著者
新川 祐利 梅津 寛 大島 健一 岡崎 祐士
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.881-888, 2012-09-15

抄録 大麻乱用後に幻覚妄想状態を呈した2症例を報告した。症例1は大麻精神病,症例2は大麻乱用の経験がある統合失調症と診断し,両者の違いを考察した。急性期症状は類似点が多いが,本症例の大麻精神病は幻覚妄想に対し恐怖や緊張を伴わず,妄想内容が了解可能であることが統合失調症と異なっていた。大麻精神病の経過では,大麻による無動機症候群を認め,意欲減退などが原因で社会機能が低下し,統合失調症の陰性症状と類似した。しかし,対人関係の障害や認知機能障害は認めず,治療により社会機能が病前の状態まで回復したことが異なっていた。大麻乱用が統合失調症を惹起する可能性が推察された。
著者
中井 寿雄 福島 健一郎 西 聡士 松岡 遼太郎 能勢 佳子 中窪 悟 武部 秀人
出版者
一般社団法人 日本災害医学会
雑誌
日本災害医学会雑誌 (ISSN:21894035)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.35-41, 2022-01-28 (Released:2022-01-28)
参考文献数
16

本研究の目的は、K-DiPSアプリを用いて、鹿児島県肝付町における医療機器・処置や薬剤などを要する要支援者を把握し、GISを用いて津波と土砂災害の被災リスクを明らかにすることである。58人の年齢の中央値(範囲)は、86.5(1–100)歳で、女性34人(58.6%)、医療機器を4人が使用していた。内服薬は243、内服以外は51種類だった。津波浸水想定区域に5人、土砂災害警戒区域に6人が居住し1区域は特別警戒区域だった。浸水想定区域の要支援者の避難準備時間を5分、時速1.66 kmで避難した場合に、5人全員が時間内に浸水想定区域外、もしくは近接の津波避難タワーに退避が可能と推定された。タワーへ避難した場合、津波流入方向に向かって移動する者が2人だった。アプリを用いることで詳細かつ最新の状態を把握できる可能性がある。GISによる可視化は、要配慮者と具体的な避難行動を検討する際に有効である。
著者
李 活雄 村島 健一郎
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.98-104, 2002-08-30 (Released:2017-08-31)

This paper is concerned with how n-/l- (or r-) variation in loanwords among Cantonese speakers in Hong Kong takes place in different phonetic environments. Previous researches point out that the ongoing merger of n- into l- in a syllable initial position in Cantonese often has influences on the borrowing of words from other languages and the learning of foreign languages. For example, when they introduce English words into Cantonese, Cantonese speakers are likely to realise n- as l- like "notes" /nouts/ as [lok. si]. Our survey with 204 non-sense words written in Japanese hiragana, however, shows that there is no statistical significance between the percentage of errors of n- and l- (or r-) in any phonetic environment except when a nasal precedes r-. In that case, it is realised as n- significantly. The result may suggest that n-/l- (or r-) variation in loanwords among the Cantonese speakers occurs in a two-way manner, namely n- → l- and l- → n-, which is a new finding when compared with the previous researches.
著者
清水 陽香 中島 健一郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.21-30, 2018-07-01 (Released:2018-07-04)
参考文献数
38

防衛的悲観主義者(DP者)は,方略的楽観主義者(SO者)に比べて自尊心が低く不安が高い一方で,パフォーマンス前の準備を入念に行い,その結果SO者と同程度に高いパフォーマンスを示すとされている。一般に高い不安や低い自尊心は準備およびパフォーマンスを阻害するにもかかわらず,DP者が課題の事前準備に取り組むことができる理由はいまだ明らかになっていない。本研究では,その理由としてDP者には潜在的自尊心の高さがあると考え,DP者の顕在的自尊心と潜在的自尊心に着目した検討を行った。研究1では,質問紙調査によって認知的方略による顕在的自尊心の差異を検討した。また研究2では,Name Letter Taskを用いて潜在的自尊心の差異を検討した。研究1, 2の結果,DP者はSO者に比べて顕在的自尊心は低いものの,潜在的自尊心はSO者と同程度に高いことが示された。
著者
安 瓊伊 中島 健一
出版者
日本社会事業大学
雑誌
日本社会事業大学研究紀要 = Study report of Japan College of Social Work (ISSN:0916765X)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.139-155, 2014-03-01

