著者
ケビンサニー 岡﨑 三郎 髙桑 脩 松永 久生 船越 裕亮 沖田 耕一
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
M&M材料力学カンファレンス 2019 (ISSN:24242845)
巻号頁・発行日
pp.OS0319, 2019 (Released:2020-05-25)

Tension-compression fatigue tests were conducted on non-charged and hydrogen-charged additively manufactured Ni-based superalloy 718 to investigate the effect of solute hydrogen on the fatigue strength properties of the material. The surface condition of the specimens was either as-built or mechanically-polished, aiming to clarify the effect of process-induced defects and roughness on the property. Fractographic observations using a scanning electron microscope manifested that process-induced defects existed at the fracture origin of as-built specimens, whereas such defects were not observed in the mechanically-polished specimens. However, both the fatigue life and the fatigue limit of the specimens were neither affected by surface condition nor by hydrogen. The results revealed that (1) the defects were not detrimental to the fatigue strength of the material due to its large defect-size tolerance accounted to its coarse-grained microstructure, based on comparison with previous studies conducted on forged Alloy 718, and (2) hydrogen caused no remarkable influence on both crack growth rate and crack growth threshold of the material.
著者
泉 照之 Prasanna Boyagoda 佐藤 泰司 沖田 豪
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.1082-1088, 1997-10-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

With the depletion of global energy resources, saving energy has become an important aspect in design of energy consuming equipment. Hence, this paper deals with an optimal time of operation of a manipulator which minimizes the energy dissipated in the actuators. When the manipulator is operated in a vertical plane, the system is highly non-linear due to gravity and an analytical solution can not be found. Therefore, the system is first linearized around various equilibrium points and the existence of an optimal time is investigated theoretically. The theoretical results resemble the simulation of the