療恐怖の治療において質の高いエビデンスを示すことができた点で有益である.今後は,わが国においても歯科治療恐怖に対するCBTの効果を検討する必要性が示唆された.
著者
池田 登顕 柴田 昌和 古川 洋高 立壁 大地 神谷 真知子 塩野 浩章
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3485, 2009

【目的】<BR>近年,腰部骨盤帯における機能解剖学的知見は増加してきている.特に多裂筋や腹横筋,骨盤底筋群,横隔膜は腰部骨盤帯への安定性に作用するといわれているが,これらの筋の明確な作用はまだ全て明らかにされていない.また,多様な臨床評価方法や運動療法なども紹介されてきてはいるが,明らかな誘発原因のない腰部骨盤帯疾患の発生機序は明確になっていない.今回,仙髄レベルに神経症状や梨状筋症候群,坐骨神経痛を患った症例に対する理学療法を経験した.その際,既存の機能解剖学的知見に基づいて理学療法を展開したが,治療後に症状は軽減したが消失しなかった.この課題を解決し,解剖学的な検証をするために腰部骨盤帯を観察する機会を設けさせていただいた.屍体は大殿筋が中央で切離され,梨状筋下孔が良好に観察できるものであり,仙骨のうなずきおよび腸骨の起き上がり操作介入による検討が可能であった.その結果,梨状筋の弛緩および梨状筋下孔の拡大を触診できた.そこで,前述の症例に対して屍体で得られた機能解剖学的所見と同様の操作を加えることで,各症例の症状に変化がみられるかどうかを検討することとした.<BR>【方法】<BR>仙髄レベルに神経症状や梨状筋症候群,坐骨神経痛を有し,明らかな誘発原因のない腰部骨盤帯疾患症例10名を対象とした.対象者は男性2名・女性8名であり,平均年齢は69.7歳であった.この10名のうち,症状と画像所見とが明瞭に一致したのは1名であり,症例は全て腰椎の後彎により症状が悪化した.この10名に対して以下の3通りの徒手操作をランダムに加え,操作後の症状の変化を,「消失」・「軽減」・「変化なし」の3通りから回答させた.徒手操作は,既存の臨床評価方法を参考にした,A仙骨のうなずき操作,B腸骨の起き上がり操作,C同時にAおよびBの操作である.なお,各操作は1日以上間隔を設け,操作における効果が消失してから次の操作を加えた.また,症例は本研究内容の説明をし,同意を得られた10名である.<BR>【結果】<BR>Aでは3名が「軽減」,7名が「変化なし」と回答し,Bでは2名が「消失」,2名が「軽減」, 6名が「変化なし」と回答した.Cでは全ての症例が「消失」と回答した.<BR>【考察】<BR>既存の知見では,多裂筋・腹横筋・骨盤底筋群および横隔膜は,腰部骨盤帯における安定性確保のための機能を1つのユニットを形成することで担っており,股関節周囲筋が補助的に担っているとされている.さらに,仙骨をうなずかせるように作用する筋は多裂筋であり,腸骨を起き上がらせる筋は大殿筋である.今回の症例では,仙骨のうなずきおよび腸骨の起き上がり操作により症状が消失した.これより大殿筋のロッキング作用によって,腸骨が固定されている環境下で多裂筋が効率的に働き,両者の相互作用によって,梨状筋下孔が拡大することで仙髄レベルでの神経通路が確保されている可能性を示唆された.
