著者
神崎 寛子 秋山 尚範 金本 昭紀子 阿部 能子 山田 琢 荒田 次郎 梅村 茂夫 池田 政身
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.507, 1989 (Released:2014-08-11)

我々は1987年1月より1988年10月の間に分離された204株の黄色ブドウ球菌のフシジン酸(FA)に対するMICを測定し,また高知医大で1987年9月から1988年9月に分離された123株の黄色ブ菌のFAに対するMICと比較した.1987年1月から1988年3月の分離菌では5/123(4.1%)に耐性菌(MIC≧12.5μg/ml)が認められたのみであったが,1988年4月より10月の分離菌では42/81(51.9%)の耐性菌が認められた.高度FA耐性株は全てメチシリン耐性菌であった.高知医大ではMIC1.56~3.13μg/mlの株が少数認められたのみであった.高知医大の結果で耐性株が認められていないことよりFA耐性菌の出現には現在のところ地域差があるものと思われた.FAは現在外用剤としてのみ使用されているが,耐性出現の早い薬剤として知られており,このような薬剤を外用剤として使用することは耐性菌を増加させる可能性を強く示唆した.
著者
森本 昭彦 ブラナプラサプラット アヌクル 三野 義尚 兼田 淳史 郭 新宇
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

タイの首都バンコクに面する北部タイランド湾は高い生産性を持ち、タイの水産業にとって重要な海域である。近年の急激な経済発展により大量の有機物や栄養塩が4つの大きな河川を通して湾内に流入し、その結果富栄養化となり赤潮や貧酸素水塊など海洋環境が悪化している。実際、北部タイランド湾の東部の貝の養殖場では、貧酸素水塊によると思われる大量斃死が毎年起こっている。このような状況にもかかわらず、北部タイランド湾での観測データは限られており、湾全体の溶存酸素の分布やその季節変化は分かっていない。本研究では、北部タイランド湾全域をカバーする観測点において、2014~2015年にかけて計7回の船舶観測を実施した。その結果、貧酸素水塊は6月~11月の間見られ、底層での溶存酸素濃度は1mg/l以下とほぼ無酸素状態であることが分かった。また、貧酸素水塊の分布は6月に湾奥中央部のチャオプラヤ川沖、その後湾奥北東部に広がり9月には湾のほぼ半分の海域で貧酸素化し、11月には湾奥北西部へと分布域が変わっていた。注目すべきことは、貧酸素水塊が6月~11月にかけて分布域を湾東部から湾西部へと変わることである。熱帯に位置するこの湾では、水温は鉛直的に一様であり密度成層は河川からの淡水供給により形成される。したがって、貧酸素水塊の分布は河川からの低塩分水の分布と関係すると予想されるが、両者を比較したところ必ずしも一致していなかった。一方、水中の酸素消費速度は、上層でのクロロフィルa濃度と高い相関を持っており、鉛直的な有機物の供給が貧酸素水塊の形成に大きく関係していることが示唆された。成層強度、酸素消費速度、クロロフィルa濃度などと底層での溶存酸素濃度を比較したが、これらの比較から貧酸素水塊の東から西への分布の移動を説明できなかった。 貧酸素水塊の分布位置が変わる月は、南西モンスーンから北東モンスーンに変わる時期であった。このことは、風の場の変化による湾内の流れの変化し、その結果として貧酸素水塊が移流されている可能性を示唆する。そこで、3次元の数値モデルを構築した。本モデルは、南の開境界で潮汐変動を与え、また主要な河川からの河川流量、海面での風と熱フラックスを与えることで、観測を行った2014年~2015年の潮流、密度流、吹送流を再現した。モデルは湾内の潮汐、水温・塩分分布をよく再現できた。この物理モデルの結果を見ると、貧酸素水塊の分布域が湾の東側から西側へ変わる時に下層の流動場が変化していることがわかった。現在、この物理モデルに栄養塩、植物・動物プランクトン、デトリタス、溶存酸素を構成要素とする低次生態系モデルの結合を行っている。発表時には、物理-低次生態系モデルの結果から、貧酸素水塊の形成とその挙動の要因について示す予定である。
著者
志倉 興紀 志倉 敬章 内川 竜太朗 山本 昭夫 富田 美穂子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.385-395, 2020 (Released:2020-10-31)
参考文献数
39

