著者
田中 裕
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.177-183, 1990-03-25 (Released:2010-01-20)
参考文献数
14

1982年のアスペによるベルの定理の実験的検証は, 遅延モードを採用する事によって量子力学的相関が光速度以下の因果作用によって引き起こされたものでない事を示す点で画期的なものであったが(1), この検証実験に対するベル自身のコメント (1986) は「何かがベールの陰で光速度以上の速さで伝達されている」こと, 即ち遠隔作用の実在性と「相対性理論をアインシュタイン以前の問題状況に戻す必要性」即ち「ローレンツ不変性を持つ現象の背後にローレンツ不変性を持たない深層レベルがあり, このレベルでは絶対的な同時性と絶対的な因果の順序があると想定する」ことによって量子論的遠距離相関 (EPR相関) を説明する可能性に言及している(2)。またエーベルハード (1989) のEPR問題の歴史的回顧と様々な解釈の包括的要約も, 冒頭に「光速度を越える遠隔作用は (アインシュタインにとって受入れがたい観念であったが) 今日では様々な実験結果と理論的な分析によって実在的な効果である可能性が強い」という視点を提示し, この遠隔作用が, いかなる意味で「実在的」であるかをめぐる様々な解釈の違いを分析している。量子力学を「観測者に言及せずに」実在論的に解釈するポパー (1982) は, 「遠隔作用があるならば何か絶対空間のようなものがある」ことを理由に「量子論に絶対的同時性を導入すべき理論的理由があるとするならば, 我々はローレンツの解釈に戻らなければないだろう」と言っている。
著者
山内 直人 赤井 伸郎 石田 祐 稲葉 陽二 大野 ゆう子 金谷 信子 田中 敬文 樽見 弘紀 辻 正次 西出 優子 松永 佳甫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」の定量的把握および統計的分析からその経済社会的効果を分析し、政策的意義について検討・評価することを目的としたものである。 研究の成果を通じて、抽象的概念であるソーシャル・キャピタルの定量的把握に関する手法を開発、新しいソーシャル・キャピタル指標を提示し、それを用いた実証分析を行うことが可能となった。また、これまで十分に解明されてこなかったソーシャル・キャピタルの日本的特徴を把握し、多様な政策対象とソーシャル・キャピタルとの関係性に関する理論的、実証的示唆を得るとともに、ソーシャル・キャピタルの社会的意義や政策的インプリケーションに関する検討課題や論点を整理した。
著者
田中 英夫 野上 浩志 中川 秀和 蓮尾 聖子
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.929-933, 2002-09-15

<b>目的</b> 全国の薬局,薬店で喫煙者の鎮咳,去痰剤として販売されている紙巻きたばこ型薬用吸煙剤(ネオシーダー,製造:アンターク本舗,千葉県,以下 NC と表す)の医薬品としての妥当性を,製品のニコチン含有量と,これを試行した者および連用者の尿中コチニン量から評価検討した。<br/><b>方法 1</b> NC および,コントロールとしてマイルドセブンエクストラライト(以下 MSE と表す),マイルドセブンスーパーライト(以下 MSS と表す),セブンスター(以下 SS と表す)の葉0.25 g を蒸留水10 m<i>l</i>で 5 分間振とうし,遠心分離後に抽出液を発色反応させ,高速液体クロマトグラフィーで分析した。<br/><b>方法 2</b> 喫煙中であった32歳医師を被験者とし自記式問診とともに,禁煙時,NC 使用時,禁煙継続かつ NC 不使用時の 3 点で尿中コチニン量を測定した。<br/><b>方法 3</b> 外来患者の中でタバコの代替物として NC を継続使用していた 2 人の連用者を見出し,自記式問診と採尿を実施し,尿中コチニン量を測定した。<br/><b>成績 1</b> 製品 3 cm(実際の 1 本当たり消費量)当たりの平均ニコチン含有量は,NC; 0.79 mg (n=6), MSE; 5.04 mg (n=2), MSS; 4.91 mg (n=2), SS; 5.55 mg (n=2)。<br/><b>成績 2</b> 被験者の喫煙中の Fagerstrom Test for Nicotine Dependence は 3 点。禁煙の開始から最終回の採尿までの期間の受動喫煙はなし。尿中コチニン量は,禁煙開始 7 日目10.0 ng/m<i>l</i>。NC を 3 日間で17本使用後47.2 ng/m<i>l</i>,禁煙継続かつ NC 不使用 3 日目8.4 ng/m<i>l</i>。<br/><b>成績 3</b> 53歳男性:喫煙当時の FTND は 6 点。調査期間中の受動喫煙はなし。NC を 1 日平均40本連用中の尿中コチニン量は937 ng/m<i>l</i>。75歳女性:喫煙当時の FTND は 7 点。NC を 1 日27本連用中の尿中コチニン量は2724 ng/m<i>l</i>。NC 中止96時間後では27.7 ng/m<i>l</i>。<br/><b>結論</b> NC は非麻薬性で習慣性がみられないと説明されているものの,ニコチンを含有していること,使用により本剤に含有するニコチンが体内に移行することがわかった。また,本剤の使用によってニコチンへの依存性が生じ,長期連用を引き起こしていたとみられる 2 例を報告した。
著者
廣瀬 恒平 田中 大雄 千葉 剛 嶋崎 達也 鷲谷 浩輔 千坂 大二朗
出版者
The Japan Journal of Coaching Studies
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.189-202, 2019-03-20 (Released:2019-09-02)
参考文献数
16

