著者
水野 一晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p><b>1</b><b>.京都大学自然地理研究会の発足とその目的</b></p><p></p><p> 京都大学に自然地理研究会が発足したのは2001年4月である。演者が1997年より京都大学の全学共通科目(一般教養)にて自然地理学の授業を担当すると、次第に、自然地理学を京大で学べる場を作って欲しいという要望を受けるようになってきた。当時、文学部と総合人間学部に地理学教室があったものの、教員がすべて人文地理学の教員であったため、とくに学部生が自然地理学を学べる場が一般教養以外になかった。その当時、演者は大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の教員であった。自然地理学はとくにフィールドワークを重要視しているため、野外実習を行う場を設けるために、自然地理研究会を発足させることにした。会員制ではなく、登録をすると毎回案内が送られ、参加したいときだけ参加するという緩い組織である。参加資格に制限はなく、他大学や一般社会人の参加もある。計画は7〜8人からなる世話人を中心として、すべて学生が行い、演者は相談にのったり、参加するだけである。</p><p></p><p><b>2. 自然地理研究会の活動</b></p><p></p><p>自然地理研究会は、毎年春から夏まではほぼ毎月、秋〜冬は数ヶ月に1回程度、野外実習を実施してきた。2001年4月から始めたので、今年で20年目になる。当初は自然地理学に関する実習を中心に行っていたが、しだいに、実習の場所が決まると、そこでの自然地理学と人文地理学の両面から実習を行うことが多くなってきた。</p><p></p><p>コロナ汚染の影響でしばらく活動を自粛していたが、2020年7月に、第144回 自然地理研究会「琵琶湖疎水の歴史と周辺の地形」の実習を行った。琵琶湖疎水取水口と三井寺にて、疎水の成り立ちや琵琶湖周辺の地形について、インクラインと南禅寺にて、京都市の近代化について、琵琶湖疎水記念館にて、疎水の歴史を、主に世話人からなる数人の案内者の解説とともに現場で観察しながら学んだ。</p><p></p><p><b>3. </b><b>自然地理研究会の活動例(2016〜2019年度)</b></p><p></p><p><b>2019</b><b>年度</b>:「愛宕山の歴史と自然」「下鴨・上賀茂神社の社叢林:植生観察と都市緑地としての役割」「賤ヶ岳・余呉湖周辺の自然と歴史」「京大周辺の自然観察:大文字山と東山連峰」</p><p></p><p><b>2018</b><b>年度</b>:「京都御苑での冬の野鳥観察」「中池見湿地に生育・生息する動植物」「保津峡の入口と出口における歴史的・地質的観点からの考察」「京大周辺の自然観察:比叡山の地形・植生」</p><p></p><p><b>2017</b><b>年度</b>:「晩冬の京都で観られる季節の野鳥と植物の観察:方法と実践」「奈良盆地の形成と里山の棚田景観-古代の都・明日香村探訪-」「桂川の地形の観察と巨椋池の歴史」「京都で観られる季節の野鳥と植物の観察:方法と実践」「京大周辺の自然観察:大文字山と東山連峰」</p><p></p><p><b>2016</b><b>年度</b>:「自然地理研究会第100回記念〜白浜巡検〜」「海にせりでた伊根の舟屋集落とその成立要因」「都市大阪・凸凹地形散歩」「西の湖一周でわかる内湖とヨシ原の環境」「京大周辺の自然観察:比叡山の地形・植生」「京都:身近な京都の自然・文化・歴史をみる、きく、あるく」</p><p></p><p>写真:第144回 自然地理研究会「琵琶湖疎水の歴史と周辺の地形」(2020年7月撮影)</p><p></p><p>研究会のURL: http://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/cgi-bin/spg/wiki.cgi</p>
著者
水野 一枝
出版者
特定非営利活動法人 日本睡眠歯科学会
雑誌
睡眠口腔医学 (ISSN:21886695)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.89-93, 2016 (Released:2019-12-20)

