著者
高木 浩光 有田 隆也 曽和 将容
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.1583-1592, 1991-12-15
被引用文献数
7

並列計算機において高い性能を得るためには 高速な命令実行順序制御機構の開発が重要である本論文では単純なハードウェアによって構成できる 命令のプロセッサ割り当てをコンパイル時に決定する静的順序制御方式について議論する従来の単純なハードウェアによる静的順序制御機構としてバリア型同期が挙げられるバリア型同期機構は構成が単純なため高速な制御が可能であるが すべてのプロセッサが一斉に待ち合わせを行うという同期の性質上 本質的に不要な待ちが生ずるという欠点を持つ本論文では 静的順序制御方式による実行を並列コントロールフローモデルによって抽象化し その特性を示すとともに その特性を利用することによってはじめて可能となる 単純で かつ 不要な待ちを生じない静的順序制御機構を提案する提案する制御機構は一般化静的順序制御機構と呼び プログラムカウンタのほかに それと同程度に単純なカウンタを任意のプロセッサ間に設け これらを協調的に動作させることによって実現される
著者
有田 隆也 伊藤 広明 高木 浩光 曽和 将容
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.41, pp.145-146, 1990-09-04

細粒度の並列度を効率的に抽出するプロセッサアーキテクチャとして、我々はPNプロセッサを提案し、開発を進めている。PNプロセッサには、1)命令の種類に応じたプロセッサの機能分割、2)シンプルで高速な命令実行順序制御方式の採用、などの特徴がある。プロトタイプモデルでは、プロセッサの処理を、1)転送、2)演算、3)フロー制御(分岐)、の3つに分割して、スカラ処理を細粒度並列実行化している。本稿では、シミュレーションに基づき、上記の特徴について評価する。
著者
寺本 昌弘 曽根 岳大 高田 耕平 小縣 開 齋藤 啓太 和泉 拓野 高野 昂佑 長尾 茂輝 岡田 陽介 田地 規朗 河村 俊邦 加藤 章一郎 前川 隆彰 小林 彩香 小林 真一 佐藤 謙 木村 文彦
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.598-604, 2020 (Released:2020-07-03)
参考文献数
18

2011年1月から2018年2月までに再発indolent B-cell lymphomaに対し,当科で施行したrituximab併用bendamustine(BR)療法の治療成績を後方視的に解析した。病型は濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma, FL)42例(67%)が多く,FL症例で治療を完遂した群の無増悪生存期間(progression free survival, PFS)の中央値は未到達であった。また治療開始から5年間のCD4陽性T細胞数を解析したところ,長期にわたり200/µl前後を推移する症例が多かった。BR療法は再発indolent B-cell lymphomaに対し有用な治療であり,特にFLにおいてはBR療法を完遂することがPFSの改善に重要である。また治療後は細胞性免疫不全が顕在化するため,5年程度は感染症の発症に注意するべきかもしれない。
著者
小曽根 惠子 金山 彰宏 小曽根 努
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.32-36, 1995-10-31 (Released:2019-07-11)
参考文献数
6
被引用文献数
4

雑居ビル地階の食室内に生息するゴキブリを用いて放逐実験を行い,実地におけるチャバネゴキブリ成虫の移動範囲を調査した.横浜市内の和風食堂(9.7×7.0m2)において,生け捕り式トラップに捕獲されたチャバネゴキブリ成虫にマーキングをして放逐,再捕獲を行った.再捕獲には粘着式トラップを用いた.雄および未抱卵雌を採集地点と異なる食堂入口付近で放逐した場合,多くの個体が厨房付近で再捕獲された.この移動は,エサ・水を求めての移動と思われた.雄および未抱卵雌を厨房で放逐し,放逐翌日に殺虫剤処理を行い,ゴキブリの1日の移動範囲を調査したところ,マーク個体は放逐場所のごく周辺で再捕獲された.また抱卵雌を食堂の入口および厨房近くの倉庫で放逐したが,いずれも移動範囲は放逐場所のごく周辺に限られ放逐場所の違いによる行動の差は見られなかった.
著者
曽川 一幸 林 加織 村田 正太 古畑 勝則 野村 文夫
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.141-144, 2017