目的 : 近年, 定期歯科検診を受診する人は増加してきたが, いまだ勤労者の受診率は低い. そこで, 第3次産業勤労者の定期歯科検診への意識と口腔保健行動を調査し今後の啓蒙活動を検討した. さらに, 歯科医師が職場を訪問して実施するブラッシング指導 (TBI : Tooth Brushing Instruction) の効果を明らかにし, 保健指導の対策を考察した. 材料と方法 : 第3次産業の勤労者を対象に業種, 年齢, 性別, 定期歯科検診受診の有無と受診しない理由, 齲蝕の有無, ブラッシングの知識・回数・時間, 補助器具 (歯間ブラシ・フロス) の使用, 定期検診を受診するためのシステムに関する要望, 8020への関心度のアンケート調査を実施し, 定期歯科検診を受診している (検診有群) こととの関連項目を検討した. また歯科定期検診を受診していない群 (検診無群) のなかから抽出した研究対象者を, ブラッシング指導をする群 (TBI群 : 11名) としない群 (コントロール群 : 10名) に分け, 半年ごとに計4回各研究対象者の職場を訪問してPCR (Plaque Control Record) 計測を実施した. そして, 両群の初回と各回のPCR値を比較することでTBIの効果を検討した. 結果 : アンケート総配布数647枚に対して, 回答が得られたのは378枚 (回収率は58.4%) であった. また, 検診有群は107名, 検診無群は269名であり, 定期歯科検診を受診しない主な理由は 「時間がない」 であった. 定期歯科検診に関する希望のシステムは, 検診有群では 「リコールの連絡」 で, 検診無群では 「訪問による検診」 であった. 定期歯科検診を受診していることは, 年齢 (オッズ比1.61), 女性 (オッズ比1.83), 齲蝕なし (オッズ比2.24), ブラッシングの知識 (オッズ比3.62), 歯間ブラシの使用 (オッズ比2.41), フロスの使用 (オッズ比2.09) と有意な関連を示し, ほかの項目とは関連が認められなかった. 職場訪問によるPCRの結果は, TBI群では初回に対して2回目 (p<0.05), 3回目 (p<0.01), 4回目 (p<0.005) の値が有意に低下し, コントロール群においても初回に対して3回目 (p<0.05), 4回目 (p<0.01) の値は有意に低下した. 結論 : 定期歯科検診を受診することは, 「口腔保健に関する知識」 「女性であること」 「40歳以上の年齢」 「補助器具の使用」 が強く関与していた. また, 勤務先へ出向いて実施するTBIや検査は, 口腔清掃に対する行動変容に影響力があることが明らかとなった. 今後, 40歳未満の勤労者や男性の意識改革を強化するとともに, 訪問指導をするなどの歯科医師の能動的なアプローチが重要である.
著者
堀 秀昭 藤本 昭 木下 寛隆 久保 憂弥 林 正岳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P2215, 2009

