著者
植竹 勝治 山田 佐代子 金子 一幸 藤森 亘 佐藤 礼一郎 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-5, 2014

都市部住宅地に生息するノラネコの健康状態および繁殖状況を確かめるため、我が国の代表的な大都市のひとつである横浜市の住宅地において疫学調査を実施した。調査では、繁殖データ(雌306匹)の収集と生化学および感染症に関する血液検査(雄雌計31匹)を行った。調査対象のネコは全て捕獲-不妊去勢-復帰プログラムの対象個体であった。不妊手術時に妊娠していた雌ネコの割合は4月に最高値(58.6%)を示し、3月から7月にかけて比較的高値を示した。平均一腹産子数(±標準偏差)は3.8±0.5匹であった。血液検査において対象個体の何頭かは基準値外の値を示したが、猫白血病および猫免疫不全の両ウイルス感染症は全頭陰性であった。これらの結果から、横浜市の住宅地におけるノラネコの血液性状および繁殖状況は、健康な家庭ネコに比較して、概ね良好であった。このことは、不妊去勢手術に基づくいわゆる「地域猫」活動を推進する上で参考になる。
著者
山本 哲也 長谷川 香子 小野田 誠 田中 啓一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.136, no.6, pp.905-911, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 7

Iguratimod (IGU), a disease-modifying antirheumatic drug launched in September 2012, has been reported to carry a risk of severe hemorrhages through a suspected interaction with warfarin (WF) in the all-case surveillance and early postmarketing-phase vigilance. To elucidate possible mechanisms of adverse interaction between IGU and WF, we analyzed the effects of IGU on the pharmacodynamics and pharmacokinetics of WF in rats. IGU was orally administered to male Wistar rats once daily for 5 d at 10 or 30 mg/kg in combination with WF at an oral dose of 0.25 mg/kg. Coadministration of IGU 30 mg/kg enhanced the anticoagulant activity of WF; prolonged blood coagulation time (prothrombin time and activated partial thromboplastin time) and decreased levels of vitamin K (VK)-dependent blood coagulation factors (II, VII, IX, and X) were observed. On the other hand, the pharmacokinetic parameters of WF including maximum plasma concentration (Cmax) and area under the plasma concentration-time curve from 0 to 24 h (AUC0-24 h) were not affected by the combination with IGU. IGU alone did not change blood coagulation time at doses up to 100 mg/kg, while VK-dependent blood coagulation factors decreased slightly at 30 and 100 mg/kg. These results suggest that the pharmacodynamic effect of IGU on VK-dependent blood coagulation factors is involved in the mechanism of drug-drug interaction of IGU with WF.
著者
田中 貴子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.1-11, 1991-06-10

網野善彦氏の『異形の王権』以降南北朝時代への関心が高まっているが、特に文観と立川流と呼ばれる真言密教の一派については、それぞれ邪教、妖僧として特別視される傾向があった。しかし、こうした文観像は、彼を非難するために[ダ]枳尼天法の行者の姿をモデルとして作り出されたものであり、その背後には[ダ]枳尼天法をめぐる「異類」と性の問題が存在している。本論は、『渓嵐拾葉集』の説話を通して、「異類」と性の力が中世王権の体制の中に組み込まれている様相を探るものである。
著者
川野 恭雅 仲村 佳彦 村井 映 田中 潤一 西田 武司 水沼 真理子 大田 大樹 石倉 宏恭
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.313-317, 2016-05-01 (Released:2016-05-02)
参考文献数
11

二次性腎性尿崩症の治療の一つにインドメタシンがある。今回,我々は原因薬剤としてリチウムが疑われた腎性尿崩症に対し,高用量のインドメタシンが奏功した症例を経験したので報告する。症例は35歳の女性,双極性障害に対し17年間リチウムを服用していた。フェノバルビタールおよびクロルプロマジンの急性中毒のため当院へ搬送となった後,第2病日より450 ml/hrを超える多尿と血清Na値上昇を来し,バソプレシンに無反応であったため,二次性腎性尿崩症と診断した。病歴より原因薬剤としてリチウムが疑われ,治療としてインドメタシン150 mg/dayを投与したが効果がなかった。多尿に伴いcreatinine clearanceが亢進してインドメタシンの薬物血中濃度が低下している可能性を考慮し,インドメタシンを225 mg/dayまで増量したところ,尿量減少および血清Na値の低下を認めた。高用量のインドメタシンは二次性腎性尿崩症に対し,有効な治療法である可能性が示唆された。
著者
中野 和久 松下 祥 齋藤 和義 山岡 邦宏 田中 良哉
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-6, 2009 (Released:2009-02-28)
参考文献数
16
被引用文献数
5 10

ドパミンD2様受容体の過剰反応が主原因とされる統合失調症においては,関節リウマチ(RA)の発症率が顕著に低下することが知られるが,その原因は不詳である.神経伝達物質はリンパ球表面の受容体を介して免疫修飾作用を発揮する.脳内の主要な神経伝達物質であるドパミンは,D1~D5のサブタイプを持つ7回膜貫通型のGPCRを介してシグナルを転送する.   我々はこれまでに樹状細胞(DC)でのドパミン合成・貯蔵とナイーブT細胞への放出機構,およびヘルパーT細胞サブセット分化への影響を解明した.RAにおいてもDCは関節内抗原をT細胞に提示し病態形成の初期から重要な役割を果たすことから,RA滑膜組織におけるドパミン・ドパミン受容体の機能的役割を評価した.本稿ではこの一連の解析を概説し,ドパミン受容体を標的とした創薬の可能性についても述べる.
著者
山岡 正和 田中 章夫 RAHAYU Wuryaningsih Sri HERNANDEZ Carmelita Lacap JAMILAH
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
油化学 (ISSN:18842003)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.502-507, 1988
被引用文献数
1