non-linear system except for a slight difference in the optimal time. The theoretical results and simulations show that an optimal operating time exists when the first link of the manipulator traverses the stable equilibrium point and that it does not exist when the first link traverses the unstable equilibrium point. Finally, a non-linear optimization method is applied to ascertain the accurate optimal time of operation.
著者
沖田 行司
出版者
渋沢栄一記念財団
雑誌
青淵 (ISSN:09123210)
巻号頁・発行日
no.857, pp.29-31, 2020-08
著者
中田 彩 沖田 実 中居 和代 中野 治郎 田崎 洋光 大久 保篤史 友利 幸之介 吉村 俊朗
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-5, 2002-02-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
15
被引用文献数
11

本研究では,臥床によって起こる拘縮を動物実験でシミュレーションし,その進行過程で持続的伸張運動を行い,拘縮の予防に効果的な実施時間を検討した。8週齢のIcR系雄マウス34匹を対照群7匹と実験群27匹に振り分け,実験群は後肢懸垂法に加え,両側足関節を最大底屈位で固定し,2週間飼育した。そして,実験群の内6匹は固定のみとし,21匹は週5回の頻度で足関節屈筋群に持続的伸張運動を実施した。なお,実施時間は10分(n = 8),20分(n = 7),30分(n = 6)とした。結果,持続的伸張運動による拘縮の進行抑制効果は実施時間10分では認められないものの,20分,30分では認められ,実施時間が長いほど効果的であった。しかし,30分間の持続的伸張運動でも拘縮の発生を完全に予防することはできず,今後は実施時間を延長することや他の手段の影響を検討する必要がある。
著者
磯部 直樹 沖田 美紀
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

性ステロイドホルモンが乳腺免疫機能に及ぼす影響および体内の常在細菌が死ぬことにより放出される細菌成分によって乳房炎が発症する可能性について検証した。エストロジェン(E)を投与すると、乳量が顕著に減少した。また細菌成分を注入した時、E投与区の方がプロジェステロン(P)投与区に比べて抗菌因子の乳中濃度が高かった。また、血中に細菌成分を注入すると、乳腺においてその成分が検出されると同時に、炎症が誘起された。以上の結果から、Eは乳量を減少させることによって乳中抗菌因子濃度を高め、細菌感染に対応していることおよび、体の他の部分から細菌成分が移行することによっても乳房炎が起こり得ることを明らかにした。
著者
大島 埴生 沖田 一彦
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.35-42, 2019-03

患者-理学療法士(PT)認識の齟齬がどのような要素で,なぜ起こるのかをあきらかにするため,両者にインタビュー実施し,その内容を質的に分析した。対象は回復期リハビリテーション病棟に入院している脳卒中片麻痺者4名とその担当PTとした。半構造化インタビューを入院から一ヶ月毎に縦断的に計3回実施した。患者とPTの齟齬は主に[身体性(embodiment)]と[生活(life)]において生じていた。[身体性]については〈身体の認識〉と〈良くなるという実感〉の相違により,[生活]については〈リスク認知〉と〈生活についての合理的判断〉の相違から構成されていた。そして,患者はインタビュー初期の頃は,主に[身体性]について語り,時間とともに徐々に[生活]に語りの軸が移っていく傾向にあった。これらの齟齬は[体験の共有不可能性]に由来していた。PTには,認識の齟齬を自覚し,患者の認識も体験に基づくものであると認め,相対的に捉える姿勢が求められる。原著
著者
廣澤 隆行 沖田 一彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.C0962, 2007

