著者
越智 亮 片岡 保憲 太場岡 英利 沖田 学 森岡 周
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0437, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】 心的な“緊張”が動作遂行能力に負の影響をもたらすことは日常生活において頻繁に見受けられる.これは,普段なら対応づけられている主観的な努力と客観的に要求された値との間の対応関係が乱れることが一つの原因として挙げられる可能性がある.本研究では,表面筋電計を用い,心的負荷を加えることにより筋活動量とその再現能力がどのように変化するかについて肘関節での等尺性収縮にて検証する. 【方法】 健常男性12名を被験者とした.平均年齢20.8±4.2歳,平均体重61.9±7.6kgであった.測定肢位は背もたれのない座位とした. BT(base task):肘関節屈曲90°,前腕回外90°位にて,重量負荷となる容器(プラスティック製バケツに各被験者の体重の5%にあたる水を入れ蓋をしたもの)を母指球と小指球の直上にくるよう置き,容器取手部分を注視させ,20秒間保持させた. BT-rep(BT-reproduce):BT後,即座に出力再現課題を試みさせた.固定された机の裏面に肘関節屈曲90°になるよう手掌面を当て,BTと同じ位の出力になるよう肘関節屈曲の等尺性収縮を行わせ,力量調節が完了した時点で被験者自身に合図させてから10秒間保持させた. MLT(mental load task):BT後10分間の休憩を与えた後,BTと同様の容器を用い上肢負荷を与え,容器取手上にガラス製のコップに水を満水にして置いた.容器の重さとコップの水の総重量はBTの負荷重量と一致するよう,容器内の水の量を調節した.コップ内の水を絶対にこぼさないように指示し,コップを注視させ20秒間保持させた. MLT-rep:BTと同様,出力再現課題を試みさせた.尚,BT,MLT共に課題間に休息を与えずに3施行ずつ行い,課題施行前後に血圧及び脈拍数を測定した. 筋活動の導出にはNoraxon社製MyoSystem1200を用い,被験筋は利き腕の上腕二頭筋,腕橈骨筋,上腕三頭筋とした.全課題において,遂行開始時より3秒後から5秒間のEMG波形を導出し,被験者の5秒間の最大等尺性随意収縮を100%とし,正規化した.統計処理には対応のあるt-検定を用いた.再現課題は絶対値の差(BT-rep-BT,MLT-rep-MLT)を算出し,平均値と標準偏差から散布度の比較を行った.【結果】 BTとMLTの比較において,MLTでは上腕二頭筋,腕橈骨筋,上腕三頭筋に筋活動量の有意な増加(p<0.001)が認められた.血圧及び心拍数もMLTで有意に増加(p<0.001)していた.絶対値の差の平均と標準偏差を比較した結果,MLT-repでバラツキが大きかった. 【考察】 ある動作のための筋活動量は脳・神経系によって無意識にプログラムされており,この過程に心理的修飾が加わることで適切な力量調節能力が損失させられ,筋出力の再現能力も低下することが考えられた.
著者
沖田 実 中居 和代 片岡 英樹 豊田 紀香 中野 治郎 折口 智樹 吉村 俊朗
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.63-69, 2004-02-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
26
被引用文献数
7

本研究の目的は,温熱負荷ならびに温熱負荷と持続的筋伸張運動を併用した場合の廃用性筋萎縮の進行抑制効果を明らかにすることである。実験動物は,7週齢のWistar系雄ラットで,1週間の後肢懸垂によってヒラメ筋に廃用性筋萎縮を惹起させるとともに,その過程で約42℃の温熱ならびに持続的筋伸張運動,両者を併用した方法を負荷し,筋湿重量とタイプI・II線維の筋線維直径の変化,Heat shock protein 70(Hsp70)の発現状況を検索した。温熱負荷によってHsp70の発現が増加し,タイプI・II線維とも廃用性筋萎縮の進行抑制効果を認めた。そして,これはHsp70の作用によってタンパク質の合成低下と分解亢進が抑制されたことが影響していると考えられた。一方,持続的筋伸張運動でも廃用性筋萎縮の進行抑制効果を認めたが,温熱負荷と併用した方法がより効果的であり,これはHsp70の作用と機械的伸張刺激の作用の相乗効果によるものと推察された。
著者
藤村 順也 石森 真吾 神岡 一郎 沖田 空 親里 嘉展 西山 敦史 米谷 昌彦
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.cr.2016.0090, (Released:2016-12-22)
参考文献数
21
被引用文献数
1

