著者
関 勝寿 神谷 準一 宮崎 毅
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.237, pp.213-219, 2005-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
27

湛水浸透条件下においては, 微生物が増殖することによる土壌間隙の目詰まり, すなわちバイオクロッギング現象により, 透水係数が低下することが知られている. この現象がどのように温度依存性を持つのかを実験的に調べた. 豊浦砂を充填したカラムにグルコース溶液を連続的に飽和浸透させたときの飽和透水係数の変化を測定し, さらに好気性細菌数, 糸状菌数, 有機物量 (強熱減量) の変化を調べた.温度条件は, 15, 20, 25, 30℃の4種類を設定し, 実験期間は4, 7, 10日とした. 15℃において飽和透水係数はほとんど変化しなかったが, 20℃, 25℃, 30℃においては, 実験開始後1日以降透水係数が指数関数的に低下した.その低下速度を比較したところ, 25℃で最も透水係数低下速度が大きかった.有機物量, 糸状菌数ともに, 同様に25℃で最大の増加速度を示し, 細菌数の増加速度は30℃ で最大となった. このことから, カラム上層に蓄積した, 多糖類と思われるゲル状の有機物質, そして糸状菌の菌糸が透水係数低下の要因となっていると推測された.
著者
池田 華子 田中 智明 日高 聡太 石山 智弘 宮崎 弦太
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.101-117, 2016-06-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
23

In relation to the recent development of ultra high definition imaging technique (4K) that have quadruple amount of pixels relative to high definition imaging (HD), it has been reported that observer’s subjective impression differ between these imaging. The present study examined how differences in resolution (4K and HD imaging) influence subjective impressions of movies in association with movie contents (natural/artificial objects) and fields of view (wide/medium/narrow) (Exp1). We also investigated the effects of the quantities of motion on subjective impressions of movies in different im-ge resolutions with the flame rate higher (59.94 fps) than the previous study (23.98 fps) (Exp2). We found that 4K movies, as compared to HD movies, induced stronger impressions regarding evaluation and comfort especially when they were presented with natural scene and/or larger field of view. It was also shown that 4K movies with higher flame rate induced stronger impressions regarding desirability and comfort regardless of motion quantities, contrary to the previous finding that 4K movies with the larger quantities of motion gave observer lower impression regarding desirability and comfort than HD movies. These results demonstrate that the differences in image resolution could modulate subjective impressions of movies in accordance with the differences in movie contents, fields of view, and flame rate. Moreover, the current findings suggest that there exist some desirable conditions under which the ultra high definition imaging could effectively enhance observers’ subjective impressions of movies.
著者
宮崎 慎一 野田 裕之 森田 照美 甲斐 弦 大廻 あゆみ 小林 富成 長嶋 茂雄 高橋 雅春 水尾 仁志 岡本 宏明
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.606-613, 2016-11-20 (Released:2016-11-29)
参考文献数
26
被引用文献数
3

鳥取県の山間部に居住する92歳の一人暮らしの男性が急性E型肝炎を発症した.患者には海外渡航歴や輸血歴はなく,発症前3カ月以内の豚レバーやホルモン,猪や鹿などの動物の肉や内臓の喫食歴,魚介類の生食の既往も無かった.しかし,7~8年前から猪胆(乾燥した猪の胆囊)を猟師より入手し,胆囊粉末を冷水に溶き,その胆汁液を生薬として飲用していたことが判明した.飲み残しの胆汁液はなかったが,保管されていた猪胆18個中7個からHEV RNAが検出され,患者から分離された3a型HEVと塩基配列が99.8%一致するHEVが同定された.加えて,リン酸緩衝液で溶出した10%胆汁液のHEV RNAタイターが4.6×105 copies/mlに達するものもあり,猪胆からの感染が強く疑われた.猪の肉やレバーの喫食後のE型肝炎症例はこれまでに多く報告されているが,猪胆が感染源と考えられる症例の報告は今回が初めてである.
著者
福島 能久 大原 俊次 宮崎 弁一 守屋 充郎 佐藤 勲 吉田 富夫
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.1410-1417, 1990-10-20

