著者
保母 敏行 飯田 芳男 石橋 耀一 岡本 研作 川瀬 晃 中村 利廣 中村 洋 平井 昭司 松田 りえ子 山崎 慎一 四方田 千佳子 小野 昭紘 柿田 和俊 坂田 衛 滝本 憲一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.363-392, 2008-06-05
被引用文献数
6

(社)日本分析化学会は1993年にU,Thの含有率を認証した二酸化ケイ素標準物質を開発して以来,燃焼灰,土壌,底質,河川水,排水,プラスチックス,工業材料,食品と多岐にわたる種類の標準物質の開発を続けており,現在頒布中の標準物質は23種類に上る.認証対象は特定成分の含有率で,成分はダイオキシン類,金属元素など環境分析で扱われるものが多いが,食品では栄養成分を対象とした.本会の標準物質の大きな特徴は純物質あるいはその溶液ではなく,上述のように,環境試料あるいは工業製品であること,つまり一般分析者が実際に扱う試料の形態であることである.認証値の決定方法は,まず均質性の保証された試料の調製と,多数の試験機関の参加による分析共同実験,そして得られた報告値をロバスト法を導入した統計手法で処理して評価し,信頼性ある認証値を得る,という手法によっている.また,これらの標準物質の開発時において,例えばダイオキシン類のガスクロマトグラフ分離の状況,PCBの抽出条件と塩素置換数の変化など,貴重な知見が得られたことは分析手法改善につながる収穫といえる.
著者
向井 淳治 徳山 絵生 木本 美香 宮武 望 小野原 未由来 本荘 愛美 濱田 藍子 髙橋 直継
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.245-251, 2014-04-10 (Released:2015-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
4 4

Izumi Municipal Hospital conducts practical hospital training for pharmacy students by dividing the training schedule into four periods according to the content of the programs offered. When we read the training diaries drawn up during that period, we found no uniformity in the description methods used by different students, and found evidence of quantitative and qualitative differences. This may indicate that there are problems with the instruction method being used. We therefore investigated the diaries' written content in order to identify the cause of differences between the descriptions therein and problems with the instruction method.A text mining technique was employed to analyze nouns used in the training diaries. Regarding the pattern of the appearance of nouns, similarities were observed among students in passive training programs, but differences were found between students in active training programs.It was suggested that the stronger the connection was between nouns appearing in the diaries within each of the scheduled training periods, the more the students associated these nouns with each other to understand the material presented during training.In light of these findings, it is suggested that (1) it is important for students to understand the material they have learned during training and make connections with each other and (2) it is necessary for instructing pharmacists to provide instructions while confirming and assessing students' training diaries. The evaluation of training diaries using the data mining technique was useful for these purposes.
著者
平塚 裕介 佐藤 麻美子 小野寺 克洋 佐藤 勝智 木幡 桂 田上 恵太 宮城 妙子 佐竹 宣明 井上 彰
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.229-233, 2018 (Released:2018-07-19)
参考文献数
15

悪性消化管閉塞(malignant bowel obstruction: MBO)に伴う症状に対して,デキサメタゾン(Dexamethasone: DEX)が投与される.本研究の目的は,DEXが投与されたMBO患者における経口摂取量の変化を調査することである.2016年10月〜2017年9月までに緩和ケア病棟に入院した患者(N=262)のうち,MBOの臨床的徴候を認める(病歴・身体所見・画像所見),Treitz靭帯以下の閉塞,治癒の見込めない腹腔内の原発癌を有する,または,腹腔内に病変を有する非腹腔内の原発癌を有し,DEX投与をした症例(N=10)を後ろ向きにカルテ調査した.対象症例のうち6例に平均3.8日間に経口摂取量の増加を認めた.全例DEX投与開始用量は8 mg/日であった.MBOに対するDEX投与により,経口摂取量の増加が得られる可能性がある.
著者
小野 智佐子
出版者
東洋大学現代社会総合研究所
雑誌
現代社会研究 (ISSN:1348740X)
巻号頁・発行日
no.15, pp.177-183, 2017

