著者
長田 久文 蔡 培梁 太田 ふさ 殿村 た喜子 伊瀬知 幸代 中居 澄子 小野 文子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.98-101, 1979-02-25

1.はじめに 母乳栄養の確立が論じられてから,各方面より数多くの報告がみられ,全国的に普及した感がある。横浜市愛児センターにおいても,従来よりこの問題にとりくみ,授乳方法の検討からはじまり,乳汁分泌を促進および抑制する因子について検討を行なってきた。 第17回日本母性衛生学会において,「乳汁分泌に対する各種薬剤の影響」をはじめとし,社会的因子,環境的因子,行政的因子等について報告した。
著者
小野 雅琴 清水 亮輔
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.68-78, 2018-09-30 (Released:2018-12-14)
参考文献数
28

制御焦点理論は本来,促進焦点を有する個人はポジティブな結果を重視した判断を行う一方で,予防焦点を有する個人はネガティブな結果を重視した判断を行うというテーゼを提唱する理論であるが,拡張の結果として,促進焦点を有する個人は感情的に結果を判断しようとする一方で,予防焦点を有する個人は認知的に結果を判断しようとするというテーゼも提唱されている。このテーゼを援用することによって,本論は,口コミ発信者に対する妬みが口コミ受信者による推奨製品の忌避に帰着すると説く最新の口コミ研究の主張を部分的に反駁し,促進焦点を有する個人はそうである一方で,予防焦点を有する個人はむしろ推奨製品を採用する傾向にあると主張する。消費者実験を行って収集されたデータを用いてANOVAを行ってテストしたところ,仮説は首尾よく支持された。
著者
為沢 一弘 小野 志操 佐々木 拓馬 団野 翼 中井 亮佑
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-2_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】小殿筋は股関節の関節包に付着しており、股関節を求心位に保つ役割があるとされている。そのため、股関節疾患を有する患者では、小殿筋の筋攣縮を招き、股関節の可動域制限に繋がることを経験する。我々は、第43回股関節学会にて開排動作に股関節外側の組織の柔軟性が関与する可能性を報告した。今回、我々は実際に小殿筋の組織弾性が低い例では、股関節のどの可動域に影響をおよぼすのかを検討した。【方法】対象は、股関節に既往のない成人男性12名24股である(平均年齢26.8±4.8歳、身長172.0±4.7cm、体重66.1±4.2kg、BMI22.4±1.2)。測定は、小殿筋の組織弾性と股関節の可動域測定を実施した。組織弾性の測定は、超音波画像診断装置(日立製作所製noblus)のReal-time Tissue Elastography機能を使用した。リニア型プローブを用い、専用アタッチメントと音響カプラを装着して使用した。被験者を安静背臥位とし、股関節中間位における小殿筋の組織弾性を計測した。測定部位の描出は、プローブを大転子前面に当て、短軸走査にて小殿筋の最前方線維を確認した後、長軸走査として筋線維の走行に合わせて近位方向に移動し、腸骨稜の起始部を描出した。測定の関心領域は、小殿筋内で可能な限り広範囲にとった。音響カプラを比較対象の点とし、算出された値を測定値とした。測定は同一検者が計3回行い、平均値を算出して測定値とした。測定値の中央値にて、小殿筋の組織弾性値の高値群と低値群の2群に分けた。股間節の可動域は、日整会の定める可動域の項目に加え屈曲伸展中間位での内外旋およびパトリックテスト肢位での脛骨粗面と床面の距離(以下、KFD)とした。統計学的検討はMann-WhitneyのU検定を用い、2群における各可動域の有意差の有無を比較した。有意水準は5%未満とした。【結果】小殿筋の組織弾性の平均は0.49±0.45、中央値は0.49で、高値群は平均0.48±0.25、低値群は0.59±0.24であった。2群における可動域に優位な差を認めたのは外旋(高値群:47.1±11.4、低値群:35.8.±11.45、p=0.03)、中間位内旋(高値群:37.5±15.59、低値群:24.6.±12.33、P=0.04)、およびKFD(高値群:20.8±3.46、低値群:24.6.±4.12、p=0.03)であった。【結論(考察も含む)】Beckらは股関節屈曲位での外旋および股関節伸展位での内旋にて小殿筋が伸張されると報告している。今回の我々の研究でも同様の結果を示しておりそれを裏付けする形となった。加えて、本研究では組織弾性の低い群では開排動作の可動性も小さいことが示された。開排動作は日本人にとってあぐら動作などで重要な動作である。開排肢位は股関節唇前上方の圧が高まるとされている。開排制限の改善は股関節唇への機械的ストレスを軽減する重要な要素の一つと考えられる。股関節の外旋、中間位内旋および開排動作に制限を有する症例では、小殿筋の柔軟性が十分であるかを確認することが重要であることが考えられた。【倫理的配慮,説明と同意】今回の発表に際して、被検者には研究の趣旨と内容を十分に説明した上で同意を得た。
著者
小野 芳朗 西寺 秀 中嶋 節子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.77, no.676, pp.1513-1520, 2012-06-30 (Released:2012-07-27)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Biwako canal in Kyoto City was constructed in the period from 1885 to 1890 in order to supply water for irrigation systems and develop the utilization of water power, transportation by ship and so on. There were 2 routes on the canal, the one was the route in Ohtoh area beside eastern district of Kamo river for the transportation and later also for hydroelectric power, the other was the route of north-east area of Kyoto for the irrigation. The expropriation performance of the canal was discussed in this paper depended on the maps drawn in the construction and the cadastre on expropriation. The new city planning in the Ohtoh area, especially road networks along the canal was designed, and the canal route was determined to decrease flow rate and to choose the low cost expropriation.
著者
小野寺 勇雄 上條 康幸 宮西 孝則
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1655-1661,017, 2003-11-01 (Released:2010-10-27)
参考文献数
14
被引用文献数
2

