著者
古川 善也 安部 主晃 中島 健一郎
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-9, 2019-10-31 (Released:2020-02-06)
参考文献数
40

In this study, we investigated whether the moral self-licensing effect, a phenomenon where the past experience of moral behavior allows for immorality, alleviates guilt and prosocial behavior accompanying immoral behavior. As a moral licensing manipulation, we used an autobiographical recalling task that asked participants to recall their experiences where they engaged in prosocial behavior toward their friends in the past (e.g., Cornelissen, Bashshur, Rode, & Le Menestrel, 2013; Jordan, Mullen, & Murnighan, 2011). Subsequently, we manipulated the participants’ feelings of guilt using the scenario method. The results showed a significant interaction between moral licensing and guilt manipulation. More specifically, in the guilt-induced condition, participants who recalled their prosocial experiences felt less guilt toward present immoral behavior than those who did not. Further, for prosocial behavior, we conducted a moderated mediation analysis using guilt scores as a mediator and guilt manipulation as a moderator. The results showed that, only in the guilt-induced condition, moral licensing reduced prosocial behavior through the guilt scores. These indicate that last behavior as well as behavioral history what they had done before influences guilt and guilt-induced behaviors.
著者
三島 健一 入江 圭一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.140, no.2, pp.193-204, 2020-02-01 (Released:2020-02-01)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

Cannabis contains over 700 known cannabinoids, terpenoids, flavonoids, and so on; however, the roles and importance of these components have yet to be fully understood. Δ9-Tetrahydrocannabinol (THC) is believed the most psychoactive component in cannabis, whereas cannabidiol (CBD), cannabinol, and cannabigerol are the most well-known non-psychoactive components. THC, but not CBD, has been shown to produce abnormal behavior in animals; these effects are caused, at least in part, by binding to cannabinoid receptor type 1 (CB1) in the brain. Regarding the risks associated with cannabis use, acute effects of THC, such as a “high”, cognitive deficits, and irritability, are considered more important than potential dependence. On the other hand, CBD has shown anticonvulsant, anti-inflammatory, immunosuppressive, analgesic, and anticancer effects. However, CBD has very low affinity (in the micromolar range) for the CB1 receptor, as well as for the CB2 receptor, and its underlying mechanism remains obscure. In this review, we demonstrate that THC induces abnormal behavior such as catalepsy-like immobilization, spatial memory impairment, and high and low sensitivity to ultrasonic vocalization after an aversive air-puff stimulus. Moreover, we demonstrate that THC and CBD improve brain injury in middle cerebral artery occlusion in a mouse model through different mechanisms. These findings suggest the need to discuss the recent development of “THC and CBD pharmacology” in animal studies, as well as the utility and risk of various cannabis components in humans.
著者
戸谷 彰宏 中島 健一郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.84-92, 2017-12-25 (Released:2017-12-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2

Our purpose is to examine the affect-free claim in terror management theory. Lambert et al. (2014) reported findings that disconfirm the claim that mortality salience (MS) manipulation does not produce any changes in self-reported affect including negative affect, which is the affect-free claim. As a conceptual replication of their findings, we conducted three studies to examine whether MS manipulation influences self-reported mood. Participants in Study 1 were college students, while Studies 2 and 3 included individuals in their 20s and 50s who were recruited using a web survey. Multiple-choice questions (Studies 1 and 2) and open-ended questions (Study 3) were used as experimental manipulation. Through these three studies, it was shown that MS manipulation elevated negative mood regardless of the experimental manipulation type and participants’ age. In these studies, participants did not demonstrate a cultural worldview defense. Results suggest that we should reconsider the affect-free claim in terror management theory.
著者
清水 陽香 中島 健一郎
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.27.1.4, (Released:2018-04-05)
参考文献数
38

防衛的悲観主義者(DP者)は,方略的楽観主義者(SO者)に比べて自尊心が低く不安が高い一方で,パフォーマンス前の準備を入念に行い,その結果SO者と同程度に高いパフォーマンスを示すとされている。一般に高い不安や低い自尊心は準備およびパフォーマンスを阻害するにもかかわらず,DP者が課題の事前準備に取り組むことができる理由はいまだ明らかになっていない。本研究では,その理由としてDP者には潜在的自尊心の高さがあると考え,DP者の顕在的自尊心と潜在的自尊心に着目した検討を行った。研究1では,質問紙調査によって認知的方略による顕在的自尊心の差異を検討した。また研究2では,Name Letter Taskを用いて潜在的自尊心の差異を検討した。研究1, 2の結果,DP者はSO者に比べて顕在的自尊心は低いものの,潜在的自尊心はSO者と同程度に高いことが示された。
著者
矢澤 順根 古川 善也 中島 健一郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.16-24, 2020-07-31 (Released:2020-07-31)
参考文献数
36

