著者
斉藤 正佳 赤羽根 良和 永田 敏貢 栗林 純
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.100, 2011 (Released:2011-12-22)

【はじめに】 内側型変形性膝関節症(以下,内側OA)は,関節軟骨の変性を基盤とした非炎症性の疾患である.臨床的症状として動作の開始時・立ち上がり・階段昇降時に膝関節内側部痛を訴え,様々な病態を合併する.その中でも,鵞足炎はもっとも多い合併症の一つであるが,内側OAは,膝内反,下腿内旋位を呈しているため,鵞足はむしろ弛緩しており,これまでのところ,鵞足炎を有した内側OAの発症機序は明らかにされてこなかった. 今回,内側型OAの荷重・非荷重のX-pを検討する事で,鵞足炎の引き金となる特徴的な所見が得られたので報告する. 【対象および方法】 平成21年4月から平成23年5月までに当院を受診し,内側OAと診断された47例47足である(男性:13例13足,女性:34例34足,年齢:68.02 ±11.21歳).OAの重症度分類は,腰野の分類で,grade 0は0例,grade1は16例,grade2 は25例,grade 3は4例, grade 4 は2例,grade 5は0例である. 方法は, 鵞足部に圧痛や同部に疼痛が認められた群を鵞足炎群(25例25足,男性:4例,女性21例,平均年齢:66.10±12.36歳)と圧痛や同部に疼痛が認められなかった群を非鵞足炎群(22例22足,男性:9例,女性13例,平均年齢:69.14±9.62歳)に分類した.つづいて,X-pより荷重時・非荷重時の大腿骨内側顆と脛骨内側顆の距離を計測(荷重時値・非荷重時値,単位:_mm_)した.さらに,非荷重時と荷重時における大腿骨内側顆の距離の差(移動量,単位:_mm_)を計測した.また,FTA,非荷重時FTAについても計測した.尚,統計学的処理はノンパラメトリック検定,Mann-WhitneyU検定を使用した. 【結果】 鵞足炎群の非荷重時値は7.21±3.05_mm_,荷重時値は8.33±3.23_mm_,移動量は内側へ1.12±1.61_mm_,FTAは183.91±4.75°,非荷重時FTAは181.38±2.11°であった.非荷重値と荷重値は,有意差を認めた (p<0.01).鵞足炎無し群の非荷重時値は8.26_mm_±2.2_mm_,荷重時値は7.31±2.49_mm_,移動量は外側0.96±1.13_mm_,FTAは182.77±1.82°,非荷重時FTAは180.77±2.41°であった.非荷重値と荷重値では有意差は認められなかった.また,鵞足炎群と鵞足炎無し群の非荷重時値,の有意差が認められなかったが,鵞足炎群と鵞足炎無し群の移動量の差は,有意差を認めた(p<0.001). 【考察】 鵞足炎は,鵞足構成筋による鵞足腱炎と鵞足腱深層に位置する滑液包による鵞足包炎の両者を含み,スポーツ障害として代表的な疾患である.その臨床的な特徴所見は,鵞足部への圧痛や同部への動作時痛である.圧痛の原因は,脛骨回旋の不安定性により鵞足腱や鵞足滑液包表面に対する直接的な摩擦や圧迫が持続的に加わり,生理的限界を超える過大な応力が炎症を引き起こすと言われている.スポーツ障害膝における鵞足炎の発症は,外反膝・knee in toe outを呈するアライメントである事が多い.鵞足腱には伸張ストレスが加わりやすいため,その発症は理解しやすい.しかし,内側OAでは鵞足はむしろ弛緩位であるため,その肢位を考慮すると発症要因が不明となる. そこで,我々はX-pにて内側OAにおける荷重位・非荷重位を比較検討してみた.鵞足炎群と鵞足炎無し群の非荷重時値の有意差が認められなかったことから,大腿骨内側顆の形態的構造が鵞足炎を発症するとは考えられない.しかし, 鵞足炎群における非荷重時値と荷重時値の差は認められ,鵞足炎無し群では認められなかったこと,さらに,鵞足炎群の移動量と鵞足炎無し群の移動量の差も認められたことから,鵞足炎群では,荷重時に大腿骨の内側への移動量が大きくなることで,鵞足構成筋に伸張ストレスが生じ,鵞足炎が発症したと考えられる. 鵞足周囲における停止部の詳細な構造は,縫工筋腱は下腿筋膜に覆われ,その間に長い線維束が存在する.縫工筋を覆っている下腿筋膜の深層にも線維束が位置し,その直下に薄筋腱が位置している.そして,半腱様筋腱,半膜様筋腱の拡張線維,内側側副靭帯という順で停止している.つまり,大腿骨の内側偏位に対して,鵞足構成筋はスタビライザーとして機能するが,縫工筋・薄筋は長い線維束や下腿筋膜で覆われているため,可動性・滑動性が少ないと考えられる.特に,薄筋腱は大腿骨内側顆の内側かつ深層を走行するため,内側偏位に対して直接的にストレスを受けやすいと考えられる.一方,半腱様筋腱の表層には,縫工筋腱・薄筋腱を覆っている様な組織・線維は存在しないため,可動性・活動性があり大腿骨内側偏位に対するストレスから免れやすいと考えられる. これらのことから,大腿骨の内側偏位には鵞足筋の中でも,縫工筋腱,薄筋腱が伸張ストレスをうけやすく,鵞足炎を生じたのではないかと考えられる.

