著者
山口 健一
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.149-169, 2007-07-20 (Released:2013-10-23)
参考文献数
11

本稿はA.ストラウスの相互行為論における,パーソナルな行為者が有するアイデンティティの変容と持続性について検討する. 諸状況においてパーソナルな行為者が意図的であれ非意図的であれ集団の成員として行為する(名づける)とき,その行為者はその行為が示す集合的アイデンティティを有する.パーソナルな行為者は状況的にも時間的にも複数の集合的アイデンティティを有し,それらは時間の経過とともに変容する.またパーソナルな行為者の経歴は,同一化・脱同一化していく地位移行であり,常に新たな集合的アイデンティティを獲得するプロセスである.これがパーソナルな行為者が有する集合的アイデンティティの変容である. パーソナルな行為者による再帰的行為としてのパーソナルなアイデンティティは,過去から未来にわたる経歴における複数の集合的アイデンティティを秩序化したものである.これは再帰的行為の時点においてその行為者が属す集団の用語法によって行われる.しかし再帰的行為の都度パーソナルなアイデンティティの正当性が問われるため,パーソナルなアイデンティティを持続させる営みは継続していく.これがパーソナルな行為者が有するパーソナルなアイデンティティの持続性である.
著者
大塚 裕子 諏訪 正樹 山口 健吾
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第29回 (2015)
巻号頁・発行日
pp.2N5OS16b5, 2015 (Released:2018-07-30)

本研究では、感じ方や表現方法の個人差を重視した言語化プロセスについて研究することを目的に、複雑で多様な日本酒の味わいを対象とした言語使用のデータを作成する。作成にあたり、個人が直感的に創作したオノマトペで味わいを表現し、その後、その言語音の創作理由を弁別的に分析し、言語化する。創作オノマトペと分析的用語の対応により、従来の味覚表現を超えた、個人差の反映された味わい表現リストを作成する。
著者
山本 兼右 山崎 秀男 高倉 玲奈 小川 利政 桑野 忠雄 三浦 一利 山口 健人 久保 文裕 蓮尾 智之 房永 佳那 稲葉 有美江 田中 幸子
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.365-375, 2015 (Released:2015-06-15)
参考文献数
24

本研究の目的は, 対策型検診撮影法(基準撮影法I)と任意型検診撮影法(基準撮影法II)の実効線量を明らかにすることである。対象は, 大阪がん循環器病予防センターで胃がん検診を受診した40,456名から男女別, 撮影法別で無作為に抽出した240名である。方法は, 240名の1検査の面積線量(DAP)と入射表面線量(ESD)を分析し, モンテカルロシミュレーションソフトPCXMC dose calculations Ver.2.0.1.3を用いて実効線量を算出した。1検査の実効線量と入射表面線量は, 基準撮影法Iで4.41mSv, 33.97mGy, 基準撮影法IIで5.15mSv, 46.92mGyであった。受診者の男女別および撮影技師の経験年数による差の分析では, 両撮影法IとIIともに, 男性と5年未満の技師の実効線量が多い結果となった(P<0.05)。また, 受診者のBMIと実効線量の関係は, 両撮影法IとIIともに, 正の相関関係があることを確認した(I:r=0.500, P<0.05), II:r=0.584, P<0.05)。本研究は基準撮影法IとIIの実効線量を日本で初めて明らかにした研究である。
著者
岡本 和也 山口 健吾 丸 典明
出版者
The Japan Society of Mechanical Engineers
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.72, no.718, pp.1840-1847, 2006
被引用文献数
3

We propose a method for following motion control of the mobile robot by using Linear Visual Servoing (LVS). Following motion control is realized by the following motion of the body to the target object keeping a desired distance. Following motion control by using LVS is based on linear approximation of the transformation between binocular visual space and motion space of the mobile robot. Motion space is defined by translational velocity and rotational velocity of the robot coordinate system which is attached at the center of gravity of the mobile robot. Some experimental results are presented to demonstrate the effectiveness of the proposed method.
著者
小西 舞 小荒田 秀一 山口 健 田代 知子 副島 幸子 末松 梨絵 井上 久子 多田 芳史 大田 明英 長澤 浩平
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.154-161, 2011 (Released:2011-06-30)
参考文献数
17
被引用文献数
8 12