スギは国内に豊富に存在する樹種であり, 建築材や家具等, 様々な用途に利用されているが, パルプ原料とした場合, リグニンや樹脂成分を多量に含み, 容積重が低いことからKP原料としては適していないとされている。しかし, 容積重が低いというスギの特徴はKP原料ではなく, 機械パルプの原料として適性があると考えられたことから, 本研究では実験室スケールでスギを原料としたTMP製造技術について検討を行った。ラジアータパインに対するスギの配合率を種々変更した原料チップからCTMP法を用いて機械パルプを調製し, パルプ物性の評価を行った。その結果, スギ配合率の増加に伴って, パルプの比散乱係数が増加した。各パルプにおけるファインの性質について調査を行ったところ, スギ配合率が増加するにつれて, 光学的性質に寄与するフレーク状ファインが多く生成することが明らかとなった。従って, スギを配合することにより比散乱係数が増加したのは, 生成するファインの性質が変化したためであると推定される。また, 過酸化水素を用いた漂白実験において, スギを20%配合した場合は, 配合しないものに比べて到達白色度が約3ポイント高いという結果が得られた。以上の結果から, スギを原料として製造した機械パルプは, 光学的性質に寄与するフレーク状ファインが多く生成することから比散乱係数が高く, 紙の不透明度向上に対して有望な原料であると考えられる。さらに, 今回評価を行ったスギCTMPは白色度が高く, 漂白性にも優れていることがわかった。
著者
西条 寿夫 小野 武年
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.281-288, 2014-09-30 (Released:2015-10-01)
参考文献数
20

霊長類を含めて脊椎動物は, 特定の視覚性物体 (天敵, 被捕食動物, 食物), 音 (鳴声), フェロモンなど, 生存に重要な特定刺激を, これまで一回も経験したことが無くても, 生後直後から学習無しに認知できる。これは, これら刺激の認知に関与する神経系が, 本能的認知機構として遺伝的に符号化されているからである。霊長類では, 網膜→上丘→視床枕→扁桃体 (あるいは連合野等) からなる膝状体外視覚系 (皮質下経路) が, 物体の本能的認知に関与し, サル視床枕や上丘には, 顔様パターンや霊長類の天敵であるヘビに応答するニューロンが存在する。これらニューロンの応答特性から, 膝状体外視覚系は顔や天敵の視覚情報を低解像度で処理して素早く検出することに関与していることが示唆された。以上から, 膝状体外視覚系が, 霊長類の脳の進化や乳児における脳発達に関与している可能性について述べる。
著者
小野 展克
出版者
嘉悦大学研究支援・論集編集委員会
雑誌
嘉悦大学研究論集 = Kaetsu University research review
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-17, 2014-10

