著者
深谷 英則 大野木 哲也 山口 哲
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.210-214, 2020-04-05 (Released:2020-09-14)
参考文献数
17

Atiyah–Patodi–Singer(APS)の指数定理は,境界のある多様体上の数学の定理である.こう書くと難しそうで拒否反応を示す読者もいるかもしれないが,もともと指数定理は物理学を起源としていて,実際,電子と電磁場の性質を関係づけるものである.4次元で平坦な時空を考え,電場E,磁場BとしてAPS指数定理を書き下すと,となる.ここで,左辺のn±は電子の満たすDirac方程式でカイラリティ(運動方向に対するスピン演算子)という性質が±1の解の個数を表す.右辺のcは次元だけで決まる定数,第二項はη不変量とよばれ,境界面Yに伝導電子が現れたとき,そのDirac演算子の正の固有値と負の固有値の差を表す量である.したがって,APS定理は電磁場の情報(を時空間で積分したもの)と,電子の全体のDirac方程式の解の個数,および境界上に現れる電子の情報の三つの物理量を結びつけるものである.さらに,この定理の右辺第一項は,絶縁体の内部(バルク)の重い電子の有効作用と考えられ,表面(エッジ)の伝導電子の時間反転対称性の量子異常の相殺を説明する.すなわち,APS定理の第一項(バルク電子の寄与)がゼロでない場合,それに応じて必ず第二項の起源となる境界上の伝導電子(エッジ電子)が現れなければならず,合計が整数になるという性質が,系全体での時間反転対称性を保証する.この性質は,近年注目されているトポロジカル絶縁体の性質と一致する.トポロジカル絶縁体とは,内部で電子がギャップを持ち,絶縁体としてふるまうが,表面ではギャップが閉じてよい伝導性を示す特殊な物質である.上記で示したAPS指数定理の性質は,量子異常の相殺を通じて,トポロジカル絶縁体のバルクエッジ対応を説明する,その数学的保証を与える.このことから,近年,素粒子論,物性理論の研究で注目されている.しかし,APS定理のオリジナル論文は難解で,しかも物理的に実現されるとは考えられない非局所的な境界条件をフェルミオン場に課すことで定理を導いている.2017年,私たちは素粒子論でよく知られた手法を使って,APS指数定理と同じ結果を与える新しい定式化を見出した.非局所的境界条件を必要とせず,ドメインウォールフェルミオンとよばれる,トポロジカル絶縁体のよい模型となる演算子を用い,APSと同じ結果を与える物理量を定式化した.この新しい定式化は計算もより簡単なので,「物理屋でもわかるAPS指数定理」として発表した.この研究は数学者からも大きな反響を呼び,指数定理の専門家である古田幹雄氏,松尾信一郎氏,山下真由子氏が加わり,物理,数学の分野をまたがる共同研究へと発展した.その結果,「任意のAPS指数に対し,それと同じ結果を与えるドメインウォールフェルミオンの演算子が存在する」ことの数学的証明を与えることができた.この証明ではさらに1次元高い時空の指数定理を異なる2つの方法で評価,それぞれがオリジナルのAPS指数および私たちの新しい定式化と一致することで示された.この結果は任意の偶数次元,任意のリーマン計量を持つ多様体上でのAPS指数について成り立つものである.
著者
山口 哲生 家敷 拓弥 森田 健敬 澤江 義則
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.7, pp.464-468, 2022-07-05 (Released:2022-07-05)
参考文献数
16