【目的】我々は第10回広島県理学療法士学会にて,理学療法士(PT)が長期化した外来患者を単に医学的側面からだけでなく,心理・社会的側面を含む複数の視点から捉え悩んでいることを報告した。今回,その結果をもとに,整形外科疾患患者の痛みの訴えに対するPTの認識や悩みについてアンケート調査を実施したので報告する。<BR>【方法】広島県下で整形外科の標榜を掲げる医療機関に勤務するPT 250名に対し,郵送によるアンケートを実施した。質問は,基礎項目および患者の痛みの訴えで悩んだ経験とそれに関わる項目の計21項目であった。返送された126部の回答(回収率50.4%)から,顕著な記入漏れ・ミスがあるものを除外した112部(有効回答率88.9%)を分析対象とした。分析はまず,患者の痛みの訴えに悩んだ頻度(4段階)の差を,性別,婚姻,同居者,勤務地,関わっている診療科,勤務先の変更経験の6項目についてχ<SUP>2</SUP>検定により比較した。次に,年齢,経験年数,学歴,勤務先の規模,常勤PT数,疾患別の診療頻度,重視する専門知識,治療内容と頻度,痛みと理学所見との不一致性,患者‐PT間での認識のギャップ,効果がない場合の治療の継続性,患者の社会的側面への注意の12項目についてSpearmanの相関を調べた。そのうえで,有意差のあった項目を独立変数としたロジスティック解析(漸減法)を行い,悩みの頻度への影響因子を抽出した。<BR>【結果】患者の痛みの訴えに悩んだ経験は「ない」1名(0.9%),「ときどき」25名(22.3%),「しばしば」58名(51.8%),「常に」28名(25.0%)であった。χ<SUP>2</SUP>検定を行ったすべての項目において回答の分布に有意差はなかった。一方,相関を調べた項目については,年齢(r=-0.23, p<0.05),経験年数(r=-0.38, p<0.01),学歴(r=0.23, p<0.05),診療頻度・関節リウマチ(r=0.21, p<0.05),同・五十肩(r=0.21, p<0.05),専門知識・心理学(r=0.25, p<0.05),同・教育学(r=0.21, p<0.05),同・行動科学(r=0.27, p<0.05),理学所見との不一致性(r=0.29, p<0.01),認識のギャップ(r=0.40, p<0.01),治療の継続性(r=0.28, p<0.01)との間に有意な相関を認めた。ロジスティック解析の結果(OR=オッズ比, CI=95%信頼区間),経験年数(OR=0.25, CI=0.11-0.56, p<0.01),行動科学(OR=2.97, CI=1.33-6.62, p<0.01),認識のギャップ(OR=3.08, CI=1.12-8.44, p<0.05)が有意な影響因子として抽出された。<BR>【考察】整形外科疾患患者の痛みの訴えは治療の長期化を招く重大な要因であり,当然PTもその対応に苦悩することになる。今回の結果から,臨床経験が浅く,痛みの改善について患者との間に認識のギャップがあると感じているPTほど悩んでいることが分かった。またそのようなPTは,必要な専門知識として行動科学を重視していると考えられた。
著者
坂本 淳哉 真鍋 義孝 弦本 敏行 本田 祐一郎 片岡 英樹 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0517, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】股関節疾患患者では患部を起源とした関連痛が膝関節前面にみられることが多く,その発生機序の仮説の一つとして二分軸索感覚ニューロンの関与が考えられているが,この点に関する解剖学的な根拠はこれまでに十分に示されていない。一般に,股関節および膝関節前面の知覚は大腿神経ならびに閉鎖神経から分岐する関節枝が支配するとされているが,これらの関節枝の分布状況を同時に検討した報告はこれまでになく,前述したような関連痛の発生機序を明らかにするためには股関節枝と膝関節枝の分布状況を同時に検討する必要がある。そこで,本研究では日本人遺体における大腿神経ならびに閉鎖神経から分岐する股関節枝および膝関節枝の分布状況について検討した。【方法】対象は平成24年度ならびに平成26年度に所属大学の歯学部人体解剖学実習に供された日本人遺体9体9肢(男性5体,女性4体,右側1肢,左側8肢)で,各遺体における大腿神経および閉鎖神経から分岐する股関節枝と膝関節枝を剖出・観察した。なお,観察は所属大学内の定められた解剖学実習室でのみ行い,実習室の管理者の管理・指導のもと,礼意を失わないように実施した。【結果】大腿神経から分岐する股関節枝には①恥骨筋枝から分岐して前内側に達する枝(4肢,44.4%),②腸骨筋枝から分岐して前外側に達する枝(3肢,33.3%)が認められ,閉鎖神経から分岐する股関節枝には①前枝から分岐して股関節前内側に達する枝(3肢,33.3%),②後枝から分岐して股関節前内側に達する枝(2肢,22.2%)が認められた。