Although previous studies suggest that critical thinking may be beneficial to interpersonal relationships (e.g., Hirooka et al., 2000), no empirical studies investigated this effect. Therefore, to investigate the same, we focused on empathic accuracy as an important factor in establishing and maintaining good interpersonal relationships. One hundred and forty-three individuals participated in our web experiment and survey via a crowdsourcing service. We measured critical thinking ability and orientation using the Japanese Watson-Glaser Critical Thinking Appraisal and the critical thinking orientation scale. We conducted the Asian Reading the Mind in the Eyes Test to assess participants’ empathic accuracy. We also measured systematic thinking skills using the Cognitive Reflection Test as a relevant variable. Multiple regression analysis showed that empathic accuracy was positively related to critical thinking ability, but not to critical thinking orientation and systematic thinking. These results suggest that critical thinking ability, especially reasoning ability, may be particularly important for increasing empathic accuracy toward nonverbal information.
著者
武田 宏太郎 竹本 真生 江島 健一 多田 英生 籾井 英利 砂川 賢二
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.946-951, 2009 (Released:2013-06-12)
参考文献数
24

症例は32歳, 女性. 近医美容形成外科にて頭皮上眼瞼移植術, および大腿部と臀部の脂肪吸引術を施行された. 帰宅途中に気分不良, 呼吸困難となり総合病院に救急搬送された. 血圧70mmHgとショック状態で, 胸部X線写真にて肺血管陰影の増強を認め, 急性うっ血性心不全と診断された. 心筋逸脱酵素の上昇があり心筋障害の存在が示唆され, 心エコーでは心機能は左室駆出率20%と低下し, 左室中部から基部が全周性に無収縮で心尖部のみが収縮していた. 緊急冠動脈造影を施行されたが正常冠動脈であった. 精査加療目的で同日当科搬送となった. 来院時, 肺うっ血を認めるも循環動態は安定していた. その後心室壁運動異常は急速に改善し, 第6病日の心エコーでは壁運動は正常に回復していたため, 第8病日に軽快退院となった. 本例は美容形成外科術後に冠動脈支配では説明できない領域に左室壁運動異常が生じ, 数日で急速に改善したことより, たこつぼ心筋症と考えられた. 典型的には心尖部の動きが低下し, 心基部が過収縮するたこつぼ型を呈する. 本例のように逆たこつぼ型を呈するたこつぼ心筋症は比較的珍しいと考えられたため, 文献的考察を加えてここに報告する.
著者
中島 健一郎 礒部 智加衣 長谷川 孝治 浦 光博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.122-131, 2010 (Released:2010-02-20)
参考文献数
30
被引用文献数
3 5

本研究の目的は次の2つである。ひとつは,文化的自己観と集団表象(common identity group vs. common bond group: Prentice, Miller, & Lightdale, 1994)の関連を検証することである。もうひとつは,この関連が個人の経験したストレスフルイベントの頻度によってどのように変動するか検討することである。そのために本研究では大学1年生を対象とする縦断調査を行った。その結果,独自に作成した集団表象尺度が想定どおりの2因子構造であり,信頼性も許容できる範囲であることが示された。加えて,予測されたように,相互協調性とcommon bond group得点に正の関連があり,common bond group得点において文化的自己観とストレスフルイベントの経験頻度の交互作用効果が認められた。相互協調的自己観が優勢な個人の場合,ストレスフルイベントの経験頻度が少ない群よりも多い群においてcommon bond group得点が高いのに対して,相互独立的自己観が優勢な個人の場合,これとは逆の関連が示された。しかしながら,common identity group得点において予測された効果は認められなかった。この点に関して,個人の集団表象と内集団の特徴との一致・不一致の観点より考察がなされた。
著者
江頭 伸昭 三島 健一 岩崎 克典 中西 博 大石 了三 藤原 道弘
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.1, pp.3-7, 2009 (Released:2009-07-14)
参考文献数
47
被引用文献数
1