【目的】高齢者の転倒による骨折は、筋骨格系の廃用症候群を生じさせ、全身の心身機能、生活機能が低下するといわれている.特に要支援、要介護1等の軽度者に、転倒骨折を予防する目的で運動器の機能向上が実施されている.前回学会で、生涯スポーツ別の身体能力を調査し、生涯スポーツ実施の有無で身体機能に有意な違いが見られ、生涯スポーツの実施による介護予防を提唱した.今回、転倒経験と生涯スポーツ、身体機能との関係について調査した.<BR>【方法】対象は、765名(平均年齢73.3±7.3、男性248名、女性517名)で、スポーツ実施高齢者366名(平均年齢69.8歳)とスポーツ非実施高齢者399名(平均年齢76.5歳)とした.スポーツの種類は、エスキーテニス、バウンドテニス、ラージボール卓球、シルバーバレーボール、グランドゴルフ、マレットゴルフ、ゲートボール、太極拳とした.身体機能評価は、片脚立位時間、握力、5m速度とし、同時に転倒経験について調査した.分析は、SPSSVer11にて、ロジスティック回帰分析、変数増加法ステップワイズ(尤度比)により分析した.またROC曲線を用いてカットオフ値を求めた.尚対象者には研究に関する説明を行い同意を得た.<BR>【結果】1、転倒経験とスポーツ実施の関係:転倒経験を従属変数としスポーツ実施、年齢、性別を共変量としてロジスティック解析を行った結果、スポーツ実施が有意な関係を示し(p<0.05)、オッズ比0.654であった.スポーツ実施者は366名中44名(12%)、非実施者は399名中69名(17.3%)に転倒経験があり、χ<SUP>2</SUP>検定で両群に有意に違いが見られた.2、転倒経験とスポーツ種目別の関係:転倒経験を従属変数としスポーツ8種目を共変量としてロジスティック解析を行った結果、太極拳が有意な関係を示し(p<0.05)、オッズ比0.217であった.3.転倒経験と身体機能の関係:5M歩行速度に有意な関係(p<0.05)を示し、オッズ比1.179であり、カットオフ値3.0秒であった.4.スポーツ実施と身体機能の関係:5M歩行速度と握力に有意な関係(p<0.01)を示し、オッズ比0.237、1.163であり、カットオフ値は、3.0秒と25.6Kgであった.<BR>【考察】今回転倒経験と生涯スポーツとの関係について調査し、生涯スポーツを実施している高齢者は、転倒経験が少なく、特に太極拳を行うと転倒の0.217倍となることが分かった.敦らによる太極拳は足関節の柔軟性の改善に有効としており、太極拳の運動要素を実施することでバランス機能が維持されるのではないかと考える.また転倒経験と身体機能の5M歩行と握力に関係が認められ、目標数値として5Mを3秒、握力25.6Kgが示されたことで、今後の介護予防事業につなげていきたい.また今回、転倒経験と年齢の関係が認められず、これはスポーツを実施することで高齢者においても転倒の危険性が軽減することが示された.
著者
松本 昭彦 MATSUMOTO Akihiko
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.109-124, 2016-03-22

『枕草子』第九十八段「中納言まゐりたまひて」段は、有名な「海月の骨」の秀句の段であるが、従来この秀句は、隆家の「見たことないほどすばらしい扇の骨だ」との発言に対し、「見たことないなら海月の骨ですね」と清少納言がしゃれを言ったと解釈されてきた。しかし、「海月の骨」とは、長生きすれば見られるかもしれない奇蹟・幸運の意味の成句であり、この場面は、定子が皇子を懐妊もしくは生んだ直後と考えられることから、ここではその皇子の将来の即位を<予祝>する意味を込めたしゃれであると考えるべきである。またこの章段末尾の部分は、この章段の執筆によって、そのような<予祝>にも関わらず若くして亡くなってしまった定子、結局皇位には就けない皇子・敦康親王の悲運を読者に再確認させてしまうことに対する「言い訳」と考える。
著者
月本 昭男
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.34-48, 1981-09-30 (Released:2010-03-12)
被引用文献数
1

There are two types of divination by means of birds in Ancient Mesopotamia. The first one is auspicium, namely the practise of divining the future by the observation of the flight and behaviour of birds. We have more than 350 kinds of such omina in texts of relatively good condition.As to the relation between protases and apodoses in these omina, we can find out at least three principles which explain the reason why a positive apodosis results from a certain protasis, and a negative from another:1. principle of metaphor; an example: “if a falcon puts a raven to death the king will win over his enemy” because the falcon is compared to the king, and his enemy to the raven.2. principle of association; an example: the appearance of a black (gi6) bird wakes an association of an eclipse (an. gi6) in the future.3. principle of the dichotomy of space; an example: the existence of a falcon at the right side of a man divines a favourable future for him, while the same falcon at the left side means a malicious one.Several protases which seem extremely unlikely to happen in reality must be interpreted as the products of the imagination.The second type is concerned with the physical peculialities of sacrificial birds. There has been a discussion among scholars about “a bird” (mušen=issuru) in certain types of ominous texts. Owing to the courtesy of Mrs. G. A. Matheson, the Keeper of Manuscripts of the John Rylands Library (Manchester), we published here one more late OB text of such a type which reports the observation of “a bird”.
著者
山本 昭夫
出版者
農林水産省農業生物資源研究所
雑誌
農業生物資源研究所研究資料 (ISSN:09156836)
巻号頁・発行日
no.16, pp.21-118, 2001-03
被引用文献数
3

「生物の多様性に関する条約」の発効により、遺伝資源の国際移転を行う際には、その利用から生ずる利益を遺伝資源提供者と利用者の間で公平・衡正に配分することとなった。FAOの「植物遺伝資源に関する国際的申し合わせ」は、現在、同条約との整合性を図るべく改定交渉中である。交渉における核心は、現実的な利益配分の仕組みを組み込んだマルチラテラルな遺伝資源交換の仕組みを構築することである。
著者
前田 裕二 安枝 浩 秋山 一男 信太 隆夫 宮本 昭正
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.120-126, 1994
被引用文献数
5