一方,大腿神経から分岐する膝関節枝には①内転筋管内を下行した後に膝蓋骨内側に達する枝(2肢,22.2%),②内側広筋枝から分岐して膝蓋骨内側に達する枝(5肢,55.6%),③膝関節筋枝から分岐して膝蓋上包に達する枝(6肢,66.7%),④外側広筋枝から分岐して膝蓋骨外側に達する枝(1肢,11.1%)が認められた。また,閉鎖神経から分岐する膝関節枝は前枝から分岐して伏在神経と併走して膝蓋骨下内方に達する枝(1肢,11.1%)が認められた。加えて,各遺体における分布状況を検討したところ,大腿神経の恥骨筋枝から分岐して股関節前内側に達する枝と内側広筋を貫通して膝関節前内側に達する枝を同時にもつ所見が3体で認められた。【結論】以上の結果から,股関節および膝関節の前面は主に大腿神経から分岐する関節枝により支配されることが明らかになった。そして,先行研究を参考にすると,股関節および膝関節の前内側を大腿神経が同時に支配している所見は両関節を支配する二分軸索感覚ニューロンの存在を示す肉眼解剖学的所見とも考えられ,股関節を起源とした膝関節の痛みの発生に関与している可能性が推察される。
著者
本田 祐一郎 梶原 康宏 田中 なつみ 石川 空美子 竹下 いづみ 片岡 英樹 坂本 淳哉 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.I-112_1-I-112_1, 2019

<p>【はじめに,目的】</p><p>これまでわれわれは,骨格筋の不動によって惹起される筋性拘縮の主要な病態はコラーゲンの増生に伴う線維化であり,その発生メカニズムには筋核のアポトーシスを契機としたマクロファージの集積ならびにこれを発端とした筋線維萎縮の発生が関与することを明らかにしてきた.つまり,このメカニズムを踏まえ筋性拘縮の予防戦略を考えると,筋線維萎縮の発生を抑止できる積極的な筋収縮負荷が不可欠といえ,骨格筋に対する電気刺激療法は有用な方法と思われる.そして,最近は下肢の多くの骨格筋を同時に刺激できるベルト電極式骨格筋電気刺激法(Belt electrode-skeletal muscle electrical stimulation;B-SES)が開発されており,従来の方法より廃用性筋萎縮の予防・改善効果が高いと報告されている.そこで,本研究では動物実験用B-SESを用い,不動後早期からの筋収縮負荷が線維化の発生を抑制し,筋性拘縮の予防戦略として有用かを検討した.</p><p>【方法】</p><p>実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット16匹を用い,1)無処置の対照群(n = 4),2)ギプスを用いて両側足関節を最大底屈位で2週間不動化する不動群(n = 6),3)不動の過程で動物実験用B-SESを用い,後肢骨格筋に筋収縮を負荷する刺激群(n = 6)に振り分けた.刺激群の各ラットに対しては大腿近位部と下腿遠位部にB-SES電極を巻き,後肢骨格筋に強縮を誘発する目的で刺激周波数50Hz,パルス幅250µsec,刺激強度4.71 ± 0.32mAの条件で,1日2回,1回あたり20分間(6回/週),延べ2週間,電気刺激を行った.なお,本実験に先立ち正常ラットを用いて予備実験を行い,上記の条件で刺激強度を漸増させ,足関節中間位での最大等尺性筋力を測定した.そして,最大筋力の60%の筋力を発揮する刺激強度を求め,これを本実験の刺激強度に採用した.実験期間中は1週毎に麻酔下で各ラットの足関節背屈可動域を測定し,実験期間終了後は両側ヒラメ筋を採取した.そして,右側試料はその凍結横断切片に対してH&E染色を施し,各筋につき100本以上の筋線維横断面積を計測した.一方,左側試料は生化学的検索に供し,コラーゲン特有の構成アミノ酸であるヒドロキシプロリン含有量を定量した.</p><p>【結果】</p><p> 足関節背屈可動域と筋線維横断面積は不動群,刺激群とも対照群より有意に低値であったが,この2群間では刺激群が不動群より有意に高値を示した.また,ヒドロキシプロリン含有量は不動群が対照群より有意に高値であったが,刺激群は対照群と有意差を認めなかった.</p><p>【考察】</p><p> 今回の結果から,刺激群には筋線維萎縮の進行抑制効果ならびに骨格筋の線維化の発生抑制効果が認められ,このことが足関節背屈可動域制限,すなわち筋性拘縮の進行抑制効果に影響していると推察される. </p><p>【結論】</p><p> 不動後早期からの筋収縮負荷は線維化の発生を抑制し,筋性拘縮の予防戦略として有用であることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本実験は長崎大学動物実験委員会で承認を受けた後,同委員会が定める動物実験指針に準じ,長崎大学先導生命科学研究支援センター・動物実験施設で実施した.</p>
著者