Ambient temperature and humidity are important factors that determine sleep quality. In real-life situations where bedding and clothing are used, sleep is affected more by heat than by cold exposure. Effects of thermal environment on sleep are strongly related to thermoregulation. Increased skin temperature(Tsk) and decreased core body temperature at sleep onset period, and stable Tsk and bed climate during sleep are important for maintaining sleep. Heat exposure increases wakefulness and decreases rapid eye movement sleep(REM) and slow wave sleep(SWS). In aged subjects, heat exposure increases wakefulness and decreases REM, while no effect is observed on SWS. Furthermore, heat exposure reduces the core body temperature decrease, and increases Tsk, whole body sweat loss, and bed climate humidity both in young and aged subjects. Humid heat exposure further affects sleep stages and thermoregulation. Although the ambient temperature is cold, effects of using electric blankets on sleep and thermoregulation showed similar result to heat exposure, with subjectively dried mouth sensation in the morning. These results indicate that increased thermal stress by humid heat or heated bed climate affects sleep and thermoregulation and might increase dried mouth sensation in the morning.
著者
中山 貴幸 水野 一徳
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.1E103, 2018 (Released:2018-07-30)

群知能の一種である蟻コロニー最適化(Ant Colony Optimization: ACO)を取り入れたクラスタリングアルゴリズムとしてESACCが挙げられる. ESACCは,適切なパラメータ設定により精度の高いクラスタリングが実現可能であるが,パラメータ設定は非常に困難である. これは,パラメータ設定を複数回の試行や経験に基づいて行う必要があり,データによって適切なパラメータが変化するためである. そこで,本稿ではESACCの挙動や傾向を解析することで,最適なパラメータの設定を行うにあたり考察を行う.
著者
水野 一晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.127-153, 1990-03-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
4

カール内の植物群落は,地形,微気象(消雪時期,受光量,風など),地表面構成物質の性状と安定性など多くの環境要因の相互作用を受けて成立している.群落の空間的分布に対し,地形はこれらの要因の中でもっとも主導的な役割りを果たしている.地形と植生の間には次のような関係がある.1)カール内では,多くの地形がある程度定まった位置に形成されている.このため,カール内では地形の形態(凹凸)とその地形が一般に形成される位置(斜面方向)によって,消雪時期が特定化され,消雪時期の差が植物の生育期間や嫌雪性などの要因を通して群落の分布に影響を及ぼす.したがって,地形によって分布する群落が限られる.2)ただし,崖錐のように,形成される場所が不定の地形の場合,その地形の斜面の向きや場所によって風の強さや受光量に差が生じ,その結果,消雪時期,ひいては植生が多様になる.3)地形が消雪時期-植生に及ぼす影響については,(a)その形態(凹凸)がとくに重要な場合と,(b)その地形の占める位置(斜面方向)がとくに重要な場合があるが,(a)の場合は凹型・凸型斜面,(b)の場合は平滑斜面であるのが一般的である.4)地形は地表面構成物質の分布と性状に影響を及ぼし,この違いが土壌水分や地表の安定度などの要因を通して,群落の分布に影響を及ぼす.
著者
水野 一
出版者
上智大学
雑誌
ソフィア (ISSN:04896432)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.27-42, 1971-11
著者
水野 一晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<b>1.ケニア山における温暖化による氷河縮小と植生遷移</b><br> ケニア山のティンダル氷河の後退速度は、1958-1996年には約3m/年、1997-2002年は約10m/年、2002-2006年は約15m/年、2006-2011年は約8m/年、2011-2016年は約11m/年であった。その氷河の後を追うように、先駆的植物種4種は、それぞれの植物分布の最前線を氷河の後退速度と類似する速度で斜面上方に拡大させている。とくに、氷河が溶けた場所に最初に生育できる第一の先駆種<i>Senecio keniophytum</i>は、1996年に氷河末端に接して設置した方形区(幅80mx長さ20m)での個体数と植被率がともに、15年後の2011年には大幅に増加していた。また、1996年には方形区内の生育種は1種のみであったが、2011年には4種に増えていた。ケニア山山麓(高度1890m地点)の気温は1963年から2010年までの47年間で2℃以上上昇している。一方、過去50年間の顕著な降水量の減少はなく、ケニア山の氷河縮小はおもに温暖化が原因と考えられる。<br> 2006年までティンダル・ターン(池)の北端より斜面上方には生育していなかったムギワラギクの仲間<i>Helichrysum citrispinum</i>が、2009年にはティンダル・ターン北端より上方の、ラテラルモレーン上に32株が分布していた。これは、近年の氷河後退にともなう植物分布の前進ではなく、気温上昇による植物分布の高標高への拡大と推定される。 また、大型の半木本性ロゼット型植物であるジャイアント・セネシオ(<i>Senecio keniodendron</i>)は1958-1997年には分布が斜面上方に拡大するという傾向は見られなかったが、1997-2011年には拡大して、山の斜面を登っている。この種は氷河後退が直接遷移に関係しているとは考えられないが、先駆種の斜面上方への拡大による土壌条件の改善と温暖化がジャイアント・セネシオの生育環境を斜面上方に拡大させていると考えられる。<br><b>2.ケニア山の自然保護</b><br> ケニアには国立公園の野生動物を守るための政府の一機関であるケニア野生動物公社KWS(Kenya Wildlife Service)がある。KWSはケニア山国立公園に対し、他のサファリパークとなっている国立公園(ex. アンボセリ国立公園)や国立保護区(ex. マサイマラ国立保護区)ほど環境管理に力を入れていない。何カ所かあった無人小屋をすべて取り壊して環境対策をしている一方、キャンプサイトにトイレの設置がない場所が少なくなく、環境悪化につながっている。 ケニア山では過去何度も、登山者による失火や密猟者による放火によって、広範囲に樹木が消失した。故意による失火に対しては厳重に罰せられる。近年、放火した密猟者は発見され次第、即座にKWSによって射殺された。<br><b>3.温暖化とキリマンジャロの氷河縮小</b><br> キリマンジャロの氷河は急速に縮小している。氷河の縮小はキリマンジャロ山麓の水環境にも影響を及ぼし、山麓の生態系や住民生活にも影響が及ぶことが考えられる。<br>
著者
水野 一郎
出版者
関西大学経済・政治研究所
雑誌
東アジア経済・産業の変容
巻号頁・発行日
pp.185-204, 2015-03-31

