著者
青野 潤 渡辺 浩毅 東 晴彦 稲葉 慎二 池田 俊太郎 濱田 希臣
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.346-352, 2006

症例は68歳,男性.高血圧と糖尿病で近医に通院治療中であった.2004年8月4日に全身倦怠感を主訴に当科外来を受診した.外来時のトレッドミル負荷心電図でII・III・<SUB>a</SUB>V<SUB>F</SUB>のST低下を認めたため,ATPタリウム心筋シンチグラフィを施行した.下壁の取り込み低下と後期像で同部位の再分布現象を認めたため,9月9日に心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈造影では右冠動脈seg.1の慢性完全閉塞を認めた.ワイヤーをIntermediateからShinobi,Conquestに変更しExelsiorのバックアップ下でワイヤーを通過させた.Sprinter(1.5×15mm)で拡張後,血管内視鏡による観察を行った.病変部はワイヤーによる内膜損傷や小さなフラップが観察された.Seg.1~2にDriver(4.0×30mm),seg.2~3にPenta(3.5×28mm)を留置し終了した.PCI後の内視鏡ではフラップやプラークをステントが押さえつけている所見が観察された.今回われわれは慢性完全閉塞の病変部を内視鏡で観察し得た1例を経験したので報告する.
著者
池田 敬 松浦 友紀子 伊吾田 宏正 東谷 宗光 高橋 裕史
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.45-52, 2017 (Released:2017-07-11)
参考文献数
26
被引用文献数
3

ニホンジカCervus nipponの個体数管理において夜間銃猟を含めた様々な捕獲手法を効率的に実施するために,誘引地点でのニホンジカの出没状況を明らかにした.調査は北海道洞爺湖中島で2016年2月11日から3月19日の間に実施し,誘引期間と捕獲期間に区分した.捕獲は装薬銃を用いて日中に実施した.給餌地点7地点に自動撮影カメラを設置し,ニホンジカの撮影頻度を各地点で比較した.日の出・日の入り時刻と正午を基準として午前・午後・夜間に区分し,各地点の単位時間あたりの撮影頭数を算出して撮影頻度とした.出没状況についてみると,誘引期間には7地点のうち4地点で夜行型を示したが,捕獲期間には全地点で夜行型を示した.撮影頻度についてみると,誘引期間の午前と午後ではそれぞれ5地点と2地点で夜間よりも有意に少なかったが,捕獲期間の午前と午後ではそれぞれ6地点と5地点で夜間よりも有意に少なかった.捕獲期間の全撮影頭数と4地点での撮影頭数は誘引期間よりも大きく減少し,残りの3地点のうち2地点では夜間の撮影頻度が有意に増加したことから,捕獲がニホンジカの出没状況に与える明確な影響を発見した.以上の結果,日中の短期的な捕獲により,シカは誘引地点への出没を誘引期間と比べてより夜行型に変化させることが示唆された.したがって,捕獲従事者は継続的なモニタリングによって誘引地点への出没状況を十分に把握し,最適な捕獲手法を選択する必要がある.
著者
池田 碩
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.34, pp.65-78, 2006-03

熱帯サバナ気候下に位置するカンボジア・アンコール地域の地盤の安定度と、石造遺跡の風化状況について調査した。その結果、地質地盤は安定陸塊上に位置しているが、寺院遺跡は環濠の掘り込みとその土砂による盛り土の上部に構築されているものが多いため、表層地盤は不等沈下や流動による被害が生じている状況を各地で確認した。石造遺跡の石材の風化は長年月を経て全体に進行してきているが、風化による剥離破壊は石材の限られた部分で急速に進んでいる。その部分と剥離破壊の状況は、自然界に生じているタフォニTafoni侵食と極めて類似していることがわかった。さらに風化破壊の速度は、砂岩石柱に生じている剥離破壊深が7~10cmに達しており、遺跡の構築がすでに800年程経過していることから、ほぼ100年間で1cmの速度で進行してきていることが推測できた。
著者
池田 碩
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.30, pp.83-96, 2002-03

Aw気候下のインド東南部で1300年前に構築されたことがはっきりしている石造寺院に生じた風化破壊の状況を観察、調査した。その結果、石造寺院の風化は全体に同速度で進行しているのではなく、風化の状態は上方から下方へかけて4層に分かれ、中央部の2層が速く、上方部と下端部では遅れていることがわかった。風化の内容も、最も進んでいる中央部では特異な形状を示すタフォニTafoni化タイプの風化を伴ないつつ進んでいるのに対し、下方部では剥脱・剥離exforiationタイプの風化破壊を進行させている。さらに、この石造寺院に生じているタフォニの成長速度は、自然界で形成している活発なタフォニで実験計測して得た値とほぼ一致することがわかった。
著者
池田 佳代 沼田 秀穂
出版者
環太平洋大学
雑誌
環太平洋大学研究紀要 = BULLETIN OF INTERNATIONAL PACIFIC UNIVERSITY (ISSN:1882479X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.81-88, 2020-03-31

