著者
榊原 洋一
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.754-758, 2001-09-25

2つの「三歳児神話」 先日第1回の「日本赤ちゃん学会」が東京で開催された。赤ちゃん学会は,これまで医学,心理学,動物行動学,サル学,コンピューター学などさまざまな分野で別々に行なわれてきた赤ちゃんについての学問を,異分野の研究者が集まって幅広い見地から共同で研究していこう,ということで創設されたものだ。その第1回の学会のテーマとして選ばれたのが「三歳児神話を検証する」であった。1日めの午前中は,基礎脳科学の立場で三歳児神話を検証し,午後は保育の現場に関係のある主に発達心理の立場から検証する,という趣向であった。 ふたをあけてみたところで,奇妙なことが起こった。午前中の基礎脳科学のセッションの座長が,シンポジウムの開催に先立って「三歳児神話」の意味を説明するとしてことわざの「三つ子の魂百まで」を例として持ち出したのである。そして三歳児神話の意味を,3歳までに子どもの脳はできあがってしまう,それくらい重要な時期なのだ,という説明でまとめたのである。座長は小児科医であり,子育ての現場にも詳しい方であったが,その方が三歳児神話の意味を,「3歳までの(脳)発達は極めて重要であって,その間に正しい刺激を与えなければ,健常な発達が臨めないことがある」という意味に解釈されていたのであった。午後のシンポジウムの座長を筆者がつとめたのだが,そこでも参加している小児科医から,「三歳児神話をどういう意味で捉えているのか」という私にとっては意外な質問がだされた。もちろん「三歳児神話」の公式の意味は「3歳までは母親が子育てをしないと,健常な発達がさまたげられる」というものであり,数年前に厚生省が出した三歳児神話にはそれを支える科学的な裏づけはないという声明においても,三歳児神話はそういう意味で使われている。
著者
田中 直樹 我妻 浩二 村上 純一 石渕 重充 榊原 加奈 村本 勇貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>野球選手のボールの握り方は,障害予防やパフォーマンスの観点からボールの下面を母指の尺側でおさえる「尺側握り」が推奨されている。しかし,尺側握りが出来ない手長の小さな選手やボールの大きなソフトボール選手においては,母指の指腹でボールをおさえる「指腹握り」が強いられる。しかし,ボールの握りについて,手長や手指の関節角度について検討した報告は我々が渉猟しえた限りない。本研究では,我々が行った大規模野球検診で行われた検診項目のなかで,学童期野球選手におけるボールの握り方について手長とボールを握った際の中手指節間関節(MP関節)角度に着目し,肘障害との関係について明らかにすることを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は,学童期野球選手に対して行った野球検診参加者172名のうち,有効データの取れた169名(平均年齢10.6±0.7歳,平均身長142.9±7.7cm,平均体重37.0±7.7kg)とした。調査項目は①手長測定,②ボールの握り(尺側握り,指腹握り)チェック,③握った際の示指MP関節角度,④超音波画像による上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)検査の4項目とした。手長測定は橈骨茎状突起と尺骨茎状突起の中点から中指先端までをメジャーで測定した。ボールの握りは,母指先端が示指より尺側に位置し,母指の尺側でボールを把持しているものを尺側握り,母指先端が示指より撓側に位置し,母指の指腹でボールを把持しているものを指腹握りとした。MP関節角度はボールを握った状態で手指用ゴニオメータで測定し,屈曲をプラス,伸展をマイナスとした。超音波画像検査は操作や診断について習熟した整形外科医が行った。得られたデータを尺側握り群と指腹握り群に分け,手長およびMP関節角度について対応のないt検定を用い比較し,握りの違いによるOCD発生件数の比率をχ<sup>2</sup>検定を用いて算出した。また,OCDの有無によって非OCD群とOCD群に分け手長およびMP関節角度についてWelch検定を用いて比較した。いずれの検定も有意水準5%とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>平均手長は,尺側握り群(64名)で16.2±1.4cm,指腹握り群(105名)で15.7±1.1cmであり尺側握り群で有意に高値を示した。平均MP関節角度は,尺側握り群2.1±5.7°,指腹握り群3.9±5.5°であり指腹握り群で有意に高値を示した。169名中9名にOCDが見つかったが,握りの違いによるOCDの発生件数は尺側握り群4名,指腹握り群5名で差を認めなかった。OCDの有無による比較では,手長で非OCD群15.9±1.2cm,OCD群15.8±0.9cmと両群に差を認めなかった。MP関節角度は,非OCD群3.5±5.6°,OCD群-0.9±4.5°で,OCD群で有意に低値を示した。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>野球では尺側握りが推奨されているが,手長の大きい選手は尺側握りを選択し,手長の小さい選手は指腹握りを選択していた。握りの違いによるOCD発生に差は認められなかったが,ボールを握った際の示指MP関節角度がOCDの発生に関与する可能性が示唆された。</p>
著者
榊原玄輔
出版者
巻号頁・発行日
vol.[15], 1000
著者
榊原 巌
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:13478397)
巻号頁・発行日
vol.132, no.5, pp.265-269, 2008-11-01
参考文献数
12
被引用文献数
6