本研究では、昭和金融恐慌を当時の新聞が、どのようなキーワード、キーセンテンスを使用して報じたのかを分析した。具体的には、片岡直温蔵相の失言に端を発した東京渡辺銀行の取り付け騒ぎを東京朝日新聞、読売新聞、中外商業新報がどのようなキーワードを使って記事化したのかを分析した。昭和金融恐慌は、この東京渡辺銀行の取り付け騒ぎ、鈴木商店の経営不振による台湾銀行の信用不安、台湾銀行の休業という3つの波があり、片岡直温蔵相の失言は、その幕開けとなった事件として注目される。また、先行研究として金解禁をめぐる新聞論調の変化を追った中村宗悦や経済報道のゆらぎ現象の増幅効果を指摘した駒橋恵子らの考察を踏まえ、報道が昭和初期の政策決定に与えた影響も考察した。
著者
小野田 波里
出版者
京都大学文学部科学哲学科学史研究室
雑誌
科学哲学科学史研究 (ISSN:18839177)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.21-49, 2011-02-28

In the process of forming the general theory of relativity, demands of the theoretical principle play an important part, and these are regarded as the basis that the general theory of relativity is a relativistic theory of space and time, combined with Einstein's philosophical reference. However, historically speaking, the general theory of relativity was not constructed on some theoretical stipulations in a consistent way, but rather it went through some shifts of them. So by scrutinizing these shifts, we may clarify the actual process of the theory's construction. In this paper, we pay attention to two ideas, "the relativity of inertia" and "Mach's principle," which are not regarded as a theoretical principle of the general theory of relativity nowadays. And we will try to give an answer to the following questions: (1) why Einstein thought that "Mach's principle" was important as a theoretical principle when the general theory of relativity completed, (2) why he thought "Mach's principle" was related to what Ernst Mach claimed, and (3) what is the idea which was called "the relativity of inertia." Making these ideas clear contributes to solve some confusions on the foundation of the general theory of relativity.
著者
大川 清孝 青木 哲哉 上田 渉 佐野 弘治 小野 洋嗣 中内 脩介
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.470-481, 2018 (Released:2018-10-25)
参考文献数
32

サイトメガロウイルス(CMV)腸炎は免疫不全症や集中管理を要する重症患者が背景として多い.内視鏡像では打ち抜き様類円形潰瘍のみでなく,輪状傾向潰瘍,帯状潰瘍,縦走潰瘍,二段潰瘍などの存在,多彩な潰瘍の混在などがあれば,本症を疑う必要がある.診断には病理学的検査(HE染色による核封入体の検出とCMV免疫組織検査によるCMV抗原の検出)やCMV抗原検査が用いられるが,偽陰性が多いのが問題である.潰瘍性大腸炎(UC)においてステロイド抵抗性や難治性の場合にCMV腸炎合併を疑う必要がある.病理学的検査とCMV抗原検査は,特異度は高いが偽陰性が多い.粘膜CMV-DNA検査は感度,特異度とも高いが,抗ウイルス療法の適応を決めるには疑陽性が多くなるため,適正なcut off値を決める必要がある.両疾患ともCMV検査が陰性であっても,臨床的にCMV感染症を強く疑えば,診断的治療が必要なこともある.
著者
小野 将史 北野 隆
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.576, pp.157-162, 2004-02-28 (Released:2017-02-09)
参考文献数
15

