1 0 0 0 OA がん免疫療法

著者
西村 剛志 加納 里志 佐久間 直子 佐野 大佑 小松 正規 折舘 伸彦
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.237-246, 2013 (Released:2013-12-26)
参考文献数
77

頭頸部癌患者に対する治療方針を決定する場合,現時点で免疫療法が第一選択の方針となることは極めて稀であるが,手術,放射線治療,化学療法との組み合わせで上乗せ効果を期待できる可能性がある。近年開発の著しい分子標的治療薬にも免疫学的知見が反映されており今後の飛躍的な治療成績の向上もあり得る。Biological response modifier (BRM) 製剤,養子免疫療法,ワクチン療法など現在利用可能と考えられる免疫療法と機序につき簡便に概説した。
著者
小松 正之
出版者
University of Tokyo (東京大学)
巻号頁・発行日
2004-04-09

本論文は、1991年から2003年までの13年間、連続して国際捕鯨委員会(lWC)の政策決定に関与した筆者が、鯨類等の国際海洋水産資源の持続的利用を推進するための新たな政策の立案とその実施に関する研究結果を記述したものである。// 1972年6月ストックホルムで開催された国連人間環境会議は、10年間の商業捕鯨モラトリアムを採択した。これを受けて旧捕鯨国(英、米、豪、NZ等)は捕鯨反対行動を展開し、1982年にIWCは商業捕鯨モラトリアムを採択し、これが1986年に発効した。日本は異議申立を行ったが、1986年に撤回し、1988年以降商業捕鯨を一時停止した。商業捕鯨モラトリアムを見直すために必要な作業として、IWCは包括的資源調査評価(CA)をミンク鯨などについて開始し、いくつかの種の系統群については終了した。また資源を保護しながら最小限の捕獲枠を与える手続(procedure)である改訂管理方式(RMP)が、すでに1992年に完成している。// さらに商業捕鯨モラトリアムは、遅くとも1990年までには見直しのための検討をするとの合意がIWCにおいて合意されていたにもかかわらず、14年が過ぎた現在でも資源量が豊富な鯨類(ミンク鯨約100万頭、マッコウ鯨約200万頭など)についてすら捕鯨が再開される兆しは見られない。そこで日本は、死亡率や加入率などの生物学的な指標を得て、資源を持続的かつ安全に管理することを主目的として、国際捕鯨取締条約第八条に基づく調査捕鯨を1987/88年漁期から開始した。// 1991年8月から水産庁の捕鯨担当課長補佐に任ぜられて以来筆者は、鯨類の国際海洋水産資源の持続的利用を目的として設立されたIWCが、上記のような機能不全状況にあることを是正するために、達成可能な政策をいかに中長期的視点で企画立案すべきかを海洋動物資源政策科学の立場から検討してきた。また立案された政策をいかに実施すべきかについて検討し、実際の実施に移すと同時に、その実施結果を再検討することによって、より優れた政策立案を行うというフィードバックシステムを確立した。// 企画立案された政策は、以下の3点に要約される。(1)IWC科学委員会とIWC本会議運営の改善政策、(2)国連食料農業機関(FAO)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)等、IWC以外の国際機関との提携・活用政策、(3)IWC総会の日本開催推進等による国内理解の向上政策。// (1)IWC科学委員会とIWC本会議運営の改善政策として筆者はまず、IWC科学委員会に参加する日本の科学者陣の力量と経験の向上のために、資源の持続利用を支持する経験豊かな外国の研究者陣と日本の研究者陣の交流システムを立案し、実行に移した。この結果、日本の科学者陣は現在では独自の十分な対応が可能となった。さらに、1994年から筆者が議長となって、国際海洋水産資源の持続的利用に関するシンポジウムを毎年開催した。その結果、国際海洋水産資源の持続的利用に関する科学・技術の進展が図られたと同時に、持続的利用を志向する国々のIWC加入が促進され、また持続的利用を科学的見地から理解しうる国々(いわゆる中立国)との相互理解が深まった。// 少なからぬ発展途上の沿岸国は、自国沿岸域で鯨類が繁殖し、多量の魚介類の捕食することによって、自国の漁業資源が枯渇するのではないかと危倶しており、鯨類の資源管理に関する科学的情報を求めたいという希望をもっている。このような開発途上国の要望を実現化するために、彼らのIWC加盟を容易にすべく、分担金を軽減する必要があると考えた筆者らは、国連分担金方式をIWCに導入することを日本の提案に盛り込むことに努めた。その結果、2002年に下関総会で開発途上国の分担金の軽減が決定されるという成果を得た。