著者
石川 淑 田中 飛鳥 宮崎 敏明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1167-1176, 2014-03-15

Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)は最も有名なシーケンスアライメントツールの1つである.シーケンスアライメントとはタンパク質(またはDNA)データベースから検索対象となるタンパク質(またはDNA)配列を列挙することであり,配列どうしの類似部分検索のために使用される.シーケンスアライメントは,生物学上の進化や遺伝子系図を調べるうえで重要であることから,バイオインフォマティクス分野では欠かせない情報である.そのため,従来からハードウェアを用いて,BLASTを高速化する試みがなされてきた.BLASTは前処理,seeding,ungapped extension,gapped extension,traceback処理から構成される.従来のハードウェア化は,gapped extension処理が中心であり,他の部分は,ホストマシン上で処理される形態であった.本論文では,前処理,traceback処理を含むすべてのBLAST処理をハードウェア化し,ホストマシン上のソフトウェア処理との処理速度のアンバランスを解消することによりBLAST全体の高速化を行う.提案回路を廉価なFPGA(Field Programmable Gate Array)に実装した結果,ソフトウェア実装に比べ約790倍の高速化を達成した.また,gapped extension処理とtraceback処理に対してさらなる高速化手法を提案し,840倍以上の高速化を実現した.Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) is one of the most popular sequence alignment tools. BLAST consists of preprocessing, seeding, ungapped extension, gapped extension and traceback process. To accelerate BLAST, many hardware accelerators have been proposed. However, their acceleration target is mainly the gapped extension, and other parts are still realized as software that runs on a host machine. In this paper, we propose an accelerator for BLAST, which realizes all processing parts including the preprocessing and the traceback part as hardware. It could avoid the unbalanced processing speed between software and hardware. We also propose two performance improvement techniques for the gapped extension block. An inexpensive FPGA (field programmable gate array) implementation shows that our hardware accelerator performs 791 times faster than a software BLAST, with reasonable hardware cost. Moreover, by applying the performance improvement techniques, the performance of the accelerator becomes more than 840 times faster than the software BLAST.
著者
宮崎 まゆみ
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平安時代および鎌倉時代に記された楽譜等の文献解読を基に、平安時代の宮廷箏曲の内の独奏曲の復元を試みた。平調、盤渉調の調絃音は左手の「推し」の奏法を伴う独特の方法だったこと、「連」や「かかげ合せ」の奏法は、現行の楽箏とは異なる奏法だった可能性があること、「かき合せ」や「調子」と称される楽曲は、現行の楽箏とは異なり、親指だけではなく中指、人差指を駆使して弾くことと、左手を活用させての余韻装飾から、全体的に中国の琴(きん)曲に類似した音楽であったこと等が判明した。
著者
中脇 ダレル 周 桑完 宮崎 文夫
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.59-65, 2000-01-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
13
被引用文献数
7 10

The kip is a fundamental gymnastic movement performed on a variety of gymnastic apparatuses at all levels of competition. We analyze the kip with a multi-model approach consisting of a pendulum and 3-link model. Our simulations have shown that a variable length pendulum model is sufficient for modeling the dynamics of an expert gymnast's center-of-mass without considering the complex parameters of the 3-link model. The optimized pendulum model can generate kip pattern variations which yield a midpoint target region of success. We then evaluate these kip patterns based on the center-of-mass and 3-link system's total energy.Experimental data of both success and failure performances show that the novice raises his center-of-mass too high during the forward swing thus resulting in failure. Analysis of midpoint kip pattern variations also indicate that raising the center-of-mass at the end of the forward swing is a cause of failure.
著者
宮崎駿著
出版者
徳間書店 (発売)
巻号頁・発行日
1996
著者
平賀 岳彦 渡部 泰史 宮崎 智詞
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.231-242, 2012-12-31 (Released:2017-02-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1

Investigation of intergranular regions of fine-grained metamorphic rocks using various electron microscopy reveals the presence of intergranular pores previously filled with an aqueous fluid. Such intergranular fluid inclusions exhibit a characteristic shape which minimizes interfacial energy at intergranular regions. The distribution of the inclusions indicates that they were formed from fluid filled intergranular microcracks that ovulated into inclusions due to the initially unstable form of a fluid film at grain boundaries. A simple calculation of interfacial stresses produced by anisotropic thermal contraction of quartz grains during cooling of the quartz aggregate demonstrates that most grain boundaries in crustal rocks experience intense intergranular cracking accompanied by infiltration of fluids. Presence of the fluid filled cracks might explain the observations of low electrical resistivity and seismic wave speeds at middle to shallow crustal depths. The inhibition of the crack formation due to the interfacial stress relaxation in ductile crustal regions results in higher electrical resistivity and seismic wave speeds at greater deep. Intergranular chemical components in mantle rocks are ubiquitously found in mantle xenoliths. We can attribute these components to intergranular melts which were present in the mantle.
著者
宮崎 哲郎 荒殿 保幸
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

これまでのトンネル反応はH原子移行型反応であった。今回、2、3-ジメチルブタンカチオンからの水素分子(H_2又はD_2)脱離反応を77Kで調べた。k(H_2脱離)/k(D_2脱離)=1.7×10^4という著しい同位体効果を観測した。これはトンネル脱離反応の場合の理論的予想値とも一致しており、H_2分子がトンネル効果によって移行することを観測した初めての例である。次に、生体系におけるトンネル反応を見出した。哺乳動物細胞又はそのモデル系(高濃度蛋白質溶液)に室温でγ線を照射すると、生成した有機ラジカルは、1日以上も生存する。このラジカルはDNAの突然変異を引き起こし、ビタミンCを添加するとラジカルは反応によって消滅し、突然変異も抑制される。重水素化ビタミンCを用いて長寿命ラジカルとビタミンCとの反応を研究した。大きな同位体効果(≧20〜50)を発見し、この反応がトンネル反応であることを見出した。生体内でもトンネル反応が重要であることを示している。極低温、固体p-H_2を用いると高分解能ESR測定が出来ることを考え出した。この方法を用いてH_2^-アニオンの明確なESRスペクトルを得ることに成功した。H_2^-アニオンの減衰挙動に関する温度効果を調べた結果、この減衰がトンネル効果によることを見出した。
著者
宮崎 哲郎 熊谷 純
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2001