インフルエンザウイルス (flu)ワクチン接種,flu 感染は小児特発性ネフローゼ症候群 (NS)再発の誘因となるがその詳細を検討した報告はない。今回,flu ワクチン接種または感染を契機としてNS 再発に至った小児6 例を報告する。flu ワクチン接種によるNS 再発が3 例 (以下,ワクチン再発例),flu 感染によるNS 再発が3 例 (以下,感染再発例)で全例が男児であった。flu ワクチン,感染後に全く再発のないNS 例を対象とし,その背景を検討した。ワクチン再発例では,ワクチン接種3 回全てをNS 初発または最終再発から6 か月未満の時期に行っており対照群 (15 回中3 回)よりも多かった。感染再発例においても,flu 感染3 回全てがNS 初発または最終再発から6 か月未満の時期で対照群 (5 回中0 回)よりも多かった。flu ワクチン,感染に伴ったNS 再発には,背景に症例毎の病勢の影響が存在するかもしれない。本検討は症例数が少なく,今後大規模な多施設共同研究が望まれる。
著者
濱上 陽平 本田 祐一郎 片岡 英樹 佐々部 陵 後藤 響 福島 卓矢 大賀 智史 近藤 康隆 佐々木 遼 田中 なつみ 坂本 淳哉 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0076, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】線維筋痛症は全身の激しい痛みと軟部組織のこわばりによって特徴づけられる難治性の慢性疾患であり,本邦における推定患者数は200万人以上といわれている。線維筋痛症に対する理学療法アプローチとしては,運動療法に加えて鎮痛を目的とした各種の物理療法が行われているが,線維筋痛症の原因・病態が明らかにされていないがゆえに,物理療法に効果があるのか否かは未だ議論が続いており,エビデンスも示されていない。そこで今回,これまでに発表された線維筋痛症に対する物理療法の効果を検証したランダム化比較試験(Randomized controlled trial;RCT)を検索し,メタアナリシスを行ったので報告する。【方法】医学文献データベース(Medline,CINAHL Plus,Pedro;1988年~2016年8月に発表されたもの)に収録された学術論文の中から,線維筋痛症に対する物理療法の効果を検証した論文を系統的に検索・抽出した。その中から,ヒトを対象としたもの,研究デザインがRCTであるもの,アウトカムとして痛みの程度(VSA),圧痛箇所数(Tender point),線維筋痛症質問票(Fibromyalgia Impact Questionnaire;FIQ)のいずれかを用いているもの,結果の数値が記載されているもの,適切な対照群が設定されているもの,言語が英語であるものを採用し,固定効果モデルのメタアナリシスにて統合した。なお,有意水準は5%未満とし,採用したRCT論文はPEDroスコアを用いて質の評価を行った。【結果】抽出された227編の論文のうち,採用条件のすべてを満たした論文は11編であり,PEDroスコアは平均5.82ポイントであった。検証された物理療法の内訳は,低出力レーザーが5編で最も多く,全身温熱療法が4編,電気刺激療法が1編,磁気刺激療法が1編であった。次に,メタアナリシスにおいて,物理療法による介入の有無によって痛み(VAS)の変化を比較した結果,低出力レーザー,全身温熱療法,電気刺激療法,磁気刺激療法のすべてで有意差を認め,効果が確認された。同様に,圧痛箇所数およびFIQの変化を比較した結果,低出力レーザーと全身温熱療法で有意差を認め,効果が確認された。なお,採用した論文の中に電気刺激療法,磁気刺激療法の効果を圧痛箇所数およびFIQで検証したものはなかった。【結論】今回の結果,低出力レーザー,全身温熱療法,電気刺激療法,磁気刺激療法のすべてにおいて線維筋痛症の痛みに対する効果が確認された。採用論文は多くはないが,線維筋痛症に対する物理療法の効果をメタアナリシスで検証した研究は国内外で他に見あたらず,本研究の結果は物理療法のエビデンスの確立に寄与するものと思われる。ただ,電気刺激療法と磁気刺激療法に関しては採用した論文はそれぞれ1編であったため,エビデンスが示されたとは言い難く,今後さらにRCTの発表と蓄積が求められる。
著者
沖田 瑞穂
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.83, pp.109-129, 2016

