著者
岩崎 克典 高崎 浩太郎 野上 愛 窪田 香織 桂林 秀太郎 三島 健一 藤原 道弘
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.140, no.2, pp.66-70, 2012 (Released:2012-08-10)
参考文献数
14
被引用文献数
3 5

漢方薬である抑肝散(よくかんさん)は,アルツハイマー病の周辺症状(BPSD)にしばしば使われる.しかし,その薬理学的特性は未だ明らかにされていない.漢方を認知症の補完・代替医療として考える場合には,その薬理学的な背景を明らかにすることが肝要である.そこで,我々は抑肝散が,妄想・興奮モデルとしてのメタンフェタミンによる自発運動量の異常増加を抑制すること,幻覚モデルとしての5-HT2A受容体アゴニストであるDOI投与による首振り行動,高架式十字迷路および明暗箱課題を用いた不安行動,夜間徘徊の指標となる明暗サイクルにおける明期の自発運動量の増加をそれぞれ有意に抑制することを明らかにし,認知症患者のBPSDに有効である可能性を示した.さらに8方向放射状迷路課題において,抑肝散が空間記憶障害の改善作用を示すこと,さらにこの作用は記憶に関わる海馬ACh神経終末からのACh遊離の促進を介することを見出し,抑肝散の中核症状への応用の可能性を提案した.次に,これらの作用が抑肝散の構成生薬のうちどれに由来するかを検討した.その結果,抑肝散を構成する7種の生薬のうちBPSDに対しては釣藤鈎(ちょうとうこう)の5-HT2A受容体を介した作用が,また,中核症状に対しては当帰(とうき)のACh神経系を介した作用がその役割を担っている可能性が示唆された.以上のことから,抑肝散はアルツハイマー病患者のBPSDのみならず中核症状にも有効で,補完・代替医療において西洋薬に替わる治療薬として有用であることが示唆された.
著者
松島 健一 田中 忠次 毛利 栄征
出版者
公益社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業農村工学会論文集 (ISSN:18822789)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.254, pp.151-160,a2, 2008

地盤内に設置された矢板を引抜く際, 地盤に生じた空隙が応力の再配分を引き起こし, 地中構造物に大きな影響を及ぼす. 本研究では, 矢板引抜きに伴う地盤と地中構造物の相互作用メカニズムを解明するため, 矢板引抜き現象を考慮した数値解析モデルを開発した. 地盤中の応力解放は要素掘削手法を適用し, 空隙両側の不連続な地盤面の接触は, Belytshko et al.(1991) が提案したピンボールアルゴリズムを採用した. 本手法は, パイプラインを対象とした矢板引抜き模型実験における埋設管のたわみや地表面沈下などの挙動を定性的に予測できることが分かった. また, 地盤中のひずみや土圧分布の変化などから埋設管のたわみの発生メカニズムを明らかにすることができた.
著者
川久保 昌平 平島 健一
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.1011-1016, 1997-09-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

Elliptical ring subjected to arbitrary load has not been studied until now, although the solution for circular ring is easy to obtain. The analysis of elliptical ring enclosed by conforcal two elliptical boundaries is much complicated. In this paper, the general solutions of isotropic elliptical ring for stresses and displacements are obtained by the method of Laurent series expansion of complex stress functions and some numerical examples are shown. The accuracy and the rate of convergence of the present method are then discussed based on these solutions.
著者
五井 龍彦 田中 裕久 中島 健一 渡辺 浩二
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.58, no.678, pp.203-209, 2010 (Released:2010-07-26)
参考文献数
6
被引用文献数
4 3

A half-toroidal traction drive CVT has a feature of small spin at traction pitch in whole speed ratio range of 1:4, which suits to transmit high rotational speed with minimum temperature increase of traction surface. Research activity on traction drive CVT has commenced in 1996 for applying it to an aircraft 24,000rpm constant-speed generator instead of a hydro-static transmission. This paper shows fundamental design of 90kW traction drive integrated drive generator, ``T-IDG", and stability analysis on a sensor-less electro-hydraulic speed control servo-mechanism by bond graphs. The performance test of T-IDG mounted on a test bench and an actual jet engine proved that the control system using sensor-less servomechanism can keep the generator speed within MIL-STD-704E allowable limit against steep changes of speed and load.
著者
佐藤 公俊 中本 達也 中島 健一
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.77-83, 2018-07-15 (Released:2018-08-15)
参考文献数
10