1 0 0 0 古墳の話

著者
小林行雄著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1959
著者
山口 直美 小林 純 太刀川 弘和 佐藤 晋爾 堀 正士 鈴木 利人 白石 博康
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.25-32, 2000-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
30

摂食障害患者を自殺企図の有無で2群に分類し, 2群間でParental Bonding Instrument(PBI)で測定された両親の養育態度や臨床症状などについて比較検討した.PBIの結果において, 自殺企図群では両親のoverotection(過保護)得点が有意に高かつた.また自殺企図群では虐待体験を伴う症例が有意に多かつた.一方, 発症年齢, 調査時年齢, 摂食障害の重症度, 過食, 嘔吐, 下剤乱用, 物質乱用, 抑うつ状態の有無などについては2群間に有意差を認めなかつた.摂食障害患者において自殺企図の危険因子として, PBIの高いover protection得点で示されるような, 親の支配的で過保護な養育態度や虐待体験などが重要と考えられた.
著者
福井 亘 佐竹 悠理 濱田 梓 疋嶋 大作 瀨古 祥子 高林 裕
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.609-614, 2017-03-31 (Released:2017-09-13)
参考文献数
31
被引用文献数
1 5

This study was intended to clarify the change of charm and the impression of the season in river landscape and green open space. This study area was Kamo River by autumn from spring in Kyoto. There was direct interview question investigation from visitors on the both sides of the two sections. This investigation was the impression evaluation experiment using the SD method to investigate the impression of the river landscape scene every seasons. There analyzed factor analysis and profile analysis. Thera performed an analysis of variance between seasons (spring, summer and autumn) to check whether the impression evaluation in two sections included significant difference. The answer that there was the most accounted for 19.5% of the whole by a landscape scene. The people more than 90% of the respondent answered that the making of space feeling the four seasons was important. From the result of the SD method, it was easy to feel the change of the tree visually in autumn with spring, and it was thought that a natural element influenced an impression. In addition, an overall element including the urb an river and the townscape influenced an impression in the summer because the colors of the tree were monotonous.
著者
小林 正治 小田 陽平 長谷部 大地 加藤 健介 新美 奏恵 中里 隆之 泉 直也 高田 佳之 福田 純一 高木 律男 齊藤 力
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.153-160, 2006-08-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
16
被引用文献数
2 12

To assess whether patients were satisfied with the results of treatment, questionnaires were sent to 291 patients who had undergone orthognathic surgery for correction of jaw deformities and 133 questionnaires were returned with valid answers. The chief problem of 94 (71%) of these patients was appearance. Dysfunctions such as masticatory disturbance and speech difficulties were the primary reason for which 38 (29%) of the patients sought treatment. Seventy-five percent of the patients answered that they were satisfied with the results in regard to their chief problems. A favorable change in appearance was recognized by 125 patients, whereas five patients noticed no major changes and three patients were displeased with their postoperative faces. The patients'evaluations of their appearance seemed to be influenced by the responses of other peoPle to the surgical-results, and objective improvements did not always satisfy their expectations. Improvements in masticatory function and speech were recognized by 92 and 54 patients, respectively. Eighty patients had TMJ signs and symptoms such as click and/or pain before treatment, which disappeared in 53 (66%) of the symptomatic patients after the surgery. On the other hand, TMJ signs and symptoms appeared postoperatively in 7 (15%) of 47 patients without those before treatment. Psychologically, 42 patients noted favorable changes in personality after the surgery. Eight patients with mandibular set back noted the onset or worsening of snoring after the surgery.

