著者
木曽 陽子
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.200-211, 2011-12-25 (Released:2017-08-04)
被引用文献数
3

本研究の目的は,「気になる子ども」の保護者との関係の中で現れる保育士の困り感に着目し,その変容プロセスを明らかにすることであった。そこで,公立保育所の保育士5名に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析を行った。分析の結果,以下の3点がこのプロセスの特徴として明らかになった。第1に,「気になる子ども」の保護者に関わる際に,保育士は<"子どものため"の思いの基盤>を常に持ち合わせていた。第2に,<保護者との思いの対立>という経験を経て,保育士の働きかけが<"子どものため"に理解を求める>から<保護者に合わせる>へ変わっていた。第3に,<保護者に合わせる>関わりに変わっても,保育士は<"子どものため"の思いの基盤>とく保護者に合わせる>の間に葛藤を抱いていた。

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著者
布川 弘 曽田 三郎 金子 肇 石田 雅春 小野寺 史郎 笹川 裕史 有馬 学 丸田 孝志 三品 英憲 小林 啓治 勝部 眞人 小池 聖一
出版者
広島中国近代史研究会
雑誌
拓蹊 (ISSN:21868387)
巻号頁・発行日
no.1, pp.39-52, 2012-03-24

シンポジウム : 20世紀東アジアの立憲制―辛亥革命と大正政変
著者
曽根 由希子 吉田 尚史 清木 康
雑誌
情報処理学会研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.68(2005-DBS-137), pp.607-614, 2005-07-15

本稿では精神医学分野データベースを対象とし 病名・症状の抽象度と因果関係性を反映した検索の実現方式を示す.本方式は事象の上位・下位概念といった抽象度依存検索や原因・結果といった因果関係検索などの 特定の方向を有したベクトル空間による検索を可能とする.本方式により 特定の方向性に関する計量を実現することにより 利用者の検索目的に応じた事象やその文書データを検索可能となる.本稿では 精神医学データベースを対象とし 本方式の実現可能性を検証する.
著者
大曽 基宣 津下 一代 近藤 尚己 田淵 貴大 相田 潤 横山 徹爾 遠又 靖丈 辻 一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.15-25, 2020-01-15 (Released:2020-02-04)
参考文献数
33