2014年6月21日 第5回復旦大学・関西大学経済フォーラム
著者
水野 一枝 水野 康 西山 加奈 田邊 素子 水谷 嘉浩 小林 大介
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.65-73, 2017

<p>段ボールベッドが低温環境での入眠過程に及ぼす影響を検討した.対象は成人男性 12 名とし,15℃ RH 60% の環境で床の上(条件 F)と床の上に段ボールベッドを使用(条件 B)した場合の 2 条件で 13:15~15:15 に就寝した.測定項目は睡眠脳波記録,皮膚温,寝床内気候,衣服気候,就寝前後の寝具の評価,温冷感,湿潤感,快適感や睡眠感等の主観申告であった.睡眠には条件間で有意差は見られなかった.背の皮膚温は条件 B で条件 F よりも有意に高かった.寝床内温度は,背部の全就床時間,足部の睡眠後半が条件 B で条件 F よりも有意に高かった.主観申告では,条件 B で条件 F よりも寝ていた時の温冷感が有意に暖かい側,快適感も快適側,寝具も柔らかい側の申告であった.低温環境での段ボールベッドの使用は,背の皮膚温,足部と背部の寝床内温度を高く保ち,寝ていた時の主観的な温冷感,快適感,寝具の固さを改善する可能性が示唆された.</p>
著者
長谷川 裕彦 高橋 伸幸 山縣 耕太郎 水野 一晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

ボリビアアンデス,チャルキニ峰西カールにおいて地形調査を実施した。その結果,先行研究により明らかにされていたM1~M10の小氷期堆石の分布を追認し,M10以降に形成されたM11・M12・M13の分布を確認した。M13の形成期は,構成層の特徴などから1980年代の初頭であると考えられる。
著者
高橋 伸幸 水野 一晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