アブラヤシの葉,パーム原油,ファイバー及び空果房の糖脂質を同定定量した。糖脂質の同定には,主にTLCのR<SUB><I>f</I></SUB>値と1-ナフトールや過塩素酸による呈色反応を利用した。定量はデンシトメータで行った。アブラヤシの葉の主な糖脂質はアシルステリルグリコシド,モノガラクトシルジグリセリド,ステリルグリコシド(SG),セレブロシド,ジガラクトシルジグリセリド及びスルホキノボシルジグリセリド(SQDG)であった。一方,パーム原油には,SGとSQDGは存在せず,またファイバーと空果房にはSQDGが存在しなかった。<BR>アブラヤシの葉とパーム原油の各糖脂質の脂肪酸組成についても検討した。飽和脂肪酸ではいずれの糖脂質もパルミチン酸が主であった。不飽和脂肪酸ではアブラヤシの葉ではリノレン酸が多いのに比べ,パーム原油ではオレイン酸が多い点に特徴があった。
著者
田中 晋
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.47-54, 1992-01-29 (Released:2009-06-12)
参考文献数
22
被引用文献数
4 8

カブトミジンコDaphnia galeata Snxsは形態の変異が大きく,古くから多くの変種(variety)が記載されるなど,分類学的に混乱した状態にあったが,最近ヨーロッパにおいて,近縁のウスカワハリナガミジンコDaphnia hyalina LEYDIGと区別されるはっきりとした種であることが明らかにされた。しかしわが国では,ハリナガミジンコD.longispina O.F.MULLERまたはD.hyalinaのシノニムか亜種としてあつかわれてきており,D.galeataの分類上の位置が確定されないできた。特にD.hyalinaとは明瞭に区別されていない。本報では,D.galeataとD.hyalinaの両種が分布する湖とされてきた琵琶湖と木崎湖のDaphniaを調べたところ,出現した種はどちらもD.galeataだけであることが明らかとなった。どちらの湖とも出現したD.galeataには大きな形態の変異があり,変異は二つの湖で異なっているが,この二つの湖の標本にもとづき単為生殖雌と雄の形態の記載と若干の考察を行った。
著者
田中 千晶
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.14-25, 2007-02-10

鈴木三重吉は、どのような<古事記>を参照して『古事記物語』を執筆したのか。発刊以来長期間に渡り広範囲の年齢層に受容され続けている『古事記物語』は、児童向け『古事記』に与えた影響を考えるとき享受史において重要な意味をもつ。本稿では、古事記研究と児童文学研究の狭間で特定が困難であった同書の参照本を、本文異同の手法、三重吉の周辺や当時の新聞広告を探ることで渋川玄耳(しぶかわげんじ)『三體(さんたい)古事記』と特定し、近現代における<古事記>享受と『古事記物語』研究の進展に繋げた。
著者
田中 悟志
出版者
生理学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

頭蓋の外に置いた電極から電気刺激を行う経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、安全にヒトの脳活動を制御する方法として、神経障害に伴う脳機能低下の回復への応用に期待が高まりつつある。本研究では、下肢運動機能に障害を持つ皮質下梗塞患者に対して、下肢筋力トレーニング中における損傷半球側の運動野へtDCSを実施し、下肢運動機能への促進効果を検討した。その結果、8名中7名の下肢筋力を促進することができた(Tanaka et al., 2011a)。また機能的磁気共鳴画像実験により、大脳皮質運動野へ直流刺激を与えると、刺激された大脳皮質に加えて皮質下の脳活動も上昇するという予備的な知見を得た。
著者
副田 俊介 田中 哲朗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.79, pp.31-38, 2003-08-04

最中限は竹内郁雄によって提案された3人プレイヤのカードゲームである.本研究は最中限をプレイする強いプログラムを作ることを目的とする.最中限は提案されたばかりのゲームであるため,人間のプレイにおいても,有効な戦略は確立されていない.そこで,人間の知識を使わずに計算機を用いて最中限を分析することにより,有効な戦略を求めることを試みる.この目的のために,最中限をプレイするプログラムを自動対戦させる実験を行い,点数に注目して分析を行った.プログラムは途中まではランダムプレイ,最終ラウンドでは検索によって手を生成するものを用いた.このプログラムは最終ラウンドの検索では相手プレイヤがランダムプレイヤ,つまりどの手も等しい確率で選ぶプレイヤであると仮定して全幅検索を行っている.この実験の結果,最終ラウンドに入る時点で点数が最も高かったプレイヤのゲーム終了時の得点の期待値は -0.56,2番目のプレイヤは0.91,3番目のプレイヤは-0.54となり,最終ラウンドに入る時点で最も中間の位置にいるプレイヤが最も有利であるという経験則と,この条件の元では一致することが確かめられた.Saichugen is a three player card game introduced by Ikuo Takeuchi. As it is a fairly new game, no good playing strategies are well known yet for Saichugen. We have analyzed Saichugen endgames by using Saichugen playing programs. We have used programs that play randomly up to the middle of the game, and plays by searching in the last round of the game. The programs assumes that the opponents players play randomly when searching. We had this programs play each other for 1000 games and analyzed the results. For these playes. We were able to show that the player with the most middle points when entering the endgame tends to keep his place - win the game.
著者
田中矢徳 著
出版者
攻玉社
巻号頁・発行日
vol.巻1, 1891