インターネットが普及し,個人が簡単に情報の受発信を行うソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を活用している割合が上昇している。SNS上には,信頼できる情報はもとより,流言・デマといった情報も発信され,それが拡散されることによって,災害時等の有事には救助や復旧の妨げとなっている。SNSによる情報行動を解明することは,信頼できる情報流通システムの構築に必要な課題と言える。本稿では,メディアに対する信頼や,信頼と情報転送などの行動の関係についてWebアンケートによる質問紙調査を行った。結果として,年齢や性別によっても情報の信頼度が異なることや,情報を信頼していないにも関わらずシェアや情報転送をする人の存在が明らかとなった。
著者
池田 一夫 灘岡 陽子 神谷 信行
出版者
特定非営利活動法人 化学生物総合管理学会
雑誌
化学生物総合管理 (ISSN:13499041)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.97-107, 2010 (Released:2010-05-28)
参考文献数
11

疾病動向予測システムを用いて、人口構造が自殺に与える影響について分析した。日本においては、近傍世代と比較して出生数が多い1880年代世代、昭和一桁世代、団塊世代及び団塊ジュニア世代で自殺死亡率が高いことが明らかとなった。この出生数の多い世代で自殺死亡率が高くなるという傾向は、程度の差はあれフィンランドやアメリカなどの先進各国でも観測された。相対的に出生数の多い世代の自殺死亡率が近傍世代よりも高くなることから、その世代が当該国の自殺好発年齢に達した時は、自殺者数はより大幅に増加するものと予測される。したがって、今後は、人口構造を十分考慮して自殺対策を構築していくことが重要である。
著者
LESTER I. CONRAD HENRY F. MASO SHIRLEY A. DeRAGON 池田物産株式会社
出版者
THE SOCIETY OF COSMETIC CHEMISTS OF JAPAN
雑誌
日本化粧品技術者連合会会報 (ISSN:1884412X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-9, 1966-06-25 (Released:2010-08-06)

本論文は, 表面現象に参与するラノリン誘導体に関して, われわれの研究所で行われた種々の方面の研究を示したものである。潜在的表面活性の根源を示すためにラノリンと, その誘導体の化学を簡単に総覧した。ラノリン誘導体の比較的な評価をするために, 簡単な技法を用いることで, 顔料の湿潤性に関するデーターを示した。エマルジョン系のレオロジー的様相に及ぼすラノリン誘導体の影響を, これらの系の粘性及び安定性挙動により示した。ラノリン誘導体の可溶化効果, 乳化効果を論じ, その意味する原理の例を処方で示した。ラノリン誘導体の拡散性に関するデーターを, その応用と共に示した。いくつかの可塑性効果及び表面効果を, その処方への使用により評論した。
著者
池田 正人
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.313-319, 2009-10-15 (Released:2016-09-30)
参考文献数
5

航空機事故においては,数年事故がない状態が続き,一度事故が発生するとしばらくの間,事故が頻発傾向になり,この傾向に周期性があることが知られている1).化学工業の工場の労働災害においても同様の傾向が見られる.長期間無災害が続いた後に,一度労働災害が発生するとしばらくの間,労働災害が頻発傾向となり,この傾向を繰り返す. 長期間の無災害継続日数を記録した後に労働災害が頻発する傾向があるのは,長期の無災害継続期における「安全意識の緩み」などがおもな原因と思われる.また,われわれ日本人の一般的な気質として,「危険に対する感性が低い」,「当事者意識が希薄」なども作用していると思われる. 日本曹達(株)高岡工場の労働災害の周期性について分析した.労働災害が発生,頻発している間は安全意識の活性化策としての安全活動などが緊張感を持って行われるが,やがて無災害継続日数が1 年以上になるとあたかも安全な工場になってしまったかのような錯覚に陥り,緊張感が途切れ,安全活動は行ってはいるが全員の意識に届いていない.つまり,本来,無災害継続日数が多くなるにつれて安全意識の活性化活動を強化しなければならないが,現実には無災害継続日数が多くなると安全意識の活性化活動は低調になっていく傾向にあることがわかった. 本稿では労働災害の周期性とその原因,そして,無災害継続日数をより延ばすにはどうすべきかについて報告する.
著者
池田 菜穂 小野 有五
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.294-311, 2004-04-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
23
被引用文献数
5 2

