著者
森 大二郎
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.9-14, 2013
参考文献数
17

検索エンジンが次の数十年で社会にもたらす変革について予想する。情報端末とヒューマンインタフェースの進歩は,検索エンジンの利便性を飛躍的に高め,人間の記憶と意志決定を強力に支援するようになる。検索サービスを利用する契機が拡大することにより,より多くのユーザデータのフィードバックが得られるようになり,検索精度の大幅な向上も期待できる。一方で,情報取得に対する能動的な態度が損なわれ,類型的で偏向した情報にユーザが満足する危険性についても指摘する。
著者
小川 正 相原 茂夫 森山 達哉 佐藤 文彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1,食物アレルギー患者が血清中に保有するIgE抗体の認識する食品素材中のタンパク質成分を、網羅的にイムノブロット法を用いて検出、特定すると共に、Nー末端アミノ酸配列の分析を行って得られた情報を基に、コンピューターデータベースに基づく解析を行い、既知タンパク質成分に帰属し、同定した。これらの情報を基に、植物に特有の感染特異的タンパク質(PR-P)ファミリーに属するものを選択した。(1)患者血清の認識するタンパク質成分として、ニンジンより20kDaアレルゲンとして、cyclophilin(cyclospolin A binding protein)を同定した。(2)ジャガイモより、18kDaアレルゲンとして、シラカバ花粉症の主要アレルゲンBet v 1 homologueを同定した。患者血清は、ピーマンやリンゴ由来の18kDaと交差する。(3)トマトより45kDaアレルゲンとして、コルク質形成関連酸性ペルオキシダーゼを同定した。(4)二十日大根より、37kDaアレルゲンとしてGlutathione S-transferase,25kDaアレルゲンとして,feredoxine/NADH oxidoreductaseを同定した。(5)リコンビナントPR-5dを用いて患者血清をスクリニングしたが、認識抗体を保有する患者は確認することが出来なかった。この事実は、PR-5ファミリーに関しては感作能が低い(アレルゲン性が低い)と考えられる。以上のアレルゲンタンパク質にはPR-Pに分類される物が多いことが判明した。その他の帰属不明なタンパク質も,PR-Pである可能性は高い。これらの事実は、PR-Pがヒトの食物アレルギーの罹患、発症に関わる感作、即ちIgE抗体の産生を特異的に誘導していることを強く示唆するものである。また、これらのアレルゲンは植物界に広く分布し、互いに相同性が70-80%以上あることからパンアレルゲンとして交差反応性が問題となることが示唆された。一方、これらは素材をストレス下で栽培することにより、その含量が変化する事実を確認に下。従って、生産条件の管理が植物性食品のアレルゲン性を大きく左右することを立証した。2,植物性食品素材毎に抽出調製したタンパク質画分を二次元電気泳動を行って、一次元目の情報、等電点、二次元目の情報、分子量をセットとする画タンパク質の戸籍簿を作成する。更に、二次元のイムノブロットにより患者血清の認識するタンパク質成分をマッチングさせ、アレルゲンのとなるタンパク質成分を特定する。この特定成分上に、各種属性を三次元の情報として蓄積し、一食品素材一データベースシートを構築する。日本標準食品成分表と対比出来るようにする。更に、情報として、PR-Pの特徴であるストレス負荷によるアレルゲン性の増減をデータベース上に搭載し、食物アレルギー患者の治療、栄養指導における有効かつ緻密な情報源として提供することが可能である。又、低アレルゲン化の程度、加工食品における混合素材アレルゲンの網羅的解析が可能となるであろう。
著者
松尾 慎 菊池 哲佳 モリス J.F 松崎 丈 打浪(古賀) 文子 あべ やすし 岩田 一成 布尾 勝一郎 高嶋 由布子 岡 典栄 手島 利恵 森本 郁代
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.22-38, 2013-09-30