<目的>ワーキングマザーが体験する、就学前および就学後の「小1の壁」を明らかにすることである。<結果>小学生1~3年生までの子をもつ核家族世帯の共働き家庭であるワーキングマザーを対象にインタビュー調査を行った。共働き家庭にあるワーキングマザーは、就学前と就学後にそれぞれ異なる「小1の壁」体験をしていた。就学前には【就学後の生活がイメージ困難】、【納得のゆく放課後保育を探せない】、就学後には、【学童保育は保育園の延長線ではない戸惑い】、【わが子の放課後が心配】、【雇用形態の変更に迫られる】、【夏休みに入り新たな問題に遭遇】、【PTA活動に貢献できないジレンマ】、【サポートが得られないことによるストレス】であった。 BackgroundThe purpose of this study is to clarify the "first grade barrier" that is experienced by working mothersbefore and after children start elementary school.MethodI conducted interviews with working mothers of dual-income nuclear families who have children in thefirst- to third-year at elementary school.ResultsThe mothers faced different types of "first grade barriers" in the period of before and after their childrenstarted elementary school; the barriers before starting school were that they could not prepare for theirroutine, and they could not find after school care that they were satisfied with; barriers after starting schoolwere that they felt confused about the fact that after school care was different from daycare, they wereworried about their children after school, they had to change their employment status, they faced newissues during summer holidays, there was a dilemma that they could not contribute to PTA activities, andthey suffered stress because they could not get any support.
著者
本山 美由紀 小野 玲 井上 順一朗 牧浦 大祐 三輪 雅彦 黒坂 昌弘 宇佐美 眞 黒田 大介
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.711-715, 2010

〔目的〕本研究の目的は食道癌患者の術前と退院時における倦怠感,心理状態,QOLの変化について検討し,さらに倦怠感と心理状態およびQOLの相互関係について検討することである。〔対象〕食道再建術を施行した食道癌患者20名。〔方法〕倦怠感,心理状態(抑うつ,自覚ストレス),QOLについて質問紙を用いて評価した。術前と退院時の比較についてpaired t testを用い,倦怠感と心理状態およびQOLとの相互関係についてはPearsonの積率相関係数を用いて検定した。〔結果〕倦怠感は術前から退院時かけて強くなっていた。抑うつ,ストレス,QOLに関しては術前から退院時まで有意な変化が認められなかった。相互関係については,倦怠感と自覚ストレス,倦怠感とQOLに相関関係が認められた。〔結語〕倦怠感,心理状態,QOLを評価することは,患者の状況を十分に把握し,心理面に配慮したリハビリテーションを実施する上で重要であると考えられる。<br>
著者
佐藤 建吉 小野 正則
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.23-28, 2003

本論文は多くの市民による風力発電事業を行うためのビジネスモデルを提案している.グリーン・プレミアム・カードGPCが風力発電所建設資金を集めるために導入されており,グリーン・コミュニティが同時に形成される.GPCによるベネフィットがクレジットカード会社,協賛会社,およびグリーン・コミュニティから提供される.このコミュニティは京都議定書,環境税,地域エコマネーの動向にもとづいて進んだ環境社会を形成するために寄与できる.
著者
喜田 宏 河岡 義裕 岡崎 克則 伊藤 寿啓 小野 悦郎 清水 悠紀臣
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