This is a study on the repair of Kumamoto Castle by Kato Tadahiro (Kumamoto Castle Lord) for twenty years from 1612 to 1632 by studying the darwing "Higo-kumamotojoTyakuzu" in the Monjokan of Yamagutiken and "Kumamoto-yasikiwari-sitaezu" in the Library of Kumamotoken, the writing "Higo-uto-gunki" in the Li- brary of Utosi and the drawing "Utojo-zu" in "Higo-uto-gunki". The results are as follows; 1. Kato Tadahiro repaired the composition of Kumamoto Castle from for easts to west for three years from June, 1612 to June, 1615. 2. Kato Tadahiro moved Utojo-Tenshu from Uto Castle and made it Kumemotojo-Kotenshu in Kumamoto Castle for three years from June, 1612 to June, 1615. 3. The cause which Kato Tadahiro was confiscated Higo-koku was because he repaired Kumamoto Castle.
著者
小野 浩
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.47-67, 2006-05-25 (Released:2017-08-09)
参考文献数
80

This paper aims to clarify the circumstances of the housing problem in Tokyo after Kanto Daishinsai [the Great Kanto Earthquake of 1923] mainly in relation to the supply and demand on the rental housing market. Based on the marked increase in housing demand following the earthquake, excessive housing investments were made in the suburbs of Tokyo city. However, the increase in housing supply in Tokyo city, on the one hand, and the increase in tenants due to intensification of the recession, on the other, widened the gap between supply and demand by area. The focus of the housing problem shifted from an absolute lack of housing into a problem of affordability. By the end of the 1920s, dissatisfaction intensified among low-income tenants who were shut out of the private rental housing market. From 1929 to 1930, rental rates decreased in general under the influence of a decline in prices and a movement for rent reduction.
著者
上嶋 あぐり 大井 麻莉菜 小野 明日香 鈴木 淳仁 福井 拓夢 古田 晶子 山本 晃平 河本 大地
出版者
奈良教育大学教育学部社会科教育専修
巻号頁・発行日
2017-03-01

監修: 河本大地 、編集: 上嶋あぐり・大井麻莉菜・小野明日香・鈴木淳仁・福井拓夢・古田晶子・山本晃平、協力: 飛鳥地区自治連合会 済美地区自治連合会 椿井地区自治連合会 各町の皆様 (公社)奈良まちづくりセンター 奈良市 奈良町資料館 奈良町にぎわいの家
著者
小野 明日香 藤本 七彩 山本 晃平 大船 稀也 岩本 廣美 河本 大地
出版者
奈良教育大学教育学部社会科教育専修
巻号頁・発行日
2017-02-01

監修: 岩本廣美・河本大地、編集: 小野明日香・藤本七彩・山本晃平・大船稀也、協力: 飛鳥ニューツーリズム協議会 明日香村地域振興公社
著者
小野 亮祐
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.25-26, 2011 (Released:2017-08-08)
著者
小野 緋呂美 髙田 圭祐 小岩 正樹
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.26, no.62, pp.365-370, 2020

<p>The documents about the construction of Ishiyamadera-temple during the Nara period still exist, and the restoration research of the main hall has been examined. This paper focused on rafters and angle rafter and tried to restore the roof by examining document and drawing. The grade can be calculated from the dimensions of the listed rafter, and the advanced estimation of the material used for the main hall. As a conclusion, it is thought that the roof type was a hipped roof, and discovered the process of construction in ancient periods.</p>
著者
益富 和之 永田 裕一 小野 功
出版者
進化計算学会
雑誌
進化計算学会論文誌 (ISSN:21857385)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-12, 2015 (Released:2015-04-28)
参考文献数
28

This paper proposes a novel evolution strategy for noisy function optimization. We consider minimization of the expectation of a continuous domain function with stochastic parameters. The proposed method is an extended variant of distance-weighted exponential evolution strategy (DX-NES), which is a state-of-the-art algorithm for deterministic function optimization. We name it DX-NES for uncertain environments (DX-NES-UE). DX-NES-UE estimates the objective function by a quadratic surrogate function. In order to make a balance between speed and accuracy, DX-NES-UE uses surrogate function values when the noise is strong; otherwise it uses observed objective function values. We conduct numerical experiments on 20-dimensional benchmark problems to compare the performance of DX-NES-UE and that of uncertainty handling covariance matrix adaptation evolution strategy (UH-CMA-ES). UH-CMA-ES is one of the most promising methods for noisy function optimization. Benchmark problems include a multimodal function, ill-scaled functions and a non-C2 function with additive noise and decision variable perturbation (sometime called actuator noise). The experiments show that DX-NES-UE requires about 1/100 times as many observations as UH-CMA-ES does on well-scaled functions. The performance difference is greater on ill-scaled functions.
著者
宇都 良大 小野田 哲也 愛下 由香里 田中 梨美子 大重 匡
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.59, 2016 (Released:2016-11-22)

