著者
田中 隆則
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.382-386, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
9

近年,海外において小型モジュール炉(SMR)の開発に向けての様々な取り組みが行われている。特に,米国,英国,カナダにおいては,政府も積極的に開発を支援する動きがみられており,IAEAやOECD/NEAなどの国際機関においても,SMRに関連する報告書が取りまとめられるなど,国際的にSMRへの関心が高まっている。このようなSMRの特性を分析し,今後,世界のエネルギー需給に与える影響を考察する。
著者
田中 加代子
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
コミュニケーション障害学 (ISSN:13478451)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.139-142, 2004-08-25 (Released:2009-11-19)

夫の発症からの20年間に経験したさまざまな苦悩や仲間との出会い,それに夫と二人三脚で展開してきた失語症友の会や芸術グループの活動を,家族(配偶者)の立場から述べた.この経験から,家族にもこころの面でのサポートが必要であること,障害をもつ者は社会の一員としての役割をもって生活することが重要であることを指摘した.今後は,作業所の設立や会話パートナーの育成などの活動を展開し,「ことばのバリアフリー社会」を目指したいと,目標を述べた.
著者
荒木 一視 岩間 信之 楮原 京子 田中 耕市 中村 努 松多 信尚
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100001, 2015 (Released:2015-10-05)

災害に対する地理学からの貢献は少なくない。災害発生のメカニズムの解明や被災後の復旧・復興支援にも多くの地理学者が関わっている。そうした中で報告者らが着目したのは被災後の救援物資の輸送に関わる地理学的な貢献の可能性である。 救援物資の迅速かつ効果的な輸送は被害の拡大を食い止めるとともに,速やかな復旧・復興の上でも重要な意味を持っている。逆に物資の遅滞は被害の拡大を招く。たとえば,食料や医薬品の不足は被災者の抵抗力をそぎ,冬期の被災地の燃料や毛布の欠乏は深刻な打撃となる。また,夏期には食料の腐敗が早いなど,様々な問題が想定される。 ただし,被災地が局地的なスケールにとどまる場合には大きな問題として取り上げられることはなかった。物資は常に潤沢に提供され,逆に被災地の迷惑になるほどの救援物資の集中が,「第2の災害」と呼ばれることさえある。しかしながら,今般の東日本大震災は広域災害と救援物資輸送に関わる大きな問題点をさらすことになった。各地で寸断された輸送網は広域流通に依存する現代社会の弱点を露わにしたといってもよい。被災地で物資の受け取りに並ぶ被災者の長い列は記憶に新しいし,被災地でなくともサプライチェーンが断たれることによって長期間に渡って減産を余儀なくされた企業も少なくない。先の震災時に整然と列に並ぶ被災者を称えることよりも,その列をいかに短くするのかという取り組みが重要ではないか。広域災害時における被災地への救援物資輸送は,現代社会の抱える課題である。それは同時に今日ほど物資が広域に流通する中で初めて経験する大規模災害でもある。    遠からぬ将来に予想される南海トラフ地震もまた広い範囲に被害をもたらす広域災害となることが懸念される。東海から紀伊半島,四国南部から九州東部に甚大な被害が想定されているが,これら地域への救援物資の輸送に関わっては東日本大震災以上の困難が存在している。第1には交通網であり,第2には高齢化である。 交通網に関してであるが,東北地方の主要幹線(東北自動車道や東北本線)は内陸部を通っており,太平洋岸を襲った津波被害をおおむね回避しえた。この輸送ルート,あるいは日本海側からの迂回路が物資輸送上で大きな役割を果たしたといえる。しかしながら,南海トラフ地震の被災想定地域では,高速道路や鉄道の整備は東北地方に比べて貧弱である。また,現下の主要国道や鉄道もほとんどが海岸沿いのルートをとっている。昭和南海地震でも紀勢本線が寸断されたように,これらのルートが大きな被害を受ける可能性がある。また,瀬戸内海で山陽の幹線と切り離され,西南日本外帯の険しい山々をぬうルートも土砂災害などに対して脆弱である。こうした中で紀伊半島や四国南部への救援物資輸送は問題が無いといえるだろうか。 同時に西日本の高齢化は東日本・東北のそれよりも高い水準にある。それは被災者の災害に対する抵抗力の問題だけでなく,救援物資輸送にも少なからぬ影響を与える。過去の災害史をひもとくと,救援物資輸送で肩力輸送が大きな役割を果たしたことが読み取れる。こうした物資輸送に携われる労働力の供給においてもこれらの地域は脆弱性を有している。     以上のような状況を想定した時,南海トラフ地震をはじめ将来発生が予想される広域災害に対して,準備しなければならない対応策はまだまだ多いと考える。耐震工事や防波堤,避難路などの災害そのものに対する対策だけではなく,被災直後から始まる救援活動をいかに迅速かつ効率よく実施できるかということについてである。その際,被災地における必要な救援物資の種類と量を想定すること,救援物資輸送ルートの災害に対する脆弱性を評価し,適切な迂回路を設定すること,それに応じて集積した物資を被災地へ送付する前線拠点や後方支援拠点を適切な場所に設置すること等々,自然地理学,人文地理学の枠組みを超えて,地理学がこれまでの成果を踏まえた貢献ができる余地は大きいのではないか。議論を喚起したい。
著者
田中 彰吾
出版者
人体科学会
雑誌
人体科学 (ISSN:09182489)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.77-80, 2016 (Released:2018-03-01)
著者
田中 俊夫 長谷川 典子 小原 繁 佐竹 昌之
出版者
徳島大学
雑誌
徳島大学大学開放実践センター紀要 (ISSN:09158685)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.55-88, 2007-08

