著者
都築 毅 武鹿 直樹 中村 祐美子 仲川 清隆 五十嵐 美樹 宮澤 陽夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.255-264, 2008 (Released:2009-01-30)
参考文献数
41
被引用文献数
24 28

日本人の食事は世界から健康食として注目されている。しかし,日本人の食事をニュートリゲノミクス手法を用いて遺伝子発現レベルで,欧米の食事と比較し評価した研究はない。そこで本研究は,「日本食」と「米国食」を飼料としてラットへの給与試験を実施し,DNAマイクロアレイを用いて両食事の肝臓遺伝子発現レベルの相違を網羅的に検討した。日本食(1999年)と米国食(1996年)の献立を作成し,調理し,凍結乾燥粉末に調製したものを試験試料とした。ラットに3週間これを摂取させ,肝臓から総RNAを抽出し,DNAマイクロアレイ分析を行った。その結果,日本食ラットは米国食ラットと比べてストレス応答遺伝子の発現量が少なく,糖・脂質代謝系の遺伝子発現量が多かった。とくに,日本食では摂取脂質量が少ないにもかかわらずコレステロール異化や排泄に関する遺伝子の発現量が顕著に増加していて,肝臓へのコレステロール蓄積が抑制された。よって日本食は米国食と比べて,代謝が活発でストレス性が低いことから,日本食の健康有益性が推察された。
著者
田島 桂子 宮澤 義
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.533-539, 2016-09-25 (Released:2016-11-10)
参考文献数
8

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は極めて進行が速く,発症後2~5年で半数ほどが呼吸筋麻痺による呼吸不全で死に至る。呼吸管理をするうえでスパイロメトリーは必要不可欠な検査であるが,筋力障害のためスパイロメトリーが困難で,病態に即した値を導きだすことが難しく,努力呼出の誘導や妥当性の基準は不明である。我々は11症例のALSの病期進行に伴う肺気量変化とFV曲線のパターンの変化の関係を解析し,最大努力呼出の誘導や妥当性の確認の目安となる指標を調べた。ALS患者の病期進行に伴うFV曲線のパターンの変化は,呼出の持続ができず呼気終末が止まる腹式呼出障害パターン,スムーズな胸・腹式共同呼出ができず下降脚が乱れる胸・腹式共同呼出障害パターン,速い呼出ができずピークの低い波形となる胸式呼出障害パターンの順に現れた。また,この呼出障害パターンが現れる肺気量(%FVC)は,腹式呼出障害パターンで100%,胸・腹式共同呼出障害パターンは80%,胸式呼出障害パターンは50%程度で出現しはじめた。肺気量とFV曲線の呼出障害パターンを参考にすることで,病態に合致した最大努力呼出の誘導および妥当性の確認が可能となることが示唆された。
著者
宮澤 正樹 清島 淳 中井 亮太郎 小村 卓也 丸川 洋平 加賀谷 尚史 太田 肇 鵜浦 雅志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.2176-2181, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

74歳男性.慢性骨髄性白血病に対してダサチニブを内服中.血便を契機に施行した大腸内視鏡検査にて横行結腸から直腸にかけて多発し,滲出物の付着と出血を伴うアフタ様びらんを認めた.病理組織学的には表面に炎症性滲出物の付着する陰窩炎であった.感染症を念頭に置いて抗菌薬の投与を行ったが改善せず,ダサチニブによる出血性大腸炎を疑い投与を中止したところ,血便の消失と内視鏡所見の改善を認めた.第2世代チロシンキナーゼ阻害薬であるダサチニブによる消化管出血の報告は散見されるが,ダサチニブ中止前後の内視鏡所見の変化を観察し得た症例は貴重であると考えられた.
著者
田中 福代 庄司 靖隆 岡崎 圭毅 宮澤 利男
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.34-37, 2017-01-15 (Released:2017-01-24)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