日岡 明美 沖田 学 片岡 保憲 炭岡 良 横野 志帆 海部 忍 北中 雄二 土橋 孝之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.BbPI2175, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 共感覚は,一種類の感覚情報によって他の感覚が引き起こされる現象である.つまり,共感覚は複数の感覚モダリティにまたがって脳の中で無関係に思える抽象的な情報を結びつける能力である(Ramachandran,2005).この共感覚を利用した抽象概念の照合は,回答や判断を明確に伝えることのできない知的機能が低下した脳卒中片麻痺患者の意思決定を表現する手がかりとなる可能性が推察されている(日岡,2010).また,言語発達の遅延や他人と感情を共有して,意思疎通を図ることが困難な症状を呈する自閉症児においても抽象概念の照合が意思決定を表現する手がかりとなる可能性が考えられる.本研究目的は脳卒中片麻痺患者および自閉症児に共感覚を問う課題を実施し,抽象概念を照合する能力と説明する能力を知的機能という視点から分析することである.【方法】 脳卒中片麻痺患者30名(男性8名,女性22名,平均年齢76.3±11.2歳)および自閉症児14名(男児10名,女児4名,平均年齢8.5±1.9歳)を対象にブーバ/キキ実験を実施した.手順として,二つの異なる図形(でこぼこした図形,ぎざぎざの図形)を提示し,「この形は,一つは『ブーバ』,もう一つは『キキ』と言います.どちらが『ブーバ』でどちら『キキ』ですか.」と指示し,判断を求めた.回答が得られた後に,「ブーバ」と判断した理由(以下,質問1),「キキ」と判断した理由(以下,質問2)についてのインタビューを実施した.また,知的機能評価として,レーヴン色彩マトリックス検査(以下,RCPM)を実施した.質問1,2におけるインタビュー結果から両方の説明が可能であった群(以下,A群)と両方または片方の説明が不可能であった群(以下,B群)に分類した.脳卒中片麻痺患者と自閉症児のそれぞれ2群間のRCPM得点をMann-WhitneyのU検定を用いて比較分析した.なお,有意水準は5%未満とした.【説明と同意】 すべての対象者および保護者に本研究目的の説明を行い,同意を得た.【結果】 ブーバ/キキ実験において,でこぼこした図形が「ブーバ」,ぎざぎざの図形が「キキ」と判断した脳卒中片麻痺患者は30名中29名,自閉症児は14名中13名であった.RCPMの平均値および標準偏差は脳卒中片麻痺患者では16.3±8.6点(最小値0,最大値30点)であり,自閉症児では24.5±9.3点(最小値は0,最大値34点)であった.2群の内訳は,脳卒中片麻痺患者ではA群16名,B群13名,自閉症児ではA群5名,B群8名であった.脳卒中片麻痺患者の2群間のRCPM得点の中央値の比較では,A群は19点,B群は14点(p<0.05)であり,A群がB群に比べ有意に得点が高かった.自閉症児の2群間のRCPM得点の中央値の比較では,A群は28点,B群は27点であり,有意差は認められなかった.【考察】 本研究において,でこぼこした図形が「ブーバ」,ぎざぎざの図形が「キキ」と判断した対象者が殆どであったことから,脳卒中片麻痺患者および自閉症児は抽象概念を照合する能力が保たれているということが明らかになった.また,抽象概念を照合する能力が保たれている対象者のなかに知的機能が高い者と低い者が存在していた.この結果は脳卒中片麻痺患者および自閉症児において,抽象概念を照合する能力と知的機能は乖離した能力であるということが示唆された.さらに,抽象概念の照合を説明できたA群と説明できなかったB群をRCPMの得点で比較した際,脳卒中片麻痺患者ではA群はB群に比べて知的機能が高かったが,自閉症児では差を認めなかった.このことは,抽象概念の照合を説明する能力は,脳卒中片麻痺患者では知的機能に依存しているが,自閉症児では非言語性の知的機能の視点からは測ることのできない能力であることが推測された.本来,図形と音との抽象概念の照合は言語の進化に重要であり,人の発達とともに備わってきたものであると推測されている(Ramachandran,2001).本研究結果から,脳卒中片麻痺患者のように,脳機能になんらかの破綻が生じても一度備わった抽象概念を照合する能力は残存している可能性が推察された.加えて,自閉症児のように,言語発達の遅延や意思疎通が困難な症状があり,脳機能の発達過程にあるものでも,抽象概念を照合する能力は形成されている可能性が推察された.【理学療法研究としての意義】 本研究において,対象者の殆どが抽象概念を照合する能力が保たれていた.よって,意思疎通が困難であり,知的機能が低下した脳卒中片麻痺患者および自閉症児に対し,抽象概念を用いた手法が治療介入の手がかりになり得る可能性が示唆された.