目的 健康日本21(第二次)の目標を達成するため,各自治体は健康課題を適切に評価し,保健事業の改善につなげることを求められている。本研究は,健康日本21(第二次)で重視されるポピュレーションアプローチに着目して,市町村における健康増進事業の取組状況,保健事業の企画立案・実施・評価の現状および課題について明らかにし,さらなる推進に向けたあり方を検討することを目的とした。方法 市町村の健康増進担当課(衛生部門)が担当する健康増進・保健事業について書面調査を実施した。健康増進事業について類型別,分野別に実施の有無を尋ねた.重点的に取り組んでいる保健事業における企画立案・実施・評価のプロセスについて自記式調査票に回答してもらい,さらに参考資料やホームページの閲覧などにより情報を収集した。6府県(宮城県,埼玉県,静岡県,愛知県,大阪府,和歌山県)の全260市町村に調査票を配布,238市町村(回収率91.5%)から回答を得た。結果 市町村の健康増進事業は,栄養・食生活,身体活動,歯・口腔,生活習慣病予防,健診受診率向上などの事業に取り組む市町村の割合が高かった。その中で重点的に取り組んでいる保健事業として一般住民を対象とした啓発型事業を挙げた市町村は85.2%,うちインセンティブを考慮した事業は27.4%,保健指導・教室型事業は14.8%であった。全体では,事業計画時に活用した資料として「すでに実施している他市町村の資料」をあげる市町村の割合が52.1%と半数を占め,インセンティブを考慮した事業においては,89.1%であった。事業計画時に健康格差を意識したと回答した市町村の割合は約7割であったが,経済状況,生活環境,職業の種別における格差については約9割の市町村が考慮していないと回答した。事業評価として参加者数を評価指標にあげた市町村は87.3%であったのに対し,カバー率,健康状態の前後評価は約3割にとどまった。結論 市町村における健康増進・保健事業は,全自治体において活発に取り組まれているものの,PDCAサイクルの観点からは改善の余地があると考えられた。国・都道府県は,先進事例の紹介,事業の根拠や実行可能な運営プロセス,評価指標の提示など,PDCAサイクルを実践するための支援を行うことが期待される。
著者
久米 郁男 曽我 謙悟 境家 史郎
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、江戸時代における大名家の「統治体制」の成立を、大名家が大名個人の「家」から、家臣団がそれぞれの分限にしたがって帰属する「公的」な共同体たる「御家」といたる変化と捉えて、そのプロセスを実証的に解明し、その意義を検討することを目的とした。その際に、アメリカやヨーロッパの政治学会において近年注目される統治体制形成に関する計量的歴史分析の業績のなかでも、Blaydes&Chaneyによる封建革命とヨーロッパ君主の在位期間に関する研究やKokkonenn & Sundellによる長子相続と君主制の存続可能性に関する研究など江戸期への応用可能性の高い論文を検討してその延長上に我々の研究デザインを構築した上で、我々プロジェクトの従属変数である統治体制変容の計量分析の前提となる各大名家・諸藩の統治体制データの構築を行うための手がかりとして、工藤編『江戸時代全大名家事典』などの2次資料を利用してデータベースの作成を進めた。その結果、江戸大名3576名について、家名、藩主名、藩名、石高、出自(父母)、出生地(判明しているもののみ)、生年、没年、家督相続年月、官位、官位叙任年、退任年月、退任理由、幕府要職、要職就任年を項目とするデータベースを完成させた。これと平行して、御家騒動の様々な類型(福田2005)の背後にある因果メカニズムに注目し、先行研究に基づく御家騒動データベースを構築した。しかし、この過程において、御家騒動に至らない(観察されない)統治体制の変化をどのように捉え、その効果を検証するかについて研究上大きな課題があるとの結論に至った。そこで、藩主在任期間、藩主交替の態様などについてより広く計量分析を行い、我々の仮説を一定程度サポートする有意な分析結果を得た。本プロジェクトは終了したが、この分析結果を基に内外の学会での報告に向けてペーパーを作成し成果発表を準備している。
著者
阿曽村 一郎 武田 康博
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.2, pp.1053-1058,

オンラインバンキングなどの認証情報を盗むマルウェアはバンキングトロジャンと呼ばれる.多くの場合,これらはメール本文 URL からのダウンロードさせるかたち,またはメールの添付ファイルとして配布される.バンキングトロジャンを配布するための基盤として,Cutwail というボットネットがある.Cutwail についてのこれまでの研究によれば,ボットと C&C サーバ間の通信は攻撃者が望むコンテンツのスパムメールを送信するためのメカニズムを持つことが分かっている.本稿では,Cutwail のボットと C&C サーバの間の通信に着目し,我々が観察した結果と以前の研究結果との比較結果を説明する.
著者
曽余田 浩史
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