ヒンドゥー教の主神の一人シヴァと,日本のスサノヲ神には,八つの点で特徴的な類似が認められる。1.破壊と生殖:シヴァは時が来ると世界を破壊する破壊神であり,スサノヲはその行動によって世界を危機にさらす。他方,シヴァはリンガに表されるように生殖の神であり,スサノヲは豊穣の地下界と一体化して,豊穣神オホクニヌシに試練を課す。2.〈教示する神〉:シヴァはインドラの欲望を戒め,スサノヲはオホクニヌシを試練によって導き祝福を与える。3.悪魔退治と武器:シヴァは悪魔の三都を破壊し,英雄アルジュナに武器を授ける。スサノヲはヤマタノヲロチを退治し,それによって得た剣をアマテラスに献上する。4.荒ぶる神・罰・(宥め):英雄神であると同時に両神は荒ぶる神でもある。5.暴風神:シヴァの前身ルドラは暴風神,スサノヲも自然現象としては暴風雨。6.文化:シヴァは踊り,スサノヲは歌と関わり,世界のエネルギーを表す文化と関連する。7.女性的なものとの一体化:シヴァはシャクティとして妃と一体化し,スサノヲは冥府の主であることによって母神イザナミと一体化している。8.イニシエーションを授ける:シヴァはアルジュナに,スサノヲはオホクニヌシに。 このように多くの類似を有するが,両神の間に何らかの系統的関係は想定できず,自然現象としての暴風に基づく神格として,別個に形成された性質が偶然に一致したものと考えることができる。
著者
間瀬 知紀 宮脇 千惠美 甲田 勝康 藤田 裕規 沖田 善光 小原 久未子 見正 富美子 中村 晴信
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.371-380, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
30
被引用文献数
2

目的 本研究は,女子学生を対象として,若年女性における正常体重肥満者,いわゆる「隠れ肥満」の体組成に影響を及ぼすと考えられる食行動,運動習慣および身体活動量について検討した。方法 対象は京都府内の大学 6 校に在籍する18~21歳の女子学生530人である。体脂肪率,歩数の測定および無記名自記式の質問紙調査を2010年 1 月~2010年 7 月にかけて実施した。質問紙調査項目は生活環境,体型認識,体型への希望,ダイエット経験,運動習慣,睡眠時間および食行動に関する 7 項目であった。食行動調査は EAT–26(Eating Attitude Test 26:摂食態度調査票)を実施した。BMI が18.5以上25.0未満の「標準体重(n=439)」判定者の中で,体脂肪率が75%タイル以上の者を「High group(n=115)」,体脂肪率が25%タイル以下の者を「Low group(n=111)」,この 2 群以外の者を「Middle group(n=213)」と分類し,3 群について比較検討した。結果 質問紙調査より,グループ間に体型認識,体型への希望,やせたい理由,ダイエット経験の有無,ダイエットの失敗の有無および睡眠時間についての回答の比率に有意な差がみられた。しかしながら,身体活動量はグループ間に差がみられなかった。さらに,EAT–26を用いて食行動を検討すると第 3 因子「Oral control」においては High group は Low group と比較し,有意に高値が認められた。結論 標準体重者で体脂肪率が高い者は,やせ願望やダイエット行動が関連していた。やせ願望の強い学生に対し,適正な体組成の維持と適切な食生活を確立させるための健康教育の必要性が示された。
著者
沖 侑大郎 田中 直次郎 沖田 啓子 渡邉 光子 岡本 隆嗣
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Da0991, 2012