症例は67歳女性.主訴は頭痛,四肢の小結節・紅斑.近医にて慢性腎不全・高脂血症を治療中であったが,インフルエンザワクチン接種を行った.接種2週間後,微熱,頭痛が出現し,CRP高値,MPO-ANCA陽性,腎機能障害,側頭部の圧痛,四肢の紅斑を指摘され,紹介受診となった.紅斑の組織像で動脈周囲に炎症細胞浸潤,フィブリノイド壊死を認め,側頭動脈の組織では炎症細胞浸潤と巨細胞を伴う血管炎を認めた.CTで両肺に多発する斑状影を認め,肺胞出血または間質性肺炎と考えられた.顕微鏡的多発血管炎(mPA)と側頭動脈炎(GCA)の合併と診断し,副腎ステロイドによる治療を開始した.CRP, MPO-ANCAの陰性化を認め,腎機能も改善した.その後,日和見感染症を併発し死亡され剖検がなされた.剖検では,半月対形成性糸球体病変が証明された.本例はインフルエンザ・ワクチン接種を契機として2つの血管炎が同時に発症しており,組織学的に巨細胞性血管炎と微小血管炎が証明された世界初の報告である.血管炎症候群に共通する発症機序を示唆する貴重な症例と考えられた.
著者
永野 諭 山口 健 吉川 浩
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 34.6 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.245-249, 2010-02-15 (Released:2017-09-21)
参考文献数
3

ホログラムを撮影する際は,暗室内にて撮影光学系を組み立てる必要がある.その際,光学素子は丁寧な扱いを要し,また暗室内で行うため,初学者へ撮影や光学系構築の手順を教えることが難しい.したがって,場所を選ばず,手軽で簡単に撮影方法を勉強・練習できる環境が求められる.そこで我々は,拡張現実感技術により,卓上で仮想的に光学系を構築させることで,ホログラム撮影の基礎を体感学習できるツールを提案している.以前は,デニシュークホログラムの撮影に必要な光学素子や,その配置を考慮して光学系を構築できるようにした.今回の報告では,以前の報告内容の簡易評価に加え,フレネルホログラムの記録と再生を行えるようにすることで,初学者への学習効果の向上を図る.
著者
相引 梨沙 義澤 宣明 山口 健太郎 下村 徹 氷川 珠恵 瀧 陽一郎 山添 真喜子 栗山 章
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.182-188, 2016-06-15 (Released:2016-06-29)
参考文献数
20

日本を訪れる外国人旅行者(以下,訪日外国人旅行者)は,2015 年に過去最高の1 973 万人を記録し,今後も増加が見込まれている.観光立国実現に向け,災害時における訪日外国人旅行者の安全確保の重要性が高まっている. そのため,例えば観光庁では,訪日外国人旅行者の受入れを担う地域や民間事業者による災害時の安全確保のための環境整備やICT(情報通信技術)を活用して災害情報を提供するプッシュ型情報発信アプリ「Safety tips」の提供を行っている. 本稿では,訪日外国人旅行者に向けた災害時の情報提供の取り組みを紹介するとともに,災害時に情報弱者となりうる人々に向けた今後の災害情報提供のあり方についても考察する.
著者
山口 健太郎 谷本 圭志 長曽我部 まどか
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_173-I_181, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
30

今日の社会が抱えている社会的課題の多くは,複数の分野にわたる「子課題」を内包している.防災はその典型であり,高齢者など弱者の支援,被災後のまちづくり,防災投資の経済効果などの子課題を内包している.このような課題の解決に向けては,子課題に精通している専門家が総合的な解決策を模索するための協働的な体制づくりが必要である.しかし,それぞれの専門家の関心を直ちに把握することができないため,適切な構成員の人選には試行錯誤を伴うのが一般である.そこで本研究では,テキスト情報の背後にある関心を解析する手法を用い,専門家が発信するテキスト情報から個々人の関心を定量的に評価し,その結果を活用して体制づくりを支援するための手法を検討する.
著者
山口 健太郎 谷本 圭志 長曽我部 まどか 前波 晴彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_111-I_121, 2018 (Released:2019-02-19)
参考文献数
12

わが国における防災に関する社会的な関心は高く,またその関心に応えるための防災研究の推進が期待されている.しかし,社会的な関心/学術的な関心の状態と,それら双方の近接(もしくは乖離)の度合いを知ることは容易ではなく,このことは,社会的関心(社会ニーズ)に基づいた防災研究の戦略立案の困難さの原因となるであろう.この困難さの根本的な要因は,学術的な関心にせよ社会的な関心にせよ,それらを定量化するための手法が十分に開発されていなかった点が挙げられるが,近年ではテキスト解析手法が開発され,これらの分析が可能になってきている.加えて,分析するためのデータについても入手が容易になっている.そこで本研究では,テキスト解析を用いて,防災に関する学術的な関心と社会的な関心の近接度を実証的に分析する.
著者
新垣 薫 大湾 一郎 砂川 憲政 大嶺 啓 山口 健 城間 隆史 池間 康成 金谷 文則
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.228-232, 2007 (Released:2007-06-01)
参考文献数
8

