著者
田中 佳佑
出版者
成城大学
雑誌
成城文藝 (ISSN:02865718)
巻号頁・発行日
no.208, pp.126-110, 2009-09
著者
葉室 和親 荒牧 重雄 藤岡 換太郎 石井 輝秋 田中 武男 宇都 浩三
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.527-557, 1983-10-22

1979年12月の淡青丸KT-79-18航海の際,東伊豆沖海底火山群,大島南方の大室出シ堆,新島東方の新島ウラノ瀬などの海底火山の岩石をドレッジにより採集した.東伊豆沖海底火山群は,岩石の鉱物・化学的特徴により北半部,中部,南部に細分することができる.北半部の岩石はすべて高アルカリソレアイト系列の玄武岩・安山岩溶岩であり,伊豆半島中部東部に分布する東伊豆単成火山群がそのまま海底に延長して孤立した海底火山として分布しているものと考えて差支えない.中部では,低アルカリ(低Na2O)ソレアイト系列の玄武岩が5点のドレッジから発見された.そのうち伊豆大島に近い2点は,伊豆大島火山の玄武岩類に似た鉱物・化学組成をもち,新鮮である.西側の3点の岩石はいずれも風化変質作用を受けており,小角礫の集合として産する.これらは伊豆大島火山や東伊豆単成火山群よりも古い海底火山に属するものと判断される.南部のドレッジ2点からは東伊豆単成火山群南西部のグループの岩石に似た玄武岩が得られた。大室出シは,ガラス質多孔質の新鮮な流紋岩溶岩流から成る平坦な頂部をもつ海底火山と考えられる.山体の中央部に深さ100m,長さ1.5km,幅0.5kmの凹陥地(大室海穴)があるが,その壁からは流紋岩溶岩が採集された.新島ウラノ瀬の南東麓からは,流紋岩溶岩と変質した玄武岩礫,石英閃緑岩礫などが採集された.後者はこの地域を構成する基盤岩類と考えられる.
著者
田中 豊一
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.542-552, 1986-07-05
被引用文献数
3

高分子ゲルのまわりの温度や, 溶媒組成などを変えていくと, あるところでその体積が1000倍にも不連続に膨潤したり収縮する. この現象が相転移であり, 気体-液体の間の相転移のように普遍的で, あらゆるゲルに起こり得ることが明らかになってきた. この相転移現象の中に, ゲルを構成している高分子のミクロな個性と特徴が, 増幅されてくっきりと浮かび上がる. さらに, この現象を利用して, ゲルを人工筋肉やロボットの記憶素子, 表示素子, エネルギー変換素子, 選択的吸収体などとして応用する可能性が開けた.
著者
小木曽 智信 小椋 秀樹 田中 牧郎 近藤 明日子 伝 康晴
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.4, pp.1-8, 2010-01-30

現在開発を行っている「中古和文UniDic」を紹介する.これは平安時代の仮名文学作品を典型とする和文系の資料を対象とする形態素解析辞書であり,すでに公開中の「近代文語UniDic」同様,日本語の歴史的資料の形態素解析を可能にするものである.In this paper, we present "Chuko-Wabun UniDic", which is an electrical dictionary for morphological analysis of classical Japanese. The dictionary is especially designed for the analysis of literary texts in the Heian period, and is an effective means for examining historical texts, like "Kindai-Bungo UniDic" for modern Japanese.
著者
長縄 弘親 熊沢 紀之 斉藤 浩 柳瀬 信之 三田村 久吉 永野 哲志 鹿嶋 薫 福田 達也 吉田 善行 田中 俊一
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.227-234, 2011 (Released:2011-11-30)
参考文献数
7
被引用文献数
4 6

We tried the decontamination of surface soils for three types of agricultural land at Nagadoro district of Iitate-mura (village) in Fukushima Prefecture, which is highly contaminated by deposits of radionuclides from the plume released from the Fukushima Daiichi nuclear power plant. The decontamination method consisted of the peeling of surface soils solidified using a polyion complex, which was formed from a salt solution of polycations and polyanions. Two types of polyion complex solution were applied to an upland field in a plastic greenhouse, a pasture, and a paddy field. The decontamination efficiency of the surface soils reached 90%, and dust release was effectively suppressed during the removal of surface soils.
著者
田中 正行 奥富 正敏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.113, pp.97-104, 2004-11-12
参考文献数
15
被引用文献数
4

