著者
金沢 和樹 和田 直史 松﨑 博季 真田 博文
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.1, pp.26-33, 2023-01-01

社会の高齢化進行に伴い,身体機能の維持やリハビリを目的とした継続的運動を必要とする人の数が増加しており,デイサービス等が活用されている.デイサービスにおいては身体機能の把握や各自の状況に応じた運動メニューの作成などのため,定期的な体力測定の実施が必要とされている.しかし,体力測定やその結果の記録といった作業は,いわゆる“アナログ”な方法で行われていることも多い.多くの利用者を抱えるサービス提供者にとってその作業負荷は高く,効率化の余地がある.これらの背景のもと,本論文ではスマートフォンを測定と記録の作業を同時に行う端末として利用することにより,体力測定に関する業務の効率化を目指したシステムの試作について述べる.実際にサービスを提供しているデイサービス事業者の協力を得て,機能実装と試用によるフィードバックを繰り返し,現場での利用に適した仕組みを構築した.試作したシステムで行われる測定等の作業は高齢者向けの体力測定として汎用的な内容であり,本システムの提案するアプローチは様々な現場で活用できる.試作システムを用いて模擬的な体力測定作業を行い,測定に要する時間の短縮と付随する業務の効率化が実現できることを示した.
著者
松﨑 博季 真田 博文 和田 直史
出版者
Association of Wildlife and Human Society
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.75-85, 2021 (Released:2022-02-15)
参考文献数
12

This paper presents and discusses the acoustic measurement results of four different alert whistles that produce sounds through airflow and the investigation results of reactions of sika deer (Cervus nippon) to alert sounds played from a vehicle mounted loudspeaker. The acoustic measurement of the alert whistles revealed that the basic acoustic characteristics of these whistles are similar, and it was confirmed that these whistles produce sounds of approximately 3 kHz, which are similar to deer alarm calls or sounds of approximately 17-18 kHz. However, none of the sounds could be confirmed in the measurement experiments while the vehicle was running. The investigation of the sika deer reaction to the alert whistles sounds confirmed that the sika deer provided a vigilant reaction to the sounds of approximately 3 kHz and to those of deer alert played back through a loudspeaker.
著者
和田 直樹 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.21-28, 2021 (Released:2021-02-24)
参考文献数
35

〔目的〕座位から歩行までの動作において胸郭・骨盤角度の特徴を運動学的に分析し,若年者と高齢者の違いを明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕若年者14名と高齢者12名を対象に,3軸傾斜計・荷重スイッチシステム・ビデオカメラレコーダーにて座位からの歩行動作を計測した.〔結果〕高齢者は若年者と比較して一歩目離地時(foot off: FO)に胸郭・骨盤前傾角度が小さく,離殿からFOまでの時間が長かった.高齢者のFO時胸郭前傾角度・FOまでの骨盤前傾角度変化量とFunctional Reach Testに正の相関があった.〔結語〕両群ともに胸郭・骨盤前傾位で離殿するが,高齢者は前傾位を保持できずFOに至る.起立から歩行に短時間で移行するには胸郭の前傾に加え,骨盤の前傾が必要であることが新たにわかり,バランス機能の低下により若年者と異なる動作戦略に至ったと考えられる.
著者
佐藤 江奈 菅谷 知明 岩村 佳世 長谷川 信 田澤 昌之 和田 直樹
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.193-198, 2020-08-01 (Released:2020-09-03)
参考文献数
22

【目 的】 変形性股関節症患者の術前後の関節可動域および筋力について明らかにすること.【対象と方法】 後外側進入法により人工股関節全置換術を施行した14名を対象とし,股関節周囲の関節可動域(ROM)および筋力を術前,術後1週,術後2週で測定した.術側と非術側の比較は対応のある差の検定を行い,術前から術後2週の変化については分散分析および多重比較を行った.【結 果】 術前ROMでは股関節内転以外は非術側に対して術側が有意に低かったが,術後2週では有意な差はなかった.術側の股関節外転ROMは,術後有意に改善した.筋力は非術側に対して術側が術前,術後2週ともに低かった.術側の股関節屈曲,伸展筋力は術後1週で有意に低下し,術後2週で有意に改善した.【結 語】 術側ROMは術後2週で非術側程度に改善した.術側筋力は術後2週で術前レベルに回復するが,非術側に比べて有意に低かった.術後1週の筋力は,術前よりも低下していることを考慮し,理学療法介入をするべきである.
著者
和田 直之 野地 澄晴 濃野 勉
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.192-198, 1999-11-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
55

脊椎動物の四肢の発生過程は,パターン形成機構解明のための良いモデル系として古くから解析が進んできた.古典的な実験形態学的研究から得られた知見をもとに,位置情報などの概念が提唱され,発生生物学全般に大きな影響を与えてきた.加えて,近年の分子生物学的手法により物質面からの解析が進み,古典的概念をふまえた新たなモデルも提唱されている.最近では肢の形成部位の決定や前肢・後肢の違いなどに関わる分子も発見され,発生生物学の枠にとどまらず,進化論的な視点からの議論も盛んである.本論文では,四肢の骨格パターン形成過程において観察される現象とそこに関与する分子群,およびそれらの相互作用について最近の知見をまじえて議論する.
著者
藤本 亮 野口 裕之 藤田 政博 堀田 秀吾 小谷 順子 宮下 修一 吉川 真理 正木 祐史 和田 直人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