すべり摩擦は,二つの物体が互いに接触し,すべることによって生じる力学現象である.我々の生活のほぼすべてに関係しているといっても過言ではないくらい,身のまわりのさまざまなところに現れる.ダヴィンチ(L. da Vinci)以降,500年以上にわたって膨大な量の実験結果が蓄積され,エンジニアリングでの活用がなされてきた.すべり摩擦に関する学問分野は,トライボロジーと呼ばれる.トライボロジーでは,機械システムにおける金属間の摩擦や摩耗,潤滑に関する研究を中心に,さまざまな取り組みが行われている.また,物理学や高分子科学,地球科学などにおいても,金属,セラミクス,炭素材料,プラスチック,岩石などの幅広い物質群に対して,摩擦の素過程から定常的挙動,過渡的ふるまいに至るまで,実験,理論,数値解析を用いた研究が進められている.とりわけ,摩擦係数のすべり速度依存性は,多くの物質において,古典的な摩擦法則であるクーロン–アモントン(Coulomb–Amontons)則からの逸脱が明らかになってきた.素過程を色濃く反映し,かつシステムのダイナミクスを左右する重要な特性であるため,近年,多くの研究が行われている.しかしながら,我々が知る限り,すべての実験はすべり速度が小さい低速条件でのみ行われており,高速条件における理解が不足していた.ここで,低速,高速とは,一体何に対してであろうか? 今回着目するのは,摩擦が起こる材料(固体)の弾性波速度である.空気中の音波(縦波)とは異なり,固体には,S波(横波),P波(縦波),レイリー(Rayleigh)波(表面波)など複数の弾性波が存在し,それぞれが異なる伝播速度をもつ.それらよりも速くすべらせる“超音速”では,どういった現象が見られるのであろうか?しかしながら,超音速条件におけるすべり摩擦の実験は,典型的な摩擦材料である金属では容易ではない.なぜなら,金属の弾性波速度は,その中で最も小さなレイリー波速度ですら10 km/s程度と極めて大きく,同程度あるいはそれ以上のすべり速度を実現するのが困難であるからである.それでは,一体どうすれば超音速すべり摩擦を実行できるのか? そこで登場するのが,ソフトマターの一つであり,金属のそれと比べて圧倒的に小さな弾性波速度をもつゲルである.本研究では,弾性波速度のうちレイリー波速度とS波速度が小さく,かつ壊れにくいシリコーンゲル(以下ゲル)を用いることで,“音速の壁”を突破することに成功した.そのうえで,摩擦係数のすべり速度依存性を調べたところ,S波速度を超えるとともに摩擦係数が急激に上昇することが分かった.また,ゲル表面の変形形状や内部応力分布が,S波速度以上で質的に変化した.さらに,動弾性理論をもとに定常状態における解析解の導出を試みたところ,摩擦を採り入れた形で解析解を求めることができ,その解析解によって実験結果をある程度説明することができた.思い付きで始めた研究であったが,超音速すべり摩擦という新しい分野を切り拓くことができた.しかしながら,慣性の効果を考慮した弾性流体潤滑理論の構築や,境界による弾性波の反射を採り入れた解析,定常状態の安定性に関する議論など,実験結果を説明するための理論的アプローチがまだまだ不足している.現象の解明を目指した,さらなる研究が必要である.
著者
山口 哲史
出版者
関西大学東西学術研究所
雑誌
関西大学東西学術研究所紀要 (ISSN:02878151)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.89-108, 2021-04-01

It is maintained that Shitennōji Temple accepted the Tendai Sect during the Heian period. This paper aims to shed light on the process of the sect's acceptance into Shitennōji Temple by comparing with Hōryūji Temple's attitude toward the Tendai Sect. Both these temples accepted lecturers from the Tendai Sect at the Ango Assembly, which was held in these temples after the year 825. This policy followed a decree issued by the Great Council of State on February 8, 825, although it was already implemented by Tomi no Fujitsu, a patron of Hōryūji Temple, and Tomo no Kunimichi, a non-priest chief of Enryakuji Temple, and the decree was sent out to three temples in June 824. Hōryūji Temple resisted arbitrary acts by the Tomi clan and expansion of the Tendai Sect caused by the abovementioned policy during the 9th century. Shitennōji Temple, however, was tolerant toward the sect's expansion and assimilated its thought positively. As a result, Hōryūji Temple succeeded in resisting the influence of the Tendai Sect during the 10th century; not a single chief priest was, for example, sent from Enryakuji Temple to work at Hōryūji Temple. On the other hand, chief priests from Enryakuji Temple were active and some Tendai branch temples were operated in Shitennōji Temple. It is apparent that the Tendai Sect expanded into Shitennōji Temple, but meanwhile, Shitennōji Temple attempted to remain independent and resist Enryakuji Temple's influence (particularly in terms of personnel and property) during the 10th century. In other words, although Shitennōji Temple initially accepted the Tendai Sect during the 9th and 10th centuries, it later counterplotted against the sect. This paper suggests that the acceptance of the Tendai Sect by Shitennōji Temple was, therefore, not achieved only through the intent of Enryakuji Temple but through attempts from both temples during the Heian period.
著者
山口 哲生
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.7-10, 2014-10-10 (Released:2015-02-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1

サルコイドーシス治療において,抗菌薬,免疫抑制剤,吸入ステロイド薬は,各々有効率は低いものの明らかに有効な例が存在することは確かである.抗菌薬の中ではドキシサイクリンが最も使いやすく,隆起性の皮膚病変や筋肉病変などに有効性が高いが肺野病変やBHLにはほぼ無効である.メトトレキサートは単剤治療でも肺野病変やBHLにも有効な例がある.フルチカゾンの吸入は末梢型肺野病変例には無効であるが中枢型病変例では有効例がある.経口ステロイド治療では症例に応じて少量ステロイド,十分量ステロイド治療を使い分ける.本症の全身症状は,不定愁訴と考えずに本症特有の治療の対象となる病変と考えるべきであり,ステロイド薬や抗菌薬が有効な例がある.
著者
星 泉 岩田 啓介 平田 昌弘 別所 裕介 山口 哲由 海老原 志穂
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.s2, pp.s164-s167, 2021 (Released:2021-12-10)
参考文献数
5