アルギニンバソプレシン(AVP)は古くから下垂体後葉ホルモンとして体液および循環系の恒常性の維持に重要な役割を果たしていることが知られている.AVPの受容体は,V1a,V1bおよびV2受容体の3つのサブタイプに分類されており,特にV1aおよびV1b受容体は大脳皮質や海馬など脳内に広く分布していることから,中枢における役割が注目されている.そこで本稿では,V1aおよびV1b受容体欠損マウスを用いた著者らの研究成果を紹介するとともに,精神機能におけるバソプレシン受容体の役割に関する最近の知見について報告する.バソプレシン受容体は,統合失調症,自閉症,うつ病,不安障害,摂食障害など様々な精神疾患との関与を示唆する知見が多数報告されており,その影響にはストレス反応の変化が一部関わっていることが推察される.また,V1aおよびV1b受容体欠損マウスを用いた検討から,バソプレシン受容体がストレスや情動行動,社会的行動,情報処理,空間学習などに関与していることが明らかとなった.一方,V1aおよびV1b受容体の選択的な拮抗薬の精神作用についても報告されている.今後,これらの研究結果を踏まえて,精神機能におけるバソプレシン受容体の役割が解明されれば,精神疾患の予防および治療のための戦略に新たな展開が期待できるものと考えられる.
著者
中島 健一
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.23-40, 1981-02-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

1) 北アフリカにおける農耕および家畜の起源については正確な資料がととのっていない。サハラ南部・東部の周辺地方では,旧石器時代晩期(c. 10500 B.C.)に,野草の種実の栽培をはじめたが,新石器時代への連続性については明らかでない。K.W.ブッツェルをはじめ,さいきんの研究によると,エジプトの農耕起源は,近中東地方からの影響のもとに,それらの諸地方から2000±500年ほどおくれて,下エジプトのメリムダやファイユームに始まり,上エジプト・ヌービア地方へ発展していったことを指摘している。エジプトの農業起源を明らかにしようとするとき,新石器時代の資料は,たしかに,ヌービア以北のナイル河谷地帯やデルタ地方に多く,近中東地方からの伝播を裏づけているようである。M.N.コーエンは,その伝播説に反論して,アフリカ固有の農業起源を示唆しているが,なお実証性に乏しい。後氷期の北半球にはいくたびかの気候変動があった。それらの気候変動は,動植物の生態・分布をきびしく制約し,採集=狩猟・なかば家畜飼養の遊牧民たちの生存形態や移動様式,さらに,ナイル河谷のエジプト人たちの歴史形成に顕著な影響をおよぼした。とくに,北半球の中緯度地帯における「亜降雨期」(c. 5500-2350 B.C.)の介在は,農耕および家畜の起源に決定的な影響をあたえた。北アフリカでは,この時期の降雨量はやや多く(100±50mm),冬季にも降雨があった。「亜降雨期」への移行にともなって,エジプトの新石器時代は,さいきんの研究によると,デルタやファイユーム低地から始まっているが,冬季の降雨にめぐまれた丘陵斜面や山麓,ワディの谷口地帯でも,いっせいに“石器革命”をむかえていた。2) サハラ南部・周辺地方やヌービア・上エジプト東部の丘陵地帯に残る多くの岩刻画からみて,それらの諸地方における動物群集はきわめて多種であり,豊富であった。野生動物の馴化にかんするかぎり,農耕発展の径路とは逆に,サハラ南部・東部・周辺地方から,ヌービァ・上エジプトへ拡延していったようである。K.W.ブッツェルによると,その主役は,サハラの採集=狩猟民となかば家畜飼養をともなう東部ハミートの遊牧民たちであった。F.E.ツォイナーは,初期農耕時代に家畜化された哺乳動物として牛や水牛をあげている。東部ハミートの遊牧民たちは,エジプト人が牛を知る1000年も前から,牛を飼育していたのである。3) やや温暖・湿潤な「亜降雨期」は,紀元前4千年紀のなかころから変動し,北アフリカの気象条件は乾燥化しはじめた。そのころ,サハラやその周辺地帯・スーダン・ヌービア・上エジプト地方では,あきらかに,動物群集の最初の断絶がおこっている。ヌービア・上エジプトのナイル河谷の周辺地方から,サバナ景観が荒廃し,象・さい・きりんなどをはじめ,やがて,かもしか類などのサバナの動物群集が消滅しはじめた。そのころ,それらの諸地方の採集=狩猟民やなかば家畜飼養の遊牧民たちはさかんに移動している。4) ナイル川の放水量は,紀元前4千年紀末以降,「亜降雨期」の終息とともに,減少しはじめた。季節的氾濫の水位は,「亜降雨期」のピークに比較して,ヌービアでは8-9m,ルクソール(テーベ)では4-5mほども低下した。河谷のエジプト人たちは,サバナ景観の荒廃と野生動物の減少,あまつさえ,いちじるしい人口増加による食糧危機に対面して,その不安と緊張・心理的圧迫から逃れるために,食糧の新しい生産方法について,その選択をせまられたにちがいない。エジプト人たちは,オアシスやワディの谷口地帯から,さいわい,放水量の減少によって干上ってきたナイル氾濫原へ進出し,まったく新しい食糧生産の方法-すなわち,それまでの旱地農法に比較して,土地生産性のたかい灌漑農法への道を選択し,ひらいていく。その過渡期はナカーダ第II期から王朝初期(c. 3300-3050 B.C.)であった。また,この時期には家畜飼養をも積極的にすすめた。王朝初期に,ナイル河谷の灌漑耕地は氾濫原の2/3にひろがり,c. 2000 B.C.の資料によると,農耕地と牧草地との面積が等しくなっている。「亜降雨期」への移行は“新石器革命”-すなわち,原始農耕および野生動物の馴化の端緒をなした。その終末・乾燥気候への転移(Wende)は,エジプトのナイル河谷では第2の農業革命-すなわち,貯留式の灌排水農法と家畜飼養とのいっそうの結合をとおして,エジプト古王国(Pyramid Age)への道をひらいたのである。
著者
松島 健一朗
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.9, pp.643-650, 2014 (Released:2018-04-06)
参考文献数
30

