著者
若林 泰央
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

当該年度の研究は主に二種類へ大別される。一つ目は、p進タイヒミュラー理論のシンプレクティック幾何学的観点についての研究である。複素数体上のタイヒミュラー理論において、射影構造のモジュライ空間上に構成される様々なシンプレクティック構造の比較は、基本的な主題の一つである。特に(様々な意味での)一意化により標準的に構成されるシンプレクティック構造とGoldmanによる構成との比較は、S. Kawai、P. Ares-Gastesi、I. Biswas、 B Loustauらによってなされている。当該年度の研究では、通常べき零固有束のp進持ち上げによる一意化において、同様の比較定理が成り立つこと証明した。これにより、p進タイヒミュラー理論の新たな側面を見出し、解析的な一意化の議論をp進版において実現する技術が拡張された。当該成果は論文「Symplectic geometry of p-adic Teichmuller uniformization for ordinary nilpotent indigenous bundles」としてまとめ、プレプリントを近日公開する予定である。二つ目は、正標数におけるベーテ仮説方程式に関する研究を行った。E. Frenkelによって示された「ベーテ仮説方程式の解と然るべきMiura operとの対応」の正標数(およびdormant operにおける)類似を証明した。その応用として、小平消滅定理などの反例を与える正標数の代数多様体の具体例を構成した(これは正標数の代数幾何学において基本的な主題の一つである)。これらの成果は論文「Dormant Miura opers, Tango structures, and the Bethe ansatz equations modulo p」としてまとめ、プレプリントを近日公開する予定である。
著者
植竹 勝治 田中 瑞穂 野坂 香林 桑原 亮祐 山田 佐代子 金子 一幸 田中 智夫
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.169-173, 2014-12-25 (Released:2017-02-06)

都市部住居地域等におけるノラネコの個体数および日中の移動距離に関する基礎的データを得るため、横浜市においてルートセンサス法におる野外調査を実施した。各調査地域(住居専用4地域とその他の用地区分4地域の計8地域)において、1日3回の徒歩によるルートセンサスを2010年から2013年のそれぞれ3月、7月、11月に実施した。ルート上にネコを発見するごとに、その地点を地図上にプロットした。住居専用4地域における平均個体数(8.7±3.9頭/10,000m^2)は、その他の用地区分4地域(3.6±2.2頭/10,000m^2)よりも有意に(P<0.05)多かった。未去勢雄の日中の移動距離(62.9±44.2m)は、去勢雄(34.0±24.7m)よりも長い傾向(P=0.06)にあった一方で、未避妊雌(30.0±20.0m)と避妊雌(33.1±17.4m)の移動距離に有意差は認められなかった。

1 0 0 0 北斎とドガ

著者
小林太市郎著
出版者
淡交社
巻号頁・発行日
1974
著者
若林 嘉一郎 山口 信吉
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.244-246, 1987-08-15 (Released:2017-11-30)

昭和59年9月9日午後11時ごろ,富山県下のアルミニウム鋳造工場のアルミスクラップ溶解炉で爆発事故が発生し,作業者が死亡した.この事故は溶解炉内の溶融アルミがアルミスクラップが含有していた水分に接触した直後に起きたため,翌朝のテレビではこれを水蒸気爆発の発生と報じた。 ところが,その後のわれわれの調査により,この事故では水蒸気爆発のほかに2次的に発生したアルミ液滴の燃焼による爆発(霧滴爆発)が存在したとわかった.また,この事故が大きい被害をもたらしたことの主体は,2次的な霧滴爆発であることもわかった. 溶融アルミにおける水蒸気爆発では2次的に霧滴爆発が随伴する可能性が高いことは研究ずみであるが1),それが起きたという事故例についての報告が少ない、本報ではそれを報告する.
著者
鈴木 康秋 伊藤 啓太 上原 聡人 上原 恭子 久野木 健仁 藤林 周吾 芹川 真哉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.923-930, 2018-05-10 (Released:2019-05-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