放射線による発ガンの引き金は、短寿命の活性酸素ラジカルによるものとこれまで考えられてきた。筆者等は半減期が20時間の長寿命ラジカルが細胞中に生成し、これが引き金になり突然変異やガンを誘発することを発表してきた。活性酸素ラジカルの存在しない照射後にビタミンCを添加すると、長寿命ラジカルを反応によって消去し、突然変異やガンの誘発を抑制する。本年度、ビタミンCとは化学構造が全く違うエピガロカテキンガレートを用いて検討し、長寿命ラジカルモデルをさらに実証するデータを得た。また、アメリカのWaldren教授によってこのモデルの追試がなされ、モデルの正当性が裏付けられた。彼の言葉によれば、長寿命ラジカルによる突然変異やガンの誘発機構は、これまで誰も考えていなかった新しいモデルであり、放射線生物学や発ガンにおいて極めて重要である。またESRスペクトルの解析から、長寿命ラジカルは蛋白質中のCH_2-SO・ラジカルである事を同定した。放射線により生成した長寿命蛋白質ラジカルから損傷シグナルがDNAに伝達され、突然変異やガンが誘発される。これはバイスタンダー効果の分子レベルでの機構と言える。長寿命ラジカルモデルによれば、ラジカル反応からDNA損傷に至る過程でも十分に制御出来る。特に長寿命ラジカルを直接観測しつつ対処出来るので、ガン抑制の新しい方向となろう。長寿命蛋白質ラジカルは紫外線照射によっても生成する事を見出し、紫外線発ガンの誘発に関与すると思われる。さらに、長寿命ラジカルとの反応性を利用して、抗ガン剤を評価する方法を検討した。
著者
宮崎 州正
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.621-720, 2007-08-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
畑中 恒夫 小林 史尚 宮崎 隼人
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.349-353, 2008-03
被引用文献数
3

電化生活が進むにつれ,そこから発生する電磁波にさらされる機会が増え,電磁波の影響が心配されている。この電磁波が動物の学習行動に影響を及ぼす例が報告されているが,矛盾する報告もある。そこで,下等な昆虫のミツバチを用い,単純な連合学習である花の匂いと,蜜を吸う吻伸展反射の条件づけを行い,電磁波の影響を調べた。市販のマウス駆除器から出る複合された低周波の電磁波に曝露すると,連合学習の学習率が低下した。超低周波の電磁波は磁場成分が生体に作用すると考えられるので,50Hz,200Hz,300Hzの変動磁場に曝露すると,200Hzの変動磁場で学習率が低下し,超低周波電磁波は学習を阻害することがミツバチでも実証された。一方,定常強磁場下では学習率が増加し,磁場や超低周波電磁場はミツバチの磁気受容器を介して学習行動に影響する可能性が示唆された。
著者
金子 立 宮崎 一興
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1479-1488, 1993
被引用文献数
4 2

射精不能者に対して, さまざまな人工的精液採取法が行われているが, Brindley 法とパルス電流を用いるように改良した Seager 改良法による電気射精を, 脊髄損傷40例, 直腸癌根治術後の射精不能例1例に対して行い, その有用性を検討した. Seager 改良法では, 刺激に際して患者に与える電気エネルギーを減じるため, 正弦交流にかえ両極性のパルス電流を用いた. Brindley 法では18例中11例から精子を回収し, Seager 改良法では29例中24例から精子を回収した. 直腸癌根治術後の射精不能例1例も Seager 改良法により精子を回収することができた.<br>電気射精の副作用としては, 自律神経過反射と疼痛がみられた. 自律神経過反射は, 刺激の中止により速やかに消失し, この点でネオスチグミンのくも膜下腔注入法より安全な方法と考えられた.<br>脊髄損傷例の精液所見では, 受傷後経過期間とともに回収できた総精子数は減少する傾向がみられ, 運動率は慢性期のみならず, 受傷後1ヵ月以内の急性期の症例においても低下がみられた. したがって, 脊髄損傷における精巣, 精巣上体等の障害はかなり早期からおこる可能性が示唆された.
著者
大塚 康平 植田 憲 宮崎 清 朴 燦一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.53-62, 2003-07-31 (Released:2017-07-19)
参考文献数
41

本稿は、江戸時代に、どのような経路を経て、裂き織りの材料となった古布・木綿布が木綿を栽培することができなかった寒冷地・東北地方に渡ったかを、文献資料に基づいて整理したのもで、以下の点を明らかにした。1)裂き織りの材料となる古布・木綿布は、近郊に生産地を抱えていた大阪に集積され、交易船によって、大阪から大消費都市・江戸に運ばれた。寒冷地・東北地方の港には、西廻り航路(北前船)、東廻り航路で運ばれ、港からは河川交通によって内陸部に搬送され、陸揚げ後は、陸路を通じて移送された。2)東北地方や蝦夷地の帰り荷として、鰊や鰯の搾り粕が木綿を育てるための肥料として運ばれ、畿内を中心とする木綿栽培地で活用された。3)主要な寄港地に存在した古着屋は、裂き織りの材料としての古手・ボロ布の流通に重要な役割を果たした。とりわけ、大消費地・江戸の古着屋は、資源循環・再利用機構の要をなした。