チベット・ヒマラヤ地域の人々は、様々な文化圏の影響を受けながら、冷涼かつ乾燥した高地という環境を活かした伝統的な生業を発達させてきた。周辺地域との影響関係については平田がユーラシア各地の乳製品の加工プロセスを広く調査し、説得力のある説を提示している。本研究では、乳加工プロセスの比較研究の手法をその他の資源にも応用し、周辺地域との影響関係や地域ごとの独自発展の様相を、より多層的に考察することを目的とし、チベット・ヒマラヤ牧畜農耕資源データベースを共同で構築中である。様々な言語の文献から当該地域における各種牧畜農耕資源の加工プロセスに関して収集したデータを共有し、地理情報や年代情報、コメントとともに入力し、地域間比較研究のために活用している。本発表では、このデータベースを活用した、乳加工・乳製品の地域間比較研究の事例紹介と、今後のフィールド調査に向けた調査票の準備状況について報告する。
著者
山口 哲生 江石 義信
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1_2, pp.1-10, 2019-10-01 (Released:2019-12-28)
参考文献数
56

サルコイドーシスはいまなお原因不明とされている.しかし,細胞性免疫に対して強い免疫原性を有するなんらかの感染性物質が原因となり,素因のある宿主のみが発病して類上皮細胞肉芽腫が形成されることが世界のコンセンサスとなっている.現在までに結核菌(mKatG)とアクネ菌(Propionibacterium acnes)以外の感染性物質が肉芽腫内に認められたとする報告はなく,このいずれかが本症の原因になっていると考えられている.Eishiらは定量的PCR法,in situ hybridization法,アクネ菌モノクローナル抗体の作成と免疫染色法,本症リンパ節リンパ洞内のアクネ菌免疫複合体の証明など,本症の原因をアクネ菌と考える蓋然性の高い報告を重ねてきた.また海外からは,本症の病巣内にアクネ菌のmRNAが有意に頻度高く見出されるという報告も出ている.本稿では,アクネ菌が本症の原因であるとの仮説をたてて,この菌がどのようにサルコイドーシスを発病せしめて,かの奇妙な病態を形成していくのかについて,私たちの考えを述べた.
著者
平澤 康孝 河野 千代子 山田 嘉仁 前村 啓太 竹島 英之 槇田 広佑 山口 陽子 一色 琢磨 鈴木 未佳 山口 哲生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.1457-1459, 2015-07-10 (Released:2016-07-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

症例1は,78歳男性.インフルエンザワクチン接種3日後に発熱,胸部CTにて両下葉背側に多発浸潤影を認め,同ワクチンによる薬剤性肺障害が疑われた.集学的治療を行うも,第32病日に死亡.症例2は,68歳男性.特発性肺線維症にて無治療経過観察中であったが,同ワクチン接種3日後に発熱,胸部CTにてすりガラス影の出現を認め,接種契機の間質性肺炎急性増悪が疑われた.治療を行うも,最終的にニューモシスチス肺炎にて死亡.インフルエンザワクチン接種による肺障害の可能性に注意を要すると考えられた.
著者
村田 雄哉 猪股 伸一 山口 哲人 渡辺 雅彦 玉岡 晃 田中 誠
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.50-53, 2015 (Released:2015-03-07)
参考文献数
8

患者は生来健康な26歳,女性.職業はキャビンアテンダント.勤務中に乗客の重い荷物を全身の力で頭上の棚に持ち上げ,その夜より強い頭痛と嘔気が生じた.頭痛や嘔気は立位や夕方に増強し,臥位で改善した.computed tomography(CT)脊髄造影で髄液漏出が認められ,脳脊髄液減少症と診断された.治療として硬膜外生理食塩液持続注入を行い,症状・activities of daily living(ADL)ともに改善がみられた.合併症が多いと考えられる硬膜外自家血注入を行わず,安全かつ効果的に治療することができた.また,非外傷性の脳脊髄液減少症は発症契機が不明なことが多いが,本症例では重い荷物を頭上に持ち上げるようなストレッチ運動が契機となった可能性が高いと考えられた.
著者
村田 雄哉 猪股 伸一 山口 哲人 渡辺 雅彦 玉岡 晃 田中 誠
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.14-0020, (Released:2014-12-26)
参考文献数
8