【はじめに】糖尿病において,末梢神経障害は最も早期に発症する合併症であるが,特に痛みを伴う有痛性糖尿病神経障害は大きな問題となる.その中でも,軽い触覚刺激などで疼痛を生じるアロディニアは,不眠症や抑うつ症状を伴いQOLを低下させ,治療行動へのアドヒアランスも低下する.今回,アロディニアを発症した症例に対して,痛みに考慮しながら療養指導や運動療法を行うことで,QOLの改善と運動療法のアドヒアランスが改善した1例を経験したので報告する.【症例】糖尿病教育入院を経験している2型糖尿病の49歳男性.夜間帯の仕事によって食事と睡眠が極めて不規則となり,体重増加と血糖コントロールが不良となった.また,アロディニアによって,四肢末梢・右顔面や全身にnumerical rating scale(以下NRS):4~8の持続疼痛が生じ,抑うつ状態の進行と睡眠障害が悪化し,就業不能となり再教育入院となった.インスリン強化療法と内服による疼痛コントロールが開始された.発汗で掻痒感が出現すること,低血糖への恐怖から運動に対しての意欲は低く,行動変化ステージは熟考期であった.生活習慣改善と体重コントロール目的でリハビリテーション(以下リハ)依頼となり,抑うつ状態や希死念慮に対しては,臨床心理士のカウンセリングが開始された.【検査所見】身長181.7cm,体重101.5kg,BMI30.7kg/m2,体成分分析(BIOSPACE社,In Body720)において骨格筋量37.7kg,体脂肪量33.7kg.血糖状態は,空腹時血糖200~210mg/dl台,HbA1c(NGSP)8.2%,尿ケトン体陰性.アキレス腱反射-/-,足部振動覚 減弱/減弱,末梢神経障害+,網膜症-,腎症+,自律神経障害+.【経過】介入時,覚醒状態不安定で,動作による眩暈・ふらつきを伴うため臥床時間が延長し,食事摂取量は不安定であった.生活習慣の構築を目的に,食前の覚醒促しと食後1~2時間の運動療法介入を設定した.自己管理ノートに日々の体重と,運動療法前後の血糖値を記録し,低血糖対策の個別指導をした.非運動性熱産生(以下NEAT)の指導を行い,日中の活動量向上を促した.運動療法プログラムは,NRSから有痛症状を訴にくい部位を判断し,股関節周囲のストレッチと体幹のバランス訓練を開始した.介入4日目から下肢筋力訓練を追加実施可能となり,介入12日目に掻痒軽減が図れたタイミングで有酸素運動を開始した.【結果と考察】内服による疼痛コントロールと,インスリン強化療法による糖毒性解除により,空腹時血糖値が90~100mg/dl台と改善したことに伴い,NRS:1~2と疼痛が軽減した.また,眩暈やふらつきが軽減したことで日常生活に支障がなくなり,カウンセリングにより情緒面の安定が図れたことで3週間後退院となった.仕事の関係上,夜型のライフスタイル変更は図れなかったが,食事時間を規則的にすることや昼間の活動量を高めることを約束された.体重97.4kg,骨格筋量37.0kg,体脂肪量30.7kgとなった.筋力訓練やウォーキングを自主訓練として立案・実行するようになり,行動変化ステージは準備期となった.【まとめ】アロディニアは,通常痛みを起こさない非侵害刺激を痛みとして誤認する病態であり,QOLの低下,糖尿病療養に必要なセルフケア行動やアドヒアランスが低下し,運動療法の阻害因子となる.しかし,疼痛コントロールやインスリン治療について十分に把握する事に加えて,病態を理解して疼痛部位の詳細な評価を行い,適切な運動療法の介入を行うことで,アドヒアランスの改善が生じたと考えられる.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会の承認を得た.対象者には研究内容についての説明と同意を得た上で実施した.