複数の低解像度画像よりひとつの高解像度画像を推定する方法として超解像処理がある.広く利用されている再構成型超解像処理では,まず初期の高解像度画像を設定し,そこからカメラモデルに基づき観測画像である低解像度画像の各画素値を推定する.推定された画素値と実際の観測画素値の誤差を最小にするように高解像度画像を更新する.収束するまで更新処理を繰り返すことにより,高解像度画像を求める手法が再構成型超解像処理である.再構成型超解像処理は,高解像度画像の画素の数だけの未知数があることや,一回の更新につき複数の低解像度画像の総画素数分の画素値推定計算が必要であることなどから,計算コストが大きいことが知られている.本研究では,更新ごとに必要な計算コストを低減させることを目的とした高速化アルゴリズムを提案する.提案手法は,高解像度画像空間に離散化点とそれに対応する近傍領域を設定し,その近傍領域内に含まれる複数の観測画素値の平均値を利用し,その平均値と離散化点に対する推定画素値の誤差を最小にする方法である.ある近傍領域に対して,従来法では近傍領域に含まれる観測画素の数の推定計算が必要であるが,提案手法では一回の推定計算ですむ. 合成画像および実画像を使用した実験から,実験条件により異なるが,提案手法は従来法と比較して約1.3?5.0倍の高速化が確認できた.また,推定精度は従来法とほぼ同程度であることも確認できた.A super-resolution process produces a high-resolution image from a set of low-resolution images. Reconstruction-based algorithms to produce the high-resolution image which minimizes the difference between observed images and images estimated from the high-resolution image with a camera model has been developed. The reconstruction-based algorithm requires iterative calculation and large calculation cost because the reconstruction-based super-resolution is a large scale problem. In this report, a fast algorithm for the reconstruction-based super-resolution is newly proposed. The proposed method is to reduce the number of observed pixel value estimations from the high-resolution image, using an average of pixel values in a divide region. Effect of our proposed algorithm is demonstrated with synthetic images and actual images. The results show that the proposed method is about 1.3 - 5.0 times faster than a conventional method.
著者
田中 醇
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.301-327, 1933