我々は鳥類,動物および人のインフルエンザウイルスの生態を研究し,得られた成績に基づいて,1968年に人の間に出現した新型インフルエンザウイルスA/HongKong/68(H3N2)株のヘマグルチニン(HA)遺伝子の導入経路を推定し,提案した。すなわち,渡り鴨の間で継持されているH3インフルエンザウイルスが中国南部で家鴨に伝播し,さらにこれが豚に感染した。豚の呼吸器にはそれまでの人の流行株でうるアジア型(H2N2)ウイルスも同時に感染し,両ウイルスの間で遺伝子再集合が起こって,A/HongKong/68株が誕生したものと結論した。今後もこのような機序による新型ウイルスの出現が予想されるので,渡り鴨と豚のインフルエンザの疫学調査と感染実験を継続することによって,新型ウイルスを予測する研究を計画した。インフルエンザウイルスの供給源として,北方から飛来する渡り水禽および中国南部の家禽集団が考えられて来た。毎年,秋に飛来する渡り鴨からウイルスが高率に分離され,春に北方に帰る鴨からはほとんど運離されないことから,北方圏の鴨の営巣地が一次のウイルス遺伝子の貯蔵庫であると推定した。そこで,本学術調査では1991年および1992年の夏に,米国アラスカ州内の異なる地域で水禽の糞便を収集し,これからウイルスの分離を試みた。マガモとオナガガモ計1913,カナダガン1646,白鳥6,シギクおよびカモメ7合計2579の糞便材料から75株のインフルエンザウイルスおよび82株のパラミクンウイルスを分離した。インフルエンザウイルスはほとんどがアラスカ中央部ユコン平原の湖に営巣する鴨の糞便材料から分離されたが,南部のアンカレジ周辺や北部の材料からの分離率は極めて低かった。分離されたインフルエンザウイルスの抗原亜型はH3N8が14,H4N6が47,H8N2が1,H10N2が1,H10N7が11およびH10N9が1株であった。抗原亜型およびウイルスの分離率は,糞便材料を収集した鴨の営巣地点によって異なっていた。1992年には湖沼水からのウイルス分離をも試み,鴨の糞便から得られたものと同じH4N6ウイルスがそれぞれ2つの異なる湖の水から分離された。鴨の営巣地でその糞便から分離された14株のH3インフルエンザウイルスのHAの抗原性をモノクローナル抗体パネルを用いて詳細に解析した結果,A/HongKong/68ならびにアジアで鴨,家鴨および豚から分離されたH3ウイルスのHAと極く近縁であることが判明した。この成績は水禽の間で継持されているインフルエンザウイルスの抗原性が長年にわたって保存されているとの先の我々の見解を支持する。以上のように,鴨が夏にアラスカの営巣地でインフルエンザウイルスを高率に保有しており,湖水中にも活性ウイルスが存在することが明らかとなった。従って,北方の鴨の営巣地が一次のインフルエンザウイルス遺伝子の貯蔵庫であるとの推定が支持された。秋に鴨が渡りに飛び発つ前に,糞便と共に湖沼中に排泄されたウイルスは冬期間,凍結した湖水中に保存され,春に帰巣する鴨がこれを経口摂取して感染し増殖することを繰り返して存続して来たのであろう。秋,冬および春に一定の鴨の営巣地点で水,氷および凍土を検索することによって,自然界におけるウイルスの存続のメカニズムならびに遺伝子進化を知ることができるであろう。水禽の糞便から分離されたパラミクンウイルス82株のうち81株はニユーカッスル病ウイルス(NDV)であった。これらNDVのHNおよびF糖蛋白の抗原性をモノクローナル抗体パネルを用いて詳細に解析した結果,ワクチン株と異なるものが優勢であった。水禽の間に高率に分布しているNDVが家禽に導入される可能性が考えられるので,渡り鴨の糞便から分離されるNDVの抗原性ならびに鴨に対する病原性を継続して調査する必要があろう。
著者
小野田 亮介 鈴木 雅之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.433-450, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
48
被引用文献数
6

