- 著者
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沖田 瑞穂
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- no.83, pp.109-129, 2016
ヒンドゥー教の主神の一人シヴァと,日本のスサノヲ神には,八つの点で特徴的な類似が認められる。1.破壊と生殖:シヴァは時が来ると世界を破壊する破壊神であり,スサノヲはその行動によって世界を危機にさらす。他方,シヴァはリンガに表されるように生殖の神であり,スサノヲは豊穣の地下界と一体化して,豊穣神オホクニヌシに試練を課す。2.〈教示する神〉:シヴァはインドラの欲望を戒め,スサノヲはオホクニヌシを試練によって導き祝福を与える。3.悪魔退治と武器:シヴァは悪魔の三都を破壊し,英雄アルジュナに武器を授ける。スサノヲはヤマタノヲロチを退治し,それによって得た剣をアマテラスに献上する。4.荒ぶる神・罰・(宥め):英雄神であると同時に両神は荒ぶる神でもある。5.暴風神:シヴァの前身ルドラは暴風神,スサノヲも自然現象としては暴風雨。6.文化:シヴァは踊り,スサノヲは歌と関わり,世界のエネルギーを表す文化と関連する。7.女性的なものとの一体化:シヴァはシャクティとして妃と一体化し,スサノヲは冥府の主であることによって母神イザナミと一体化している。8.イニシエーションを授ける:シヴァはアルジュナに,スサノヲはオホクニヌシに。 このように多くの類似を有するが,両神の間に何らかの系統的関係は想定できず,自然現象としての暴風に基づく神格として,別個に形成された性質が偶然に一致したものと考えることができる。