本論文は,外国人,ろう者・難聴者,知的障害者など,誰もが社会参加ができるために必要不可欠な条件である「情報保障」の考え方を紹介します.また,今後情報保障を進めていくための課題や枠組みを提示します.本論文では,情報保障の範囲を「震災」などの非常時だけに特化せず,平時における対応も含めます.情報保障の基本は,「情報のかたちを人にあわせる」「格差/差別をなくす」ことと,「情報の発信を保障する3ことです.本論文では,まずこうした基本的な観点を紹介します.特に,情報の格差/差別をなくすという課題にはどのようなものがあり,それを解決するためには,どのような手段があるのかについて述べます.さらに,情報保障が,情報へのアクセスだけでなく,情報発信の保障をも含む考え方であることを指摘します.その上で,これまで個別に扱われてきた外国人,ろう者・難聴者,知的障害者の情報保障の問題について,個別の課題とともに,共通性としての「情報のユニバーサルデザイン化」の必要性を指摘します.そして,その一つの方法として「わかりやすい日本語」の例を挙げ,今後の情報保障のあり方について議論します.
著者
岡田 博 久保 さおり 森 康子
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.173-181, 1997-01-28
被引用文献数
1

インドネシア, 西スマトラ, パダンにおいて, 袋かけ, 除雄, 交配実験, 野外観察によりNeuwiedia veratrifoliaの送粉様式を研究した。集団内及び近隣域の多くの固体は同調して花序を形成し, 開花する。30〜50個の花をつける無限花序は1日最大7個, 平均1個を開花する。袋かけ実験で高い結実率が得られたことから, この種は自家和合性であることが分かった。袋かけ実験による高い結実率と柱頭と内向やくが近接していることから, この種は多くの場合自家受粉をしていることも分かった。更に野外で訪花昆虫を観察し, その中でもからだに花粉をつけていたハリナシバチ類が送粉者として働いている可能性が明らかになった。
著者
伊藤 香織 青野 貞康 大森 宣暁
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.873-878, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
4 5

本研究は,東日本大震災時の首都圏における帰宅行動,特に帰宅までの立ち寄り行動とその内容に着目し,発災から帰宅までの間にどのような人にどのようなサービスニーズがあり,どのような施設がどのように帰宅行動を支えたのかを明らかにする.2011年3月11日の首都圏での帰宅行動に関するwebアンケート調査の回答をデータとして,まず立ち寄り施設で受けたサービス内容についてロジスティック回帰分析を行うことで,どのような人にどのようなニーズがあったかを明らかにする.続いて,立ち寄り時にどのような状況に接してどのような心理変化が引き起こされたのかを明らかにするためにアンケートの自由回答をテキストマイニングで分析する.サービスの分析からは,出発時刻や性別などによってニーズが異なること,また,職場・通学先・家族宅等以外で地震に遭った者が特に帰宅支援サービスを必要としていたことが明らかになった.心理・状況の分析からは,人々は安否確認,飲食物入手,鉄道運行,待機行列,帰宅行動などを気に掛けていたこと,飲食店,小売店,職場,友人・家族宅などで安心感を得ており,ある種の共助的な支援があったことも確認できた.
著者
沖山 誠司 吉田 実 山本 誠 森井 まどか 野首 孝祠
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.710-717, 1996-08-01
参考文献数
22
被引用文献数
27 5

当講座では,形状と物性が規定された試験用グミゼリーを開発し,義歯装着者の咀咽能率の評価に用いている.一方,咀咽能力が義歯装着者より一般的に優れている有歯顎者に対しては,より硬さの増したグミゼリーを用いた咀咽能率の評価が必要と考えられる.本論文では,硬さの異なる試験用グミゼリーを用い,硬さの違いおよび被験者の咬合接触状態が,咀咽能率診査結果に及ぼす影響について検討し,本診査法が被験者や目的に応じて広く応用できることが示された.今後,この種々の硬さのグミゼリーを用いた咀瞑能率診査法により,被験者の食品咬断能力,補綴治療にょる咀喉機能の回復度の詳細な評価が可能になるものと期待される.
著者
西出 頼継 本間 維 永森 光晴 杉本 重雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.4, pp.1-8, 2013-09-19