1 0 0 0 OA 鶏の図

著者
小林清親 画
出版者
松木平吉
巻号頁・発行日
1880
著者
荒井 弘和 所 昭宏 平井 啓 野長 さおり 小林 博美 井上 亜由美 上砂 陽子 田中 孝浩
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.667-673, 2010-07-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

本研究では,肺結核患者のマスク着用行動に対する変容ステージを検討し,マスク着用に関する恩恵と負担,阻害要因と促進要因,社会的要因,身体症状,および心理的適応状態が,変容ステージによって異なるか比較を行った.対象者は,入院中の肺結核患者および肺結核疑い患者であった.研究デザインは横断的調査であった.本研究の48名の対象者のうち,ステージの分布は,準備期22名および実行期26名であった.48名の平均年齢は53.09±16.70歳(19〜78歳)であった.分析の結果,マスク着用の負担,マスク着用の阻害要因,身体症状において,2つのステージ間に違いがみられる項目が存在した.入院日数およびマスク着用の促進要因においては,ステージ間で有意に異なる傾向が認められた.特に,マスク着用の阻害要因については,複数の項目において,ステージ間に差が認められた.今後は,看護師を中心とした医療スタッフが,促進要因を増強するだけでなく,阻害要因が存在していてもマスクを着用するよう意識づけるべきである.さらに,着け忘れを防止するような介入を行うことが好ましいと考えられる.
著者
大橋 聖和 小林 健太 間嶋 寛紀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.8, pp.426-431, 2008-08-15 (Released:2009-03-25)
参考文献数
8
被引用文献数
3 1

To make thin sections or polished slubs of the brittle fault rocks like fault gouge and fault breccia without volume loss, is pretty difficult because of its fragility and softness. In general, the reinforcement by resin is performed in such specimens, but it's not so effective for the brittle fault rocks that contain swelling clay minerals. Additionally, detailed and through instructions about how to make thin sections of these rocks have not been published. Therefore, we introduce the grinding method which does not use the water for brittle fault rocks and altered rocks containing swelling clay minerals. With this method, we can make the thin sections, polished slubs, even sections specially prepared for SEM, TEM, EPMA analyses of noncohesive fault rocks containing swelling clay minerals without volume loss.
著者
谷山 智子 清水 千佳子 垣本 看子 小林 典子 Saad Everardo
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.101-109, 2014 (Released:2014-07-11)
参考文献数
9

【目的・方法】がん診療において治療法の優先順位に関する認識を明らかにするため, 乳がん患者, 医師, メディカルスタッフを対象にアンケート調査を行った. 調査項目は1)がん告知後の治療法選択, 2)悪性度の高いがんに対する年齢設定別の治療選択, 3)生存期間(survival time; ST)と生活の質(quality of life; QOL)の異なる治療法の選択とした. 【結果】1)がん告知後の治療法選択について, 医療者より患者の方が, STとQOLのどちらを重視するかがはっきりしている傾向にあった. 2)医師は患者やメディカルスタッフと比べて高齢者に対してもSTを重視する傾向にあった. 3)患者と医師はSTを重視し, メディカルスタッフはQOLを重視する傾向にあった. 【結論】患者と医療者はがん診療に対し異なった意識をもっている可能性があり, その意識の違いを認識する必要がある.

1 0 0 0 IR 討論

著者
布川 弘 曽田 三郎 金子 肇 石田 雅春 小野寺 史郎 笹川 裕史 有馬 学 丸田 孝志 三品 英憲 小林 啓治 勝部 眞人 小池 聖一
出版者
広島中国近代史研究会
雑誌
拓蹊 (ISSN:21868387)
巻号頁・発行日
no.1, pp.39-52, 2012-03-24

シンポジウム : 20世紀東アジアの立憲制―辛亥革命と大正政変
著者
武下 政一 芝谷 光治 子林 孝司 新比恵 啓志 周参見 正行 有行 史男
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.405-410, 1993
被引用文献数
1

50kGy電子線照射滅菌飼料をラットに給餌し, 親ラットの生殖機能ならびに第一世代および第二世代の発生・発育に及ぼす影響を検討した.その結果, 電子線照射滅菌飼料群に特異的な変化は認められず, 今回用いた50kGy照射条件下では, 電子線滅菌飼料は既存のγ線照射滅菌飼料と同様, ラットの繁殖・育成用飼料として使用可能と判断された。
著者
小林 伸行
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.805-820, 2009-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
16