<u>1.</u><u>はじめに</u>&nbsp; 低緯度高山帯でも氷河の後退・縮小は進んでおり、氷河から解放された地域には植生の侵入・拡大がみられる。また、氷河からの解放後、周氷河環境下に置かれることから、植生の侵入・拡大過程を考える上で、周氷河環境を考慮する必要がある。本研究では、南米ボリビアアンデスのレアル山脈に位置するチャルキニ峰西カール、南カール、ワイナポトシ南斜面などにおいて周氷河現象の観察、気温・地温測定を行い、低緯度高山帯における周氷河環境の一端を明らかにした。<br><u>2.</u><u>調査地</u>&nbsp; ボリビアの首都ラパスの北方約25kmに位置するチャルキニ峰(標高5392m)の西カールおよび南カールが主な調査地である。チャルキニ峰でも氷河の後退が認められるが、南斜面と北斜面には現在でも顕著な氷河が残されている。一方、西斜面では、カール壁基部にわずかに氷河が残されているのみである。また、西カール内と南カール内には完新世の氷河後退に伴って形成された複数のモレーンがみられる。チャルキニ峰周辺の地質は、主に花崗岩類と堆積岩類によって構成されているが、西カール内に分布する氷河性堆積物は、花崗岩類が主体である。<br><u>3.</u><u>気温・地温観測</u> 表1にチャルキニ峰西カールと南カール内における2012年9月~2013年8月の気温観測結果に基づく値を示した。これによると、氷河の縮小が著しい西カールにおいて気温は高目であり、その結果、融解指数も大きくなっている。凍結融解日数は、両地点ともに300日を超えており、特に氷河末端近くに位置する南カール観測点では351日に及んだ。西カール内における地温観測結果によると、土壌凍結は4月~10月の期間ほぼ毎日生じているが、その凍結深は10cm程度である。これに伴い、同期間中、表層部での日周期的凍結融解が頻出しており、標高4800mの観測点では、その回数が161回(図1)、標高4822m観測点では244回に及んだ。<br><u>4.</u><u>周氷河環境</u>&nbsp; 年平均気温および凍結指数、融解指数から見る限り、チャルキニ峰周辺は周氷河地域に属するが、永久凍土が存在する可能性は小さい。表層付近での凍結融解頻度は、4月~10月(秋季~春季)にかけて非常に高いが、この期間は乾季に相当し(図1)、表層部の含水量が低い。一方、湿潤な雨季には凍結融解頻度が極めて低い。さらに凍結深度が浅いことから、ジェリフラクションやソリフラクションなど、周氷河作用が効果的に働かない。このことは氷河後退後の植生侵入にとって有利であると考えられる。
著者
髙橋 伸幸 水野 一晴
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