【はじめに、目的】 延髄外側症候群(以下:Wallenberg症候群)とは、1895年にAdolf Wallenbergが発表し広く知られるようになった。球麻痺、小脳失調、交代性解離性感覚障害の所見を呈し、50%以上に嚥下障害を合併するといわれている。今回、Wallenberg症候群で嚥下障害を呈した症例に対し、理学療法学的観点から頸部可動性、舌骨上筋群の機能を中心に評価し、アプローチすることで改善が認められたので報告する。【方法】 本症例は、60歳代男性で、右椎骨動脈閉塞による右延髄外側の梗塞を発症し、左片麻痺、左失調症状、右側温痛覚障害、構音障害、嚥下障害を呈し発症51日目に当院に入院した。独歩でADLは自立しており、意識障害、高次脳機能障害は認めず、嚥下障害が主な問題点であり、藤島の摂食・嚥下能力のグレード7であった。神経学的所見として、Brunnstrom stageは左上下肢ともに6レベル。体幹機能は頸・体幹・骨盤帯運動機能検査で5レベルであり、座位および立位保持は安定。Berg's Balance Scaleで56/56でADL上バランス機能に問題は見られなかった。嚥下障害に対する問題点を頸部可動域低下、舌骨および喉頭挙上不全、舌骨上筋群筋力低下とし、Videofluorography(以下VF)上で軟口蓋および舌骨の挙上不全により十分な嚥下圧が得られないことによる喉頭蓋谷、梨状窩の残留を認めた。今回の評価方法として、藤島による摂食・嚥下能力のグレード(以下Gr.)、頸部伸展および回旋の関節可動域、相対的喉頭位置(以下T-position)、舌骨上筋群筋力評価スケール(以下GSグレード)、VF上で第3頸椎の内側縦長を基準とし、舌骨と喉頭それぞれの最大前方移動距離と最大挙上距離(前方/挙上)を用い、退院までの経過を評価した。問題点に対し、頸部可動域改善に向け、頸部・肩甲帯リラクゼーション後、舌骨上筋群へのマイオフェイシャルリリース、ダイレクトストレッチおよび舌骨モビライゼーションを行った。また、舌骨上筋群を強化して舌骨および喉頭運動を改善させ、食道入口部の開大を目的に、頭部挙上練習30回反復後、頭部挙上位1分間保持3回を1セットで構成されるシャキア法を、1日3セットを週5回で退院までの1ヶ月間継続的に行った。その際、通常のシャキア法では、腹筋群での代償が生じやすいと考え、頭部挙上練習は背臥位でセラピストが頸部を軽度屈曲位になるように後頭部を介助することで頭部の重さをサポートし、患者が顎を引くことに対し、セラピストが抵抗を加えた。頭部挙上保持は、セラピストが両肩関節を床面に向かい抵抗を加えながら行うことで腹筋群の代償の軽減を図りながら舌骨上筋群の筋力強化を図った。【倫理的配慮、説明と同意】 本症例には症例報告をさせて頂く主旨を紙面上にて説明し同意を得た。【結果】 上記の評価項目を用い、退院までの経過を評価した。評価結果(入院時評価→退院時評価)として、(食形態)Gr.7→9、(頸部伸展)50°→60°、(頸部回旋左右)50°→60°、(T-position)0.44→0.416、(GSグレード)1→3、VF上で舌骨・喉頭移動距離(前方/挙上)は、(舌骨)11.7/4.4cm→12.9/14.7cm、(喉頭)22.0/10.4cm→25.9/12.9cmの項目に改善が見られた。【考察】 本症例に対し頸部・舌骨上筋群を中心としたストレッチを行うことで、頸部伸展および回旋可動域、T-positionの改善が認められた。頸部の可動域制限は、舌骨や喉頭を過剰に固定し挙上運動の制限因子となる。頸部ストレッチを行うことで伸張刺激が加わり舌骨・喉頭の挙上運動が働きやすい状況になったと考える。更にGSグレードの改善からも分かるようにシャキア法により喉頭挙上筋である舌骨上筋群の筋力が改善している。つまり、筋の長さ-張力曲線の原理から考え、頸部の伸張性が改善したことにより喉頭挙上に関する筋力が動員されやすい状態となった。さらに舌骨上筋群の筋力が改善したことにより舌骨・喉頭挙上運動が増大した。このことは、VF所見から舌骨前方および挙上移動距離の改善していることから明らかである。以上より今回の症例に対して舌骨上筋群のストレッチ、シャキア法が、嚥下機能改善に対する有用なアプローチ法であること、加えて詳細な評価が有効であることが考えられる。【理学療法学研究としての意義】 今回理学療法の観点からの嚥下障害に対する間接的アプローチを行うことで、改善が見られた。吉田らによると嚥下障害改善群は、頸部伸展・回旋、舌骨上筋群筋力が有意に改善すると報告しており、本症例においても嚥下機能改善に伴い、頸部伸展・回旋、舌骨上筋群筋力、T-positionの改善が見られておりアプローチ方法は有用であったと考える。今回着目した頸部の可動性、舌骨上筋群の筋力を中心に正確な評価指標をもって病態を把握し、嚥下運動に対してのより効果的なアプローチが可能になると考える。
著者
稲垣 千果夫 沖田 容一 折田 洋造
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.1603-1610, 1983