<p>近年,高い迅速性と正確性を有し,しかも低コストの細菌同定手法として,質量分析計が注目されている.2011年に医療機器として認定され,日本国内に約150ヶ所の病院・検査センターの細菌検査室で細菌同定のツールとして運用されている.従来細菌の同定には,主に形態学的手法(グラム染色,コロニーの形状やその大きさ)や生化学的手法が用いられている.しかしながらいずれの手法も煩雑な作業であり高い専門性が要求される.高い識別能力がある16S rRNAを指標とする手法は,多くの検体を一度に解析することが難しく,日常的に用いることは困難でありコストがかかる.質量分析計による細菌同定はサンプル調整が容易で,測定操作も簡便であり,一菌種約5分で同定結果が得られる.この特徴を活かして,煩雑な試料前処理を行わず,属や種を容易に識別することのできる手法として注目されている.</p>
著者
小曽根 雄一 網野 由美子 杉崎 俊夫
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.436-439, 2012-12-01 (Released:2014-06-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

感圧接着剤(粘着剤)でガラス等の無機物に貼付するような用途では,高温高湿の環境下においても長期間高い粘着性,耐久性,耐湿性が求められ,シランカップリング剤が添加される場合がある。例えば,建物や車両などの開口部におけるガラスへの機能性フィルム貼付用粘着剤,光学機能性部材を液晶セルのガラス基板に接着するための粘着剤などである。そのため,シランカップリング剤の分散状態を解析し,粘着特性との関係を明らかにする事により,効果的なシランカップリング剤の利用による,界面接着強度の制御が可能になると考える。しかし,これまでに粘着剤中のシランカップリング剤分散状態を具体的に数値化した例はほとんどない。本報では,アクリル酸エステル共重合体中のシランカップリング剤添加量を変化させた時の分散状態解析及びガラスに対する粘着力を評価し,シランカップリング剤分散状態との関係を考察した。ブチルアクリレート,2-ヒドロキシエチルメタアクリレートからなるアクリル酸エステル共重合体に架橋剤及びシランカップリング剤を添加し,酢酸エチルにて希釈後,ポリエステルフィルム上に塗布することで粘着シートを作製した。シランカツプリング剤の分散状態をX線光電子分光法(XPS)及びC60イオンスパッタリングを用いて解析した結果,シランカップリング剤は粘着シート表面に偏在し,添加量の増加に伴い表面存在量も増加する傾向を示した。また,粘着シート、表面のシランカップリング剤量が,粘着力制御に重要であることが示された。
著者
曽我部 知明 杉村 公也 川村 陽一 水谷 智恵美 渥美 峻輔 和田 美奈子 島崎 博也 辻野 陽子 近藤 真由 西垣内 美佳 山添 智子
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.23, pp.O018, 2007