本研究では,生鮮食品のPOS(Point Of Sales:販売時点情報管理)データを用いて最適な値引き販売の開始時刻を求め,販売収益および廃棄率への効果を明らかにする.Feng and Gallego(1994) により導かれた総期待売り上げの最大化のための値引き時刻決定アルゴリズムを適用し,在庫量に依存する時間についての閾値型で与えられる値引き戦略を視覚的に示す.さらに,最適な割引価格についても数値的に検討する.その結果,現状の販売方法と比較し,約17.4%の収益改善効果が得られた.
著者
中島 健一郎 寺尾 日出男 野口 伸
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.49-58, 1997-01-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
18

本研究は, 地磁気方位センサ (以下, GDSという) を中核とした農用自律走行システムを構築して, GDSを航法センサとして使用した場合の有効な利用法の確立を目的としている。 GDSの方位情報のみを用いたPI制御によって, 平坦な路面を自律直進させた場合, 60mの行程長に対して約20cm程度の横方向偏差で直進走行させることが可能である。しかしながら, GDSを用いて傾斜地や任意経路を自律走行させる場合には, 磁性体である車体の影響による磁気環境の歪みや車体傾斜による方位誤差をさらに高精度に補正することが課題となる。本研究は, ニューラルネットワークを適用した傾斜・磁気環境補正法を考案して, ほ場走行試験によって方位補正効果を確認し, その有効性を明らかにした。
著者
重松 幹二 大賀 祥治 正本 博士 三島 健一 亀井 一郎
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

菌糸体から水可溶性のβ-グルカンを抽出するために、マキネッタ抽出器の適用を検討した。その結果、漢方薬として用いられるブクリョウや各種食用キノコから効率良くβ-グルカンを抽出することができた。また、カンゾウからグリチルリチン酸、オウレンやオウバクからベルベリン、樹木樹皮からタンニンを抽出することもできた。これら抽出液の活性は高く、特にブナシメジからのβ-グルカンは高い抗腫瘍活性を有していた。
著者
平居 貴生 髙木 三千代 中島 健一 井上 誠
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.6, pp.861-866, 2019-06-01 (Released:2019-06-01)
参考文献数
35
被引用文献数
1

Brown adipose tissue is a critical regulator of metabolic health, and contributes to thermogenesis by uncoupling oxidative phosphorylation through the action of mitochondrial uncoupling protein 1 (Ucp1). Recent studies have shown that cold exposure and the stimulation of β3-adrenergic receptors induce the development of brown cell-like “beige” adipocytes in white adipose tissue. Brown and/or beige adipocyte-mediated thermogenesis suppresses high-fat diet-associated obesity. Therefore, the development of brown/beige adipocytes may prevent obesity and metabolic diseases. In the present study, we elucidated whether naturally occurring compounds contribute to regulating the cellular differentiation of brown/beige adipocytes. We screened for the up-regulated expression of Ucp1 during beige adipogenesis using extracts of crude herbal drugs frequently used in Kampo prescriptions (therapeutic drugs in Japanese traditional medicine). This screening revealed that the extract prepared from Citri Unshiu Pericarpium [the peel of Citrus unshiu (Swingle) Marcov.] increased the expression of Ucp1 in beige adipocytes. We also focused on the function of clock genes in regulating brown/beige adipogenesis. Therefore, another aim of the present study was to evaluate naturally occurring compounds that regulate brain and muscle Arnt-like 1 (Bmal1) gene expression. In this review, we focus on naturally occurring compounds that affect regulatory processes in brown/beige adipogenesis, and discuss better preventive strategies for the management of obesity and other metabolic disorders.
著者
丸山 勝久 島 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.1777-1790, 2000-06-15
参考文献数
24