漢方製剤が薬価に収載されてすでに30年以上が過ぎ,医療の現場においても漢方製剤が治療アイテムとして定着してきている.また,15改正日本薬局方において初めて6処方の漢方エキスが収載され,医療用医薬品の地位を固めつつある中,その品質保証の面で,科学の進歩に合わせたより高度な分析評価が望まれるようになってきている.一方,欧米においては補完代替医療(CAM)の考え方が定着し,多くのサプリメントが普及されるようになってきている.その中,アリストロキア酸含有生薬が配合された製品が引き起こした腎障害事例,エフェドラによる脳出血の事例など,ハーブによる様々な問題も表面化されるようになり,植物薬の品質管理面での社会的な要望が高まりつつある.米国FDAならびに欧州EMEAでは植物薬の品質評価として"フィンガープリント"を提唱している.この流れを汲み,漢方製剤の国際化も考慮し,"漢方製剤の3Dフィンガープリント評価法"を確立した.本評価法は原料となる生薬および製品である漢方製剤の双方の品質評価に有用であり,特に配合する生薬の品質が最終製品である漢方製剤の品質を左右することから,より均一な漢方製剤を提供するためには原料生薬レベルでの品質の安定化を図る取り組みが重要となる.またフィンガープリントによる同等性評価としての新たな試みとして,統計学的な手法を用いたパターン認識法による同等性の解析評価法を開発した.漢方製剤を高次なレベルで評価する取り組みが今後,益々重要視されてくる.<br>
著者
吉田 貞夫 軸屋 智昭 平松 祐司 島田 知則 榊原 謙 厚美 直孝 三井 利夫 堀 原一
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.433-436, 1993-09-15 (Released:2009-04-28)
参考文献数
16

高位腹部大動脈閉塞症は陰萎, 間歇性跛行などの慢性虚血症状を呈する場合が多いとされる疾患である. 今回著者らは, 急速に増悪した両下肢および骨盤内臓器の虚血症状を主訴とした高位腹部大動脈閉塞症例を経験したので報告する. 患者は57歳, 女性. 軽度の間歇性跛行を自覚していたが, 突然両下肢および骨盤内臓器の重症虚血症状が出現し, 血管造影で高位腹部大動脈閉塞症と診断された. 腎動脈上遮断, 血栓摘除, 腎動脈下遮断でY型人工血管置換術を行った. 術中 Laser Doppler 血流計測でS状結腸の重篤な虚血を証明しえた. また, 術前から認められていた右腎動脈狭窄の急速な進行を認め, 術後に経皮経管動脈形成術を必要とした. 高位腹部大動脈閉塞症の急性増悪は主側副血行路の閉塞が原因と考えられた. また, 腎動脈病変を伴う場合, たとえそれが軽症でも同時血行再建等の適応があるものと考えられた.
著者
榊原 禎宏
出版者
日本教育行政学会
雑誌
日本教育行政学会年報
巻号頁・発行日
vol.38, pp.35-49, 2012