2005年12月11日に開催された第34回JALホノルルマラソンに参加したランナーに対してアンケート調査を実施した。調査対象者はホノルルマラソンに向けたトレーニングプログラムの参加者であり,207名から回答を得た。男女比は1:1で,平均年齢は46歳,半数がジョギング未経験者で7割がフルマラソン未経験であった。ジョギングの練習は平均で,週3回,約1時間行っていた。10月・11月の月間走行距離は150kmで,1回の練習における最長距離は26kmであった。ホノルルマラソンの最大の目標は「目標タイムで走る」が46%で最も多かった。ゴールタイムの平均は5時間29分で,半数が「思ったよりも走れなかった」と回答した。後半かなり遅くなった人,歩いた人,エネルギー切れを感じた人がそれぞれ約半数いた。太もも前側,太もも裏側,ふくらはぎ,足の裏,膝がレース中に痛みを感じた部位のトップ5であり,20kmを越えてから痛みを感じる割合が急増していた。レースの翌日に発熱や頭痛,下痢などの症状があった人はわずかであった。3分の2が太ももの前側に筋肉痛を感じていて,半数がふくらはぎに筋肉痛があった。また3分の1が膝の痛みを感じていた。長距離練習を実施したか否かがレース中の身体の痛みの出現の大きな要因となっていると考えられる。21.5km未満の練習しか行っていない群では,30km以上の練習を行った群に比べて,20kmを越えると太ももや膝,ふくらはぎ,足の裏などに痛みを感じる人が多かった。レース前日の睡眠時間の多少はレースのパフォーマンスに影響を与えないことが示された。
著者
小谷 瑛輔 田中 祐介 中野 綾子 若島 正 木村 政樹 矢口 貢大
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

近代において、将棋と文学は密接に関わりあいながら展開してきた。本研究では、その様相を具体的に解き明かし、データベースや論集にまとめた。一つ目は、小説という近代的な新しい概念が将棋の比喩によって誕生し、その後も文学の概念に影響を与えてきたこと。二つ目は、新聞・雑誌メディアの発展において将棋と文学がともに重要なコンテンツであったということ。三つ目は、文壇の人的ネットワークにおいて将棋が大きな役割を果たしてきたことである。
著者
冨田 宣光 皆川 鉄雄 大越 悠数 田中 崇裕
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会 2012年年会
巻号頁・発行日
pp.56, 2012 (Released:2014-06-10)