(1)学校づくり(学校経営)の営みをデザイン行為として捉えるための基礎作業として、デザイン学(方法論)を意識して組織デザインを論じるK.Visscherらの見解を手掛りに、古典的なデザインアプローチと開発的なデザインアプローチの原理や特徴を対比的に考察した。古典的なデザインアプローチは「合理的な問題解決」としてのデザイン観であり、近年の学校経営やスクールリーダー教育の理論と実践に色濃く反映されている。このデザイン観は、デザインする主体とデザインされる客体の分離を前提とし、人々の行動・取組み(組織行動)をコントロールするための「青写真」をつくることをデザイン行為と捉える。デザインの対象は、目に見えるフォーマル構造や計画(青写真)である。デザインのプロセスは、①問題の分析→②解決策のデザイン→③実行→④評価という段階モデルにもとづいており、①の段階において複雑性を排除する。開発的なデザインアプローチは、「状況との省察的な対話」としてのデザイン観である。デザインする主体とデザインされる客体の分離を否定し、両者をトランスアクション(相互形成)的な関係で捉える。デザインの対象は、人々が自分で自身の仕事をデザインしたり変えたりする動きの創造をねらった変化や動きである。デザインのプロセスは集合的な学習であり、状況との省察的な対話である。そして、組織づくりのプロセス全体をデザイン行為と捉える。(2)デザインの視点から斎藤喜博の「学校づくり」論を考察し、そのデザイン的な原理を試論的に考察した。相手が変革することによって自分が変革するというトランスアクション(相互形成)的な関係、「固定しない」という実践の在り方、「典型」創造などがデザイン行為としての学校づくりにおいて重要であることを言及した。
著者
広根 万里雄 曽根 敏夫 二村 忠元
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.487-495, 1975-08-01 (Released:2017-06-02)

A theory of the excitation of a clarinet was proposed in case that no performer's lips were applied to the reed of the instrument, by assuming the interaction between the air column and the reed and considering the vibration of reed as a bending vibration of beam. The results of calculation were compared with those of experiment on a model clarinet specially prepared in order to make both experimental condition and theoretical assumption coincide. In Section 2, the method of calculation of the resonance frequency of reed itself is shown ; the calculation was based on the assumption that the reed vibration is well represented by one-dimensional bending vibration of beam. Section 3 depicts the equation (Eq. (14)) of motion of the reed of instrument and the wave equation (Eq. (13)) of air column. These equations were solved simultaneously and from the results of analysis the frequency equation was obtained, which gave the dependence of the excited frequency (including higher order modes) on the physical blowing condition of the instrument. In Section 4, an example of the excited frequency calculated from the frequency equation is first shown (Fig. 7) based on presumable values of the material constants for a standard reed, together with the resonance frequency of the reed. Next, for confirming the above mentioned theoretical results, calculation was performed for the excitation of an instrument with metal reeds of precisely defined material constants and geometrical form. Table 4 and Figs. 8 and 9 show the observed and calculated results of the excited frequency of the model clarinet mentioned above as a function of the pipe length. And for comparison, the resonance frequency of reed itself calculated by the method described in Section 2 is presented in the same table and figures, in which it is shown that the results of calculation and experiment coincide satisfactorily well. It was also made clear that the excited frequency of the clarinet without application of performer's lips is deviated to some extent from the resonance frequency of reed, and that the change of excited frequency due to the pipe length is nearly proportional to the resonance frequency of the air column. In this case, the change of excited frequency was small compared with that of resonance frequency of the air column, and there existed a frequency region in which the clarinet was difficult or perfectly not to be excited according to a certain relation existing between the resonance frequency of reed and that of air column (See Figs. 8 and 9).
著者
曽我部 敦 安田 正明 野田 章
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.207-216, 2002-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
38
被引用文献数
9 10

頭髪上での毛髪のハリ・コシ感は, 毛髪の曲げ硬さやねじり硬さ, 毛髪間の摩擦による影響など複数の物理特性の組合せによるものであるが, 最も基本的な因子の一つには, 毛髪一本の硬さがあげられる。そこで毛髪の硬さについて, 曲げ応力測定と毛髪径測定を行い, 材料力学的見地から, ヤング率による評価を試みた。毛髪の短径および長径を正確に測定するために, レーザー光を利用した毛髪径測定装置を開発した。また, 毛髪をキューティクル, コルテックスより構成される, 異なるヤング率を持った二層構造と仮定し, 毛髪全体のヤング率と物理的にキューティクル層を剥離させたコルテックス部分のみからなる毛髪のヤング率測定を行い, 材料力学的な解析によりキューティクルのヤング率を算出した。その結果, キューティクルはコルテックスの4倍程度硬いことがわかった。また, 毛髪の短径, 長径およびキューティクル層の厚さの測定結果と併せて, 曲げ応力に対するキューティクルとコルテックスの寄与率を算出したところ, キューティクルの曲げ応力への寄与率は, 全体の約6割に達し, 曲げ応力の発生はキューティクルが重要な役割を担っていることを見出した。
著者
西谷 陽志 坂井 瑠実 申 曽洙 森上 辰哉 清水 康 稲田 紘
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.287-295, 2010-03-28 (Released:2010-04-28)
参考文献数
18
被引用文献数
1 6