The purpose of this study was to clarify effective tactics of attack on the sport of rugby sevens using notational analysis of game performance on the menʼs rugby sevens at Olympic games 2016. The main results of this study were as follows; 1) The rate of attack to the open-side and reverse-direction are higher. 2) To breakthrough the defence-line is more difficult than the gain-line. 3) In the number of passes before contact, the rate of breakthrough the defence-line unused pass were the lowest and the rate of unused pass in the Top6 teams was lower than the bottom6 teams and therefore the attack option using pass is effective. 4) In the attack options, the rate of breakthrough the defence-line under the overlap situation is the highest and therefore the attack option to carry the ball at vacant space is effective. 5) In the starting points in attack, the rate of breakthrough the defence-line in attack from turn-over and therefore turn-over is one of the effective starting points.
著者
新谷 俊一 田中 和広
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.49-58, 2005-05-31
参考文献数
11
被引用文献数
15

We found and described two active mud volcanoes (abbr.: MV), i.e., Gamo MV and Murono MV, and one extinct mud volcano (Shosenji MV) in Tokamachi City, Niigata Prefecture. Active MVs are distributed along the wing of an anticline axis. High saline groundwater, inflammable gas and clay less than 2μm in diameter are erupted from both active MVs. Shosenji MV is exposed near the Gamo MV at a road construction site. Horizontal and vertical structures of the extinct mud volcano, consisting of mud breccia and scaly network clay can be observed. The activity of mud volcano is closely related to the formation of swelling mudstone in the Nabedachiyama Tunnel excavated at the depth of 150m under Gamo MV and Shosenji MV.
著者
田中 乙菜
出版者
一橋大学学生支援センター学生相談室
雑誌
一橋大学学生相談室年報
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-10, 2020-12

本研究は、新型コロナウイルス感染症拡大に際し、学生相談室において継続的電話相談に従事した相談員にインタビューを実施し、その体験を明らかにした。インタビューの結果、電話相談がもつ面接の構造の難しさがあること、またその一方で、継続的に電話相談を実施することで、面接構造に変化が生じ、相談内容や、相談者・相談員の関係性が、対面相談時と同様になっていくこと等が示された。これらの結果をもとに、継続的電話相談の構造や意義、ならびに継続的電話相談が相談員に与えた影響について考察を深め、新型コロナ収束後における継続的電話相談のあり方について検討を行った。
著者
富樫 均 田中 義文 興津 昌宏
出版者
長野県自然保護研究所
雑誌
長野県自然保護研究所紀要 (ISSN:13440780)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-16, 2004
被引用文献数
1

長野市飯綱高原に位置する逆谷地湿原で得られたボーリングコアを試料として、完新世の堆積物の花粉分析、微粒炭分析、14C年代測定を行い、里山の環境変遷を考察した。その結果によれば、飯綱高原においては、約3000年前の縄文時代の後期から火入れをともなう人間活動が活発になり、森林植生への影響が顕著になった。また、約700年前の中世の時代には森林破壊が極大期に達し、森林が減少し草地が拡大した。その後、約400年前以降の近世になって火入れ行為が抑制され、森林が回復し、アカマツ林やスギ林が拡大した。このような人と自然の関わりと変遷の歴史は、現代の里山問題の前史と位置づけられ、里山という場への新たな認識をあたえるものである。
著者
石川 淑 田中 飛鳥 宮崎 敏明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1167-1176, 2014-03-15

Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)は最も有名なシーケンスアライメントツールの1つである.シーケンスアライメントとはタンパク質(またはDNA)データベースから検索対象となるタンパク質(またはDNA)配列を列挙することであり,配列どうしの類似部分検索のために使用される.シーケンスアライメントは,生物学上の進化や遺伝子系図を調べるうえで重要であることから,バイオインフォマティクス分野では欠かせない情報である.そのため,従来からハードウェアを用いて,BLASTを高速化する試みがなされてきた.BLASTは前処理,seeding,ungapped extension,gapped extension,traceback処理から構成される.従来のハードウェア化は,gapped extension処理が中心であり,他の部分は,ホストマシン上で処理される形態であった.本論文では,前処理,traceback処理を含むすべてのBLAST処理をハードウェア化し,ホストマシン上のソフトウェア処理との処理速度のアンバランスを解消することによりBLAST全体の高速化を行う.提案回路を廉価なFPGA(Field Programmable Gate Array)に実装した結果,ソフトウェア実装に比べ約790倍の高速化を達成した.また,gapped extension処理とtraceback処理に対してさらなる高速化手法を提案し,840倍以上の高速化を実現した.Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) is one of the most popular sequence alignment tools. BLAST consists of preprocessing, seeding, ungapped extension, gapped extension and traceback process. To accelerate BLAST, many hardware accelerators have been proposed. However, their acceleration target is mainly the gapped extension, and other parts are still realized as software that runs on a host machine. In this paper, we propose an accelerator for BLAST, which realizes all processing parts including the preprocessing and the traceback part as hardware. It could avoid the unbalanced processing speed between software and hardware. We also propose two performance improvement techniques for the gapped extension block. An inexpensive FPGA (field programmable gate array) implementation shows that our hardware accelerator performs 791 times faster than a software BLAST, with reasonable hardware cost. Moreover, by applying the performance improvement techniques, the performance of the accelerator becomes more than 840 times faster than the software BLAST.
著者
津福 達二 田中 寿明 末吉 晋 田中 優一 森 直樹 藤田 博正 白水 和雄
出版者
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.1661-1665, 2007
被引用文献数
1

症例は39歳の男性で, 2004年1月, うつ病があり自殺企図にてウォッカを大量に飲用し, 高度の胸焼け, 嚥下障害を生じたため当院へ紹介となった. 食道潰瘍および食道狭窄を認め, 腐食性食道炎と診断した. 希死念慮が強かったため精神科に入院となり, 精神面の治療を行った. 2月, 狭窄症状が強くなったため, 空腸瘻を造設し, 全身状態の改善および精神状態の安定を待って, 7月, 非開胸食道抜去術, 胸骨後食道胃吻合術を行った. 経口摂取可能となり術後32日目に退院した. 高濃度のアルコール(ウォッカ)飲用による腐食性食道狭窄を経験したので報告する.
著者
田中 勝則 田山 淳 有村 達之
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.334-342, 2013-04-01

本研究では大学生における身体醜形懸念とアレキシサイミアの関連について検討することを目的とした.身体醜形障害およびアレキシサイミアのいずれにもネガティブ感情が関連していることから,身体醜形懸念,アレキシサイミア,ネガティブ感情についての関連を検討した.大学生328名(男性187名,女性141名)から得られたデータを分析した結果,ネガティブ感情を統制したうえでも,身体醜形懸念の下位因子はいずれもアレキシサイミアの下位因子である感情同定困難因子と有意な正の相関を示した.また,身体醜形懸念の下位因子の一つである容姿への否定的評価因子は,同様にネガティブ感情を統制した際に,アレキシサイミアの下位因子である感情伝達困難因子とも有意な正の相関を認めた.アレキシサイミアの外的志向因子は身体醜形懸念とは有意な相関を認めなかった.重回帰分析の結果,感情同定困難因子は身体醜形懸念のいずれの下位因子とも有意な正の関連を示した.一方,感情伝達困難因子および外的志向因子は身体醜形懸念のいずれの下位因子とも有意な関連を示さなかった.以上の結果より,アレキシサイミアの特徴の一つである感情同定困難が身体醜形懸念と正の関連を有している可能性が示唆された.
著者
中村 豪志 棚田 大輔 岡村 佐紀 乾 貴絵 土井 陽子 宮脇 弘樹 廣瀬 宗孝 木村 健 清水 忠 田中 明人 馬渕 美雪
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.231-239, 2021 (Released:2021-07-15)
参考文献数
28

メサドンは血中濃度の定常状態に日数を要し7日間増量できず,血中濃度や薬効の個人差も大きく早期効果判定が難しい.日本人がん患者の血中濃度等に関する報告はほとんどないため,血中濃度と疼痛スコア(NRS)の変動,血中濃度の変動因子等を検討した.血中濃度と相関があったのは体重換算投与量のみであった.有効例ではNRSは投与開始後7日目まで経時的に低下し,1日目から有意差が認められたが,無効例では3日目まで低下傾向にあったがそれ以降変化がなかった.血中濃度は有効例では7日目に110 ng/mlまで上昇し,無効例ではすでに3日目にその濃度に達し,血中濃度と薬効に相関はなかった.各個人の血中濃度は3日目以降緩やかな上昇あるいは低下傾向にあったが,1例のみ上昇し続けた.以上より,早期に効果判定できる可能性が示されたが,血中濃度が7日目まで上昇し続けた例もあったことから,早期の増量は慎重に行うべきと考えられた.
著者
田中靖久
雑誌
MB Orthop
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-20, 2003
被引用文献数
1
著者
田中 宏樹 神谷 淳文 大村 愛花 村松 久圭
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.141, no.7, pp.413-416, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)
参考文献数
2

1.はじめに広島県東広島市の郊外に目を引く巨大な工場がある。マイクロンの広島工場(図1)である。マイクロンはアメリカ アイダホ州ボイシに本社を置き,世界中でさまざまなメモリの生産を行っている世界有数の半導体メーカである(図2)(1)。特に広島工場はDRAM(Dynamic Random