前報でリンゴみつ入り果の嗜好性の高さは2-メチル酪酸エチル,ヘキサン酸エチル,チグリン酸エチルなどのエチルエステル類と関連すると推定した.これを検証するために,リンゴ非みつ果の加工品(混濁果汁,ピューレ)とリンゴ風味の加工食品(果汁飲料,キャンディ)に対し,みつ入り果の香気成分プロファイルを再現した7種のエチルエステル類からなるみつ香フレーバーの添加実験を行った.その結果,リンゴ非みつ果の加工品においてみつ風味および嗜好性が高められたことから,エチルエステル類はみつ入り様風味を与え,リンゴの嗜好性を高める主要な成分であることが確認された.また,リンゴ風味食品にこのフレーバーを添加した場合も,みつ風味と嗜好性を強化する効果があり,特に清涼飲料とキャンディにおいて顕著であった.
著者
柳田 顕 江戸 優裕 宮澤 大志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1447, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】足部は荷重位において様々な動作を遂行する際の安定した土台としての役目を担っている。時々刻々と変化する要求に対して,足部は剛性と柔軟性を変化させながら対応している。足部の剛性は,距骨下関節(以下,ST関節)の肢位や,ウィンドラス機構の影響を受ける。ST関節の回外は,横足根関節の縦軸と車軸の交差を強めることにより,可動性を制限し強固な足部を形成する。ウィンドラス機構は,中足指節関節(以下,MP関節)伸展に伴う足底腱膜の巻き上げにより内側縦アーチが緊張し,足部の剛性が高まる現象である。この2つの機能について別々に評価は行うが,関連を考慮することでより詳細な評価が出来ると考える。よって,本研究の目的はST関節肢位が,他動的な足趾背屈による内側縦アーチの挙上に与える影響を明らかにすることとした。【方法】対象は下肢に既往のない健常若年者22名(44肢)とした。対象者の内訳は男性14名・女性8名,年齢22±2.2歳,身長167.8±7.6cm,体重60.3±8.5kgであった。ウィンドラス機構の計測は,赤外線カメラMX-T8台で構成される三次元動作解析システムVICON-NEXUS(Vicon motion system社製)を使用した。反射マーカーの貼付位置は,脛骨粗面・内果・外果・踵後面・踵内側面・踵外側面・舟状骨・第1中足骨頭・第5中足骨頭・母趾頭の1肢につき10点とした。計測肢位は端座位にて股・膝関節屈曲90度とし,大腿遠位部に体重の10%重の重錘を載せることによって足部に荷重をかけた。計測課題はMP関節の他動的な伸展を5回反復する動作とした。計測されたMP関節伸展角度と内側縦アーチ角度における一次回帰係数[以下,ウィンドラス比(MP関節伸展角度/内側縦アーチ角度)]をウィンドラス機構の動態の指標とした。なお,計測はST関節の肢位を変化させるために,傾斜板に足部をおいて行った。傾斜板は,20度外側傾斜(以下,回外位)・10度外側傾斜(以下,軽度回外位)・傾斜なし(以下,中間位)・10度内側傾斜(以下,軽度回内位)・20度内側傾斜(以下,回内位)の5条件とした。そして,下腿に対する踵骨の平均回内外角度をST関節角度[回外(+)]とした。統計学的分析は,1元配置分散分析とGames-Howell法による多重比較検定を用いた。有意水準は危険率5%(p<0.05)で判定した。【結果】ウィンドラス比の平均は,回外位で9.1±3.0,軽度回外位で9.5±2.9,中間位で10.1±3.2,軽度回内位で11.0±3.2,回内位で12.4±4.5であった。回外位のウィンドラス比は,回内位(p<0.01)・軽度回内位(p<0.05)に比べて有意に大きかった。回内位のウィンドラス比は,軽度回外位(p<0.01)・中間位(p<0.05)に比べて有意に小さかった。なお,傾斜板の各条件によるST関節の角度は,回外位で7.4±5.7度・軽度回外位で1.2±5.2度・中間位で-2.4±5.2度・軽度回内位で-5.6±5.0度・回内位で-8.8±5.1度であった。【考察】本研究で定義したウィンドラス比は,内側縦アーチ挙上に必要なMP関節伸展運動の大きさを表すことから,ウィンドラス比が大きいほどウィンドラス機構の効率は低いことを意味する。したがって,本研究の結果は,ST関節の回外位は回内位よりもウィンドラス機構が効率的に作用することを示している。ST関節の回外は,内側縦アーチを挙上させる(Neumann2005)とともに,長腓骨筋に張力を与える。長腓骨筋は,前足部を屈曲させる働きにより内側縦アーチの高さを増す(Kapandji1986)ことから,ST関節が回外位では長腓骨筋も内側縦アーチへの関与を強めると考える。以上により,ST関節回外位ではウィンドラス機構が効率的に作用したと推察される。【理学療法学研究としての意義】本研究よりウィンドラス機構はST関節肢位の影響を受けることがわかった。したがって,ウィンドラス機構を評価する際は,ST関節肢位を考慮すべきと言える。歩行周期において,ウィンドラス機構が最も働くのは立脚終期であり,さらにST関節も回外位となっており,両機能により足部は剛性を高めている。立脚終期の,ST関節回外の減少は,直接的に足部剛性を減少させるだけでなく,ウィンドラス機構の非効率化を生じさせ,間接的にも足部剛性の減少を引き起こす可能性がある。
著者
宮澤 諒 中村 恒一 松葉 友幸 磯部 文洋
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.195-198, 2019