本研究は2001年度から2010年度まで発行された介護関連学会誌の文献を対象に、介護と関連した研究傾向を分析し、その特徴と介護における現状と研究課題を検討する。459件の文献のタイトルと著者キーワードをテキストデータとして入力し、テキストマイニングの技法で分析を行った。形態素解析による分かち書き処理をして分解し、その構成要素を用いて対応分析とクラスター分析を行った。介護と関連して、認知症高齢者とその家族介護者に関連する研究、介護福祉士の養成教育のカリキュラムや実習、利用者と介護者の意識や従事者の職務満足度とストレスに関する研究など社会や制度政策の変化に伴ってそれと関連する研究が最も行われている傾向が示された。社会や制度・政策の変化と関連する研究と介護現場で求められている研究が最も行われたことが示された。今後、研究内容を吟味し、本研究から得られた知見を補強する必要がある。This study analyzes a tendency to study in conjunction with the care work for documents of care work-related academic journals published from 2001 to 2010 and examines the characteristic and present conditions and theme in the care work. We input titles of 459 documents as text data and performed analysis text mining. We processed leaving a space between words by the morphological analysis and disintegrated it and performed a correspondence analysis and cluster analysis using the component. It showed the tendency that studies were performed most in conjunction with dementia elderly people and family caregivers, curriculum and training of the education of the care worker, the consciousness of users and care givers, the duties satisfaction and the stress of care workers. It was performed most that the studies in conjunction with the change of society, a system and the policy, and the study for the care practice. We examine study contents closely, and it will be necessary to reinforce the knowledge obtained from this study in future.
著者
田中 純夫 平島 健一 広瀬 幸雄 MURA Toshio
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.58, no.549, pp.745-752, 1992-05-25 (Released:2008-02-21)
参考文献数
11

This paper presents an analysis of in-plane problems for isotropic semi-infinite body due to single force, single dislocation, dipole-force, dipole-dislocation, and so forth, with various surface boundaries such as free, fixed and two sliding conditions. Distributions of stresses and displacements under applied singular forces for the above four boundaries are illustrated by some graphical representations as numerical examples.
著者
清水 陽香 中島 健一郎 森永 康子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.202-214, 2016-03-10 (Released:2016-03-21)
参考文献数
28
被引用文献数
3

先行研究では防衛的悲観主義(Defensive Pessimism: 以下DP)が,課題関連場面で高いパフォーマンスを示すために有効な認知的方略であることが示されている。しかし,DPが同様に対人関連場面において有効な方略となるかどうかは定かではない。そこで本研究では,DPが初対面の他者との相互作用場面における行動意図をどのように規定するか明らかにすることを目的に,女子短期大学生(N=202)を対象とする場面想定法を用いた質問紙実験を実施した。DP傾向が複数の他者との会話場面における状態不安や行動意図に及ぼす影響について検討した結果,DP傾向は状態不安と正の関連を持つと同時に,相手の反応に合わせるような行動意図や相手の意見を尊重するような行動意図と正の関連を持つことが示された。
著者
菊地 慎二 平島 健一 杉坂 憲明
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.887-891, 1998-09-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

This paper presents a unified analysis of isotropic out-of-plane shear problems with concentric circular elastic inclusions. The applied disturbances considered in this paper are longitudinal shear stress at infinity, analysis is based on the complex variable method using the Möbius transformations by Honein and Herrman. Several numerical examples are given by many graphic representation.
著者
窪田 香織 野上 愛 高崎 浩太郎 桂林 秀太郎 三島 健一 藤原 道弘 岩崎 克典
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.143, no.3, pp.110-114, 2014
被引用文献数
1