本研究では,アーギュメント構造が意見文評価に与える影響について,影響の論題間差と評価方法による差異に着目して検討した。アーギュメント構造としては,主張への賛成論だけを示す「反論なし文」,賛成論に加えて反論を想定する「反論文」,賛成論と反論想定に加えて再反論を行う「再反論文」の3構造を設定した。また評価方法としては,1つの論題について構造の異なる3つの意見文を相対的に評価する「相対評価法」と,1つの論題について単一の構造の意見文のみを評価する「独立評価法」の2つを設定した。実験1では,大学生41名を対象に相対評価法による説得力評価を求めた。混合効果モデルによる分析を行った結果,論題にかかわらず再反論文は他の構造の文章よりも高く評価され,反論文が他の構造の文章よりも低い評価を受けた。実験2では,大学生123名を対象に独立評価法による説得力評価を求めた。その結果,平均すると,アーギュメント構造による説得力評価の差異はみられなかったが,アーギュメント構造の影響の方向性は論題によって異なっていた。以上より,アーギュメント構造が意見文評価に与える影響は論題や評価方法によって異なることが示唆された。
著者
杣川 知香 福田 雄高 吉村 正太 佐藤 慧 日宇 健 小野 智憲 牛島 隆二郎 戸田 啓介 堤 圭介
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.629-635, 2017-07-10

Ⅰ.はじめに 内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤(internal carotid-posterior communicating artery aneurysm:IC-PC AN)に合併する同側動眼神経麻痺(oculomotor nerve palsy:ONP)は,切迫破裂の警告症状やくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)に伴う局所神経症状として広く認知されているが,対側に生じることは極めて稀である19).今回われわれは,SAH発症約1日後に対側ONPを発症したIC-PC ANの稀な1例を経験した.文献的考察を加えて報告する.
著者
宇田 暢秀 久能 和夫 小野 幸生 青木 隆平
出版者
九州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

炭素繊維強化樹脂(CFRP)を用いた水素貯蔵用高圧タンクの研究が国内外で進められているが、CFRP積層板の層間強度が低いために、き裂が発生すると水素漏れを引き起こすことが懸念されている。そこで、CFRP積層板の層間にカーボンナノチューブ(CNT)のような優れた力学的特性を有するナノ材料を分散させたナノ複合材料が開発できれば、これまでにない高破壊靭性複合材料となる可能性があり、水素貯蔵タンクの外板へ適用できる。しかしながら、CNTは樹脂との接着の弱さや樹脂中に均質に分散されないという問題がある。分散の問題については、製造時にCNTがお互いに絡まりあい、樹脂中で凝集したままの状態で存在してしまうことが原因の1つに上げられる。本研究では、分散性を向上させるために超音波を用いて多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を切断し、複合材料を製作した。引張試験、摩耗試験を行い、製作した複合材料の力学的特性を評価した。超音波処理したMWCNTのSEM画像から、超音波処理を行うことでMWCNTが切断され、大きな凝集がなくなったことが確認できた。試験片として、(1)エポキシ樹脂試験片、(2)超音波処理をしていないMWCNTをエポキシ樹脂に混ぜた試験片(MWCNT/epoxy)、(3)超音波処理したMWCNTをエポキシ樹脂に混ぜた試験片(超音波MWCNT/epoxy)の3種類を製作した。MWCNTの含有量は1重量パーセントとした。引張試験の結果から、MWCNT/epoxyおよび超音波MWCNT/epoxyのヤング率は、エポキシ樹脂単体よりもそれぞれ10%と2%向上した。一方、MWCNT/epoxyの引張強度はエポキシ樹脂よりも12%低下し、超音波MWCNT/epoxyでは3%増加した。ヤング率の向上はMWCNTを含有させた効果と考えることができる。超音波MWCNT/epoxyのヤング率がMWCNT/epoxyよりもかなり低くなっている原因としては、CNTの分散が促進されたことと、ボイド率が増加したことの2点が上げられる。また、MWCNT/epoxyではCNTが凝集したままになっており、引張強度は大きく低下している。超音波処理したMWCNTをエポキシ樹脂に混ぜると樹脂の粘性が上がり、ボイドの除去が大変難しくなるという問題が発生した。摩耗試験では、超音波MWCNT/epoxyの比摩耗量がエポキシ樹脂に比較して11%低下しており、CNTの含有と分散性の向上による効果と考えられる。