患者は生来健康な26歳,女性.職業はキャビンアテンダント.勤務中に乗客の重い荷物を全身の力で頭上の棚に持ち上げ,その夜より強い頭痛と嘔気が生じた.頭痛や嘔気は立位や夕方に増強し,臥位で改善した.computed tomography(CT)脊髄造影で髄液漏出が認められ,脳脊髄液減少症と診断された.治療として硬膜外生理食塩液持続注入を行い,症状・activities of daily living(ADL)ともに改善がみられた.合併症が多いと考えられる硬膜外自家血注入を行わず,安全かつ効果的に治療することができた.また,非外傷性の脳脊髄液減少症は発症契機が不明なことが多いが,本症例では重い荷物を頭上に持ち上げるようなストレッチ運動が契機となった可能性が高いと考えられた.
著者
星 泉 岩田 啓介 平田 昌弘 別所 裕介 山口 哲由 海老原 志穂
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.s3, pp.s198-s201, 2022 (Released:2022-11-02)
参考文献数
3

チベット高原では都市への移住と村落部の生活変化が急速に進み、家畜飼養と密接に結びついて長期間かけて形成されてきた民俗文化が、十分な学術調査がなされないまま、急速に失われようとしている。発表者らはこれを憂慮し、チベット高原東北部の青海省ツェコ県において、牧畜民出身の研究者と現地の人々とともに6年間にわたる現地調査を実施し、牧畜民の民俗文化を体系的に整理した『チベット牧畜文化辞典』を刊行した。調査の過程では、辞典には収録しきれない語り・映像・写真・音声・文学作品など多岐にわたる情報が得られ、発表者らの手元に残されている。これらを有機的に結びつけた形でアーカイブすることによって民俗文化を再現的に活写することを課題とし、現在実験的試みを続けている。本発表では、この一連のプロセスから成る研究の営みを「フィールド・アーカイビング」と位置づけ、その意義と可能性について論じる。
著者
山口 哲由
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.199-219, 2011-05-01 (Released:2015-09-28)
参考文献数
42
被引用文献数
2 2

近年,山地では環境保全に関心が集まっているが,本研究では,中国雲南省シャングリラ県の村落を対象に,山地の移動牧畜での家畜群の季節移動経路や日帰り放牧の範囲を把握することで,放牧地内部での負荷の分布状況を明らかにした.放牧負荷は,垂直的な環境変化に応じた季節移動により分散傾向にあり,過度の負荷が生じている部分はほとんどみられなかったが,一部の幹線道路沿いに負荷が集中する傾向もみられた.一方で県全体の放牧地に関する統計資料の分析からは,高山草原の希薄な放牧利用に対して標高が低い放牧地への負荷の偏りが推測された.山地の過放牧対策は,これら標高による負荷の偏りや移動牧畜での放牧地利用による負荷の偏りにも配慮する必要がある.その場合,生産様式の理解を目的とした垂直性の概念に基づく移動牧畜の分析だけではさまざまなスケールで生じる負荷の偏りを把握することは難しいため,水平的な家畜群の移動や分布状況も踏まえた負荷分布の把握が求められる.
著者
三木 光範 大貫 正秀 杉山 吉彦 山口 哲男
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.59, no.564, pp.1985-1992, 1993-08-25 (Released:2008-02-21)
参考文献数
12

Composite pipes with structurally unsymmetric laminated configurations (SULC pipe) shows coupled deformations upon bending and torsion. Our previous study treated the static behavior of the SULC pipes, and this paper deals with their dynamic coupling behavior. The coupled bending and torsional vibration of a cantilevered SULC pipe with an eccentric weight at its free end is analyzed, neglecting the mass of the pipe and assuming that it is an undamped free vibration system with two degree of freedom, transversal and rotational displacements. It is found that the SULC pipe has an elastic principal axis apart from its geometric principal axis, and the vibration becomes uncoupled when the center of gravity of the eccentric weight is located on the elastic axis of the pipe. The effects of the fiber orientation angles and the eccentricity of the tip weight on the vibration behavior are also analyzed considering the dynamic center of rotation. The analytical results show good agreement with the experimental results.
著者
山口 哲
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.822-826, 2006-11-05

AdS/CFT対応は重力理論と場の量子論の対応である.これを1/2BPSセクターに限った場合,非常に深い解析が可能である.この場合,場の理論はフェルミ粒子の系に帰着され,その状態は相平面上の「液滴」で表される.これに対し,AdS側の重力理論の解として,この液滴と1対1に対応する解がLin,Lunin,Maldacenaにより構成された.これにより,超重力理論の1/2BPSセクターがフェルミ粒子の系で記述されることが非常に確からしくなってきた.
著者
山口 哲 大谷 恭史 矢谷 博文 荘村 泰治
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, 2009-09-10
被引用文献数
1