新生仔ゴールデンハムスターにおける蓋膜辺縁のコルチ器表面との接続形態について, 特に marginal pillar (MP) をスチレン樹脂割断法を併用してSEMで観察し, 次のような結果を得た.<br>1) MPは生後4-6日目の下方回転より出現し, 生後10-14日目にも顕著となり, 生後16日目には消失していた.<br>2) MPの出現部位は Deiters 細胞第三列目の細胞表面であり, 蓋膜下面への付着部位は辺縁よりもやや内側 (蝸牛軸側) であった.<br>3) 生後5-10日目頃では, Deiters 細胞第一列目, 二列目の細胞表面にもMPと同様の構造物を認めた.<br>ハムスターでは, MPの消失するのは聴毛の形態が完成した直後であり, 他の動物による諸家の報告を考え合わせれば, MPはコルチ器が完成するまでの間, 蓋膜を固定, 保持する作用を持つことは間違いないものと思われ, MPの消失がコルチ器の発達完了を示す指標になるものと考えられた.
著者
天野 秀雄 榊 信広 竹内 憲 野村 幸治 多田 正弘 岡崎 幸紀 斉藤 満 飯田 洋三 沖田 極 竹本 忠良
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.22, no.10, pp.1346-1350_1, 1980

新拡大内視鏡分類にもとずいて,胃粘膜表面にみられる胃小区よりもさらに細かい模様像である胃粘膜微細模様を観察し,胃局在病変の微細形態を検討した.新拡大内視鏡分類を用いるにあたって,今回は局在病変部の粘膜微細模様を正確に表現するために,さらに細かく分類し,CおよびDについて,C<SUB>1</SUB>(整),C<SUB>2</SUB>(粗大),C<SUB>3</SUB>(不整),D<SUB>1</SUB>(整),D<SUB>2</SUB>(軽度不整),D<SUB>3</SUB>(高度不整)の亜分類をもうけた. 一般に,過形成性ポリープはBCCD.異型上皮巣(ATP)はC<SUB>3</SUB>.隆起性胃癌はC<SUB>3</SUB>をとることが多く,一方陥凹性胃癌ではD<SUB>3</SUB>,胃潰瘍は病期により異なるが,CD D<SUB>1</SUB>D<SUB>2</SUB>をとることが多かった.潰瘍の病態との関係では,難治性胃潰瘍では,Dをしめすことが多い.
著者
長谷川 恵一 安藤 清 北出 正司 坂本 光正 福島 幸夫 沖田 耕一
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集. A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.61, no.588, pp.1713-1718, 1995-08-25
参考文献数
8
被引用文献数
2

The LE-7 rocket engine main injector has undergone a few occurrences of welded joint structural failure because it is subjected to high thermal stress during the engine start and stop sequence. The low-cycle fatigue test and high-strain fatigue test which were conducted as part of failure analysis revealed that the welded joint has a considerably shorter fatigue life than expected. To improve the ductility and toughness of the welded joint, high-temperature-solution heat treatment was applied after welding. The low-cycle fatigue life of a welded joint subjected to this solution heat treatment became three times longer than that without it. A design criterion was established for low-cycle fatigue life estimation, and the life requirement was found to be satisfied.
著者
沖田 克夫 Katsuo Okita 桃山学院大学経営学研究科
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学環太平洋圏経営研究 (ISSN:13455214)
巻号頁・発行日
no.12, pp.23-62, 2011-03

It is well known that the Kumon Method of education, which has attracted keen attention worldwide, has experienced two breakthroughs and has undergone continuous innovation. The first breakthrough produced the Kumon Method as a result of Toru Kumon's home training of his son, while the second breakthrough led to global expansion of the Kumon Method. The materials presented in this paper cover all of the discourses of the founder, Toku Kumon, for the period between 1954 and 1995. In addition to these materials, I have used the results of objective research conducted in four different fields (total quality control, history of modern education, cognitive psychology, business administration). Strategic innovation in the Kumon Method was ignited by the rediscovery of reading and was driven by the engine of a "just right" point.
著者
西田 まどか 沖田 実 福田 幸子 岡本 直須美 中野 治郎 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.304-311, 2004-08-20
参考文献数
13
被引用文献数
7