著者
池田 登顕 柴田 昌和 古川 洋高 立壁 大地 神谷 真知子 塩野 浩章
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P3485, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】近年,腰部骨盤帯における機能解剖学的知見は増加してきている.特に多裂筋や腹横筋,骨盤底筋群,横隔膜は腰部骨盤帯への安定性に作用するといわれているが,これらの筋の明確な作用はまだ全て明らかにされていない.また,多様な臨床評価方法や運動療法なども紹介されてきてはいるが,明らかな誘発原因のない腰部骨盤帯疾患の発生機序は明確になっていない.今回,仙髄レベルに神経症状や梨状筋症候群,坐骨神経痛を患った症例に対する理学療法を経験した.その際,既存の機能解剖学的知見に基づいて理学療法を展開したが,治療後に症状は軽減したが消失しなかった.この課題を解決し,解剖学的な検証をするために腰部骨盤帯を観察する機会を設けさせていただいた.屍体は大殿筋が中央で切離され,梨状筋下孔が良好に観察できるものであり,仙骨のうなずきおよび腸骨の起き上がり操作介入による検討が可能であった.その結果,梨状筋の弛緩および梨状筋下孔の拡大を触診できた.そこで,前述の症例に対して屍体で得られた機能解剖学的所見と同様の操作を加えることで,各症例の症状に変化がみられるかどうかを検討することとした.【方法】仙髄レベルに神経症状や梨状筋症候群,坐骨神経痛を有し,明らかな誘発原因のない腰部骨盤帯疾患症例10名を対象とした.対象者は男性2名・女性8名であり,平均年齢は69.7歳であった.この10名のうち,症状と画像所見とが明瞭に一致したのは1名であり,症例は全て腰椎の後彎により症状が悪化した.この10名に対して以下の3通りの徒手操作をランダムに加え,操作後の症状の変化を,「消失」・「軽減」・「変化なし」の3通りから回答させた.徒手操作は,既存の臨床評価方法を参考にした,A仙骨のうなずき操作,B腸骨の起き上がり操作,C同時にAおよびBの操作である.なお,各操作は1日以上間隔を設け,操作における効果が消失してから次の操作を加えた.また,症例は本研究内容の説明をし,同意を得られた10名である.【結果】Aでは3名が「軽減」,7名が「変化なし」と回答し,Bでは2名が「消失」,2名が「軽減」, 6名が「変化なし」と回答した.Cでは全ての症例が「消失」と回答した.【考察】既存の知見では,多裂筋・腹横筋・骨盤底筋群および横隔膜は,腰部骨盤帯における安定性確保のための機能を1つのユニットを形成することで担っており,股関節周囲筋が補助的に担っているとされている.さらに,仙骨をうなずかせるように作用する筋は多裂筋であり,腸骨を起き上がらせる筋は大殿筋である.今回の症例では,仙骨のうなずきおよび腸骨の起き上がり操作により症状が消失した.これより大殿筋のロッキング作用によって,腸骨が固定されている環境下で多裂筋が効率的に働き,両者の相互作用によって,梨状筋下孔が拡大することで仙髄レベルでの神経通路が確保されている可能性を示唆された.
著者
渡邊 香織 本岡 夏子 古川 洋子 渡邊 友美子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.256-263, 2013-11-30 (Released:2017-01-26)

【目的】本研究は,縦断的調査により妊娠期の身体活動量を明らかにし,不安および分娩経過との関連性を検討することを目的とした.【方法】対象は妊娠の経過が正常である初産婦28名であり,分娩経過との関連についての検討は37週以降の経膣分娩をした20名(正常分娩)を対象とした.また,帝王切開などの8名を異常分娩として,正常分娩との比較を行った.身体活動量(歩数,活動強度・時間)は,妊娠20週より分娩前日までの期間に,連続して生活習慣記録機を装着して得られたデータを対象とした.身体活動量は活動強度の低い順から,強度1〜3を低強度,4〜6を中強度,7〜9を高強度とそれぞれの身体活動に分類し時間を求めた.不安は妊娠13〜18週,妊娠24〜27週,妊娠32〜36週の3回,State-Trait Anxiety Inventory(以下STAI)の測定を実施した.【結果】歩数について回帰分析の結果,正常分娩であった妊婦では「歩数=8,719.73-55.76×妊娠週数」(p<0.001,Adjusted R^2=.646),異常分娩であった妊婦では「歩数=8,966.29-62.37×妊娠週数」(p<0.05, Adjusted R^2=.913)の回帰式が得られた.妊娠32〜36週のSTAIと妊娠末期の身体活動量との相関では,STAI状態不安と平均歩数,及び中強度身体活動時間に中程度の負の相関を認め,分娩所要時間と体重増加量,及び状態不安に中程度の正の相関を認めた.さらに「分娩所要時間(分)=693.43+69.97×体重増加量-7.24×妊娠末期の妊娠中期に対する歩数の比率」の重回帰式が得られた(p<0.05,Adjusted R^2=.339).【結論】妊娠中期以降の歩数は,妊娠週数を重ねるに従い減少すること,妊娠中の歩数よりも妊娠経過に伴う身体活動量の減少率と体重増加量が分娩所要時間に影響することが明らかになった.また,日常生活に中強度以上の身体活動に相当する早歩きを取り入れることで,妊娠期の不安を軽減できる可能性が示唆された.