【目的】脳卒中片麻痺患者が自動車運転を希望する例は少なくない。そこで、本研究は当院で実施している身体機能評価を用いて、自動車運転している群(以下運転群)、自動車運転を希望しているがしていない群(以下非運転群)の2群の各データから、脳卒中片麻痺患者の運転可否を判定するための判別関数を求めることを目的とした。<BR>【対象】対象は、本研究に同意が得られた脳卒中片麻痺患者20例(男性19名、女性1名、平均年齢58.4±6.6歳、発症までの平均運転歴378.4±94.7ヶ月、運転群11名、非運転群9名)であった。<BR>【方法】測定項目は、発症前運転歴、上肢、手指、下肢の運動麻痺の程度(Brunnstrom stage〔以下Br.stage〕)、上肢筋力(非麻痺側握力)、下肢筋力(非麻痺側下肢最大筋力を測定しピーク値を体重で除した値〔N・m/kg〕)、運動耐用能(6分間歩行距離〔以下6MWD〕)、歩行能力評価(10m歩行時間、10m歩数)、立位動的バランス能力指標(Timed Up&GO Test〔以下TUG〕)、バランス評価(Berg Balance Scale〔以下BBS〕)、ADL評価(機能的自立度評価法〔以下FIM〕)を用いた。運転群、非運転群の2群を判別するために、多変量解析の判別分析を用い、線形判別関数を求めた。なお本研究は、当院倫理審査委員会の承認を得て実施した。<BR>【結果】分散共分散行列の等分散に関する検定は有意ではなく、等分散であったため、線形判別関数を、Z=17.90499*Br.stage手指+46.13531*下肢筋力-0.26896*運転歴+6.320207*10m歩行時間-17.2167*Br.stage上肢+3.262781*FIM-3.5203*10m歩数+2.330337*BBS-1.18787*TUG+0.09723*6MWD-2.2287*Br.stage下肢-0.17041*握力-425.2(Z≧0ならば運転群に判別、Z<0ならば非運転群に判別、正判別率1.00、誤判別率0.00013)と求めることが出来た。判別に大きく関っている項目は、Br.stage手指(P=0.012)、下肢筋力(P=0.013)、運転歴(P=0.025)、10m歩行時間(P=0.030)、Br.stage上肢(P=0.036)、FIM(P=0.036)であった。<BR>【考察】脳卒中片麻痺患者に対し、自動車運転可否の評価を試みた報告の多くが、発症後も運転を継続する可能性が高いのは上肢の麻痺が軽度、運動機能、ADLが高い傾向があると述べている。今回の結果から、運転可否の判別に大きく関っている項目にも同様の傾向がみてとれ、半側空間無視など明らかに自動車運転に支障をきたす高次脳機能障害がみられない場合において、運転の安全性を確認する上で身体機能についても評価していく必要があるといえる。<BR>
著者
曽我 宏世
出版者
特定非営利活動法人 日本口腔科学会
雑誌
日本口腔科学会雑誌 (ISSN:00290297)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.179-189, 1979-04-10 (Released:2011-09-07)
参考文献数
26
被引用文献数
5
著者
曽我 孝 宮本 礼人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.CbPI1323, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 関節包や靱帯などの軟部組織の伸張性や、筋緊張により関節可動範囲は変化し、正常可動範囲を超えると関節の緩みや亜脱臼を伴う。そして全身的に関節が緩い場合、靱帯損傷や亜脱臼などを生じる可能性が高くなる。 臨床場面では靱帯損傷症例を経験することがあるが、その中でも膝前十字靱帯(以下、ACL)損傷症例は多い。ACL損傷症例において膝関節弛緩性を評価することは重要であり、ACL再建術後も定期的に評価を行う。そこで今回ACL損傷症例の全身の関節柔軟性と膝関節弛緩性(特にACLに着目して)との間に関連性があるかどうかを検討した。【方法】 今回ACL損傷と診断され、当院で半腱様筋腱、薄筋腱を用いてACL再建術を施行した31名(男性11名、女性20名、平均年齢30.6±11.4歳)を対象とした。関節柔軟性の評価は中嶋のLooseness Testを使用し、手関節、肘関節、肩関節、股関節、膝関節、足関節に脊柱を加えた7部位を評価した。7項目中3項目以上が陽性であれば全身の関節柔軟性は高いと判定した。膝関節弛緩性の評価は膝関節前方弛緩測定器(KNEE LAX3、GATSO社製)を使用し、術前、術後6ヶ月の両膝関節前方移動量を測定した。KNEE LAX3における前方移動量は132Nの力を加えたときの数値(単位:mm)である。得られた結果からLooseness Testと前方移動量(健側、患側、患健差)の相関関係を調べた。統計学的分析としてピアソンの相関係数を用いて検定した。なお有意水準は5%未満(P<0.05)とした。【説明と同意】 対象者には本研究の主旨を十分に説明し、同意を得てから測定を実施した。測定に必要な個人情報、測定結果などは本研究のみに使用し、対象者のプライバシーが保護されていることを加えて説明した。【結果】 今回Looseness Testと術前後の両膝関節前方移動量との間には正の相関が認められると仮定していたが、実際相関が認められたのは術前患側(r=0.5896、P=0.0004)、術前患健差(r=0.4458、P=0.0119)のみであった。【考察】 術前患側の膝関節弛緩性が全身の関節柔軟性と正の相関があることより、ACLを損傷した場合、全身の関節柔軟性が高いほどACL以外の軟部組織の伸張性及び筋緊張が膝関節弛緩性に影響すると考えられる。関節柔軟性を決める要因としては靱帯や関節包、筋肉(筋膜)、腱、皮膚などが挙げられる。この中で特に関節柔軟性に関与しているのが靱帯や関節包で、次いで筋肉(筋膜)と言われ、腱や皮膚の影響は小さい。今回膝関節弛緩性についてはACLに着目して研究を行ったが、ACL本来の柔軟性は全身の関節柔軟性にそれほど関連がないことから、膝関節においては関節包や筋肉(筋膜)が膝関節柔軟性に大きく影響しているのではないかと考えられる。今後、関節包や筋肉などの軟部組織が関節柔軟性にどれほど関連しているかを検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】 ACL損傷症例のほとんどがスポーツによる受傷であり、その大半がスポーツ復帰を強く希望されている。その為に再建術を施行されるが、症例によっては手術までに長期間を要する場合がある。関節柔軟性が高い場合、膝関節への負担を考慮すると関節の支持性を高めるTrainingが重要となってくる。また再断裂や反対側の予防的観点からも同じことが言える。
著者
友部 和弘 小曽 戸洋
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.167-173, 2000-05-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