NordenskiöldineとはBrögger(1887)により報告されたCaとSn4+のBoratesである。三方晶系に属する。本邦では未報告であったが、Vonsenite, hulsiteなどのboratesの産出で知られる宮崎県千軒平スカルン鉱床から見出した。Nordenskiöldineは無色透明, 葉片状あるいは板状集合体を成している。得られた実験式は(Ca0.94Fe2+0.02)Sn1.02(BO3)2であり、ほぼ端成分組成である。
著者
安田 元樹 田中 文英
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.4O2OS3b01, 2018 (Released:2018-07-30)

社会的相互作用において人が無意識に他者のしぐさや癖、振る舞いを模倣し、また模倣された人は模倣した人に対して良印象や好感を持つことをカメレオン効果と呼ぶ。先行研究において、相手の発話をそのまま繰り返し発話する模倣によって、被模倣者に好印象を与えるカメレオン効果が得られたと報告されている。しかし、このような言語模倣が常に好印象を与えるとは限らないと我々は考える。また、この常に好印象につながるとは限らない模倣要素について調査された研究はない。 そこで本研究は、常に好印象につながるとは限らないと予想される模倣要素を調査することを目的とする。本稿では口癖に着目して、話者の発話をそのまま繰り返して模倣するロボットを模倣条件、話者の発話をそのまま繰り返して模倣しながら話者の口癖を強調するロボットを強調模倣条件とし、この2つの条件間のロボットに対して話者が抱いた印象の違いを調査した。 結果として模倣条件と強調模倣条件に有意な差は見られなかったが、口癖の強調は好印象につながらない可能性が示唆された。
著者
吉川 貴仁 山本 佐保 田中 繁宏 Takahito Yoshikawa Saho Yamamoto Shigehiro Tanaka
雑誌
健康運動科学 (ISSN:2185338X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-8, 2011-10-25

Appetite is a key factor for adjustment or disruption of energy balance(EB) in modern society. Contrary to expectation, energy expenditure(EE) caused by exercise does not increase the feeling of hunger or subsequent energy intake(EI), resulting in negative EB. The gut hormone family, known to play important roles in appetite regulation, is divided into 2 categories; orexigenic ghrelin and anorexigenic hormones, such as glucagon-like peptide-1(GLP-1) and peptide YY (PYY), all of which are released from the gastrointestinal tract in response to nutritional conditions. Recent findings have suggested that both single bouts of exercise and repeated habitual exercise modify the plasma levels of gut hormones related to appetite decrease. Appetite is regulated not only by the hypothalamus and brainstem, which receive neural and humoral signals arising peripherally from gastrointestinal organs and adipose tissues, such as the vagal nerves, leptin, and gut hormones, but also by higher brain centers, in which sensory, reward, and cognitive factors are involved. Most importantly, appetitive motivation generates real action, resulting in individual eating behavior. This review aims to highlight changes in appetite and EI caused by various types of exercise, the physiological characteristics and actions of various gut hormone family members, as well as the association of exercise with blood kinetics of the gut hormone family and its relevance in regulation of appetite and EB. In addition, future perspectives regarding this field of research are discussed.
著者
野口 洋平 上出 寛子 田中 文英
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.67-78, 2018-02-25 (Released:2018-02-25)
参考文献数
32