<u>1.</u><u>はじめに</u>&nbsp; <br>2012年からボリビアアンデスのレアル山脈に位置するチャルキニ峰周辺において周氷河現象の観察、気温・地温測定、土壌水分測定を行い、低緯度高山帯における周氷河環境の一端を明らかにしてきた。しかし、現地調査は8月~9月(冬季、乾季)に限られていたため、それ以外の時期については気温・地温等の観測結果から積雪状況等を推定するのみであった。そこで、2013年9月に同峰西カール内にインターバルカメラを設置し、ほぼ通年(2013年9月~2014年8月)にわたるチャルキニ峰西カール内の様子を画像で記録した。その結果、周氷河環境に関するより実証的な知見を得ることができた。なお、写真撮影は、毎日正午頃に一度行い、その時点での西カール内の様子(とくに積雪状況)と天気(画像内の空域の状況)を記録した。<br><u>2.</u><u>調査地<br></u> 調査地は、ボリビアの首都ラパスの北方約25kmに位置するチャルキニ峰(標高5392m)の西カール内である。チャルキニ峰でも氷河の後退が認められ、西カール内ではその谷頭部のカール壁基部にわずかに氷河が残されており、谷底には完新世の氷河後退に伴って形成された複数のモレーンがみられる。<br><u>3.天気</u> <br> 画像に含まれる空域の状態から、天気を晴天(空域に青空が見られる状態)とそれ以外の天気(空域が100%雲に覆われている状態:曇り、霧、雨、雪)に区別した。観測期間中(361日間)の晴天の頻度は166回(46%)であった。とくに2014年6月と7月には、それぞれ28回と27回記録されたが、2013年12月~2014年2月には、それぞれ4回、1回、5回のみであり、乾季と雨季との天気状況の違いが顕著であった。<br><u>4.</u><u>降雪・積雪と地温<br></u> 画像から判断する限り、年間を通して断続的に降雪が認められる。ただし殆どの場合、降雪の継続時間は、一日以内あるいは数時間程度と判断される。積雪状態になることは少なく、複数日にわたって積雪に覆われたのは、2014年5月下旬や7月下旬など冬季の数回程度であった。M2観測点における表層地温は、冬季を中心に年間約150回に及んだ。また、積雪が複数日に及んだ期間のみ、日変化が小さくなった。<br><u>5.</u><u>周氷河環境</u>&nbsp;&nbsp;<br> 髙橋・水野(2014)で示した通り本調査地域においては気温の凍結融解日数が300日を超え、土壌表層部の凍結融解頻度も244回に及ぶ地点があった。しかし、その一方で周氷河地形の発達は貧弱である。その原因として、とくに土壌の凍結融解が頻出する時期(冬季)が乾季と重なり、地表面付近の水分量が少なく、周氷河地形形成が効率的に行われないと考えられていたが、今回のカメラ画像でこのことがより明らかになった。また、顕著な積雪をもたらす降雪頻度が少なく、雪が地温変化に与える影響は小さい。また、積雪状態もきわめて一時的であることから、水分供給源としての役割も小さい。<br> 本研究は、平成26年度科学研究費補助金基盤研究(A)「地球温暖化による熱帯高山の氷河縮小が生態系や地域住民に及ぼす影響の解明」(研究代表者:水野一晴)による研究成果の一部である。
著者
都築 和代 佐古井 智紀 水野 一枝
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集
巻号頁・発行日
vol.30, pp.225-228, 2006-12-01

季節における温熱環境が日常生活での睡眠や体温調節反応に及ぼす影響を調べる目的で研究を行った。それに先立ち,睡眠実験で睡眠ポリグラフ計測により得られた睡眠段階データと同時に測定したアクチグラフデータを比較した。被験者は8人の高齢男性であった。アクチグラフとポリグラフ測定には高い相関関係が得られたが,アクチグラフによる睡眠効率はポリグラフよりも高い値になった。冬期,夏期,秋期の3季節について睡眠と体温調節反応を13人の被験者について調べた。その結果,夜間の寝室の温度は夏期で有意に高く,湿度は冬期で有意に低かった。就寝中の掛け布団の枚数と寝衣のクロー値は夏期で冬期・秋期に比べて有意に少なかった。睡眠に関しては,就寝時刻に差はみられなかったが,起床時刻は夏期で冬期よりも早かった。その結果,夏期の就床時間は冬期や秋期よりも短い傾向にあった。夏期では冬期,秋期よりも有意に入眠潜時,覚醒時間が延長し,睡眠効率が低下していた。
著者
水野 一晴
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会・京都大学ブータン友好プログラム・人間文化研究機構 総合地球環境学研究所「高所プロジェクト」
雑誌
ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.142-153, 2012-05-01