This study examines migration patterns of livestock herds in mobile pastoralism of yak/yak-cattle hybrid in two areas in eastern Nepal Himalaya : the Bharku Village, Langtang National Park, and the Ghunsa Valley, Kanchenjunga Conservation Area. The migration patterns were mapped in detail, identifying every household of herders in the research areas (six households in the Bharku, and eleven households in the Ghunsa Valley), and those patterns were analyzed in terms of natural resource use and influence of mountain tourism. Both field observations and interviews with herders revealed that the summer pastures were concentrated at the highest grazing areas, mostly spreading in the alpine belt, regardless of livestock type (yak and yak hybrid), while the winter pastures ranged widely in altitude even among households keeping a same type of livestock (yak). Measuring milk production indicated that the period of stay in the alpine pastures corresponded to that of high milk production. Migration of herds to the alpine pastures occurred simultaneously in herders' groups under the control of their organizations. On the other hand, the diversity of herd migration patterns in winter suggested dependence of those patterns on households' livelihood strategies. Herders of Tibetan refugees showed a migration pattern, which was different from the local one, staying in the alpine area throughout the year. Also, some herders changed their migration patterns and returned to higher pastures in the fall in the Ghunsa Valley to earn some money by providing accommodations to trekkers, who visit the area mostly in that period of the year to avoid the monsoon rain since the recent opening of the Ghunsa Valley to foreigners. On the other hand, herders in the Bharku changed their summer pastures to avoid a mass of pilgrims, a traditional type of mountain tourism in Himalaya, who visit Gosainkunda, a famous sacred place located above the herders' grazing area, on the occasion of a festival called Janai Purnima. These facts suggest the flexibility of migration patterns in mobile pastoralism of yak/yak-hybrids under the influence of newcomers and mountain tourism. Both natural and social influences caused by these recent changes of migration pattern need to be monitored in view of environmental management of higher Himalaya.
著者
榎本 雅夫 大西 成雄 嶽 良博 齊藤 優子 池田 浩己 十河 英世 船越 宏子 芝埜 彰 瀬野 悟史 硲田 猛真
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.488-492, 2002-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

アレルギー性鼻炎における環境調整はメディカルケアへの依存を軽減し, これのみで症状が改善する例もしばしば経験し, 治療を行う上で有意義な方法である0したがって, 鼻アレルギー診療ガイドラインにも室内ダニ除去が推奨され, その具体的方法が示されている。しかし, これらの主要アレルゲンであるDer p (f) 1, Der p (f) 2は水溶性であるにもかかわらず, ガイドラインには洗濯の励行の重要性が記載されていない。本報告では, 洗濯の効果があるのかについて検討した。各種布地による溶出時間とDer 1溶出量, 溶出率, 実際の洗濯によるダニアレルゲン減少度, 漬け置き洗濯の効用などについて検討した。その結果, 布質によってダニアレルゲン吸着度は大いに異なること, 溶出率もそれにより異なること, 漬け置き洗いがより効果的であることなどが明らかになった。これらのことは, 日常の患者指導をする上で直接役立っ事項と考身ている.
著者
土井 康寛 松山 倫延 池田 龍二 橋田 昌弘
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.581-588, 2016 (Released:2016-07-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1

This study was conducted to measure the recognition time of the test pattern and to investigate the effects of the maximum luminance in a medical-grade liquid-crystal display (LCD) on the recognition time. Landolt rings as signals of the test pattern were used with four random orientations, one on each of the eight gray-scale steps. Ten observers input the orientation of the gap on the Landolt rings using cursor keys on the keyboard. The recognition times were automatically measured from the display of the test pattern on the medical-grade LCD to the input of the orientation of the gap in the Landolt rings. The maximum luminance in this study was set to one of four values (100, 170, 250, and 400 cd/m2), for which the corresponding recognition times were measured. As a result, the average recognition times for each observer with maximum luminances of 100, 170, 250, and 400 cd/m2 were found to be 3.96 to 7.12 s, 3.72 to 6.35 s, 3.53 to 5.97 s, and 3.37 to 5.98 s, respectively. The results indicate that the observer’s recognition time is directly proportional to the luminance of the medical-grade LCD. Therefore, it is evident that the maximum luminance of the medical-grade LCD affects the test pattern recognition time.