またデンマークと共同して、本会議のプレスへの開放、テレビカメラ持ち込み等を提案するという提案を立案し、可決されることによってIWCの透明性が確保されるという成果を得た。さらに英語のみを正式な公用語に指定しているIWCにおいて、仏語、西語を母国語とする西アフリカ諸国等のために、通訳の導入促進を推し進める提案を行い実施に移した。// (2)国連食料農業機関(FAO)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)等、IWC以外の国際機関との提携・活用政策として、筆者はFAOに勤務した経験を生かし、1995年FAOの技術的支援を得る枠組みを作成・実施し、さらに日本政府主催の『食料安全保障のための漁業の持続的貢献に関する国際会議」の開催を計画・実施した。この会議(京都会議)は、世界最大の95ヶ国が参加し、鯨を含む複数種一括管理の導入、鯨を含む生態系の全部の要素を満遍なく利用すべきことなどを盛り込んだ京都宣言及び行動計画を採択した。また2001年FAO水産委員会において、日本人として初めての議長を務め、漁業と鯨類の相互作用に関する研究の推進に関する国際的注目を集めたパラグラフ(第24回水産委員会レポートパラグラフ39)を採択することに成功した。// 絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES、ワシントン条約)は、現在世界164ヶ国を加盟国とするより広範な会議であり、発展途上加盟国が多数を占める。1997年ジンバブエで開催の第10回CITES締約国会議では、我が国が提案した南氷洋ミンク鯨のダウンリスティング提案が賛成53対反対59と過半数に迫る支持を得たのは、鯨類等の国際海洋水産資源の持続的利用に関する政策が成果をあげつつあることを示していると考えられる。// (3)IWC総会の日本開催推進等による国内理解の向上政策として、1993年に第45回IWC総会を28年ぶりに日本(京都)で開催したこと、および2002年に第54回IWC総会を下関において開催したことがあげられる。とくに後者のIWC総会開催については、下関市と連携しながら強力にIWCへ働きかけたことが功を奏したものと考えられる。これら2回の日本におけるIWC総会開催によって、鯨類等の国際海洋水産資源の持続的利用に関する国内世論が盛り上がり、風化しかけた捕鯨の重要性が再認識されるという成果を得た。// 鯨類等の国際海洋水産資源の持続的利用については、法的根拠と科学的証拠に基づく主張のみでは、国内外の多くの人々の支持を得ることが困難であると考えた筆者は、法的根拠と科学的証拠を基本としつつ、日本と西洋の捕鯨と食についての歴史と文化の差異について分析し、主張することを新たな施策に取り入れることを試みた。すなわち、日本の捕鯨が鯨体完全利用を特徴としていること、また慰霊祭など自然への感謝の行事を伝統的に保持していることは、鯨類を乱獲することなく持続的に利用することと協働するものであること、さらに現在進めている調査捕鯨の経験を生かした科学情報収集型捕鯨として、未来捕鯨の原型となることを検証し、その優位性を主張することである。// 設立目的から逸脱し機能不全を呈している国際漁業機関はIWCのみではなく、オーストラリア・NZと日本とが対立し、意思決定ができない「みなみまぐろ保存委員会」(CCSBT)も同様の状況を呈していた。すなわち、インドマグロ(ミナミマグロ)の資源回復が充分に図られたと判断した日本は1995年から総漁獲可能量(TAC)の増大を要求したが、その基礎とするため日本が1998年に自国の責任において実施した調査漁獲計画(EFP)を、環境保護色の強いオーストラリアとNZは国連海洋法条約第15部に基づき仲裁に訴えた。また暫定措置要求が両国から提出され、国際海洋法裁判所での審理の結果、我が国は事実上敗訴した。// しかし、科学的根拠に基づいてミナミマグロの持続的利用の正当性を訴えた日本は、2000年に国際仲裁裁判において逆転勝訴することができた。このように法的根拠と科学的証拠に基づく政策を立案し、その正当性を立証する行動計画を実施することによって、CCSBTのような機能不全を呈している国際漁業機関を正常化することが可能であると考えられる。一方、IWCにおいては依然として不正常な状況が続いているが、本論文において示した国際海洋水産資源の持続的利用を推進するための政策の立案と実施の成果を教訓として、より優れた中長期政策を立案・実施することによって、改善が図られるものと考えられる。
著者
小松 正之
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1149, pp.113-116, 2002-07-08