オブジェクト指向ソフトウェア開発において,フレームワークを再構成することは,その再利用性をより高くする効果を持つ.しかしながら,再構成操作は手動で行うには複雑である.本論文では,過去のアプリケーション開発時のメソッドの変更履歴に基づく重み付き依存グラフを用いて,フレームワークを自動的に再構成する手法を提案する.本再構成手法では,継承によりクラスを再利用した際,メソッド内部に存在する依存関係が保存あるいは破壊されるかどうかに応じて,依存関係の強さを指す重みを変動させる.重み付き依存グラフの矢印に蓄積された重み値に基づき,もとのフレームワークにおいて,そのまま再利用可能な固定部分と要求に応じて柔軟に変更する可変部分を分離することで,個々の開発者に特化したフレームワークの成熟化を実現する.適切に分離された固定部分と可変部分を含むフレームワークを用いることで,アプリケーション開発における実装の繰返しを軽減できる.本論文における評価実験では,開発者の記述コード量に関して,最大22%(従来手法に比べて約2倍)の減少率を確認した.While refactoring makes application frameworks more reusable,it is complex to do by hand.This paper presents a mechanism that automatically refactors methodsin object-oriented frameworks by using weighted dependence graphs,whose edges are weighted based on the modification histories of the methods.To find the appropriate boundarybetween frozen spots and hot spots in the methods,the value of the weight varies based on whether the dependencein the original methods has been repeatedly preserved or destroyedin the methods of applications created by programmers.The mechanism constructs both template methods that containthe invariant dependence and hook methods that are separatedby eliminating the variant dependence.The new template methods and hook methods tailored toeach programmer save him/her from writing superfluous codewhen reusing a framework.Experimental results show a reduction rate of up to 22%in the number of statements a programmer has to writewhen creating several applications;this percentage is double that achievableby a conventional refactoring technique.
著者
三木 あかね 中島 健一郎
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.18, pp.91-105, 2019-03-31

本研究の一部は第11回ドリームチャレンジ賞(H29)研究費により行われました。本論文は,広島大学大学院教育学研究科心理学専攻に提出した平成29年度修士論文をもとに執筆したものである。本研究の一部は,日本社会心理学会第57回大会(2016年度)および中四国心理学会第72回大会(2016年度)で発表した。しかし,上記の学会発表では執筆者の不手際により,誤った分析結果を発表していた。再分析した結果が29年度修士論文および本論文の結果になる。
著者
横路 誠司 高橋 克巳 三浦 信幸 島 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.1987-1998, 2000-07-15
参考文献数
17
被引用文献数
13

インターネット上に分散するWWW文書を位置指向に検索するシステムを開発した.本システムでは,任意の地理的領域に属するWWW文書を検索することが可能である.本検索システムの実現のために,3つの手法を開発した.まず,位置指向検索に必要なWWW文書を選択的に収集する手法,次に,WWW文書から住所を抽出し,抽出住所を緯度経度と対応づけることによる構造化手法,そして,構造化された文書の緯度経度を用いた,地理的検索手法である.選択的収集手法は,WWW文書の内容を予測し,位置に関連した情報を高い割合で収集することができる.構造化手法では,住所辞書を持った形態素解析と,住所表記の正規化を用いて,WWW文書からの住所抽出を行った.その結果,正しい住所の抽出を保証したうえで,出現住所文字列の92%の抽出を丁目レベルで実現した.地理的検索手法では,構造化で付与された緯度経度情報と検索領域の重なりに存在するWWW文書の情報を提示する.この手法の評価実験を行った結果,提案手法は,検索領域として住所文字列を使用する従来のキーワード検索で少なくとも約25%存在していた検索もれを解消することができた."We developed a location-oriented search system for WWW documents on the Internet.This system can search WWW documents related to any geographical area.The system has three modules.(1) ``Location oriented selective information collecting robot''that collects documents from the Internet,(2) ``Location oriented structuring parser''that extracts address strings from the WWW documents andputs longitude-latitude information to the original document,(3) ``Location oriented structured search'' that performs geographical search.Our ``robot'' collects documents related to the location selectivelyby estimating the target document has the location information or not.Our ``parser'' extracts address strings using the morphological analysis andnormalization of address variants.It extracts 92% of detailed address strings while guaranteeingthe precision of the extraction.And our ``location oriented search'' method searches the documents whichits longitude-latitude overlaps to the polygon of the search request.This method can search all documentsthat conventional keyword search overlooks at least 25% of documents.
著者
鍛治 伸裕 福島 健一 喜連川 優
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.293-300, 2009-03-01
被引用文献数
1

テキストマイニングでは,自然言語処理分野の基礎技術である形態素解析がモジュールとして利用されることが多い.しかし,ウェブには口語体のテキストが多く,新聞記事のような整ったテキストを対象としてきた自然言語処理技術では,十分な精度で解析を行うことは難しい.本論文では,形態素解析の精度低下は「ググる」などの片仮名用言が一因となっていることに着目し,それを大規模なウェブテキストから自動獲得する手法を提案する.