著者
沖田 行司
出版者
渋沢栄一記念財団
雑誌
青淵 (ISSN:09123210)
巻号頁・発行日
no.852, pp.17-19, 2020-03
著者
関野 有紀 濵上 陽平 中願寺 風香 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100383, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】近年,ギプス固定などによる四肢の一部の不動が慢性痛の発生因子になることが指摘されており,我々の先行研究においても,ラット足関節を8 週間ギプスで不動化すると不動解除後も痛覚過敏の状態が継続し,慢性痛を呈する可能性が示唆されている。一方,不動期間が4 週間の場合は痛覚過敏の発生は一過性であり,加えて不動4 週目の足底皮膚において表皮の菲薄化や末梢神経密度の増加が生じていたことから,痛みの発生原因は中枢神経系の変化というよりはむしろ末梢組織の変化にあると推測している。我々は,この末梢組織由来の痛みの発生メカニズムについて解析を進め,これまでに末梢神経密度の増加には表皮の構成細胞であるケラチノサイトが産生する神経成長因子(NGF)の増加が関与する可能性を報告した。しかし,不動による皮膚の組織学的変化がどの時期から進行するのかは不明のままであり,課題が残されていた。加えて,近年の研究によれば侵害刺激受容体が神経細胞のみならずケラチノサイトにおいても発現・機能していることが明らかとなっており,末梢における痛覚伝達系への関与が注目されている。そこで,本研究では侵害刺激受容の中心的分子であるTRPV1 およびP2X3の発現変化を含む皮膚の組織学的変化の経時的推移を明らかにすることを目的とした。【方法】実験動物には8 週齢のWistar系雄性ラット60 匹を用い,不動期間を1・2・4 週に設定した不動群(n = 30)とそれぞれに週齢を合わせた対照群(n = 30)に振り分けた。不動群は右足関節を最大底屈位でギプス固定した。不動期間中は,週1 回の頻度で機械的刺激に対する痛み反応をvon Frey filament(VFF)を用いて評価し,具体的には足底部にVFFで刺激(4,15 g ;各10 回)を加えた際の逃避反応をカウントした。また,熱刺激に対する痛み反応の評価として足背部の熱痛覚閾値温度を測定した。各不動期間終了後,ラットを4%パラホルムアルデヒドで灌流固定し,足底部中央の皮膚組織を採取した。組織試料は急速凍結させた後に凍結切片とし,以下の検索に供した。まず,組織学的解析としてHE染色を施した切片を用いて表皮厚を計測した。次に,免疫組織化学的解析として末梢神経(A線維,C線維)をABC法に従って可視化し,真皮上層に分布する末梢神経密度を半定量化した。さらに,NGF,TRPV1 およびP2X3に対する蛍光免疫染色を行い,表皮層における発現強度を半定量化した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は長崎大学動物実験委員会が定める動物実験指針に基づき,長崎大学先導生命体研究支援センター・動物実験施設において実施した。【結果】不動群のVFF刺激に対する逃避反応回数は,4 gでは不動2 週より,15 gでは不動1 週より対照群に比べ有意に高値を示し,また,不動群の熱痛覚閾値温度は不動1 週より対照群に比べ有意に低値を示し,これらの行動学的変化は不動期間に準拠して顕著になった。足底皮膚を解析した結果,不動群の表皮厚は不動1 週より対照群に比べ有意に低値を示し, A 線維の末梢神経密度は不動1 週より,C線維のそれは不動2 週より対照群に比べ有意に高値を示した。また,TRPV1 およびP2X3発現量はともに不動2 週より不動群が対照群に比べ有意に高値を示し,これらの変化はすべて不動期間に準拠して顕著になった。一方,NGF発現量は不動1 週より不動群が対照群に比べ有意に高値を示したが,その発現レベルは不動期間を通じて一定であった。【考察】今回の結果から,表皮の菲薄化,末梢神経密度の増加,ケラチノサイトに発現する侵害刺激受容体の発現増強は不動1 〜2 週という早期から発生し,その程度は不動期間に準拠して顕著になることが明らかとなった。また,それらの推移は痛みの行動学的変化と同様であったことから, 不動に伴う痛みの発生に皮膚の組織学的変化が深く関与することが示唆された。NGFは神経成長因子としての役割に加え,一次知覚神経に発現するTRPV1 やP2X3などの発現あるいは機能増強を誘導する内因性メディエーターとしての機能を持つ。NGFの増加自体が痛みの直接的な原因になっていることも十分に考えられ,今後さらに検討を進めたい。【理学療法学研究としての意義】本研究は,不動に伴う痛み発生メカニズムにおいて皮膚組織がその責任組織の一端を担っている可能性を提示した。われわれ理学療法士は皮膚組織を含む末梢組織に対して直接的に介入可能であることから,本研究の進展は,不動に伴う痛みに対する理学療法学的な介入方法の開発につながると期待でき,理学療法学研究として十分な意義がある。