るみなーる及ビ〓ゑうなーるガ等シク動物諸臟器ニ一定ノ退行性病變ヲ來サシムルモノナルコトハ,二三實驗ノ存スルトコロニシテ,之レニヨリ糖尿,輕度ノ血糖上昇,血液乳酸ノ消長,肝臟糖原ノ減少ヲ来スコトヲ認メラル.而シテ,等シクばるびつーる酸誘導體ナルあみたーるハ,多數ノ學者ニ從ヘバ,動物ニ對シ含水炭素代謝ニ著シキ影響ヲ與ヘザルコトヲ示サル.然レドモ,之等ノ催眠藥ノ中間隣酸代謝ニ關シ報ゼラル丶トコロ尠シ.故ニ余ハ本實驗ニ於テ,るみなーるノ家兎血糖,血液並ニ筋肉乳酸及ビ現今筋肉動作物質トシテ目セラノともル丶ふおすふあげーん.らくとあちどげーん及ビあでにーる焦性燐酸等ニ及ボス影響ヲ檢索セリ.實驗成績次ギノ如シ.1)縛繩セザル非麻醉健常家兎ノ一側ノ外股筋ノ部分切除ヲナシ,切除後1時間ニ於ケル血糖量ハ平均23.1%ノ上昇ヲ示シ,血液乳酸量ハ8.4%ノ減少ヲ示ス.筋肉燐酸量ノ變化ハ,ふおすふあげーん燐酸量ノ輕度ノ増加ヲ示スモ,焦性燐酸,Δ°_<180'>(易加水分解性燐酸えすてる),らくとあちどげーん,N-燐酸(あでにーる酸部分及ビ不明ノ難加水分解性燐酸えすてるヲ含ム)及ビ總酸可溶性燐酸量ハ實驗誤差範圍ヲ出デズ.採筋後3時間ニ於ケル血液乳酸量ハ,採筋後1時間ニ於ケルモノニ比シ著變ヲ示サズ.對側同名筋乳酸量モ亦著變ヲ示サズ.2)るみなーるなとりうむヲ體重1瓩ニ付0.16gヲ健常家兎ノ皮下ニ注射スルトキハ,注射後30分ニシテ輕度ノ血糖上昇ヲ來シ,30乃至120分ニアリテハ34.1%ノ,注射後180分ニアリテハ39.4%ノ,240分ニアリテハ58.5%ノ,300分ニアリテハ17%ノ,360分ニアリテハ45%ノ上昇ヲ示シ,26乃至27時間ニアリテハ更ニ高度ノ血糖上昇ヲ示セリ.兩側内臟神經切斷家兎ニ同量ノるみなーるなとりうむヲ注射シ,注射後3時間ニ於ケル血糖ハ,健常麻醉家兎ノ血糖上昇ニ比シ,61.5%ノ上昇ノ抑制ヲ示セリ.3)るみなーるなとりうむヲ體重1瓩ニ付0.16gヲ健常家兎ノ皮下ニ注射シ,注射後1時間ニ於ケル血液乳酸量ハ輕度ノ増加ヲ,3時間ニアリテハ僅ニ減少ヲ示ス.注射後3時間ニ於ケル筋肉乳酸量ハ稍高度ノ減少ヲ示セリ.4)るみなーるなとりうむヲ體重1瓩ニ付0.16gヲ健常家兎ノ皮下ニ注射シ,注射後55分及ビ3時間ニアリテハ無機燐酸,Δ°_<180'>,らくとあちどげーん及ビN燐酸量ノ著明ノ減少ヲ來ス.此減少ハ,注射後3時間ニ於ケルモノ遙ニ高度ナリ.ふおすふあげーん燐酸量ハ著明ニ増加シ,注射後55分ノモノト,3時間ニ於ケルモノトノ間ニ殆ド差違ヲ示サズ.焦性燐酸量ハ注射後55分ニアリテハ變化ヲ示サズ,3時間ニアリテハ僅ニ増加ス.總酸可溶性燐酸量モ亦焦性燐酸ノ場合ト同様ノ關係ヲ示ス.上記ト同量ノるみなーるなとりうむヲ兩側内臟神經切斷家兎ノ皮下ニ注射シ.注射後3時間ニ於ケル無機燐酸,Δ°_<180'>,N-燐酸及ビ總酸可溶牲燐酸量ノ減少ハ,健常麻醉家兎ノ場合ノ減少ニ比シ低度ナリ.ふおすふあげーん燐酸量ノ増加ハ,健常家兎ノ場合ノ増加ニ比シ僅ニ高度ニシテ,らくとあちどげーん燐酸量ノ減少ニ關シテハ,兩者ノ間ニ差異ヲ示サズ.筋濾液ノ加水分解曲線ノ示ス範圍ニアリテハ,筋肉内ニHarden-Young氏えすてるノ生成セラルルヲ認メズ.不明ノ非還元性難加水分解性えすてるノ輕度ノ減少ヲ來ス.5)るみなーるなとりうむヲ體重1瓩ニ付0.16gヲ家兎ノ皮下ニ注射スルモ奇瞳孔擴大ヲ現サズ.6)るみなーるなとりうむヲ體重1瓩ニ付0.16gヲ家兎ノ皮下ニ注射スルトキハ著明ノ體温ノ降下ヲ來ス.此ノ降下ハ麻醉時間ノ長キニ渡ルモノニ高度ナリ.
著者
秋山 雄次 鈴木 輝彦 田中 政彦 小林 厚生 片桐 敏郎 石橋 俊子 北川 秀樹 今井 史彦 原 清 土肥 豊
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.542-547, 1990

混合性結合組織病(MCTD)として経過観察中に強皮症(PSS), 全身性エリテマトーデス(SLE), 多発性節炎(PM), シェーグレン症候群(SjS)の重複症候群に進展した1例を経験したので報告する.症例は42歳の女性で18歳より日光過敏症があった.昭和61年レノイー現象, swollen hands, 関節痛が出現し, 抗RNP抗体81920倍, 抗Sm抗体陰性, 血清CPK値上昇を認めたため, MCTDとして経過観察を開始, 昭和63年多関節痛, 節痛の増強を主訴に入院.理学所見では開口制限, 皮膚硬化, 筋力低下, ラ音を認め, 検査所見では節原性酵素の上昇, LE細胞, 抗核抗体, 抗DNA抗体, 抗ENA抗体, 抗SS-A抗体を認めた.又, 皮膚生検でPSSに一致した組織所見, 節電図で節原性変化, 口唇生検で慢性唾液腺炎像, 腎生検にてメサンギウムの増殖性変化を認めた.MCTDの概念, 殊に重複症候群との差異は明確でなく, さらなる症例の蓄積・検討が必要である.MCTDの経過中にPSS, SLE, PM, SjSへ移行した報告は見当たらず, MCTDの研究上, 貴重な症例であると思われた.
著者
田中 愛治
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