本研究では,関節固定法と後肢懸垂法を組み合わせたラットの実験モデルを用いて,持続的伸張運動と間歇的伸張運動が拘縮と筋線維におよぼす影響を検討した。Wistar系雄ラット17匹を対照群3匹と実験群14匹に分け,実験群は両側足関節を最大底面位で固定した上で後肢懸垂法を2週間行った。また,実験算は固定のみの群(固定群,4匹),固定期間中に麻酔下で毎日30分問,ヒラメ筋に持続的伸張運動を実施する群(持続群,6匹),同様に間歇的伸恨運動を実施する群(間歇群,4匹)に分け,実験終了後は足関節背面角度とヒラメ筋の組織病理学的変化を検索した。足関節背面角度は持続群,間歇群が固定群より有意に高値を示したが,この2群のヒラメ筋には著しい筋線維損傷の発生が認められた。よって,持続・間歇的伸張運動ともに本実験モデルの拘縮の進行抑制に効果的であるが,ヒラメ筋に対しては悪影響をおよぼすことが示唆された。
著者
沖田 知子 オキタ トモコ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
言語文化研究 (ISSN:03874480)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.45-64, 2010-03

【言語文化専攻編】
著者
吉畑 博代 本多 留美 沖田 啓子 綿森 淑子
出版者
県立広島大学
雑誌
広島県立保健福祉短期大学紀要 (ISSN:13420070)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.129-135, 1999-03

音声言語の表出が困難な重度失語症者のために, コンピュータ上で視覚シンボルを操作して文を伝達する視覚的コミュニケーションシステムを作成した。このシステムには検索を行うためのボタンとして, 動作主を表す「人々」ボタンと, 名詞や動詞を表す「名詞」, 「動詞」ボタンを設置し, 「名詞」中のシンボルはC-VIC(Computerized Visual Communication System, Steeleら;1989など)の考えを参考に, カテゴリーごとに階層構造をなすよう構成した。文構成は各ボタンを開いて適切なシンボルを選択し, コンピュータ画面中央に配置した文構成場所に順序よく配列する方法で行うことにした。その結果, 本システムは(1)重度失語症者の文構成の学習手段, (2)AAC(Augmentative & Alternative Communication)として利用することが可能になった。今後本システムを重度失語症者に適用して, 学習手段ならびにAACとしての有効性について検討する。
著者
日岡 明美 沖田 学 片岡 保憲 八木 文雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.65-69, 2010-04-20
参考文献数
15

【目的】本研究の目的は,脳卒中片麻痺患者に共感覚を問う課題を提示し,抽象概念を照合する能力および説明する能力を知的機能という視点から明らかにすることである。【方法】脳卒中片麻痺患者30名を対象にブーバ/キキ実験,インタビュー,知的機能検査を行った。実験手順は,ブーバ/キキ実験の回答が得られた後に,「ブーバ」および「キキ」の判断理由の説明を求める2項目のインタビューを実施した。知的機能検査としてMini-Mental State Examination,レーヴン色彩マトリックス検査,Frontal Assessment Batteryを実施した。インタビュー結果から,両方の説明が可能であった群(以下,A群),両方または片方の説明が不可能であった群(以下,B群)に分類し,2群間の各知的機能検査の評価得点を解析した。【結果】抽象概念の照合が可能であった対象者は30名中29名であり,知的機能が高い対象者と低い対象者が存在した。2群間の内訳は,A群16名,B群13名であった。2群間すべての知的機能検査の評価得点において,A群がB群に比べ有意に得点が高かった。【結論】以上のことから,抽象概念を照合する能力は知的機能とは別の能力であるということが示された。また,抽象概念の照合を説明する能力は,知的機能に依存していることが示唆された。
著者
礒田 健太郎 辻 成佳 原田 芳徳 吉田 祐志 吉村 麻衣子 松岡 秀俊 沖田 康孝 村上 輝明 橋本 淳 大島 至郎 佐伯 行彦
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.121-131, 2021 (Released:2021-07-16)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的:関節リウマチ(RA)患者において,栄養状態が感染症の発生に与える影響を調査した.対象・方法:入院を要する重症感染症を合併したRA患者(入院患者群)と,感染症入院のない患者(非入院患者群)との患者背景,臨床所見,治療内容,栄養状態を比較した.栄養状態の指標には予後栄養指標prognostic nutritional index(PNI)とcontrolling nutritional status(CONUT)を用いた.結果:PNIとCONUTによる栄養状態は,入院患者群では非入院患者群より有意に不良であり(共にP < 0.001),特にPNI低値は重症感染症発生の予測因子であった(オッズ比:1.749, 95%信頼区間:1.110-2.755, P < 0.001).結論:RAにおいて感染症は重大な合併症である.感染症を合併しないように安全に治療を行うためには栄養状態の評価と管理が不可欠である.