著者
京極 真 寺岡 睦 小林 隆司 河村 顕治
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.521-524, 2014-06-15

Abstract:本論では,作業療法教育における学部・大学院5年一貫教育プログラムの概要を紹介し,実践報告を通してその利点と課題を明らかにした.今回,わが国の作業療法業界で初めて学部・大学院5年一貫教育プログラムに選抜された学生に対し,大学院教育を行った.その結果,意義として,①作業療法学の発展に貢献し得る人材を早期に育成しやすい,②作業療法養成課程におけるキャリアプランを豊かにし,学生のモチベーションの向上に資する,の2点があると論じた.他方,課題として,①教育体制の充実と工夫が必要である,および②大学院教育期間の短縮により受ける制約の検証が必要である,の2点があると論じた.
著者
小川 絵里 赤堀 文昭 小林 好作
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.719-729, 1985-10-15

犬のタマネギ摂取による溶血性貧血の機序を明らかにする目的でin vitroの実験を行ない, ヘモグロビンの崩壊過程, 活性酸素の関与の有無, 赤血球膜の障害について検討した. タマネギ抽出物の添加によりヘモグロビンはヘム鉄の酸化, タンパク部分の変性を経て, Heinz小体形成へと進むことが明らかとなり, この過程においてスーパーオキサイドの発生, 赤血球膜の脆弱化がおこることが確認された. ヘモグロビンの酸化はSOD, カタラーゼ, GSH, マンニトールによって阻止されなかったが, 膜の脆弱化はSOD, カタラーゼにより有意に阻止された. 一酸化炭素ヘモグロビンではヘモグロビンの酸化変性, スーパーオキサイドの発生は認められなかった. したがって, メトヘモグロビンおよびスーパーオキサイドの発生源は酸素ヘモグロビンであり, これらの生成はタマネギ抽出物の存在により促進されることが示唆された. また, 発生したスーパーオキサイドおよびその代謝物である過酸化水素はヘモグロビンの酸化には寄与しないが, 赤血球膜の障害をもたらすことが明らかとなった.
著者
河部 壮一郎 小林 沙羅 遠藤 秀紀
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

 食肉目における水中への適応進化は幾度かおこっており,そしてその度合いも様々である.これまでに,一部の半水棲種における嗅球が小さくなることが知られているが,このことから嗅球体積は水棲環境への依存度を反映していると考えられている.嗅球体積は頭骨形態から計測できるため,絶滅哺乳類における水棲適応の進化を知る上で欠くことのできない重要な情報である.しかし鰭脚類における嗅球体積が他の食肉動物のものと異なるのかどうか詳しく知られていない.一方,視力や眼球サイズも水棲環境への依存度により変化するとされている.しかし,水棲適応度と眼窩サイズに関係があるのか,その詳細な検討はされていない.水棲適応の進化を解明する上で,嗅球や眼窩サイズが水棲環境への適応度の違いを反映しているのかどうかを明らかにすることは重要である.よって,本研究では食肉目における嗅球および眼窩サイズが脳や頭蓋サイズに対してどのようなスケーリング関係を示すのか調べた.その結果,眼窩・脳・頭蓋サイズは互いに高い相関を示すことがわかった.しかし,嗅球体積と脳あるいは頭蓋サイズとの間に見られる相関は比較的低かった.陸棲種と比較すると,鰭脚類を含む水棲・半水棲種の嗅球体積は,脳や頭蓋に対して小さいという結果を得た.これまで,水棲適応度が高い種ほど嗅球体積は小さくなると言われていたが,鰭脚類においてもこのことは当てはまることが明らかとなった.よって絶滅種における水棲適応度を考える上で,嗅球体積は一つの重要な指標になる得ることが示された.しかし,水棲適応度と眼窩サイズには明確な相関が見られなかった.このことは,視覚器は水棲適応により構造的な変化は示すものの,サイズは大きく変化しないという可能性を示しているが,今後のより詳細な検討が必要である.
著者
小林 茂 山近 久美子 渡辺 理絵
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2008年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.110, 2008 (Released:2008-12-25)