相変化材料を用いた1ビームオーバライト可能なデータファイル用光ディスク装置を開発した.追記型と同構成の光ヘッドを用いてオーバライト機能を実現した.ディスク径は86mm, 容量は280MBである.また, 可動部が9グラムの分離型光ヘッドにより42msのシーク時間を実現した.オーバライトは, 1つのレーザ光によりアモルファス状態と結晶状態を可逆的に生成することにより行う.再生信号はアモルファス部と結晶部の反射率差から得られる.光ディスクは, 実使用条件下で数10万回以上の書換えが可能であり, さらに, 欠陥管理を行うことにより, 実質的には100万回以上の書換えを可能にした.
著者
宮崎 浩 北川 裕一 安木 剛 桑原 正明 松岡 章雄
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.1159-1164, 2009-09-25
参考文献数
8

Flexインパクタによる歩行者脚部保護性能評価が検討されている.本研究では,衝突挙動や力学応答に影響するインパクタ地上高と付加質量について,人体FEモデルと比較することで適正な条件を検討した.Flexインパクタの力学応答は,地上高75mmとし,SUVでは更に質量6kgを付加する場合が人体応答に近いことが明らかになった.
著者
青木 佳壽子 宮崎 悦子 木戸 友幸 畑 直成 羽間 収治 藤田 周一郎 倉田 明彦
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.173-177, 1990

症例: 74才男性, 1983年より高血圧症, 虚血性心疾患, 肺気腫などで当内科にて経過観察中の患者で, 当初より肝管, 総胆管の拡張あり, 胆嚢腫大も認められた. 1986年には糖尿病発症(NIDDM)をみた. 1987年6月10日ころより執ような下痢が起こり, 7月9日精査治療目的で入院す. 体重9kg減少し, 黄疸(-), 肝鎖骨中線上3横指触知, Courvoisier徴候(+), アミラーゼ414U/L(P: 368, S: 45), CEA: 9.1, CA-19-9:32U/ml, 7月22日ERCP; 膵胆管合流異常, 8月末黄疸出現, PTCD施行, 造影にて完全閉塞を認む. 腹部血管造影施行, 胃十二指腸, 胃腸間膜動脈への浸潤像あり. 静脈リンパ系への浸潤も当然あると考えられ, そのための下痢と判明す. PTCD胆汁細胞診にて乳頭状腺癌検出をみ, 頻度及び造影所見より総胆管癌を疑つた. 2月26日死亡す. 剖検にて中等度分化型膵頭部管状腺癌で, 膵周囲, 総胆管, 肝外胆管及び周囲リンパ節, 胆嚢, 上, 下腸間膜動静脈, 門脈に浸潤転移を認めた.
著者
樋口 孝之 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.35-44, 2008-01-31
被引用文献数
1

本稿では,明治中期において,「意匠」が重要な概念として用いられた各種の文化に関わる言説の語用を確認し,当時に「意匠」が示した意味内容について考察を行った。明治思想において重要な言説でありその影響が極めて大きかった『美術真説』のなかで,フェノロサが説く'power of subject'が大森惟中によって「意匠ノカ」と訳出された。『美術真説』に啓発された近代文学論において,西洋概念アイデア(idea)に対置される日本語として「意」あるいは「意匠」が用いられた。また,修辞学におけるinventionに「意匠」の語を用いて説明した例がみられる。さらに,目的論の論旨におけるdesign(adaptation of means to ends)を説くために「意匠」が用いられた。「意匠」は,各種の制作活動等において主体が客体をどのようなものとするか案出する思考行為を示しており,また,主体が案出した意図として客体に内在し他者が感受する概念として認知されるものを示すこともあることが確認された。「意匠」は、制作した主体の存在をよく認識させることばとして選択され使用されていたと推測される。
著者
鄭 東 田中 三郎 宮崎 康次 高尻 雅之
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
マイクロ・ナノ工学シンポジウム
巻号頁・発行日
vol.2013, no.5, pp.63-64, 2013-11-04

We investigated strain and grain size effects on the thermal transport of nanocrystalline bismuth antimony telluride thin films using both experimental studies and modeling. The fabricated thin films exhibited the average grain sizes of 30 < d < 100 nm, and the strain of-0.8% < ε < -1.4% in the c-axis direction whereas that of a-b-axis direction was constant at 1.7%. The thermal conductivities were measured using a 3ω method at room temperature. We calculated the lattice thermal conductivity using a simplified phonon transport model that accounts for the strain effect based on Christoffel equation and Lennard-Jones potential, and the grain size effect based on the full distribution of mean free paths. The theoretical calculation was largely in good agreement with our experimental results, and the detailed results will be discussed in the Symposium.
著者
宮崎 斉 高橋 桂太 金子 正秀
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.55-58, 2013-02-09