The purpose of this paper is to analyze school systems from the point of view of the working circumstances for school staff, especially for the teachers. For the improvement of teachers' working conditions, it is necessary to clarify the characteristics of school education in Japan and some alternative choices related also to school administration should be suggested. Concretely they are described, explained, and proposed below. 1. working in school education and the health of the teacher One basic characteristic of the teaching and learning process in school education is that teaching does not correlate directly with learning. We should always acknowledge the difference and sometimes contrary relation between them. In addition to that, although learning activities cannot be observed empirically, yet the teaching staff is asked to somehow demonstrate the educational "effect" of their work. With this background, teachers should be aware that they are apt to develop some irrational belief in their work, and that might in turn cause them health problems, for example from the stress of prolonged overwork. 2. today's school risk that has not been clearly recognized Two points of school risk in Japan should be discussed. One is that the view of school has changed from that of the past several decades. Although outside of school the community, family, work, and life have drastically developed, the basic conditions of school have remained static. On the other hand, because of the lack of laws and regulations for schools, the definition of teacher's work is vague, which often brings long hours of overwork. As one example in Germany, it is total clear that "educational freedom" of each teacher is defined not only in act, but also in regulation in states. It means that each stakeholder in schooling has rights and responsibilities, and legislation has developed to a point that the balance among stakeholders is strained. 3. internal transfer system which regularly reassigns teachers between schools One explicit characteristic of personnel management in Japan is the regular transfer of staff between schools. This is a big burden on teachers and other school staff members. Every some years they must continually reconstruct the relationships between colleagues, the students, the parents, and the other residents of the school district. Besides simple lateral transfers, not a small number of cases arise where the transfer is between different types of schools.4. staffing and working in schools and school management School principals and vice-principals take their posts for only a few years, a much shorter time than that of teachers, on average. It is not easy for them to show school management plans and ideas to their subordinates and colleagues after only few days in the new post. Furthermore, a teacher's work is basically independent and autonomous. That asks teachers to manage their cognition and emotion in a very short time in the class. With this background teachers might make unexpected misjudgments or surfer from the framework that they have built up by themselves. 5. possible school design I propose two points by choice, one of them is to orient highly centralized school system or decentralized, independent management in each school. The other is not only to preach to the teachers, but also to improve the working circumstances objectively. From now on, an experimental attitude and experimental practices in school should be more highly regarded and more strongly promoted for better and effective working.
著者
村上 ひとみ 榊原 弘之 瀧本 浩一
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では地震後非常参集における交通手段アンケート調査から自転車活用条件を明らかにした。東日本大震災では名取市における津波避難アンケート調査をもとに、渋滞は厳しいが、身の危険は徒歩・自転車より自動車の方が低いこと、自転車は避難開始が早く機動性に優れることを示した。山口市の住民アンケート調査から自家用車依存が地理知識獲得に負の影響を及ぼし、地域活動参加が公共施設や商店等の正規化得点を高める傾向を示した。また災害早期の被害情報共有に役立つモバイル情報システムを開発した。以上を併せて、日常の自転車利用を促進し、自家用車依存を軽減することで、非常参集や津波避難に役立つ等、地震防災への効用が示された。
著者
榊原 康文
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.976-980, 2007-12-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
7

半導体をデバイスとして用いる現在のシリコンコンピューターに対して,分子コンピューターは分子をデバイスとして用いて,分子会合や分子認識の原理を使って計算を実行する。本稿では,注意深く設計された配列をもつDNA分子が,自律的な動作を行ない,それらの一連の動作の結果として計算が実行される,より計算論的なアプローチを概観する。
著者
渡部 真志 平野 聡子 越前 康明 榊原 健二 若林 由佳 髙谷 美和 原田 祐三子 村上 あゆ香 小林 麗 岡田 久 奥田 聡
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-6, 2018 (Released:2018-01-25)
参考文献数
13

【目的】Stanford A 型急性大動脈解離(type A acute aortic dissection: TAAAD)に伴う脳梗塞ではrt-PA 療法が致死的結果を招き得るため,鑑別に有用な臨床因子を検討した.【方法】TAAAD に伴う脳梗塞13 例(TAAAD 群)を後方視的に分析し,rt-PA を投与した脳梗塞57 例(rt-PA 群)と比較検討した.【結果】TAAAD 群は胸痛が多く(p<0.01),全例で何らかの意識変化が見られた.TAAAD 群は血圧が低値で(p<0.01), 収縮期血圧のcut-off 値はROC 解析で130 mmHg 以下であった. 特に110 mmHg 以下では陽性尤度比35.1 と特異性が高かった.また徐脈傾向が見られた.【結論】疼痛の問診がTAAAD 鑑別に重要で,収縮期血圧130 mmHg 以下でTAAAD が疑われ,110 mmHg 以下かつ心拍数60 回/分以下では積極的に疑うべきである.
著者
榊原 純哉
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.208-220, 1986-12-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
28
被引用文献数
1

プラスチックは第2次世界大戦後飛躍的に伸び, 世界の経済成長の一翼を担ってきた。そのなかで, 熱硬化性樹脂はプラスチック全生産量の約20%を占め, その優れた耐熱性, 電気絶縁性, 加工の容易さ等の特徴が活用され, 多様な製品形態で日本の産業発展に大きく寄与してきた。特に熱硬化性樹脂は, 日本経済をリードするエレクトロニクス産業を中心とする先端技術分野において重要な役割を演じてきている。熱硬化性樹脂の用途及びプリント配線基板, 半導体封止材料を主体としたエレクトロニクス産業における熱硬化性樹脂の応用と技術動向について概説した。さらに, 最近の新しい樹脂及び応用について述べ, 熱硬化性樹脂の今後の展開方向について言及した。

1 0 0 0 OA 儒林墨宝

著者
榊原, 月堂
出版者
巻号頁・発行日
vol.[1], 1841