68歳,男性.肝障害精査にて当科受診.トランスフェリン飽和度,血清フェリチンが高値のため,鉄過剰症が疑われた.肝MRI(magnetic resonance imaging)IDEAL(Iterative Decomposition of water and fat with Echo Asymmetry and Least-squares estimation)IQのR2*MapによるR2*値が著明に高く,高度の肝内鉄沈着所見を呈した.肝組織生検の鉄染色では,肝実質細胞内に高度の鉄沈着をびまん性に認め,肝ヘモクロマトーシスの診断となった.MRI IDEAL IQによる新たな鉄測定法は,ヘモクロマトーシスの非侵襲的検査法として有用である.
著者
清沢 伸幸 小林 奈歩 木村 学 東道 公人 藤井 法子 大前 禎毅 長村 敏生
出版者
京都第二赤十字病院
雑誌
京都第二赤十字病院医学雑誌 = Medical journal of Kyoto Second Red Cross Hospital (ISSN:03894908)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.2-11, 2014-12

京都第二赤十字病院小児科に川崎病として1978年4月から2014年6月までに入院し、急性期の治療を行った1,109例(男児650例、女児459例)の治療成績に関する検討を行った。治療プロトコールから4期に分類した。第I期(1978.4~1984.3)は心エコー検査機器がなく病初期の冠動脈評価が出来なかった時期で164例。第II期(1984.4~1994.3)はアスピリン治療を主体とした時期で197例。第III期(1994.4~2003.12)はγグロブリン療法(γ-gl)を行うも、1日用量が統一されなかった時期で212例。第IV期(2004.1~2014.6)は初回投与量を2g/kgとして使用している時期で516例である。γグロブリン療法を行うようになった第III期以降は冠動脈障害を残す割合は著減し、1ヵ月を過ぎても拡大や瘤を残す症例の割合(表3)は第I期が4.3%、第II期が8.1%、第III期が0.9%、第IV期が1%であった。第I期の初回の評価が回復期を過ぎて行っている症例が含まれていることからその割合は第II期と変わらないと考えられる。第III期、第IV期の治療成績は川崎病全国調査成績(拡大1.75%、瘤0.72%、巨大瘤0.018%)からみても極めて優れているもので、巨大瘤はいない。現在、当院で行っている治療プロトコール(表2)は日本小児循環器学会のガイドラインや世界標準とは少し異なっている。γ-glの投与開始時期は少なくとも発症後第5病日まで待つべきである。次に、γ-glの投与時間は24時間以内ではなく、32-36時間かけることである。再投与は原則1回とし、第10病日以内に投与する。アスピリンはγ-gl投与中は併用しない。再投与でも効果がない場合は経過をみることである。結論的にいえば、γ-glの投与の仕方を工夫すれば、血漿交換療法、副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤、抗TNFα剤の必要性はほとんどないと考える。また、γ-glとアスピリン剤の併用はすべきではない。
著者
岡本 卓也 林 幸史 藤原 武弘
出版者
日本コミュニティ心理学会
雑誌
コミュニティ心理学研究 (ISSN:13428691)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.21-41, 2014-09-30 (Released:2019-04-27)
参考文献数
26
被引用文献数
1

This study aimed to reveal the differences between children's hazard perception and those of adults, using the photo projective method (PPM) developed by Noda (1988). PPM is a new technique based on a projective method that captures subjects' perceived environments through photographs. Thus, this method helps us understand an individual's internal mental world. To evaluate the patterns of children's hazard perception and safety awareness, we first asked 23 children (4th graders) and 19 mothers to take photographs of hazard points or areas that caused anxiety in the children during their commute to school. The results show that children perceived traffic hazards as being less hazardous than adults did. Second, to assess the development of children's safety awareness, we asked 139 children (1st trough 6th graders) and 106 adults, the children's parents, to take photographs of hazard points or areas that caused anxiety in the children during their commute to school. The results revealed certain patterns of the children's developmental process relative to hazard perception and safety awareness. The differences in the photographs reflect the development of hazard perception ability in the children. It was observed that children above the ages of 9 and 10 have perception patterns similar to those of adults.
著者
本原 顕太郎 小西 真広 児玉 忠恭 尾崎 忍夫 小山 佑世 林 将央
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

銀河がどのように生まれ、現在の宇宙で見られる形にまで進化してきたか、を明らかにするには、z>1以前にまで遡ってその物理状態(星形成率、星質量、金属量など)を調べる必要がある。本研究では大型近赤外線分光カメラSWIMSのための近赤外線面分光ユニットを開発し、これらをすばる望遠鏡およびTAO望遠鏡にを取り付けてz>1銀河の分光観測サーベイを行う。星形成最盛期における銀河を空間的に分解して分光し、その物理状態の空間分布を明らかにすることにより、形成期の銀河進化の過程を明らかにする。
著者
松浦 倫子 安達 直美 小林 俊二郎 中埜 拓 白川 修一郎
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.114-120, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
34