Along with the increase of nuclear families and the aging society, the social isolation of elderly people is becoming a big issue. Social robots are being regarded as suitable interfaces to support these elderly people to communicate with others (e.g. family members). In robot-mediated communication, it can be expected that asynchronous messaging functions will cope with differences in life styles between different generations, and that message inputs can be facilitated by natural language dialogue functions. Eliciting self-disclosure from elderly people by utilizing such robots is important to draw out social support from other people. In this study, the following three research questions were examined with the aim of exploring requirements for robots to encourage elderly people'’s self-disclosure. First, using a self-disclosure scale, we examined topics that were encouraged to disclose from elderly speakers by an intermediary robot. Secondly, we investigated the difference between social attributes (robot-specific traits and characteristics) of two kinds of robots with different behaviors. Last, we investigated the relationship between the robot’'s social attributes and self-disclosure from these two independent data.
著者
藤井 晶子 丸山 広達 柴 珠実 田中 久美子 小岡 亜希子 中村 五月 梶田 賢 江口 依里 友岡 清秀 谷川 武 斉藤 功 川村 良一 髙田 康徳 大澤 春彦 陶山 啓子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.300-307, 2020-07-25 (Released:2020-09-04)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目的:飲酒と認知症に関する海外の研究のメタ分析では,飲酒量が少量の場合には発症リスクが低く,大量の場合には高い結果が示されている.しかし,アルコール代謝や飲酒文化が異なるわが国のエビデンスは限定的である.そこで本研究では,平均飲酒量と認知症前段階の軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment,以下MCIと略)との関連について検討した.方法:2014~2017年に愛媛県東温市の地域住民に実施した疫学研究「東温スタディ」に参加した60~84歳の男性421名,女性700名を本研究の対象とした.質問調査によって飲酒頻度,酒の種類別飲酒量を把握し,1日あたりの平均飲酒量を推定した.またJapanese version of Montreal Cognitive Assessmentを実施し,26点未満をMCIと定義した.男女別に現在飲まない群に対する平均飲酒量について男性3群,女性2群に分け各群のMCIの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)をロジスティック回帰モデルにて算出した.さらに,ビール,日本酒,焼酎(原液),ワインについては,日本酒1合相当あたりの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)を算出した.結果:男性212名(50.4%),女性220名(31.4%)がMCIに判定された.男性では,現在飲まない群に比べて,1日平均2合以上の群のMCIの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は1.78(0.93~3.40,傾向性p=0.045)であったが,女性では有意な関連は認められなかった(「1合以上」群の多変量調整オッズ比:95%信頼区間=0.96:0.39~2.38,傾向性p=0.92).この関連は,高血圧者において明確に認められた.また酒の種類別の解析では,男性において焼酎(原液)については多変量調整オッズ比(95%信頼区間)が1.57(1.18~2.07)と有意に高かった.結論:男性において平均飲酒量が多いほどMCIのリスクが高い可能性が示された.この関連は高血圧者においてより明確であった.
著者
加辺 憲人 黒澤 和生 西田 裕介 岸田 あゆみ 小林 聖美 田中 淑子 牧迫 飛雄馬 増田 幸泰 渡辺 観世子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.199-204, 2002 (Released:2002-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
30 20

本研究の目的は,健常若年男性を対象に,水平面・垂直面での足趾が動的姿勢制御能に果たす役割と足趾把持筋力との関係を明らかにすることである。母趾,第2~5趾,全趾をそれぞれ免荷する足底板および足趾を免荷しない足底板を4種類作成し,前方Functional Reach時の足圧中心移動距離を測定した。また,垂直面における動的姿勢制御能の指標として,しゃがみ・立ちあがり動作時の重心動揺を測定した。その結果,水平面・垂直面ともに,母趾は偏位した体重心を支持する「支持作用」,第2~5趾は偏位した体重心を中心に戻す「中心に戻す作用」があり,水平面・垂直面での動的姿勢制御能において母趾・第2~5趾の役割を示唆する結果となった。足趾把持筋力は握力測定用の握力計を足趾用に改良し,母趾と第2~5趾とを分けて測定した。動的姿勢制御能と足趾把持筋力との関係を分析した結果,足趾把持筋力が動揺面積を減少させることも示唆され,足趾把持筋力の強弱が垂直面での動的姿勢制御能に関与し,足趾把持筋力強化により転倒の危険性を減少させる可能性があると考えられる。
著者
小枝 達也 関 あゆみ 田中 大介 内山 仁志
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.270-274, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
6

【目的】Response to intervention (RTI) の導入による特異的読字障害の早期発見と早期介入の可能性を検証する. 【方法】小学校1年生 (77名 ; 男児36名) を対象として, RTIを導入して特異的読字障害の早期発見と介入を行い, 3年生での予後を調査する. 【結果】1年生時に4名の音読困難のある児童が発見された. その4名に音読指導 (解読指導と語彙指導) を実施した結果, 3名は音読困難が軽快したが, 1名は特異的読字障害であると診断された. 3年生時には1年生時に発見された1名が特異的読字障害であり, 新たに診断に該当する児童はいなかった. 【結論】1年生時にRTIを導入することで, 特異的読字障害の早期発見と早期介入が可能になると考えられる.