上腕骨外側上顆炎と肩関節可動域の関係性を調べるため,69名を対象に調査を行った.肩関節可動域(range of motion:ROM)を測定し,健側比率を用いて80%未満の場合を肩ROM不良,全て80%以上の場合を肩ROM良好と定義し内訳を調査した.また,2群に分けて性別,年齢,利き手,職業,罹病期間,肘・手関節,前腕回内外のROM,握力,ピンチ力,visual analogue scale(以下VAS)による肘関節の運動時の疼痛,重症度分類,DASH scoreの比較を行った. 結果は肩ROM良好群37名,不良群32名であり46.3%が患側の肩関節の可動域制限を認め,そのうち96.8%は内旋制限を認めていた.今回,患者背景で肩ROM不良群での特徴的な項目は認めなかったが,上腕骨外側上顆炎の治療プログラムにおいて肩関節の関与も考慮していく必要性があると思われた.
著者
宮澤 靖
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.975-980, 2014 (Released:2014-08-20)
参考文献数
16

高齢者が増え医療も高度化したことで、医療依存度の高い臓器不全の患者が増加している。このような患者は急速に栄養状態は悪化するのが特徴で、栄養とリハビリテーションのチーム医療が求められ、症例によってはその経口摂取が不可能であったり経口摂取そのものが患者にとって不利益になる症例も増加してきた。そのために経腸栄養法施行患者が増加し、長期管理の一つの方法として PEGによってより低侵襲に造設が可能になった。しかし、経腸栄養法は、経静脈栄養法に比して生理的であることが利点であるが「生理的であればあるほどトラブルは少ない」はずである。医療従事者のマンパワー不足や食材費最優先主義が横暴化してきて「人がいないから」という理由で加水バッグ製品の使用や1日1回ないし2回投与という非人道的な投与法を施行している施設がある。本来、経腸栄養法は「患者に対して生理的」な投与法であったが最近では「職員に整理的」なものになってしまっている。本来の正しい認識を我々も再確認して、胃瘻造設患者に対し安全で確実な栄養サポートを引き続き継続するためには、経腸栄養剤を正しく使用することが肝要である。

1 0 0 0 OA カビ

著者
吉見 啓 宮澤 拳 阿部 敬悦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.232-235, 2017-05-20 (Released:2017-11-01)
参考文献数
8

一般的には嫌われ者とされがちなカビ。実は我々の生活への貢献度が大きいことをご存じだろうか。本稿では,産業利用の観点から代表的なカビの有効活用と応用展開例について最新の研究成果を踏まえて解説する。
著者
宮澤,淳一
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究
巻号頁・発行日
no.23, 1991-10-01