2008年3月、ワシントンのアメリカ議会図書館で外邦図の調査をおこなったところ、1880年代に中国大陸・朝鮮半島・台湾で、日本軍将校がおこなった簡易測量にによる手書き原図を発見した。まだ調査は完了していないが、彼らの調査旅行と測量、手書き原図を集成した地図作製、さらにその利用について一定の成果がえられたので報告する。この測量と地図作製は、日清戦争以後の臨時測図部による外邦図作製の前段階と位置付けられるが、記録がすくなく、手書き原図のさらなる調査は、その全貌の解明に大きな意義をもつと予想される。
著者
伊藤 英覚 小林 陵二
出版者
一般社団法人 ターボ機械協会
雑誌
ターボ機械 (ISSN:03858839)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.211-218, 1981-04-10 (Released:2011-07-11)
参考文献数
22
著者
赤間 怜奈 渡邉 研斗 横井 祥 小林 颯介 乾 健太郎
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

本研究は,教師なし学習によりスタイル(言葉遣いや文体など)の類似性を捉えるを試みる初めての研究である.本研究では「スタイル」の類似性を捉えるベクトル空間を構築するに当たり,「同一発話内に含まれる単語は同一のスタイルを持つ」という仮定を置く.この仮定に基づき,同一発話内の単語を予測できるようなベクトルを構成することで,スタイルの類似性を捉えた単語ベクトル空間を獲得する手法を提案する.我々が期待する単語ベクトル空間とは,(「意味」は近くとも)「スタイル」が大きく異なる``俺''と``私''は遠くに配置され,(「意味」は異なっているとしても)「スタイル」が似ている``俺''と``だぜ''が近くに配置されるような空間である.さらに本研究では,スタイルの類似性を包括的に定量評価する手法を提案し,そのための評価データセットを新たに作成する.提案手法により獲得した単語ベクトルが,スタイルの類似性を捉えていることを定量的および定性的に示す.
著者
竹田 喜美子 小林 靖子 Kimiko TAKEDA Yasuko KOBAYASHI 昭和女子大学生活環境学科 昭和女子大学大学院生活学科研究専攻:(現)(株)シナジー
雑誌
學苑 = GAKUEN (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
vol.777, pp.77-91, 2005-07-01

The research focused on the entrance design of apartment houses where troubles between pet-keepers and non-pet-keepers occur one after another. The researchers analyzed the architectural and mental factors which worsen their relationships aiming to establish a system for the peaceful cohabitation of dwellers of both types, and explore the would-be plan of sharing a space which would enhance pet communication. The other purpose of this research is to get the basic knowledge of the cohabiting environment for elderly pet-keepers. From the results, the following proposals can be made. 1. As a system, the management association of the apartment house makes it compulsory for the pet-keepers to register their pets and join the 'Keepers' Society' which makes rules for keeping pets, strives to keep good manners concerning pet-keeping, acts to cultivate the dwellers' community for the keepers, and tries to mediate with the non-keepers for their understanding and cooperation. 2. For shared space to enhance pet communication and to avoid troubles, the following ideas would be beneficial. a. To avoid troubles, the apartments with 'divided entrances' where the keeper and non-keeper use their own entrance is desirable. b. Another idea is that 'shared entrances' have some merit in that they give chances to the dwellers to communicate. c. The most desirable model is to build outside and to one side of the 'divided entrance' for pet-keepers a space with seating and equipment for pets so that non-keepers who love animals can mingle with keepers if they wish while non-keepers who dislike animals can avoid contact. 3. To make a supporting system for the elderly pet-keepers, the 'shared entrance' is desirable. One could expect the elderly keepers to become friends with other keepers when they meet at the entrance. These meetings may motivate them to participate more in the 'Keepers' Society'. With this system, it is more likely that the offer of pet-sitting or pet-adoption will be extended to the elderly when needed.
著者
堤 雅恵 田中 マキ子 原田 秀子 涌井 忠昭 小林 敏生
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:1341044X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.65-71, 2007-03-20
被引用文献数
2

