- 著者
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清水 泰雄
- 出版者
- The Showa University Society
- 雑誌
- 昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.1, pp.71-83, 1989
〈目的〉筋運動には従来より等尺性運動と等張性運動があったが, 最近, これらの運動の長所を取り入れ, 欠点を改善した等運動がスポーツ医学やリハビリテーション医学の分野で行われるようになったが臨床的にはいまだ不明な点が多い.そこで, 等運動機械により筋力測定を行い, 一流スポーツ選手の筋力特性を種目別に検討した.また, 一流スポーツ選手と一般人の膝関節損傷後のリハビリテーションに等運動訓練を行うと同時に筋力値, 仕事量, トルク加速エネルギー等の筋力要素などから筋力回復過程, スポーツやADLへの復帰について, 客観的に評価しうるか検討した.〈対象〉 (1) 各種目陸上競技選手39名 (2) 一般膝関節損傷例5名 (3) 一流スキー選手膝関節損傷9名である.〈方法〉等運動機器CYBEX II (サイベックス) 及びCYBEX data reduction systemを用いて膝関節運動の筋力測定を行った.〈結果〉 (1) 陸上競技選手の測定, 分析で, 膝伸展最大筋力 (Mean±SD) (FT-LBS) において低速群では投擲 (216.3±48.0) , 短距離 (178.5±36.7) , 跳躍 (174.6±35.0) , 中距離 (140.6±8.4) , 長距離 (132.9±18.4) で瞬発力を要する種目ほど高い値を示した.筋仕事量では高速群ほど高く, 40RPMで各種目の最高値を示し, 投擲 (612.6±192.1) が最も高く, 長距離 (292.8±34.1) が最も低かった.また, 筋仕事量耐久率 (30RPMにおいて) では遅筋線維優位型の長距離, 中距離が高く, 速筋線維優位型の短距離, 跳躍, 投擲では50%以下と低い値を示し, スポーツ医学への応用が可能であると考えられた. (2) 一般膝関節損傷例では膝伸展筋力, 屈曲筋力の最大筋が絶対値は訓練日数とともに直線的, 対数的増加を示し, 筋仕事量, power enduranceの要素も, 筋断面積の増加と単位断面積あたりの筋出力の増加とともに向上していた.また, 患側最大筋力が健側に対して30~50%に達したところでADLへの復帰も可能ではないかと考えられた. (3) スポーツ選手のリハビリテーションにおいては, 筋力絶対値の回復より健側に対する患側の筋力回復率を指標とした方が有効であり5RPM, 30RPMの伸展筋力回復率においては有意水準0.01で訓練日数と直線的増加を示したが, 5RPM, 30RPMの屈曲筋力回復率は訓練日数と相関はみられなかった.スキー選手の現役復帰には回復率が70%に達することが重要であり, また, 瞬発力を要するスキー選手の回復にはピークトルク加速エネルギー (PK-TAE) などの回復も重要な指標であると考えられた.以上よりCYBEX IIによる筋力測定からスポーツ医学, リハビリテーション医学への応用が可能であることが示唆された.