The Jerusalem section of The Master and Margarita (1929?-40) is a story of a man of agony, the cruel fifth Procurator of Judea, Pontius Pilate, who executed a vagrant philosopher, Yeshua Ha-Nozri, knowing his innocense. In this section, which is written as a historical novel independent of supernatural phenomena, there is an enigmatic figure who rules its world secretly: Afranius, the chief of the secret service to the Procurator. The enigma of Afranius lies in his false report to Pilate of the last moment of Yeshua on the cross: the chief didn't tell him the fact that Yeshua had accepted his atonement and died forgiving him for his conviction; on the contrary, he described Yeshua as if he had ridiculed Pilate and gave him the false words of the philosopher that "cowadice is one of the worst human sins." Having heard the report, Pilate became aware of his sin. so that he instigated the chief to assasinate the betrayer Judas of Karioth in revenge for Yeshua's death. In that sense, it was Afranius who kept Pilate on a string to let him do "evil" of the assasination. The figure of Pilate is not a typical Bulgakovian "coward" who often appears in the earlier novels of Bulgakov, such as the hero of The Red Crown (1992): Pilate is not a passive "coward" who finds no hope and is always in despair, but an active "coward" who tries to do anything, even "evil," to expiate one's sins like Frudov of The Flight (1925-8). At the end of the whole novel, Pilate is led to the world of "light or good" for his activeness. He stands in contrast to The Master of the Moscow section who is a typical passive "coward" so that he only has earned "rest". If we admit the systematical consistency of The Master and Margarita and analize the two "cowards" of the two sections in comparison, we must find out the figures who help the decision of their fates as well: in the Moscow section it is Woland, the Faustian devil, who leads The Master to the fate of "rest"; in the Jerusalem section the other who leads Pilate to the fate of "light"-must be Afranius! He is nothing but a Mephistophelian figure which is the "part of that power which eternally wills evil and eternally works good" (the epigraph from Faust). Thus, in The Master and Margarita there is not only a single Mephistopheles who controls the Moscow section and determine the fate of the hero, but also another Mephistopheles in the Jerusalem section to do the same work. Bulgakov has the device to give the function to the the devils to develop the both stories. His effort leads to the reconstruction of the whole novel as a newly organized evangel, "The Evangel by Bulgakov."
著者
本間 太郎 北野 泰奈 木島 遼 治部 祐里 川上 祐生 都築 毅 仲川 清隆 宮澤 陽夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.541-553, 2013-10-15 (Released:2013-11-30)
参考文献数
53
被引用文献数
5 27

日本は長寿国であり,日本の食事である「日本食」は,健康有益性が高いと考えられる.しかし,ここ50年ほどで日本食の欧米化が進行し,健康有益性に疑問が持たれる.本研究では,健康有益性の高い日本食の年代を同定するため,様々な年代の日本食の健康有益性について,特に脂質・糖質代謝系に焦点を当てて検討した.国民健康・栄養調査に基づき2005年,1990年,1975年,1960年のそれぞれ1週間分の食事献立を再現し,調理したものを粉末化した.各年代の日本食をそれぞれ通常飼育食に30%混合して正常マウスであるICRマウスと老化促進モデルマウスであるSAMP8マウスに8ヶ月間自由摂取させた.その結果,両系統のマウスとも1975年の日本食含有飼料を摂取した群(75年群)において白色脂肪組織への脂質蓄積が抑制された.このメカニズムを探るため,脂質代謝において中心的な働きをする肝臓に対してDNAマイクロアレイ解析を行った結果,ICRマウスの75年群において,エネルギー消費を促進する遺伝子の発現が促進されていた.そして,SAMP8マウスの75年群において,トリアシルグリセロールの分解や脂肪酸合成の抑制,コレステロールの異化を促進する遺伝子の発現が促進されていた.以上より,1975年頃の日本食の成分は,現代日本食の成分に比べてメタボリックシンドローム予防に有効であることが示唆された.
著者
近藤 滋 川上 浩一 渡邉 正勝 宮澤 清太
出版者
大阪大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

ゼブラフィッシュの皮膚模様形成機構に関して、以下の結果を得た。1)色素細胞間の相互作用のネットワークを明らかにした。2)上のネットワークを組み込んだ計算機シミュレーションが、模様形成の過程を正確に再現した。3)模様変異突然変異2種の遺伝子クローニングした。4)クローニングされた遺伝子は、Kチャンネルとギャップジャンクションであった。5)クローニングされた遺伝子、または改変した遺伝子を導入することで、模様がさまざまに変化することを発見した。6)5の事実から、模様形成のためのシグナル伝達には、イオンや低分子が重要な役割を果たしていることが明らかになった。以上により、ゼブラフィッシュの皮膚模様形成に関して、多くの事実が発見され、模様形成原理の解明に大きく近づくことができた。