はじめに : 『刺絡聞見録』で知られる三輪東朔は、不明な点が多い。方法 : 東朔所収の資料 (『刺絡聞見録』『奇魂』『日本医譜』『続諸家人物志』『古今墨蹟鑑定便覧』、東朔の肖像画賛、『医家先哲肖像集』) を検討した。結果・考察 : 信頼性の高い資料を選出し整理した。総括 : 名は東朔、字は望卿、号は浅草庵、大神匡明、三輪弾とも称した。京都の人。1747年生。没年未詳。銚子より浅草に移り開業。父は植田佐渡、子は大神能明。などが確認された。
著者
曽我 芳枝
出版者
東京女子大学比較文化研究所
雑誌
東京女子大学比較文化研究所紀要 (ISSN:05638186)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.17-30, 2011

This paper is a comparative discussion based on Clara's Meiji Diary of how non-Japanese people,with different values and beliefs,took to and understood gagaku,especially, bugaku, which has one of the richest histories of any part of Japanese culture.Clara Whitney,an American girl,came to Japan because of her father's work in 1875(8th year of Meiji), a time when Eastern and Western cultures were coming into contact. She saw ancient Japanese bugaku and tried to understand its cultural world,so completely different from the Western one she knew, with curiosity and passion.I tried to trace which bugaku pieces Clara watched at the beginning of the Meiji Era using evidence from the official Gagakuroku (Musical Activities of the Gagaku Department, Bureau of Ceremonies, Imperial Household Agency), and musicians' diaries. I discovered that the pieces performed in the gagaku rehearsal room between 1878 and 1879 were Manzairaku, Kitoku, Tagyuraku, Bairo and Rakuson. By reviewing Gagakuroku and Clara's Meiji Diary, I have discovered what gagaku was like in the early Meiji era and sensed how the Gagaku Department was trying to spread the cultures of the Japan and West with the aim of promoting exchanges and interactions between Eastern and Western cultures.Clara Whitney was a part of a historic period in the early Meiji era when gagaku underwent a significant transformation and played a role in making the culture known overseas.
著者
香曽我部 琢 安孫子 遥 渡部 聡美
出版者
宮城教育大学情報処理センター
雑誌
宮城教育大学情報処理センター研究紀要:COMMUE = COMMUE (ISSN:18847773)
巻号頁・発行日
no.24, pp.39-44, 2017-03-31