人工股関節置換術後の股関節部痛の鑑別疾患として人工関節の感染,臼蓋コンポーネントのloosening,恥骨の不顕性骨折,腰椎疾患,腹部疾患などがある.今回,人工股関節置換術後に鼠径部痛を来たし,腸腰筋腱炎の診断にて腸腰筋腱切離術を施行し,疼痛が消失した症例を経験したので報告する.症例は57歳,女性.平成11年右THA,平成12年左THAを施行し,右THA術後4カ月頃より右鼠径部痛を自覚.血液検査所見,骨シンチ,関節穿刺液の培養検査より感染は否定的で,鎮痛剤により経過観察したが疼痛改善を認めなかった.関節内への局麻剤の注入にて一時的に症状が改善し,関節造影にて臼蓋カップの前方に腱性索状物が造影され,身体所見と併せて腸腰筋腱炎と診断.手術にて腸腰筋腱の切離を行ったところ術後は鼠径部痛が消失し,現在は疼痛なく経過.人工股関節置換術後の腸腰筋腱炎は臼蓋カップ辺縁が前方に突出する場合に生じることがあり,術後疼痛の鑑別疾患として念頭におく必要がある.
著者
山本 健 山近 重生 今村 武浩 木森 久人 塩原 康弘 千代 情路 森戸 光彦 山口 健一 長島 弘征 山田 浩之 斎藤 一郎 中川 洋一
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.106-112, 2007-09-30 (Released:2011-02-25)
参考文献数
23
被引用文献数
16

ドライマウスにおける加齢の関与を検討するため, 2002年11月から2007年4月までに鶴見大学歯学部附属病院ドライマウス専門外来を受診した2, 269名を対象に, 1.性別と年齢, 2.主訴・受診の動機, 3.全身疾患, 4.常用薬剤, 5.唾液分泌量, 6.ドライマウスの原因の集計を行い, 次のような結果を得た。1) 受診者の男女比は17: 83であり, 男女とも50歳代から受診者数が増加し, 女性では60歳代, 男性では70歳代の受診が最も多かった。2) 65歳未満と比較し, 高齢者では男性の受診率が増加しており, 高齢者での性差の縮小がみられた。3) 口腔乾燥感を主訴とする受診者は44.1%であり, 口腔粘膜の疼痛 (28.7%), 唾液や口腔内の粘稠感 (8.3%), 違和感・異物感 (7.1%), 味覚異常 (3.1%), 口臭 (1.9%) の順に多かった。4) 全身疾患は, 高血圧が30.7%に認められ, 次に脳血管障害を含む精神・神経系疾患 (25.4%) が多かった。5) 非シェーグレン症候群性ドライマウスは92.5%にみられた。6) シェーグレン症候群は, 全調査対象の7.0%であり, そのうち65歳以上の高齢者が53.5%を占めていた。以上のような結果から, ドライマウスの成立機序には加齢に伴う複合的な要因の関与が示唆された。
著者
赤木 里香子 森 弥生 山口 健二
出版者
日本美術教育学会
雑誌
美術教育 (ISSN:13434918)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.289, pp.8-15, 2006-03-01 (Released:2010-10-20)
参考文献数
5
被引用文献数
2

In this paper we give a typology designed for classifying art appreciation instructions in secondary schools. Two dichotomies are set. The first is to ask how instruction is made; do teachers get the appreciation of art works based on historical and cultural knowledge or students' own judgment? The second is to ask what the aim of instruction is; is it a preparation for making art works or a step for other kinds of broad activities. Combining the two dichotomies art appreciation instructions are divided into four types. The benefit of the typology does not reside in categorizing function itself but in making clear what the point of each instruction is. We also give an example in which a certain art appreciation lesson unit is designed properly with the typology.
著者
矢部 辰男 大友 忠男 原島 利光 重岡 弘 山口 健次郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.53-55, 2017

<p>横浜市中区の市街地で,2015~2017年の3年間(いずれも2月)に,屋外に生息するドブネズミについて,人獣共通感染症である広東住血線虫の寄生状況を調べた.広東住血線虫の検出可能な2カ月齢以上のドブネズミにおける寄生率は,2015年から2017年までの順に,2/41(4.9%),5/27(18.5%),6/21(28.6%)となり,2017年の値は2015年よりも有意に大きかった.</p>
著者
早川 弘之 高井 富美 田中 博道 宮坂 貞 山口 健太郎
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.1136-1139, 1990-05-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
18
被引用文献数
18 23

Displacement of a hydroxyl group in pyrimidine nucleosides having a vicinal diol system by a fluorine atom was investigated by using diethylaminosulfur trifluoride (DAST). Though participation of the base moiety often thwarts the desired introduction of a fluorine atom, it was found that appropriate modification of the base and/or sugar moieties allowed the desired fluorodehydroxylation to occur, giving 5'-, 3'-β-, and 2'-α-fluorinated uracilnucleosides in good yields.