今年5月、山口県下関市で国際捕鯨委員会(IWC)の第54回年次総会が開催されました。今回の最大の目標は、何と言っても商業捕鯨の再開でした。私が一員を務める日本政府代表団はその目標を実現するために、会議で議論する中身について周到な準備を重ね、本番を迎えました。
著者
小松 正憲 西尾 元秀 佐藤 正寛 千田 雅之 広岡 博之
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.157-169, 2009-05-25
参考文献数
35
被引用文献数
1 2

黒毛和種繁殖肥育一貫経営農家経営において,BMSナンバーや枝肉重量(CW)に関与するQTLアリル型情報はどの程度収益上昇に活用できるかを,初期QTLアリル頻度 (<I>p</I>),計画年数 (<I>T</I>),DNAタイピング料金(<I>C<SUB>TYP</SUB></I>),使用する精液差額(<I>SEM</I>),種雄牛と繁殖雌牛の割合(<I>R (s/d)</I>)を変化させて検討した.その結果,BMSナンバーに関わる<I>Q</I>アリルを1個持つことで得られるBMSランク上昇分(Δ<I>BMS<SUB>QTL</SUB></I>)を1.0,BMSナンバー1ランク上昇分の枝肉単価(<I>CWP<SUB>BMS</SUB></I>)を150円/kg, <I>CW</I>を440 kg, CWに関わる<I>Q</I>アリルを1個持つことで得られる枝肉重量上昇分(Δ<I>C<SUB>WQTL</SUB></I>)を20 kg, 黒毛和種去勢枝肉単価(<I>CW<SUB>PU</SUB></I>)を1,900円/kgとした場合,QTLアリル型情報は,黒毛和種繁殖肥育一貫経営農家の経営に充分活用できると考えられた.また,以下のことが明らかになった.QTLアリル型情報を経営に活用する際,集団における<I>p</I>の頻度,<I>SEM</I>および<I>T</I>数が重要であり,<I>C<SUB>TYP</SUB></I>と<I>R (s/d)</I> の重要性は低かった.<I>C<SUB>TYP</SUB></I>が5千円/頭,<I>SEM</I>が1万円程度以下で,1頭当たり1万円程度の収益上昇を確保するためには,<I>p</I>の頻度は,BMSナンバーでは0.6~0.7以下,CWでは0.4~0.5以下であることが示唆された.繁殖雌牛集団のQTLアリル型情報は,<I>p</I>の頻度が0.5~0.7程度の範囲内,<I>T</I>数がBMSナンバーで6年以上,CWで8年以上であれば,収益上昇に貢献できることが明らかになった.
著者
石川 冬比古 富内 芳昌 小松 正
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会研究発表会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.155-155, 2007

高濃度の油脂を含有する廃棄物としてアイスクリームを用い、高温メタン発酵実験を実施した。配管閉塞を起こす要因となる油脂の塊が、生成しない条件の確認を行った結果について報告する。
著者
宮本 弘平 高橋 世紀 安倍 敏 遠藤 達雄 小松 正志
出版者
日本接着歯学会
雑誌
接着歯学 (ISSN:09131655)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.187-197, 2002-12-25 (Released:2011-06-07)
参考文献数
35

これまで, ハロゲンランプ (HA) を光源とする光照射器が光重合型コンポジットレジンの重合に用いられてきた. 近年, キセノンランプ (XE) や青色発光ダイオード (LED) を用いた光重合器が開発され, 臨床応用されている. これらの光照射器は照射時間の短縮や発熱量軽減という利点をもつが, コンポジットレジンの重合や接着に与える影響については不明な点が多い. この研究では各種光照射器の使用によるコンポジットレジンの硬化と接着強さに与える影響について調べた. 各種光照射器の光強度を測定し, 3種類のコンポジットレジンを用い試料を重合後, ビッカース硬さ, 新鮮抜去牛歯に対する引張接着強さを測定した. 光強度はHA, XE, LEDの順に348mW/cm2, 1, 993mW/cm2, 131mW/cm2であった. XEおよびLED使用群で, すべてのコンポジットレジンのビッカース硬さはHA使用群に比較して低かった. XEはその高い光強度によって, 5秒間のみの光照射でボンディング材の重合に有利であると思われた.
著者
白谷 正治 寺嶋 和夫 白藤 立 佐々木 浩一 伊藤 昌文 杤久保 文嘉 斧 高一 後藤 元信 永津 雅章 小松 正二郎 内田 諭 太田 貴之 古閑 一憲
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