本論文では、人間とロボットが円滑なインタラクションを行うための手法を提案する。同伴対象である人間に対し、ロボットから積極的に「手つなぎ動作」を提案し、つないだ手で様々な行動をとることによって、的確に人間にロボットの意図を伝えることを可能とする。さらに「手つなぎ」状態を人間からロボットへの意思伝達手段にも利用し、人間の手の動きや接触の状態などをセンシングすることで速度調節などの人間側からの要望を即座にロボットに伝達する。このように人間からロボットへの意思伝達機能、ロボットから人間への意図伝達機能をもって、人間-ロボット間の相互的な意図の伝達を実現する。手法の応用例として案内ロボットについて述べる。
著者
宮崎 道彦 黒水 丈次 豊原 敏光 竹尾 浩真 石橋 憲吾 皆川 紀剛 高野 正博
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.151-155, 2001-03
参考文献数
16
被引用文献数
2

平成4年12月から平成11年10月1日までに当院で手術を施行した「ホワイトヘッド肛門」16例の病態をretrospectiveに検討した.男女比は14:2,年齢は32~85歳(平均64.4歳).術前肛門管最大静止圧の平均値は60.8cmH<SUB>2</SUB>Oと低値であるが術前肛門管最大随意収縮圧の平均値は正常であった.観察期間は平均21カ月であった.年齢分布は60~69歳が最多で70~79歳がそれに続いて多かった.無症状期間は平均10.6年,病悩期間は平均26.6年であった.手術は16症例41病変に行った.そのうちわけはligation and excision,with sliding skin graft法(LE・SSG併用法)が21病変,ligation and excision法(LE法)10病変,sliding skin graft法(SSG法)4病変,McGivney rubber band ligation法(RBL法)6病変であった.術前症状としては出血,脱出,疼痛,分泌物付着の頻度が高かったがこれらの症状は手術治療により改善が認められた.しかし便失禁に関しては術後で症状の改善は認められなかった.
著者
紀 永儒 柳川 佳也 宮崎 茂次
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.297-305, 2010-02-15
被引用文献数
1

病院の外来患者待ち時間を短縮するために,本研究では,待ち行列理論を用いたイベント駆動型ネットワークの方法を利用する.そのため,まずは対象になる病院の診療科の待ち行列全体をイベント駆動型ネットワークモデルで構築し,病院の総合受付の到着分布とサービス分布のモデルはM/G/sとする.次に,患者歩行速度を所与とし,診療科間の距離に比例して診療科間の患者の移動時間を決めた上で,患者の期待滞留時間と期待サービス時間に基づく割振りディスパッチングルールを提案する.その後,患者が次に受診しうる診療科の窓口が複数ある場合とない場合,さらに複数のとき,それらの診療科の窓口が空いている場合と空いていない場合に対して,提案ディスパッチングルールによって患者をスケジューリングする.最後に数値実験を通して,患者の総待ち時間への提案の効果を検証する.
著者
李 艶 宮崎 清
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.37-46, 2010-01-31
被引用文献数
1

本稿は、約千年の歴史を有する景徳鎮磁器産業を支えてきた磁器手づくり工房の様態を、文献ならびに現地調査採集資料に基づいて明らかにしたものである。その結果、次のことを明らかにした。(1)景徳鎮では、工房ごとに定められ制作工程を担う精緻な分業体制が布かれながらも、それらの工房が相互的・全体的に結びつき、巨大な磁器生産組織が構築されていた。(2)細分化された分業に基づく工房における磁器づくりのなかで個々の制作工程にかかわる技術・技法の構築、合理的施設の創出が促進された。(3)職人たち自らによる同業者組合が組織され、景徳鎮に居住するおよそすべての人びとが伝統的磁器生産にかかわる都市が構築された。(4)磁器生産を介しての世界との交流・交易を通して500〜600年間ほど世界の磁器市場を独占した景徳鎮の核をなしていたのが伝統的磁器手づくり工房であった。