本稿の目的は,N. ルーマンの教育システム論を他の機能システム論と比較可能な「特殊でない」機能システム論へと再構築することである.ルーマンの教育システム論が他の機能システム論との比較可能性を損なっている要因は複数ある.包摂がすべての個人に及んでいない,固有メディアや二分コードを欠いたまま機能システムとしての自律性などが説明されてきた,コードとプログラムが明確に区別されない等である.本稿では,その淵源を主に「学校(教育)」に偏向した説明に求めつつ,そうした説明からの脱却を通じて他の機能システム論との比較可能性を教育システム論に付与するとともに,社会システム論全体の一貫した説明力を向上させる可能性を模索する.そのために,教育システムのメディアを「ライフコース」から〈能力〉に,形式を「知識」から「手本/模範」に変更し,二分コードを「有能/無能」とすることを提案する.また,相対評価にも絶対評価にも変更されうるような従来の「選抜コード」を,有能か無能かの判断基準となる可変的なプログラムの一環として位置づけ直し,「有能/無能」コードとともに学習者だけでなく教育者にも向けられるものと見なしたうえで,教育システムの機能を「何かが〈できない〉ために諸人格の参入が不可能であるとの判断を延期させ,いずれ〈できる〉ようになって包摂が可能になると予期を変質させること」すなわち「包摂不可能性の認知的予期化」と規定する.
著者
松林 嘉孝 筑田 博隆 齋藤 琢 谷口 優樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では本邦で行われた頚椎後縦靭帯骨化症(頚椎OPLL)のGWASで同定された疾患修飾候補遺伝子のひとつであるRSPO2のOPLL発症およびOPLL伸展における機能解明を目指して開始した。まずヒトサンプルおよびマウスのティッシュパネルにおいてRSPO2が後縦靭帯に発現していることを確認した。また手術で得られた頚髄症患者および頚椎OPLL患者の黄色靭帯での発現比較において頚椎OPLL群で有意にRSPO2の発現が高かったことからRSPO2がWnt活性化因子であることをあわせて、我々はRSPO2のgain-of-functionがOPLLの発症に関与しているという傍証をえた。またヒトOPLLサンプルやヒト黄色靭帯骨化症サンプルにおいて骨化前線部の靭帯細胞でコントロールと比較してRSPO2の発現が有意に上昇していることも確認した。次にヒト脊椎靭帯細胞で実際にRSPO2が骨化を誘導することが可能か検証すべく実験を行った。まず手術で得た黄色靭帯からCD90陽性の間葉系幹細胞とCD90陰性の靭帯細胞をフローサイトメーターを用いて分離培養する系を確立した。続いて同系にて得られたCD90陽性の細胞群にRSPO2を添加することで実際に骨芽細胞分化が誘導されることを確認した。またOPLLはメカニカルストレスのかかる部位で進展悪化することが知られているが、実際に上記系で得られたCD90陰性の靭帯細胞にメカニカルストレスをかけることでRSPO2の発現が上昇することも確認でき、靭帯内では靭帯細胞でのRSPO2の発現・分泌上昇が靭帯内間葉系幹細胞の骨芽細胞分化を促進している可能性が考えられた。最後にRSPO2のCre誘導性トランスジェニックマウスを作出し、様々なCreマウスを交配することで実際に靭帯骨化症が誘導できるかを検討したが現時点では、靭帯骨化が確認されるには至っておらず現在も交配と解析を継続しているところである。現段階までの成果を現在英語論文にまとめ、投稿中である。
著者
若林 崇雄 宮田 靖志 山上 実紀 山本 和利
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 = An official journal of the Japan Primary Care Association (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.360-367, 2010-12-15
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

【目的】<br> 内科医撤退を経験した基幹病院を利用する患者・住民が, 医師・医療についてどのような想いを抱いているのかを明らかにする. <br>【方法】<br> 一時内科医が撤退し, 現在は診療を再開しているA市の基幹病院を利用する患者・住民を対象とした. <br>1. 質問紙作成<br>2回のフォーカス・グループ・インタビューをもとにテーマとサブテーマを抽出する質的な手法により質問項目を作成した. <br>2. 質問紙調査<br> A市基幹病院を利用する患者を対象とした. <br>【結果】<br> 有効回答は399名. 内科医師撤退の原因として, 81%の患者が大学, 79%が国の制度, また72%が病院と回答した. 内科医師が撤退したことは医師の身勝手かどうかについては50%ずつに意見が分かれた. また74%の患者は内科医師撤退が患者に不信感を与えたと回答した. 88%の患者は医師が患者に尽くしていると回答し, 88%が勤務条件で病院を移ることは仕方ないと回答したが, 96%の患者は医師に患者のために尽くすことを求めていた. 85%の患者は医師を信頼できると考えていた. <br>【結論】<br> 医師撤退を経験した患者は撤退により現実的に困っており, これは患者の利便性が損なわれるため当然と考えた. また撤退の原因として医療に関する組織に対し不信感を持っていることが示唆された一方で, 医師個人に対しての感情は複雑であった. 多数の患者は医師を聖職と考え, 医師撤退を経て尚, 医師の人間性やコミュニケーションへ期待し信頼していると考えられたが, 医師をサービス業と捉える患者も見られ, 信頼の構造に変化がある可能性も示唆された.