著者
関野 有紀 濵上 陽平 田中 陽理 坂本 淳哉 中野 治郎 沖田 実
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ae0045, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 不動によって痛みが発生することはヒトおよび実験動物モデルを用いた報告等により周知の事実となりつつある.また,慢性痛の病態のひとつである複合性局所疼痛症候群(CRPS)に関する国際疼痛学会(IASP)の診断基準には患肢の不動の有無が掲げられている.所属研究室の先行研究により,ラット足関節不動化モデルにおいて不動期間が8週間におよんだ場合,中枢神経系の感作を含む慢性痛を呈するが,不動期間が4週間の場合は痛覚過敏のみで,中枢神経系の感作は認められないことが明らかとなっている.このことから,不動に伴う初期の痛みの原因は皮膚,末梢神経を含む末梢組織にあると推測され,実際に,ラット足関節不動化モデルの足底において表皮の菲薄化や末梢神経密度の増加が認められたことをこれまでに報告した.しかし,これらの皮膚組織の変化と不動に伴う痛み発生との関連性は未だ明らかにできていない.よって,本研究の目的は皮膚組織に着目し,その変調をさらに詳細に解析することにより,不動に伴う痛み発生メカニズムを探索することである.【方法】 実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット20匹を用い,4週間通常飼育する対照群(n=10),右側足関節を最大底屈位にて4週間ギプス固定する不動群(n=10)に振り分けた.実験期間中、機械的刺激に対する痛みの指標としてvon Frey filament testを実施し,足底部にfilamentで刺激(4,15g ;各10回)を加えた際の逃避反応をカウントした.また,熱刺激に対する痛みの指標として足背部の熱痛覚閾値温度を測定した.すべての測定とも週1回の頻度で経時的に行い,測定は覚醒下でギプスを除去して行った.実験期間終了後,ラットを4%パラホルムアルデヒドで灌流固定し,足底部中央の皮膚組織を採取した.組織試料は急速凍結させた後に凍結切片とし,以下の検索に供した.まず,HE染色を施した切片を用いて表皮厚を計測した.次に,免疫組織化学的染色により末梢神経(A線維,C線維)を可視化し,表皮層下におけるそれぞれの末梢神経密度を半定量化した.さらに,Nerve growth factor(NGF)に対する蛍光免疫染色を行い,表皮層の染色輝度を測定することにより表皮におけるNGF産生を半定量化した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は長崎大学動物実験委員会が定める動物実験指針に基づき,長崎大学先導生命体研究支援センター・動物実験施設において実施した.【結果】 不動を開始して1~2週目から,不動群において4g,15gのvon Frey filament刺激に対する逃避反応回数は増加し,また,足背部の熱痛覚閾値温度は低下した.そして,これらの変化は不動期間に準拠して顕著になり,不動2週目以降のすべての測定において対照群との有意差を認めた.次に,不動4週目の足底皮膚を組織学的に観察した結果,不動群において表皮の菲薄化,角質層の乱れが観察され,表皮厚は対照群のそれより有意に低値を示した.また,不動群の末梢神経密度はA線維,C線維ともに対照群のそれより有意に高値を示し,神経線維が表皮層へ進入する所見が観察された.さらに,不動群の表皮におけるNGF産生は対照群のそれより有意に高値を示した.【考察】 本研究では,4週間の不動に伴い機械的刺激に対する痛覚過敏および熱痛覚閾値の低下が観察され,この結果は先行研究とほぼ一致する.また,足底皮膚においては表皮の菲薄化や角質層の乱れ,表皮に分布する末梢神経の増加が観察された.先行研究によれば,末梢神経の増加は痛覚閾値に関与するとされており,不動に伴う痛覚閾値の低下の一因となっている可能性が高い.一方,皮膚組織の末梢神経の分布や密度に対しては,表皮の主要構成細胞であるケラチノサイトから産生されるNGFが関与するとされている.よって,不動群に認められた末梢神経密度の増加は,ケラチノサイト由来のNGF産生の増加に起因する変化であると推察される.加えて,NGFは痛みの内因性メディエーターとしての機能も知られており,NGF産生の増加自体が痛みの直接的な原因になっていることも十分に考えられる.以上のことから,不動に伴う痛みの発生には皮膚の組織学的変化が深く関与していると推測でき,今後さらに検討を進める必要がある.【理学療法学研究としての意義】 本研究は,不動に伴う痛み発生メカニズムに皮膚組織がその責任組織の一端を担っている可能性を提示している.われわれ理学療法士は皮膚組織を含む末梢組織に対して直接的に介入可能であることから,本研究の進展は,不動に伴う痛みに対する理学療法学的な介入方法の開発につながると期待できる.したがって,本研究は理学療法学研究として十分な意義があると考える.