【目的】睡眠に関する訴えは50代以降の女性で高率に見られる.本研究では,睡眠の質の低下を訴える中高年女性の主観的な睡眠改善を目的に,αs1-カゼイン加水分解物(カゼインペプチド)+L-テアニン含有食品の有効性をプラセボと比較し検証した.【対象と方法】56~69歳の女性11名を解析対象者とした.参加者は,カゼインペプチド+L-テアニン含有食品あるいはプラセボ食品をそれぞれ10日間ずつ就床1時間前に摂取した.各条件の間で4日間のウォッシュドアウト期間を設けた.食品摂取の順序は,参加者間で順序効果が相殺されるようランダムに配置し,食品条件についてはダブルブラインドとした.各条件の後半3日間は,就床・起床時の気分と眠気(Visual Analog Scale),起床時の睡眠内省(OSA睡眠感調査票MA版,入眠感調査),最終日にはピッツバーグ睡眠質問票を聴取した.事前調査時と各条件の最終日には,参加者に簡略更年期指数質問票の記入をさせた.【結果】カゼインペプチド+L-テアニン含有食品の摂取は,プラセボに比べて就床前に眠気が高まっており,PSQIにより評価した睡眠の質が高かった.また,カゼインペプチド+L-テアニン含有食品を摂取した条件でのみ簡略更年期指数による自律神経症状の得点が,事前調査時に比べて有意に低下し改善した.【考察】カゼインペプチドとL-テアニンを併せて摂取することにより,就床前の眠気を高め,睡眠の総合的な質を改善する可能性が示唆された.
著者
小林 茂子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.235-257, 2014-09

本稿は、開戦前後すなわち、日米開戦をはさんだ一九三〇年代後半から一九四〇年代初頭におけるマニラ日本人学校の教育活動の内容を検討する。マニラ日本人学校は、戦前期フィリピンの日本人学校十八校のうち(在外指定を受けたのは十六校)、いちばん早い一九一七年に設立され、また、南洋における日本人学校の中で最も現地理解教育に力を入れた学校といわれていた。このマニラ日本人学校では開戦をはさんで、日本軍の占領後、軍政下に至る過程においてどのような変容が見られたか。現存する資料『フィリッピン読本』(一九三八年四月)、『比律賓小学歴史』(一九四〇年三月)、『比律賓小学地理』(一九四〇年五月)、『とくべつ児童文集』(一九四二年八月)を手がかりに同校の教育活動を明らかにすることが本稿の目的である。 この四点の出版物はみな、「発行所 在外指定マニラ日本人小学校」「代表者 河野辰二」となっており、これらの出版物はどんな内容で、またどのような意図で編纂されたのかを、時代背景を吟味しつつ辿ることで、同校の教育活動の変容を探ることができるのではないかと思われる。すなわち、『フィリッピン読本』からは、一九三〇年代後半にマニラ日本人学校が現地理解に基づく教育活動を行っていたことを具体的に知ることができる。その後外国人学校への統制が徐々に強まる中、一九四〇年に入っても現地尊重の姿勢を保とうとする努力をしつつ、『比律賓小学歴史』『比律賓小学地理』が発行されている。しかし開戦後、一九四二年一月三日から軍政が始まると、同校は軍政府に協力的な中心校としての役割を担わざるを得なかった。『とくべつ児童文集』には、「学校ごよみ」が掲載されており、同校の開戦後の教育活動が記録されている。また児童の作文からはその時の心情を窺うことができる。 戦前期の占領地における日本人学校は日米開戦後、軍政府の統制のもと教育活動の大幅な変容を余儀なくされ、最後は戦局悪化とともに閉鎖へとつながっていった。戦争へと進む歴史的動きを追いつつ、在外日本人学校の辿った経緯を、マニラ日本人学校の事例をもとに現存する資料の分析とその背景を通して具体的に考察を進める。

1 0 0 0 OA カッパの国

著者
小林純一 著
出版者
桜井書店
巻号頁・発行日
1948