我が国は超高齢社会を迎え,認知症患者数の増加は深刻な問題である.しかし認知症の根治的治療法は確立しておらず,患者の日常生活動作(activity of daily living:ADL)を低下させない新しい認知症治療薬が求められている.その中で,ADLを低下させずに認知症の症状を改善する漢方薬・抑肝散が脚光を浴び,主に幻覚,妄想,抑うつ,攻撃行動,徘徊などの行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)に使われている.しかし,その作用機序はよく分かっていない.そこで漢方薬である抑肝散の認知症治療薬としての科学的背景を明らかにすることが必要となった.我々は,抑肝散がメタンフェタミン投与による興奮モデル動物において自発運動の異常増加を抑制すること,単独隔離ストレスによる攻撃行動,幻覚モデルとしてのDOI投与による首振り運動,不安様行動,ペントバルビタール誘発睡眠の短縮や夜間徘徊モデルの明期の行動量増加のようなBPSD様の異常行動を有意に抑制することを明らかにした.また,8方向放射状迷路課題において,認知症モデル動物の空間記憶障害を改善することを見出した.記憶保持に重要な海馬において神経細胞死の抑制やアセチルコリン遊離作用が認められ,これらの作用によって抑肝散の中核症状に対する改善効果も期待できることが示唆された.さらに,中核症状,BPSDいずれにもNGFやBDNFなどの神経栄養因子の関与が注目されているが,抑肝散には神経栄養因子様作用や神経栄養因子増加作用があることが分かり,この作用も中核症状・BPSDの改善効果に寄与するものと考えられる.以上のことから,抑肝散は,認知症患者のBPSDならびに中核症状にも有効で,さらに他の神経変性疾患や精神神経疾患の治療薬としても応用が期待できることが示唆された.
著者
三浦 信幸 高橋 克巳 島 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1523-1535, 1998-05-15
被引用文献数
10

本論文では,個人適応型WWWにおけるユーザモデル構築法を提案する.個人適応型WWWとは,従来の一般的なWWWが,基本的には,すべてのユーザに対して同一の情報内容を同一の情報提示方式で提供してきたのに対し,ユーザモデルとコンテンツモデルの擦合せにより,ユーザ1人1人の特性に応じて提供する情報内容・情報提示方式をユーザごとに動的に変更しながら動作するWWWである.本提案手法の特徴を以下に示す.1)ユーザに余計な負荷となる事前アンケートは用いず,WWWへのアクセス履歴のみからユーザの特性を把握する.2)ユーザモデルをグラフで表現することにより,ユーザのアクセス行動の遷移をモデルに反映できる.3)WWWコンテンツ自身のハイパーリンク構造やコンテンツの意味的な関係を表現したコンテンツモデルとユーザのアクセス履歴を組み合わせてユーザモデルを構築することにより,より多様な個人適応が可能なモデルを構築できる.本論文ではユーザモデルとして,状態モデル・行動モデル・学習モデル・メタモデルの4つを提案し,主に状態モデルについて,実際に外部に公開中の2つのWWWサイトのアクセス履歴に適用し,約4万人分のユーザモデル構築を行い,構築結果の評価実験を行った結果,ユーザ間の相違点・共通点を適度に表現できること,従来法では見つかりにくいユーザ特性を見つけられること等を確認し,提案手法の有効性を示した.This paper proposes a user-models construction method for personal-adaptive WWW.Though Web system has provided same information in same layout to all users,personal-adaptive WWW adapts contents of information and how to users'preferences.Features of our proposal method is as follows.1) User-models are constructed from access histories,not using questionnaires.Questionnaires are excessive works for users.2) User-models are represented as graphs in order to express users'activities.3) User-models are constructed from access histories and WWW contents-models.As WWW contents-models express hyperlink structures of contents and semantic relationships among contents.These user-models enable more various personal-adaptations.We define four user-models,user-status model user-activity model,user-learning model and user-meta model.We show experimental results of constructing user-models,especially user-status model,from access histories of real two public WWW sites.We constructed fourty thousand users'models and the results show effectiveness of our method in the viewpoints that we can get more various and more interesting users'profiles than what are produced by usual construction methods and that constructed user-models have both different points and common points.
著者
中島 健一朗
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.105-110, 2023 (Released:2023-04-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1