国菌と呼ばれる麹菌はしょうゆづくりにおいて最も重要な微生物である。筆者にしょうゆの今までとして,しょうゆづくりにおける麹菌の役割としてのタンパク質の分解,日本の製麹法の確立としての撒麹,しょうゆのこれからとして,麹菌のゲノム解析,遺伝子組換え技術の発展におけるジーンターゲッティング,グルタミナーゼの遺伝子レベルにおける役割の解析,圧搾性改良が期待されるマンナン分解酵素を制御する転写因子ManR,麹菌がアフラトキシンを生産しない遺伝子レベルでの理由を解説いただいたので,麹菌を扱っている方はご一読いただきたい。
著者
平島 健一 木村 清和 広瀬 幸雄
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.57, no.542, pp.2516-2522, 1991-10-25 (Released:2008-02-21)
参考文献数
7

By using the theoretical results for closed-form analytical solutions of in-plane problems inclusion under point forces, dislocations and so on, several numerical examples are shown by many graphical representations. The previous results published by several authors can be included as particular cases of our solutions.
著者
矢萩 智裕 宮川 康平 川元 智司 大島 健一 山口 和典 村松 弘規 太田 雄策 出町 知嗣 三浦 哲 日野 亮太 齊田 優一 道家 友紀
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2014年大会
巻号頁・発行日
2014-04-07