本研究では、弁当箱の色彩が与える印象について、とくに性差に焦点をあててその差異について明らかにする。具体的には、実際に幼児が持ってくる弁当箱の色彩と形状を調査し、さらにお弁当箱の色彩が与える印象評価に関する尺度を作成し、性別、日常品の色彩の嗜好性を変数に検定を行う。その結果、弁当 箱の色彩感覚尺度として 4 因子を抽出することができた。4因子の得点に性差は見られなかったものの、現状調査の結果から赤・ピンク色の弁当箱を持ってくる女児が有意に多く、女性がピンクを好んでいることを示した。
著者
杉田 典子 中曽根 直弘 花井 悠貴 高橋 昌之 伊藤 晴江 両角 俊哉 久保田 健彦 奥田 一博 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.219-228, 2014 (Released:2014-06-30)
参考文献数
24

目的 : 化学的プラークコントロール法としてグルコン酸クロルヘキシジン (CHG) 配合洗口液が効果的であるが, アレルギーなどの副作用が問題視されている. そこで今回, 塩酸クロルヘキシジン (CHH) と塩化セチルピリジニウム (CPC) を抗菌成分として配合した洗口液を開発し, 基本治療終了後の歯周炎患者が4週間使用した場合の口腔細菌に対する効果を評価した.  材料と方法 : 新潟大学医歯学総合病院歯周病科を受診中で, 20歯以上を有し歯周基本治療後5mm以上の歯周ポケットを1~7部位有する歯周炎患者30名を対象とした. 新洗口液 (CHH+CPC群), CHG配合のコンクールF (CHG群), 抗菌成分を含まないコントロール洗口液 (コントロール群) を使用する3群にランダムに各10名を割付け, 二重盲検法で比較した. ベースラインおよび使用4週後に唾液・舌苔・歯肉縁上プラークを採取し, 総菌数, 総レンサ球菌数, Porphyromonas gingivalisおよびStreptococcus mutansの菌数を測定した. またterminal restriction fragment length polymorphism (T-RFLP) 法による解析を行った.  成績 : いずれの洗口液でも有害事象は認められなかった. ベースライン (術前) と4週目を比較した結果, CHH+CPC群において唾液中総菌数とS. mutans数, 舌苔中総菌数, 縁上プラーク中総レンサ球菌数が有意に減少していた. CHG群においては, 縁上プラーク中総菌数の有意な減少が認められた. コントロール群では舌苔中総菌数および総レンサ球菌数が有意に減少していた. T-RFLP解析の結果, CHH+CPC群の唾液中において制限酵素Msp I切断断片から推定されるStreptococcus群, Hha I切断断片から推定されるStreptococcus・Eubacterium群, Parvimonas群およびPorphyromonas・Prevotella群が有意に減少していた. 縁上プラーク中の細菌については, Hha I切断断片から推定されるStreptococcus・Veillonella群がCHG群で有意に減少していた. その他に有意な変化は認められなかった.  結論 : これらの結果より, CHH+CPC配合洗口液はより安全に使用でき, CHG配合洗口液と同程度以上の抗菌効果をもつことが示唆された.
著者
葛城 啓彰 鈴木 安里 長曽 一成 岡村 勝文 斎藤 和子
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.57-64, 1996-02-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
22
被引用文献数
3 1

強酸性電解水の細胞毒性について, C3Hマウス皮下組織由来繊維芽細胞であるL929細胞を用い細胞毒性について検討した。細胞毒性は, 細胞生死判別法におけるトリパンブルー排拙試験に準じたFDA-PI二重染色法によるフローサイトメトリー法, コロニー形成法, MTTアッセイにより行った。FDA-PI二重染色法によるフローサイトメトリー法でLD50値は, 血清非存在下で25W/W%, 10%血清存在下で43W/W%であった。コロニー形成法によるLD50値は25W/W%, MTTアッセイによるLD50値は20W/W%であった。以上の結果より, 強酸性電解水は, 繊維芽細胞に対し, 細胞毒性を示し, この細胞毒性は, 5~20%血清存在下でも残存することが示された。これらの結果より, 強酸性電解水の生体応用に関しては, 外用に限定されることが望ましく, 十分な注意が必要である。