近年,誰もが利用・アクセスを行え,再利用や再配布が許可されたデータセットである Open Data が増えてきている.しかし,Open Data の構造は複雑なものが多く,スキーマ定義がないと再利用が難しい.また日本において LOD として公開されている Open Data の数は世界全体と比べると少ない.本稿では,日本で公開されている Open Data を LOD として活用することを目的に,CKAN 日本語などで公開される日本のデータセットを対象にスキーマの分析やリンク関係などの調査を行った.その結果日本の Open Data ではスキーマ定義やデータセット間のリンクが少ないということが分かった.そして,Open Data を LOD として活用するためにはスキーマ定義を行うためのメタデータ語彙の推薦や,リンクで結ぶためのリソースの同定が必要であると考察した.In recent years, there has been an increase in the use of Open Data. These datasets are freely available to everyone to reuse and republish. Unfortunately, many Open Data structures are complicated and are difficult to reuse without a schema definition. Compared with the rest of the world, Japan releases relatively little Open Data as LOD. We investigated Japanese Open Data, focusing on CKAN-Nihongo schemas and links to improve the use of datasets as LOD. We found that there are few Japanese Open Data schemas and links. Therefore, we recommend that metadata vocabularies and identification of links to connect resources should make use of Open Data released as LOD.
著者
藤井 孝治 中西 衛 重松 智志 森村 浩季 羽田野 孝裕 池田 奈美子 島村 俊重 岡崎 幸夫 久良木 億
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.234, pp.29-34, 2002-07-18
参考文献数
4

指紋認証処理の全てを1つのシリコンチップ上で実行可能とするセルラーロジックプロセッシング回路について論ずる.アレイ状に配置した本回路により,指紋画像の取得から,画像の強調処理,照合処理にいたるまでオンチップで行うことができる.認証のための演算機能として4つのモルフォロジ演算をプロセッシング回路上に実現した.指紋パタンに適した500dpiのアレイ解像度を達成するため,プロセッシング回路の小型最適化を,データパスと論理ゲートの双方について行い,センサ回路とともに50μm角のピクセル回路内に集積した.本回路を用いて試作したワンチップ型の指紋認証LSIでは,他人排斥率0.1%の時の本人排斥率6.5%を達成した.
著者
笠森 周護 田中 輝彰 菅田 秀俊
出版者
金沢大学
雑誌
金沢大学十全医学会雑誌 (ISSN:00227226)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.34-41, 1958-01-20
著者
森岡 孝二
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.521-544, 2004-11-11

1980年代以降、19世紀後半から1世紀余り続いた労働時間の短縮の時代が終わり、世界的に労働時間の増加が生じている。アメリカではJ.B.ショアが『働きすぎのアメリカ人』(1991年)において包括的な統計分析を踏まえて、働きすぎの時代が到来したことをいち早く明らかにした。その後、ショアの提起は経済学や社会学における労働時間論議に火をつけ、労働統計や生活時間研究の専門家を巻き込んだ論争を引き起こした。本稿では、ショアの問題提起に始まるアメリカにおける労働時間論争を跡づけ、日本との対比に留意して、アメリカ人の働きすぎの実態とその主要な原因について検討する。その作業からアメリカにおける労働時間の増大は、長時間労働者と短時間労働者への二極分化、女性における職場と家庭のタイム・デバイド、働きすぎと浪費の悪循環などの特徴をもっていることが浮かび上がるだろう。
著者
一森 哲男
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.3127-3135, 2009-12-15

人口に比例して議員定数を配分することは一見簡単な問題と思えるが,実は意外と難しい.この問題はアメリカ合衆国憲法に記載されているが,200年以上にわたり議論が続いており,解くことのできない問題ともいわれている.しかしながら,現時点では,この問題はヒル方式かウェブスター方式で解かれると考えられている.両方式間の最大の争点は,大州と小州間の配分議席数による偏りである.どちらの配分方式がより小さな偏りを与えるのか.本論文では,従来の考え方の矛盾点を明らかにし,新しい考え方により,ヒル方式だけでなくウェブスター方式も絶対的に小州に有利なこと,さらに,従来の定説どおり,ヒル方式がウェブスター方式より相対的に小州に有利なことを示し,ウェブスター方式の優位性を与えた.The problem of assigning seats in the U.S. House of Representatives based proportionally on the population of states is seemingly simple but to solve it is not. The U.S. Constitution poses this apportionment problem and the issues of which is the best method have been debated for more than 200 years. In fact, it might be considered to be unsolvable. However, at least at this moment, only one of Hill's and Webster's methods is believed to solve the apportionment problem. First it is shown that both methods favor the small states in our model, which appears to disagree with an established opinion. Since Hill's method favors the small states more than Webster's also in our model, the author's conclusion is that Webster's method is the best, which is outwardly the same as Balinski and Young's assertion.