As dental implants have become an established dental treatment, the number of applications to difficult and aggressive cases has increased. To overcome these difficulties and realize safe and precise surgery, computer-assisted navigation systems have been developed. In conventional systems, surgeons feel anxious intra-operatively because they have to operate instruments in the oral cavity while watching a surgical monitor. Thus, we develop novel surgical navigation system by combining the retinal projection head mounted display (RPHMD) and the augmented reality (AR) techniques. In this paper, we propose an image overlay procedure based on the RPHMD and verify its accuracy.
著者
田崎 美弥子 渡邊 光理 高野 隆司 良峯 徳和 加藤 康広 山口 哲生
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.SS-043, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

ニューロフィードバック(NF)は,欧米ではすでに40年以上,てんかん,うつ,自閉症や,発達障害,脳梗塞などの,幅広い疾患に適用されている。NFは,対象者の望ましい脳波を視覚と聴覚刺激をフィードバックにより,望ましい周波帯域に対するオペラント条件付けを図る脳波のバイオフィードバックである。副作用が殆ど報告されず,欧米では保険適用の心理療法となっている。昨今,精神疾患は脳のニューロン回路の不調によるというコネクトーム説に対する最適な療法と再認識されている。日本においても少しずつ認知されるようになってはきたが,いまだに症例報告や研究報告が限定されている。本シンポジウムでは,日本において,ADHDや双極性障害,うつ,外傷性てんかん,睡眠障害といった様々な疾患をもつ対象者に適用し,かつ改善が見られた臨症例や研究を紹介し,NFの方法論や適用,効果や限界について論じ,NFに対する正しい理解を促進することを目的とする。
著者
山口 哲生 内田 佳介 江石 義信
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1_2, pp.17-26, 2020-10-01 (Released:2021-01-11)
参考文献数
69

サルコイドーシス(サ症)は原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,何らかの外来性原因物質に感受性のある宿主が発病 すると考えられている.肉芽腫は本来,外来性異物を封じ込めるために形成される自己防衛反応であり,肉芽腫性疾患の原 因究明には「肉芽腫内」に存在する異物を明らかにする必要がある.しかし「肉芽腫内」だけに限定して原因物質を探究す ることは技術的に困難で,多くの研究ではリンパ節など「肉芽腫外」組織も含めた「病巣内」において探索する方法がとら れている.病因論に関する研究は,今なお世界中で行われ情報が発信されているが,その多くが抗酸菌とアクネ菌に関する ものであり,本稿では抗酸菌病因論とアクネ菌病因論に焦点を当てこれを比較する形で解説を行った. 「病巣内」に存在する原因微生物を探索するためには定性的PCRが用いられることが多い.これまでの多くの報告をまと めると,抗酸菌もアクネ菌もサ症の病巣内に存在している確率は高い.抗酸菌もアクネ菌も潜伏感染する菌であるため,こ れが病巣内で肉芽腫形成の真の原因物質になっているのか,単なる潜伏感染をみているだけなのか鑑別する必要がある.こ の鑑別のためには定量的PCRで候補菌のゲノムコピー数を比較することが有用であろう.サ症病巣内の候補菌ゲノム数を 定量的に測定した結果では,アクネ菌が他の抗酸菌よりもはるかに多量に検出されている. 「肉芽腫内」に存在する原因物質に関しては,欧米から,結核菌KatG,結核菌heat-shock protein,結核菌gyrase Aが検 出されたとする報告がある.しかし各々 1施設の報告にとどまっており,今後は他の研究者や実臨床のサ症患者で再現性を もって検出されるか否かの検証が必要であろう.他方「肉芽腫内」のアクネ菌検出に関しては,本邦からの一貫した研究が ある.研究初期には,サ症肉芽腫の病巣組織を免疫原として肉芽腫内の異物抗原に反応する単クローン抗体が作製された. これが結核菌ではなくアクネ菌と特異的に反応したことから,次に免疫原をアクネ菌に変更して同様の抗体作製が行われ, 肉芽腫内アクネ菌を検出できるPAB抗体(標的抗原はアクネ菌リポテイコ酸)が完成した.現時点で再現性をもってサ症肉 芽腫内に検出される外来性抗原物質はアクネ菌のみであり,近年では肉芽腫内にPAB抗体陽性像を認める症例がPropionibacterium acnes-associated sarcoidosisとして数多く報告されている.