インドのアルナチャル・プラデシュ州のモンパ民族地域において, 住民にとって「山」がどのような存在となっているのかを調査した. その結果, 山は, モンパ民族地域において次の3つの役割を果たしていることが判明した. 1.山は民族分布や文化, 社会の境界をつくっている. アルナチャルヒマラヤ(アッサムヒマラヤ)の山脈が流通の障害物の役割を果たし, タワンモンパとディランモンパでそれぞれ独自の言語や生活習慣が発達し, 両者の境界をつくっている. また, 山は1962年の中国軍のモンパ地域への侵攻以来, インド軍が大規模に駐留して, 自然の要塞の役割を果たしている. 2.モンパ民族が古くから信仰するボン(ポン)教の宗教的儀礼, 祭式において, 山が神として信仰の対象になっている. 各地域はそれぞれ周辺に山の神が存在し, その神に祈り, 捧げ物をする儀式, 祭りが行われている. 捧げ物は少女や家畜であり, それぞれの山の神に捧げるものが決まっている. ディランモンパ地域のディランゾン地区やテンバン地区では, 社会的階層としての上位クランと下位クランに分かれており, このような伝統的儀礼にはそのクラン(氏族)の差が明瞭に見て取れる. 3.山はモンパ民族にとって資源として重要であり, 住民は山の森林から材を得てきた. ディラン地方では森林は3つに区分され, それぞれの使用目的も異なる. しかし, 近年大量伐採によって森林破壊が顕著になり, そのため, 商業伐採が禁じられたが, 今でも違法伐採が続いている. 住民たちもそのような森林の過度の伐採に危機感を感じるようになってきたため, 伐採に代わるような現金獲得手段を考え, 森林保護を進める動きが出てきた.
著者
水野 一典
出版者
四国民俗学会
雑誌
四国民俗 (ISSN:1343733X)
巻号頁・発行日
no.46, pp.81-92, 2014-09
著者
水野 一
出版者
上智大学
雑誌
ソフィア (ISSN:04896432)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.27-42, 1971-11
著者
林 利彦 大和 雅之 水野 一乗 今村 保忠
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

生体の器官・組織のインフラストラクチャーはコラーゲンの傾斜構造で骨格が形成されている。血管壁では血管の内皮からコラーゲンについてはIV型コラーゲン、V型コラーゲン、III型コラーゲン、I型コラーゲンの傾斜になっている。細胞の種類についても、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、線維芽細胞の傾斜がある。コラーゲンの傾斜構造に沿って、異なる細胞が配置されていることが多細胞系の機能発現・恒常性維持に関係する可能性がある。本年度はIV型コラーゲンゲルを培養基質として、ラット肝星細胞(初代細胞)、ヒト大動脈平滑筋細胞、ヒト腎糸球体メサンジウム細胞、継代したラット肝星細胞の挙動を検討した。比較にI型コラーゲンゲル等を用いた。星細胞はI型コラーゲンゲル上では二極性を示し、IV型コラーゲンゲル上では細胞は星形の形態を示した。IV型コラーゲンゲルにおいては細胞は互いに突起の先端同士で、接合しており、生体内での形態と類似していた。細胞はIV型コラーゲンゲル上では増殖しなかった。培養皿上で継代培養したラット肝星細胞は培養の早期から増殖能を発揮する。このように変化し、ミオフィブロブラスト様になった星細胞はIV型コラーゲンゲル上では増殖が抑制された。肝臓星細胞と共通の性質を有するといわれる血管平滑筋細胞、腎糸球体メサンジウム細胞でも同様にIV型コラーゲンゲル上では、細胞の形態、細胞間の接合および増殖の抑制が見られた。血管内皮細胞はIV型コラーゲンゲルに接着はするものの伸展は殆ど見られなかった。IV型コラーゲンゲルは細胞基質として特異の特徴を有し、生体内での細胞分化に重要な役割を果たしている可能性がはじめて示された。
著者
水野 一晴
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

南アルプスの「お花畑」の植生について2011-12年に調査し、その結果を1981-82年の調査結果と比較し、その30年間の変化とその要因を検討した。森林限界以下の「お花畑」の植生はかつて、シナノキンバイ、ミヤマキンポウゲ、ニッコウキスゲなどが優占していたが、近年はシカによる食害で、シカが食べないミヤマバイケイソウやマルバタケブギが優占し、大きく変化していた。一方、高山帯では、チングルマやガンコウラン、ミネズオウ、アオノツガザクラなど、同じ場所では30年間で優占する植物種に変化がなく、このことからシカによる食害の影響は近年、森林限界付近まで及んでいると考えられる。