特殊カバー(ミクロガード)によるダニアレルゲン暴露からの防止効果を検討した. 敷布団(日本式マットレス)の右あるいは左半分の面から掃除機で吸塵した. 次いでその敷布団を新しい特殊カバーで被った後にもう一方の面から吸塵し1組のサンプルを得た. 約2週後に同様なことを同じ敷布団で旧いカバー(1年半使用)を用いて行った. 7枚の敷布団を用意し, 14組の塵の検体を得た. 塵を秤量し, 次いでコナヒョウヒダニおよびヤケヒョウヒダニに対するモノクロナール抗体を用いてアレルゲン量を測定した. 塵の量は新旧カバーそれぞれ対照(カバーの無い状態)の1.0%, 2.0%であった. Der I濃度は新旧カバーそれぞれ2.5, 3.3μg/g dustであった. Der II濃度は新旧カバーそれぞれ1.6, 2.3μg/g dustであった. Der I総量は新旧ミクロガードそれぞれ対照の0.1%, 0.5%の量であり, Der II総量はそれぞれ0.2%, 0.7%であった. 濃度の測定が可能であった塵についてDer p, f濃度を比較したところDer I, IIともに種類による有意な差はみられなかった. 以上よりミクロガードは濃度および塵総量の減少に伴いダニアレルゲン曝露からの回避に有効な手段であると結論した.
著者
田辺 義次 赤松 徹 前田 哲哉 岡本 昭二
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.755-759, 1975-10-01 (Released:2012-03-24)
参考文献数
15

本症の報告は少ないが, けつしてまれなものではない。著者らは, 19, 24, 38才の男子例を経験した。臨床像は3例ともほぼ同様で, 軟骨様硬の索状硬結が陰茎包皮の冠状溝への移行部に蛇行状に認められた。性病歴なく, そのほかの既往歴にも本症との関連性が疑えるものはなかつた。また外国の症例で強調されている性交渉との関係は認められなかつた。組織学的特徴はリンパ管壁の肥厚ないし硬化である。肥厚した壁は結合織が大部分を占め, これに浮腫性変化とわずかのリンパ球および組織球が混在している。内腔は壁の高度肥厚のため, また肥厚に加えて内壁に付着した血栓様構造ないしその器質化のため狭小化, ときに閉塞状態になつている。きらに電顕的に内皮細胞を観察し, 光顕像とあわせて硬化性リンパ管炎と考えた。とくに治療せずに経過観察, 6~8週で略治の状態になつた。病名および「異所性モンドール病」について若干の文献的考察を行なつた。
著者
小田 寛貴 池田 和臣 安 裕明 坂本 昭二 Oda Hirotaka Ikeda Kazuomi Yasu Hiroaki Sakamoto Shoji
出版者
名古屋大学宇宙地球環境研究所
雑誌
名古屋大学年代測定研究
巻号頁・発行日
vol.2, pp.48-51, 2018-03-31

古経典の古筆切(古写経切)について,加速器質量分析法を用いた14C年代測定を行い,その結果を2018年2月1日~2月2日に名古屋大学宇宙地球環境研究所において開催された第30回(2017年度)名古屋大学宇宙地球環境研究所年代測定研究シンポジウムにおいて報告した.奈良時代は,鎮護国家の思想を背景に,国家推進型の仏教が展開された時期である.そうした中で,大規模な写経事業が行われ,多くの経典が書写ないし印刷された.そこで,今年度は,主にこうした奈良時代に書写された古写経切の代表的なものについて行った14C年代測定について報告した.本研究の一部には,平成28年度~平成31年度日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B) (課額番号・16HO3101,研究代表者;小田寛貴)を使用しました.
著者
松本 昭彦
出版者
中央図書出版社
雑誌
国語国文 (ISSN:09107509)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.p21-34, 1992-10
著者
坂本 昭裕 SAKAMOTO AKIHIRO
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(C)2008-2011
著者
柿本 昭人 嶋守 さやか 古川 誠
出版者
青土社
雑誌
現代思想
巻号頁・発行日
vol.23, no.8, pp.p16-44, 1995-08