ヒトを含め動物が生きていくうえで, 食欲は最も重要な本能の1つである。脳は食欲調節の中心的な役割を担い, その破綻は過食や食欲不振を引き起こす。これは最終的に肥満やサルコペニアにつながるため, 食欲をコントロールしつつ適切な食物 (栄養素) を摂ることが, 健康維持および未病状態の改善に非常に重要となる。食欲の特徴は全身のエネルギーを一定に保つ摂食 (恒常性の摂食) と食の美味しさを追求する摂食 (嗜好性の摂食) に分類できる点である。また, これらの性質は食物の機能という点から見ると, 脳が栄養, 感覚, 機能性成分を感知し, 評価・選択して摂取する仕組みと言える。近年, 脳内の摂食調節の複雑なネットワークが次々に明らかになってきたが, 本項では代表的な仕組みと今後の課題を紹介する。
著者
中野 貴文 中村 智美 仲村 佳彦 入江 圭一 佐藤 啓介 松尾 宏一 今給黎 修 緒方 憲太郎 三島 健一 神村 英利
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.7, pp.909-916, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
34
被引用文献数
3 4

Warfarin (WF) shows a number of interactions with other drugs, which alter its anticoagulant effects. The albumin binding interaction is one such pharmacokinetic mechanism of drug interaction with WF, which induces a rise in the free WF concentration and thus increases the risk of WF toxicity. Teicoplanin (TEIC) is an anti-methicillin-resistant Staphylococcus aureus drug, which also binds strongly to albumin in the plasma. Therefore, co-administration of TEIC may displace WF from the albumin binding site, and possibly result in a toxicity. The present study was performed to investigate the drug-drug interaction between WF and TEIC in comparison with controls treated with vancomycin (VCM), which has the same spectrum of activity as TEIC but a lower albumin binding ratio.The records of 49 patients treated with WF and TEIC or VCM at Fukuoka University Hospital between 2010 and 2015 were retrospectively reviewed. These 49 patients consisted of 18 treated with TEIC in combination with WF, while 31 received VCM in combination with WF. Prothrombin time-international normalized ratio (PT-INR) showed a significant increase of 80.9 (52.0-155.3) % after co-administration of TEIC with WF. In contrast, the rate of PT-INR elevation associated with VCM plus WF was 30.6 (4.5-44.1) %. These observations suggested that TEIC can cause a rise in free WF concentration by albumin binding interaction. Therefore, careful monitoring of PT-INR elevation is necessary in patients receiving WF plus TEIC.
著者
松島 健一 田中 忠次 毛利 栄征
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.254, pp.151-160,a2, 2008-04-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
14

地盤内に設置された矢板を引抜く際, 地盤に生じた空隙が応力の再配分を引き起こし, 地中構造物に大きな影響を及ぼす. 本研究では, 矢板引抜きに伴う地盤と地中構造物の相互作用メカニズムを解明するため, 矢板引抜き現象を考慮した数値解析モデルを開発した. 地盤中の応力解放は要素掘削手法を適用し, 空隙両側の不連続な地盤面の接触は, Belytshko et al.(1991) が提案したピンボールアルゴリズムを採用した. 本手法は, パイプラインを対象とした矢板引抜き模型実験における埋設管のたわみや地表面沈下などの挙動を定性的に予測できることが分かった. また, 地盤中のひずみや土圧分布の変化などから埋設管のたわみの発生メカニズムを明らかにすることができた.