平成4年度には、同年7月の参議院選挙の前後に横浜市において有権者1,000名に対し郵送法による世論調査を行い、横浜市における一般有権者の政治不信と政党離れ意識について調査した。平成5年度は、前年の郵送調査における「政党支持なし」の回答者を深層面接法により追跡調査する予定であった。しかし平成5年の政治状況は、国民の政治不信、特に既成政党に対する不信感が更に高まり、政党離れがいっそう進行した。平成5年6月の宮沢内閣不信任案の成立後、自民党から新生党、新党さきがけが分裂し、同年7月18日の衆議院総選挙の結果、昭和30年の自民党結党以来初めて政権交代が起こった。この新党(新生党、新党さきがけ、日本新党)の出現と政界再編の状況下では、少数の「政党支持なし」の有権者の深層面接よりも、一般有権者を対象に従来と異なった投票行動をとる心理的メカニズムを広範に探ることの方が重要性が高いと判断し、研究計画を変更して、総選挙の前後にパネル方式の電話世論調査を実施した。有権者の政治不信、政党離れが急激に進む状況の中で、「政党支持なし」層の役割はかつてなかったほど重要になり、それに呼応するように3新党が総選挙では躍進して、政権交代が起こった。上述の電話調査の結果からは、3新党の支持者はどの新党に対しても好意的な感情を持っており、相互に支持する傾向が見られるが、逆に既存の伝統的な自民党と社会党に対しては冷淡な態度が見られ、既存の政党離れが進んだことが明らかになった。さらに、「政党支持なし」層の存在が、92年の参議院選挙に続いて、93年の総選挙の際にも確認されたが、この積極的な「政党支持なし」層が必ずしも新党の支持に回ったとは言い切れず、単純な構造ではないことが分かった。今後、本調査のデータ分析を更に進めていく所存である。
著者
和崎 春日 上田 冨士子 坂井 信三 田中 重好 松田 素二 阿久津 昌三 三島 禎子 鈴木 裕之 若林 チヒロ 佐々木 重洋 田渕 六郎 松本 尚之 望月 克哉
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

「グローバル化時代における中下層アフリカ人の地球的移動と協力ネットワーク」現代社会において、グローバライゼーションを生きるのは、北側社会や特別なアフリカ人富裕層だけではなく、「普通の」アフリカ人たちが、親族ネットワーク等を駆使して、地球を広く縦横に生き抜いている姿が、本共同研究から析出された。その事実を基礎にした外交上の政策立案が必用になってくることを、本共同研究は明らかにした。
著者
藤田 大輔 我部山 キヨ子 田中 洋一 岡田 由香
出版者
大阪教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