国土地理院では全国に約1,300点のGNSS連続観測施設(電子基準点)を設置し,1HzサンプリングのGNSS連続観測を実施している.データ取得及び解析系まで含めた一連のシステムはGEONET(GNSS連続観測システム)と呼ばれ,GEONETで得られた観測データや解析結果等は,我が国の位置の基準を定める測量や地殻変動監視,高精度測位サービス等の幅広い分野で利用されており,現代社会を支えるインフラの一つとしての役割を担っている.防災面においても,これまでGEONETは地震や火山活動に伴う地殻変動の検出等で大きな貢献を果たしており,平成23年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)後には,短周期地震計等により推定された地震発生直後の地震規模が過小評価だったことを踏まえ,より信頼度の高い津波警報初期値への利用を視野に,GEONETのリアルタイムデータを用いた地殻変動結果による地震規模の即時推定技術について大きな期待が寄せられているところである.このような背景を踏まえ,国土地理院では,平成23年度から東北大学との協同研究の下,新たなGEONETのリアルタイム解析システム(REGARD:Real-time GEONET Analysis system for Rapid Deformation Monitoring)の開発を進めてきた.REGARDでは,GEONETで収集されたデータをRTKLIB 2.4.1(Takasu, 2011)をベースとした解析エンジンで処理し,RAPiDアルゴリズム(Ohta et al., 2012)又は緊急地震速報(Kamigaichi et al., 2009)を用いて検知された地震発生に伴う各電子基準点の変位量を入力値として矩形断層モデルの即時自動計算(西村, 2010)を実行することで,地震規模が推定される.平成24年度からは東北地方を中心とした143観測点によるプロトタイプ版を開発して連続稼動の試験運用を実施するとともに,GEONET運用後に発生した過去の大規模地震時の観測データ等を利用したシステムの能力評価を行ってきた.一例として,平成23年東北地方太平洋沖地震のケースでは,推定される矩形断層モデルとCMTとの比較では位置及びメカニズムに若干の差異はあるものの,地震発生から約3分でMw8.9を推定可能であること,Mw7.5を下回る規模の地震の場合にはS/N比が低くなり推定精度が落ちること等が明らかとなった.平成25年度には,プロトタイプシステムをベースに,解析範囲を全国の電子基準点に拡大するとともに,解析システムをGEONET中央局内で二重化すること等により冗長性を高めた新たな全国対応システムを構築した.また,解析設定ファイル作成や結果ファイル閲覧等の支援機能についても追加で実装している.同システムについて平成26年4月から本格的な運用に向けた試験を開始している.本講演では,過去の観測データから得られた検証結果及び全国対応システムの概要を報告するとともに,将来的な津波警報への活用に向けた取り組みや課題について報告する.
著者
石島 健一郎 相澤 清晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.565, pp.85-92, 2001-01-11
被引用文献数
2

著者らは, センシングデバイスと情報処理機器の小型化が進み、ウェアラブルなビデオ機器により個人の人生をそのまま記録することが可能になると考えており、映像と同期して記録した脳波を解析することで精度良く興味映像を抽出しうる手法を提案してきた。本稿では、脳波の時系列特性に基づいた解析手法により、意味のあるまとまりとしてのシーンを生成しうることを示す。
著者
石島 健一郎 椎名 誠 相澤 清晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.181, pp.51-58, 2000-07-06
被引用文献数
5

著者らは、センシングデバイスと情報処理機器の小型化が進み、ウェアラブルなビデオ機器により個人の人生をそのまま記録することが可能になると考えている。本稿では、このウェアラブル機器で記録した個人体験映像の要約と構造化について論じる。特に、映像と同期記録した脳波による要約実験を示し、精度良く興味映像を抽出しうる事を示す。
著者
三浦 信幸 横路 誠司 井上 香織 高橋 克巳 高橋 健司 島 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI,ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.39-44, 1999-11-25

本稿では,インターネット上に存在する雑多な形式の情報を,位置に応じて適切に提供するための情報構造化や情報フィルタリングを行う手法を検討する.このような情報を適切に提供するためには,雑多な形式の情報に対して構造化を行い,構造化された結果を利用して,位置を含めた様々な観点から情報を分類・フィルタリングする必要がある.検討した手法では,情報構造化に際してパターンマッチや特定分野の辞書を用いた形態素解析などを行う.また,情報フィルタリングに際しては,構造化された情報と構造化されなかったHTMLファイル中の名詞や固有名詞の中からtfidf値を参考に頻出する情報を抽出する.さらに,検討した手法のプロトタイプである,モーバイルインフォサーチ3実験(MIS3)について紹介する.
著者
中島 健一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.445, 2014 (Released:2016-06-21)
参考文献数
4

ホップHumulus luplusはビール原料の1つとして,その雌株の毬花が風味付けや保存性向上のために利用されている.ビール特有の苦味は,主にフムロンや醸造中に変換されるイソフムロン等の苦味成分によるものである.本成分の存在は古くから知られていたが,昨年,遂に絶対構造の決定が成された.同様にホップの主成分であるキサントフモール(xanthohumol:XH,図1)に関する研究も興味深い.XH は,カルコン誘導体であり,がん予防効果について盛んに研究が行われてきた.Legetteらは,高脂肪食を与えた雄の肥満モデルラットにおいて,6週間XHを投与したところ,体重増加と空腹時血糖値上昇を有意に抑制することを報告したが,最近,その作用に関するさらなる研究が報告された.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Urban J. et al., Angew. Chem. Int. ed., 52, 1553-1555 (2013).2) Legette L. L. et al., Phytochemistry, 91, 236-241 (2013).3) Kirkwood S. J. et al., J. Biol. Chem., 288, 19000-19013 (2013).4) Krajka-Kuzniak V. et al., Toxicol. In Vitro, 27, 149-156 (2013).