- 著者
-
林 明子
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.95, pp.5-24, 2014-11-28 (Released:2016-11-15)
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
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本稿の目的は,生活保護世帯に育つ子どもの中卒後の進路を「移行」の経験として連続的に捉え,その多様性を描き出すことである。生活保護世帯の子どもの中には高校非進学者や高校中退者も多く,彼らの進路を「進路選択」や「進路形成」の枠組みで読み解くことは難しい。このような視点に立ち,本稿では,首都圏近郊のある地域において,生活保護世帯に育つ子ども363名(16歳から22歳)の中卒後の進路を連続的に明らかにする。また,高校非進学者・高校中退者(非直線型)とそうではない者(直線型)とを比較し,両者を分かつ要因について検討する。さらに,非直線型の移行をたどる者に焦点をあて,学校離脱後の移行パターンを見出す。 主な知見は以下の通りである。(1)生活保護世帯の子どもの全日制高校進学率は50.4%と全国の値より約40ポイント低い。また19歳以上の者を対象とし,カプラン・マイヤー法を用いて大学・短大進学率を算出したところ,16.7%となった。(2)直線型と非直線型の分岐には,母親の学歴や就労状況,きょうだい数,引越し回数,不登校経験が関連している。(3)非直線型の移行をたどる者は調査対象者の17.1%を占めており,その移行パターンは①求職・アルバイト型,②更生保護・医療・福祉型,③妊娠・育児型,④編入型という4つに分類された。以上をふまえて,最後に子どもを対象とした,多様で連続的な支援が構築される必要性を述べた。