TOEFLやTOEICなどで用いられている等化という方法によって、異なった試験の成績を比較することができるようになる。こうした成績測定の分野はテスト理論として研究されている。本研究は、テスト理論の見地から、複数の法律学試験において等化を行い、その下でも成績測定が適切に行えるかを検証している。法律学試験は「資格試験」として実施されることが多いが、実質的には一回限りの競争試験となっている。この研究は、本来の意味での資格試験としての法律学試験の可能性を探る基礎研究である。
著者
田中 正俊 和田 直久 関谷 隆夫 大野 真也
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本年度の研究計画に従って、原子層単位で酸化したSi(001)表面や表面修飾により仕事関数を変化させたSi(001)表面上にGFP、ルシフェラーゼ極薄膜を作成して蛍光、生物発光の測定を試みたが,共に変化は確認されなかった.しかし,下記のような系においては,分子の荷電状態により発光色が変化する現象を見出すことができた.1.caged ATPを用いてルシフェリン-ルシフェラーゼ反応による生物発光を起こさせると,caged ATPから放出された2-ニトロアセトフェノンによりルシフェラーゼの活性部位の荷電状態が異なり,通常の黄緑色ではなく赤色の発光を放出する.2.GFPに静水超高圧を印加すると分子の圧縮効果により蛍光ピーク波長が短波長側へシフトするが,IGPa付近では発色団から周囲のアミノ酸残基へ電荷が移動することにより,このシフトが相殺される.3.より単純なa-sexithiophene分子を様々に表面修飾したSi(001)表面上に供給すると,仕事関数の変化に呼応して分子から表面への電荷移動量が,そしてその結果としてπ→π*遷移のエネルギーが変化する.以上の結果は,もっと多量な分子を表面修飾したSi(001)表面上に供給できれば発光色の変化を観測できることを示しており,本研究の目的であった「荷電状態をチューニングすることにより光スペクトルを制御し、新規なバイオ光デバイスを開発できる」可能性を初めて明らかにしたものである.
著者
和田 直也
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.前年度得られた成果を、本年度ソウルで開催された国際生態学会で口頭発表した。2.本年度は、周北極植物チョウノスケソウの開花結実繁殖様式を調べる予定であったが、調査地における開花個体数が例年に比較して非常に少なかったため、当初の調査予定を変更し、チョウノスケソウを除くバラ科高山植物の花粉発芽の温度依存性を明らかにすることを第一の目的とした。次に、少数ながら採取できたチョウノスケソウの種子を用い、同科雪田植物のチングルマの種子と比較することで、両種の発芽特性と温度依存性を明らかにすることを第二の目的とした。富山県立山山地で採取したサンプルを実験室内の恒温器で培養・栽培し、以下に示す結果を得た。3-1.周北極植物ではないが、チョウノスケソウと同所的に生育しているバラ科の風衝地高山植物、ミヤマダイコンソウおよびミヤマキンバイと同科雪田植物であるチングルマについて、花粉発芽の温度依存性を調査した。その結果、花粉の発芽率および花粉管の伸長量ともに、風衝地植物であるミヤマダイコンソウは最適温度がともに低く10℃〜15℃であった。それに対し、同科雪田植物であるチングルマは、前年の結果と同様に最適温度が20℃であることが確かめられた。風衝地にも雪田地にも生育しているミヤマキンバイでは、前記両種の中間的なパフォーマンスを示した。これらのことから、風衝地に生育している植物は周北極植物に限らず、花粉の発芽と花粉管伸長の最適温度が雪田植物よりも低く、開花時の低温環境に適応している可能性が示唆された。3-2.周北極植物・風衝地植物であるチョウノスケソウは、低温湿潤処理を行わなくとも種子が発芽することが分かった。チングルマは低温湿潤処理を行わなければほとんど発芽しなかった。また種子の最適発芽温度はチョウノスケソウの方が5℃低かった。30℃以上の高温環境では、チングルマの種子の方が耐性が高かった。以上のことより、花粉および種子の発芽ともに、風衝地植物はより低温環境に雪田植物はより高温環境に適応していることが示唆された。従って、温暖化がそれぞれの種の繁殖成功に及ぼす影響も異なることが予想された。
著者
早坂 昇 和田 直哉 宮永 喜一 畑岡 信夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. DSP, ディジタル信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.146, pp.31-36, 2003-06-19
被引用文献数
1