近年,高齢者ケアの現場において音楽,ゲーム,園芸などを手段としたアクティビティケアが頻繁に行われているが,その効果については未だ十分な検討が行われていない.本研究では,介護療養型医療施設に在住する認知症高齢者女性10名(平均年齢84.4±7.1歳,Barthel Index平均得点37.0±30.4点,HDS-R平均得点6.4±6.0点)を対象に,アクティビティケアを実施した日と実施しなかった日の9時から17時までの,携帯式行動量測定装置アクティカルを使ったエネルギー消費量測定による活動量およびタイムスタディによる対人交流時間の調査を実施し,アクティビティケアの効果を検討した,その結果,アクティビティケアが実施された日とされなかった日のエネルギー消費量は,それぞれ338.9±70.4kcalおよび344.0±86.4kcalであり,有意差は認められなかった.対人交流時間については,アクティビティケアが実施された日の対人交流時間の合計は137.9±45.0分で,実施されなかった日の対人交流時間96.1±40.4分と比較して有意に多かった(p=0.042).本研究結果から,アクティビティケアの実施が活動量の増加にはつながりにくいものの,対人交流の時間の確保につながることが示唆された.
著者
小林 信彦 Nobuhiko KOBAYASHI 桃山学院大学文学部
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学総合研究所紀要 = ST.ANDREW'S UNIVERSITY BULLETIN OF THE RESEARCH INSTITUTE (ISSN:1346048X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.107-140, 2001-03-15

Japanese kamis who hate sins get angry and bring about disasters when men do wrong. Without sins they are happy and do not cause disasters. Taking advantage of this behaviour, the Japanese framed the idea of kekwa They tried to soothe angry kamis by chanting sutras as magic formulae in order to stop disasters such as droughts and plagues. This is a new type of harahe and therefore repenting is not involved in spite of its name "kekwa" (to repent).
著者
松本 淳 林 泰一 山根 悠介 小林 茂 寺尾 徹 山本 晴彦 釜堀 弘隆 久保田 尚之 赤坂 郁美 福島 あずさ 村田 文絵 藤波 初木 加藤 内藏進
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

国内で実施中のデータレスキュー研究活動をまとめ、国際的活動と連携するACRE-Japanを、本研究を中核として組織し、アイルランドと北京で開催された国際会議報告を国際共著論文にまとめた。またMAHASRIプロジェクトの後継となるアジアモンスーンに関する国際共同研究の立案を開始し、国内・国際ワークショップを主宰した。南アジアについては、旧英領インドの現ミャンマー・バングラデシュ領内の日降水量データの原本照合・品質チェックが完了し、過去120年スケールの長期変化傾向についての解析を進めた。インド北東部チェラプンジの104年間の日降水量データから、インド北東部のモンスーン活発期の発生機構を明らかにした。バングラデシュの1955年~1980年後半、インドアッサム州の1930年~1950年代後半までのシビアローカルストームデータベースを構築し、発生日の長期変動について解析した。スリランカの1860年代以降の日降水量データ収集した。東南アジアについては、フィリピンの過去115年間のモンスーン開始期および20世紀後半以降における降水の季節変化パターンの長期変動を解明した。日本とフィリピンの過去120年間の台風活動を調べ、近年の大きな被害を出した台風と類似の台風が過去にも上陸していたことを示した。中国については、日降水量データ(Zi-ka-wei)1890年代~1930年代のデジタル化を完了した。樺太、朝鮮、北支那における気象データの統合と検証を行い、東北部黒龍江省における温暖化解析と水稲冷害のリスク解析、東北部・内蒙古自治区の乾燥地帯における雨季の変動解析を行った。帝国日本の気象観測ネットワークに関する2冊の書籍を刊行した。東アジアの多彩な季節サイクルの長期変動解明を行なった。日本については、東海・四国地方の明治・大正期の日降水量データをデジタル化し、大雨発生の長期変化等を解析した。
著者
小林 麻衣
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-12, 2013-07-30 (Released:2013-08-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究では人々の学業目標追求時の自己統制葛藤状況に焦点をあて,学業場面における誘惑対処方略 (Temptation Coping Strategy in Academic situation: TCSA)に関する尺度を作成し,その信頼性および妥当性を検討した。研究1では,予備調査で選定された40項目に対して,大学生に回答を求めた。因子分析の結果,TCSA尺度は「目標意味確認方略」「気分転換方略」「誘惑回避方略」「目標実行方略」の4つの下位尺度(計20項目)から構成されることが示された。研究2では妥当性の検証を目的に,自己調整学習方略,学業的満足遅延,先延ばし意識特性との関連を検討した。研究3では,再検査信頼性の検討を行った。その結果,妥当性に関して幾つかの課題が残るものの,TCSA尺度の信頼性と妥当性が確認された。
著者
竹本 良章 小林 賢司 月村 光弘 高澤 直裕 加藤 秀樹 鈴木 俊介 青木 潤 近藤 亨 齊藤 晴久 五味 祐一 松田 成介 只木 芳隆
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.5-8, 2016