著者
野口 哲央 花園 忠相 森 健治 沖田 幸祐 坂井田 功
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.241-246, 2013-11-01 (Released:2014-02-13)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

症例は65歳の女性で,下腹部痛を主訴に受診し,腹部CTで内臓動脈瘤破裂による腹腔内出血と診断された.血管造影検査では広範囲にわたって血管径の不整や動脈瘤が認められ,回結腸動脈瘤が出血源と考えられた.動脈塞栓術にて症状は改善した.血管造影所見から分節性動脈中膜融解,segmental arterial mediolysis(以下,SAM)と診断された.TAE後1年10ヵ月のCTでは,未治療の動脈瘤と血管狭窄は消失していた.SAMは比較的稀な疾患であり,長期予後の報告もないため自然予後を理解する上で興味ある症例と思われたので,報告する.
著者
日下部 明彦 野里 洵子 平野 和恵 齋藤 直裕 池永 恵子 櫁柑 富貴子 結束 貴臣 松浦 哲也 吉見 明香 内藤 明美 沖田 将人 稲森 正彦 山本 裕司 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.906-910, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
13

死亡診断時の医師の立ち居振る舞いは,その後の遺族の悲嘆に大きく影響を及ぼすと考えられているが,現在の医学教育プログラムのなかには,死亡診断時についての教育内容はほとんど含まれていない.われわれは遺族アンケートを基に「地域の多職種でつくった死亡診断時の医師の立ち振る舞いについてのガイドブック」(以下ガイドブック)を作成した.本ガイドブックを用い,横浜市立大学医学部4年次生に対し授業を行い,授業前後で死亡診断時の困難感,自己実践の可能性を評価するアンケート調査を行い解析した.有効回答を得た39名において死亡確認についての困難感についての項目は,「死亡確認の具体的な方法」が最も高く,89.5%であった.しかし,授業前後では,死亡診断時における自己実践を評価する項目で有意な改善がみられた.死亡診断時の医師の立ち居振る舞いについての卒前教育にわれわれが作成したガイドブックは有効な可能性が示唆された.
著者
沖田 ちづる
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.49-54, 2005

本研究では、福井県嶺北地方の九頭竜川流域を研究対象として、官民協働による流域環境保全活動のあり方について考えていくことを目的とする。九頭竜川流域全体を視野に入れた、住民主導の保全活動であるNPO法人ドラゴンリバー交流会では、これまで自然環境保全を中心としてきたが、2004年7月、実際に福井豪雨の影響を受けたことによって、官民で水害対策を見直す動きが強まるようになってきた。なお、九頭竜川流域では足羽川ダム建設問題について賛否両論が繰り返されてきたが、福井豪雨後は足羽川ダム建設を推進する方向に向かっている。今後の課題としては、当交流会などの官民協働の場を活かし、流域内での多様化した問題について、行政と地域住民との徹底した話し合いにより、地域に対応した検討が必要である。