実環境で音声認識を使用する際,雑音が大きな問題となる.本報告では,ランニングスペクトルにフィルタリングを施し雑音の影響を低減する手法を提案する.ランニングスペクトルとは短時間スペクトルの時間軌跡のことで,音声認識において重要な特徴であることが知られている.提案手法は,パワースペクトルの時間軌跡にローパスフィルタを,対数パワースペクトルの時間軌跡にバンドパスフィルタをかけるというものである.4種類の雑音を人工的に付加した孤立単語認識実験の結果,特に低SNRにおいて現在広く用いられているRASTA法, CMS法に比べ高い認識率を得た.
著者
内藤 靖彦 ELVEBAKK Arv WIELGOLASKI フランスエミル 和田 直也 綿貫 豊 小泉 博 中坪 孝之 佐々木 洋 柏谷 博之 WASSMANN Pau BROCHMANN Ch 沖津 進 谷村 篤 伊野 良夫 小島 覚 吉田 勝一 増沢 武弘 工藤 栄 大山 佳邦 神田 啓史 福地 光男 WHARTON Robe MITCHELL Bra BROCHMANN Chirstian ARVE Elvebak WIELGOLASKI フランス.エミル 伊村 智
出版者
国立極地研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

北極の氷河末端域における生態系の変動は温暖化に強く関連するといわれているがあまり研究はなされていない。とくに今後、北極は4〜5℃の上昇が予測されているので調査の緊急性も高い。本研究では3年間にわたり(1)植生及び環境条件の解明、(2)繁殖過程の解明、(3)土壌呼吸と温度特性の解明、(4)土壌節足動物の分布の解明、(5)人工環境下での成長変化の解明を目的として調査、観測が実施された。とくに気候変動がツンドラの生態系に及ぼす影響を、遷移初期段階である氷河モレーン上に出現する動物、植物の分布、定着、生産、繁殖、移動について研究を行った。調査、観測は海洋性気候を持つスバールバル、ニーオルスンの氷河後退跡地で実施した。初年度は植生及び環境条件の解明を目的として6名の研究者を派遣した。氷河末端域のモレーン帯の植物の遷移過程の研究では、氷河末端域から約50メートル離れたモレーンに数種の蘚類が認められ、これらはパイオニア植物として考えられた。種子植物は100メートル過ぎると出現し、地衣類の出現はむしろ遅いことが明らかになった。また、遷移段階の古いチョウノスケソウ群落は立地、土壌中の窒素量の化学的特性の違いによって7個の小群落に区分された。2年度は植生と環境条件の解明を引き続き実施すると共に、遷移初期段階における植物の繁殖、土壌呼吸と温度特性、土壌節足動物の生態の解明を目的として実施された。現地に6名の研究者が派遣された。観測の成果としては昨年、予備的に実施したスゲ属の生活形と種子繁殖の観察を踏まえて、本年度はムカゴトラノオの無性繁殖過程が調査された。予測性の低い環境変動下での繁殖特性や繁殖戦略について、ムカゴの色、大きさ、冬芽の状態が環境の変化を予測できるという実装的なアプローチが試みられた。パイオニア植物といわれているムラサキユキノシタは生活型と繁殖様式について調査され、環境への適応が繁殖様式に関係しているなど新たな知見が加わった。また、氷河末端域の土壌呼吸速度は温帯域の10%、同時に測定した土壌微生物のバイオマスはアラスカの10%、日本の5%程度であることが始めて明らかにされた。土壌節足動物の分布の解明においては、一見肉眼的には裸地と見なされるモレーン帯にもダニ等の節足動物が出現し、しかも個体数においては北海道の森林よりもむしろ多いなど興味深い結果が得られた。最終年度は2年度の観測を継続する形で、6名の研究者を現地に派遣した。実施項目は氷河後退域における植生と環境調査、土壌と根茎の呼吸調査、および繁殖生態調査が実施された。観測の成果としては植生と環境調査および土壌と根茎の呼吸速度の観測では興味深い結果が得られ、すなわち、観測定点周辺のポリコンの調査では植物および土壌節足動物の多様性が大きいことと、凍上および地温に関する興味深いデータが取得された。また、土壌および根茎の呼吸速度の観測では、実験室内での制御された条件での測定を行い、温度上昇に伴って呼吸速度は指数関数的に上昇するが、5度以上の温度依存性が急に高くなり、これは温帯域のものより高かった。これらを更に検証するためにより長期的な実験が必要であるが、今後、計画を展開する上で重要なポイントとなるものと考えられる。さらに、チュウノスケソウの雪解け傾度に伴う開花フェノロジー、花の性表現、とくに高緯度地域での日光屈性、種子生産の制限要因についての調査では、生育期間の短い寒冷地での繁殖戦略の特性が明らかにされた。初年度および最終年度には、衛星による植物分布の解析し環境変動、北極植物の種多様性と種分化について、ノルウェー側の共同研究者と現地で研究打ち合わせを持った他に、日本に研究者を招聘して、情報交換を行った。最後に3年間の調査、観測の報告、成果の総とりまとめを目的として、平成9年2月27、28日に北極陸域環境についての研究小集会、北極における氷河末端域の生態系に関するワークショップが開催された。研究成果の報告、とりまとめに熱心な議論がなされた。