3次元積層技術を用いた多層フォトダイオードCMOSイメージセンサによるマルチバンドイメージングを実証した.このイメージセンサは,フォトダイオードアレイを有した複数の基板を積層し,それぞれのフォトダイオードアレイを独立して駆動する事で,最適化した駆動条件でそれぞれの画像を取得できる.また積層構造を活かし,これまでの2次元構造で用いられたようなRGB (Red, Green, Blue)画像に限らずIR(赤外)画像も同時に取得するといったマルチバンドイメージングが実現可能である事を確認した.この際にそれぞれのフォトダイオードアレイでRGB画像とIR画像を同一デバイスで同時に撮像可能であり,RGB画像の画質劣化を引き起こす事もない.このような特徴を活かし,これまでのIRイメージセンサとRGBイメージセンサを組み合わせたシステムと比較し,より小型・安価かつ多機能なシステムの実現が期待される.
著者
野島 義照 沖中 健 小林 達明 坊垣 和明 瀬戸 裕直 倉山 千春
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.115-120, 1992-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
5
被引用文献数
8 9

建築物の壁面につる植物を被覆させることによる夏期の壁面温度の上昇抑止効果を把握するための測定実験を行った。簡易建築物の南側につる植物で覆われた壁面とつる植物のない壁面とを設け, 壁面温度, 壁面での熱流の経時変化を, 晴れた日, 曇りの日, 晴れた日で室内は冷房, という3種類の異なった条件の日に計測した。そのうち1日の計測では, つる植物の葉からの水分の蒸散量, 地際の幹での樹液流速の計測, 熱赤外線ビデオカメラを用いた南側壁面全体の表面の温度分布の画像撮影をも行った。壁面の緑化により壁面の最高温度を約10℃低下させることができること等が確かめられた。また, 日中, 壁面緑化による壁面温度の低減量が大きくなるにつれて, 葉からの蒸散量も大きくなる傾向が見られた。
著者
新井 裕幸 倍味 繁 田原 俊介 伊藤 晋介 中原 夕子 守本 亘孝 小林 伸好 板野 泰弘 山口 高史 丹羽 一夫 関 二郎 志垣 隆通 中村 和市
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.144, no.3, pp.126-132, 2014 (Released:2014-09-10)
参考文献数
2
被引用文献数
1

医薬品の研究開発において,動物試験は新薬候補物質のヒトでの安全性および有効性を予測するために非常に重要なものである.また,3Rs(Replacement,Reduction,Refinement)の観点からも,より効率的に新薬候補物質の評価を行うことが必要である.このような理由から,疾患モデル動物には高い精度,再現性,ヒトへの外挿性を有することが求められている.日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会では,これまでの医薬品開発に貢献した疾患モデル動物について把握するとともに,今後の疾患モデル動物の開発に資することを目的として,加盟企業を対象にアンケート調査を行った.調査票では,これまでに新薬の開発等で使用した疾患モデル動物,使用によって得られた成果,使用の際に苦労した点および当該疾患モデル動物について改善されるべき点を尋ねた.さらに,今後期待される疾患モデルに関して意見を求めた.アンケートの回答は62 社中31 社から得られた.その結果,これまでに様々な疾患を対象とした医薬品の開発に多様な疾患モデル動物が使用されており,その多くの事例で疾患モデル動物の使用によって目的とする疾患に対する新薬候補物質の有効性が確認されていた.すなわち,新薬開発における疾患モデル動物の有用性と意義が改めて示された.使用の際に苦労した点としては,試験方法の至適条件の設定や疾患モデル動物作製の困難さ等に関する意見が多かった.各疾患モデル動物の改良すべき点としては,動物福祉の観点から動物に与えるストレスレベルのさらなる軽減,ヒトの病態や発症機序への類似性,薬効のヒトへの外挿性,ばらつきの程度,データの精度・再現性,モデル作製に要する手術等の高度な技術を必要としない簡便性が挙げられた.将来的な期待としては,ヒトの病態をより正確に反映した,外挿性の高いモデルの開発を期待するとの意見が多かった.本稿では,これらの調査結果の詳細を報告するとともに,動物試験および疾患モデル動物の役割,ならびに今後の展望について考察を加えた.