本取り纏め研究では、プラズマとナノ界面の相互作用ゆらぎに関する学術的成果を統合・発展させて、より汎用性のある学術大系に結びつけることを目的としている。計画研究代表者を研究分担者として、各計画研究における研究成果を取り纏めるとともに、領域内連携により表れた3つの研究項目に共通する基本原理を統合して体系化する。基本原理の体系化に際しては、すべての研究に関する議論を一度に行うと議論が発散する可能性があるため、ゆらぎ・多相界面・バイオというテーマを設定した個別の研究会を開催し研究分担者が成果を統合した後、シンポジウム等で領域全体での成果統合を行った。平成26年度に取りまとめた、平成21-25年度に新学術領域で得られた成果の概要は以下の様に要約される。これらの成果を成果報告書およびホームページで公開した。ゆらぎに関しては、超高精度トップダウンプロセスの確立(ゆらぎの制御)について、エッチングプラズマに関する実験とシミュレーションの研究グループが連携して、エッチング表面形状揺らぎの機構を解明した。ここでは、揺らぎ抑制法について、従来の物理量を一定にする方法から、物理量に制御した揺らぎを与えて抑制する方法へのパラダイムシフトを起こす事に成功した。また、高精度ボトムアッププロセスの確立(ゆらぎの利用)では、超臨界プラズマに関する実験とモデリングの研究グループの連携により、超臨界プラズマにおける密度ゆらぎ機構を解明し、従来法では得る事ができない高次ダイアモンドイドの合成に成功した。予想以上の顕著な成果として、気液プラズマに関する実験とモデリングの研究グループの連携により気液界面プラズマにおいてナノ界面が存在することを発見した(多相界面プラズマ)。また、高いインパクトを持つ成果として、バイオ応用プラズマ関連の研究グループの連携により、大気圧プラズマ反応系の世界標準を確立することに成功した。
著者
久保田 彰 古川 まどか 小松 正規 花村 英明 杉山 正人
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.149-156, 2006-03-20
被引用文献数
2 4

化学放射線同時併用療法(CDDP/5-FU)後のadjuvant chemotherapyの有用性を検討した.対象は前治療のない根治切除可能な頭頸部扁平上皮癌の41例で,病期はIIIが9例,IVが32例で,下咽頭が14例,喉頭が12例,口腔が9例,中咽頭が6例であった.放射線終了1ヵ月後から外来でUFTE顆粒を400mg/日の連日内服とNedaplatinを80mg/m<sup>2</sup>の点滴を4週ごとに6コースを計画した27例をadjuvant群とし,adjuvant chemotherapyを希望しなかった14例を対照群として生存率,progression free survival (PFS)率をWilcoxon法で検定した.Adjuvant群の投与回数の中央値は6コース(1-6コース)でgrade3の毒性は白血球減少を15.4%,血小板減少を7.7%に認めた.1例が胃潰瘍で死亡した.生存期間の平均はadjuvant群が30.1月(5.5-50.1月),対照群は21.7月(6.6-48.3)で,PFSの平均はadjuvant群が22.8月(3.6-50.1月),対照群は16.3月(4.0-48.8月)であった.2年生存率はadjuvant群が73.7%,対照群が55.7%で,2年PFS率はadjuvant群が66.9%と対照群の27.8%より有意に良好であった(p=0.03290).特に同時併用の奏効度がPRではadjuvant群の2年PFS率は59.3%と対照群の15.6%より良好であった(p=0.01102).局所•頸部リンパ節再発はadjuvant群が29.6%と対照群の64.3%より低い傾向であった(p=0.0716).両群とも遠隔転移はなかった.臓器温存率はadjuvant群が66.7%と対照群の35.7%より高かった(p=0.1183).化学放射線同時併用療法後のadjuvant chemotherapyは局所再発率を減少することが示唆された.