H県N市における乳幼児健康診査対象児(4か月児・1歳6か月児・3歳児)の2164名の母親に、文書でインターネットを利用した育児支援コミュニティ開設の趣旨を説明し、同意の得られた対象に、「育児に関する調査」と題した質問紙調査を実施した。その結果、育児支援ネットコミュニティ参加申し込み者は276名で、その内訳は、乳幼児健診全対象者に対して、初産婦が25.7%、経産婦が17.3%と、初産婦で申し込み希望が多く関心が高かった。育児支援コミュニティの利用状況を示すホームページへのアクセスは、月平均約100件で、初産婦が66.2%で、経産婦が33.8%であった。月曜日と水曜日のアクセスが比較的多く、全体の約6割を占めていた。逆に土曜・日曜日は5%前後と少なかった。また、最も多い時間帯は、12時〜17時で35.2%であった。掲示板の書き込み内容は、子どもの病気や予防接種について、保育園入園の時期などが挙げられた。初産婦の質問に対し、経産婦が体験談を通してアドバイスをする傾向にあった。育児支援コミュニティの利用希望者の心理特性では、利用を希望しない者に比べ、手段的支援ネットワークが有意に低く、ストレス反応が有意に高い傾向であった。逆に、育児に対する否定的感情は低く、育児に関する情報や解決策入手の数は多い傾向が観察された。この傾向は、サイト開設後の調査においても変わらなかったが、特性的自己効力感と情緒的支援ネットワークは、サイト開設後の方が比較的高い傾向であった。以上より、手段的支援の認知が低く、ストレスが高い傾向で、育児情報を探索する傾向にある者が、育児支援サイトを利用する傾向が認められた。結果、育児支援サイトを利用することで、体験者の励ましや助言から、情緒的な支えを得ることで育児に自信をもって対処しようとする効果が期待されることが示唆された。
著者
田中 純
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では次の4点について、それぞれを有機的に関連づけながら研究を展開し、成果を得た。1.アビ・ヴァールブルクが精神形成をおこなった19世紀後半のハンブルクの文化的環境を、特にドイツでも有数のユダヤ人銀行家一族であるという彼の出自に注目しつつ、調査・分析し、主にイタリア・ルネサンスの美術を対象とした研究に結実していくヴァールブルクの思想形成過程を資料に即して考察した。2.ヴァールブルクの著作や書き残したメモに基づいて、その図像学的方法論を再構成し、同じ美術作品を主題とした諸研究にも目を配ることによって、ヴァールブルクの方法の独自性を検証した。3.ヴァールブルグ研究所におけるパノフスキーをはじめとする図像学研究を方法論的な見地から検討し、個別の美術史的分析ではなく、方法論的な次元においてヴァールブルクの思想との比較をおこなった。これとともに、図像学が学問的な言説として制度化されるプロセスを、1920〜30年代のドイツとその後のロンドンを中心とするヴァールブルク学派の活動のなかに辿った。4.ヴァールブルクの思考をルートヴィッヒ・クラーゲスの『魂の敵対者としての精神』などにおける議論と比較し、ジークムント・フロイトやカール・グスタフ・ユングの精神分析を視野に収めて、イメージと記憶、あるいは近代における「古代の再生」といった問題を中心に、世紀転換期から1930年代にいたる時代のドイツ文化圏の思潮について、イメージ論の観点から思想史的な分析をおこなった。これによって、クラーゲスもその一端を担ったバッハオーフェンの母権論思想復活の動向をはじめとする、この時代のドイツ思想における神話的イメージの大きな役割が見出された。また、ヴァールブルクの思想とヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論』との比較対照を通じて、このいずれもがその背景にゲーテ自然学、とくに形態学の思想をもっており、同時代の思想に幅広く同一傾向の見られる点が明らかとなった。
著者
岩崎 貢三 康 峪梅 田中 壮太 櫻井 克年 金 哲史 相川 良雄 加藤 伸一郎 NGUYEN VAN Noi LE THANH Son BANG NGUYEN Dinh VENECIO ULTRA Jr. Uy. TRAN KHANH Van ZONGHUI Chen NGUYEN MINH Phuong CHU NGOC Kien 小郷 みつ子 福井 貴博 中山 敦 濱田 朋江 杉原 幸 瀬田川 正之
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では, (1)ハノイ近郊の鉱山周辺土壌における重金属汚染, (2)紅河流域畑土壌における有害金属・農薬残留に関する調査を実施し, 特に有害金属に関し, 工場・鉱山を点源とする汚染と地質に由来する広域汚染が存在することを明らかにした. また, これら金属汚染土壌の植物を用いた浄化技術について検討するため, 現地鉱山周辺で集積植物の探索を行ない, Blechnum orientale L.やBidens pilosa L.を候補植物として見出した.
著者
矢野 裕俊 岡本 洋之 田中 圭治郎 石附 実 添田 晴雄 碓井 知鶴子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、日本の教育において常識とされる問題や事象を諸外国との比較によって、あらためて常識-非常識の対抗軸の中でとらえ直し、そうした常識が世界では必ずしも常識ではないという例が少なくないことを明らかにした。1)異文化理解と国家へのアイデンティティ形成を両立させるという課題は世界各国の教育において重要な関心事とされてきたが、日本では一方において国家を介在させない異文化理解教育の推進と、他方において教育のナショナリズムに対する相反するとらえ方がそれぞれ別個の問題として議論されてきた。2)入学式に代表される学校行事は、集団への帰属意識の形成と結びついて日本の学校では行事の文化が格別に発達した。日本の学校のもつ集団性をこの点から解明する試みが重要である。3)教員研修の文化においても、アメリカでは個々の教員の教育的力量形成、キャリア向上が研修の目的であるが、日本では、教員の集団による学校全体の改善に重きが置かれ、研修は学校単位で行われる。4)歴史教育は、その国の歴史の「影の部分」にどのように触れるのかという問題を避けて通れない。イギリスと日本を比較すると、前者では異なる歴史認識が交錯する中で、共通認識形成と妥協の努力が見られるのに対して、日本では異なる歴史認識に基づいて体系的に記述された異なる教科書が出され、共通認識形成の努力が必ずしも教科書に反映していない。5)戦後日本の大学における「大学の自治」の問題も大学の非軍事化、非ナチ化が不徹底に終わったドイツの大学の例と関連づけて考えてみることによって新たな視点が得られる。