透析患者に対し,治療を円滑に行うために必要なシャントの日常管理のうちでも,特に狭窄の診断は極めて重要である.シャント音の聴診はシャント狭窄を簡便に診断する方法として日常的に用いられている.臨床経験上,狭窄の進行に伴って高調なシャント音が聴診されることが知られているが,この診断には客観的な基準がなく,聴診者の主観に頼っているのが現状である.そこでわれわれはこの診断基準の確立に向けた基礎的研究として,シャント音を周波数解析し,狭窄度と周波数スペクトルの関係について解明することを試みた.方法としては,まず患者のシャント(動静脈吻合)の吻合部より中枢部に向けて3~6箇所の部位で複数のシャント音を記録し,短時間フーリエ変換により周波数スペクトルを算出した.次にシャント狭窄度とシャント音の周波数スペクトルとの関係をスペクトルの平均値の有意差により解析した.その結果,吻合部(シャント狭窄部より上流域)および狭窄部上では,狭窄の進行に伴い高周波数帯域のスペクトルの割合が有意に大きいことが確認された.一方,中央部(狭窄部より下流域)では基本的に狭窄度と周波数帯域との間に有意差は確認できなかったが,狭窄部直後の部位については中間周波数帯域のスペクトルを中心に有意に大きくなることが確認された.流体力学理論上,特に吻合部,狭窄部,また,狭窄部直後の中央部では狭窄の進行に伴って乱流が発生し,その影響で高周波数帯域のスペクトルが上昇するものと考えられる.以上の結果から,シャント音による客観的な狭窄度診断のアルゴリズムが確立できることが期待された.
著者
大曽根 暖 小川 潤也 羽賀 望 本島 邦行
出版者
日本大気電気学会
雑誌
Journal of atmospheric electricity (ISSN:09192050)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.115-125, 2013-08-01
参考文献数
16
被引用文献数
1

In our previous paper, statistical relation between anomalous line-of-sight propagation in the VHF band and occurrences of earthquakes was presented. Basically, the anomalous propagation is mainly caused by anomalous refractive index of low atmosphere. In the present paper, the anomalies of the refractive index is captured by both the direct observation of radio ducts and the anomalous propagation in the VHF band, and the relation between them and the earthquakes are statistically clarified. Furthermore, the influences of meteorological conditions, which may disperse the anomalies of refractive index in the low atmosphere, are discussed. As a result, relation between anomalous propagation and earthquakes became increasingly clear by using anomalous propagation that concurrent with S-type ducts and meteorological conditions, wind velocity.
著者
上野 裕介 増澤 直 曽根 直幸
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.229-237, 2017

生物多様性に関する行政施策は、転換期を迎えている。その最大の特徴は、生物多様性の保全や向上を通過点ととらえ、豊かな社会の実現をゴールに据えている点である。本論説では、地方自治体が策定する生物多様性地域戦略を軸に、生物多様性を活かした地域づくりに関して地方自治体が策定する計画や政策の現状と可能性を紹介する。その上で、生態学者と行政(環境部局と他部局)、民間、地域社会の連携による経済・社会と生物多様性の統合化に向け、生態学者はどのような点で期待され、社会に貢献できるのかを考える。