著者
米山 祥平 竹内 康二
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.267-293, 2019 (Released:2019-02-13)
参考文献数
35

本研究では災害ストレスマネジメント教育の学習プログラムをふたつ開発し,小学校におい て実施して,その有効性を検証した。参加児は小学校 5 ・ 6 年生229名であった。ふたつのプロ グラムのうちの一方は第 1 回目の授業で実施し,他方は第 2 回目の授業で実施した。第 1 のプ ログラムではストレス反応の個別の症状を知り,それらを 4 つのグループに分類できるように なることを学習のねらいとした。第 2 のプログラムではストレス対処法を選択し,実行できる ようになることをねらいとした。各授業の前後には,豊沢らの開発した尺度を元に修正を施し た尺度を用いて,質問紙調査を実施した。質問紙は各授業の終了後に回収し,統計的分析にか けた。分析の結果,授業 1 のプレテストとポストテストの間で恐怖感情が有意に増加し,特に プレテストにおいて低~中程度の恐怖感情得点を示した児童において大きく増加することが確 認された。また,授業 2 の後には,自己効力感と反応効果性が有意に増加し,脅威の深刻さが 有意に減少していた。
著者
井上 俊 竹内 康浩 竹内 寿和子 山田 信也 鈴木 秀吉 松下 敏夫 宮垣 仁実 前田 勝義 松本 忠雄
出版者
社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.73-84, 1970-03-20 (Released:2008-04-14)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

In 1967 there occurred many polyneuropathy cases in household vinyl sandal manufacturers at F-disrict in Mie prefecture. In this district among 3, 210 people (788 families) most of them engaged in vinyl sandal manufacture (as of Oct, 1967). Ninety three patients suffering from polyneuropathy were found by our survey. Out of these 93 patients those suffering from sensory polyneuropathy were 53, from sensorimotor polyneuropathy 32 and from sensorimotor polyneuropathy with muscle atrophy 8 (cf. Tab. 1). The work conditions and the factors contributing to the intoxication's were investigated, and the method of prevention was suggested. The results are as follows. (1) The patients occurred in 1961 at first and the number of them increased rapidly from 1965 and showed a peak in 1967 (cf. Tab. 2). This increase was in parallel with the amount of adhesives containing "n-Hexane" used in this district (cf. Tab. 3, 4). Outbreak of many patients in winter and spring may due to poor ventilation in winter. (2) The causative substance was considered to be "n-Hexane". But "n-Hexane" on sale contains 2-methylpentane, 3-methylpentane, n-hexane, and methylcyclopentane, and the quantity of n-hexane in "n-Hexane" is about 60% (cf. Fig. 6). (3) The work conditions of the vinyl sandal manufacturers among whom many cases of "n-Hexane" intoxication occurred were as follows. 1) The work was primitive household manufacture and living rooms were used as the working place (cf. Fig. 1, 3). 2) As adhesives containing a large quantity of highly volatile "n-Hexane" were used in narrow rooms, the concentration of "n-Hexane" vapor became high and reached about 500-2500 ppm in the work room. The vapor concentrations were especially high in winter because of closed windows. (cf. Fig. 7, 8, 9). 3) Since the workers (subcontractors) were paid by the number of manufacturedgoods, their working period was unrestrictedly long and some worked for 14 hours per day (cf. Fig. 10). 4) The work intensity was high and some starched 3, 000 times per day. It seems that the more the times of starching, the heavier the degree of symptoms (cf. Fig. 11). 5) As the adhesives were used with hand brushes, the vapor concentrations were high at the site near the noses of the workers, so that they inhaled the organic solvent vapor at high concentrations. 6) As the organic solvents vapor ignite easily, the work rooms were not heated and they were working at quite low temperatures in winter (cf. Tab. 5). 7) The workers were not instructed as to the toxicity and the handling method of the organic solvents. 8) Usual health supervision was not performed at all. (4) The chief cause of the occurrence of intoxications was that a large amount of the organic solvents was used under very poor work conditions as above mentioned combined with neglected supervision. Moreover, that which gave impetus to the occurrence of the intoxication was that the easily drying adhesives containing a large quantity of "n-Hexane" were used in order to increase the number of the manufactured goods, because the pay per one of the goods was not increased for these several years in spite of the recent inflation. (5) As the urgent measure for the prevention, though instruction on the toxicity and the handling method of the organic solvents, improvement of the ventilation and the working methods, guidance by the health center and so on were made, these are only certain aspects of measures for the prevention. The danger of the intoxication may not be perfectly removed without the fundamental reform in the work conditions.
著者
土肥 可奈世 竹内 康裕
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.27-36, 2015-06-25 (Released:2016-02-27)
参考文献数
60
被引用文献数
4 16

レトロウイルスベクターは自身のゲノムを宿主ゲノムに挿入できることから,治療遺伝子を患者の体内に運ぶ有効な手段として注目されてきた.レトロウイルスベクターが標的とする遺伝子疾患は,疾患の原因である変異遺伝子の正常型を患者細胞に直接導入することで治療が行われる.従来のガンマレトロウイルスベクターは標的細胞における治療遺伝子の発現,患者の疾患症状改善という点からこれまでの臨床治験において数々の成功例を報告してきた.しかし,遺伝子治療後の副作用としてベクターを介した遺伝子挿入を由来とする白血病が発生した.このinsertional mutagenesis(IM)の報告により,ベクターコンストラクト自身の安全性が見直されただけでなく,患者細胞内のウイルスベクター挿入位置をモニタリングすることが重要であることも確認された.一方,非分裂細胞へも治療遺伝子を導入できるレンチウイルスベクターは,神経性の遺伝子疾患の治療にも利用されてきた.また,これら2種のウイルス間の宿主ゲノム内の挿入傾向も比較して調べられた結果,レンチウイルスベクターのがん原遺伝子への挿入傾向がガンマレトロウイルスベクターよりも集中していないこと,またレンチウイルウイルスベクターを用いた臨床治験ではIMによる白血病のケースがこれまで報告されていないことから,より安全なベクターとしての認識が広まった.しかし,レンチウイルスベクターが自身の挿入により宿主遺伝子のスプライシングパターンを変化させることから,IMによる副作用を発生させる可能性は残っている.最近では,レンチウイルスベクターを用いて患者体内のT細胞に癌や感染した細胞を死滅させるレセプターを発現させ,間接的に治療を行うことも始まった.これら疾患数,患者数の多い病気への応用が始まったことから,レンチウイルスベクターが今後広く臨床応用されることが期待される.
著者
竹内 康浩 久永 直見 小野 雄一郎 井上 俊
出版者
社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.470-487, 1980-11-20 (Released:2008-04-14)
参考文献数
96
被引用文献数
1 2

A large amount of n-hexane is being widely used in industry as a solvent or a component of the mixed solvents for extraction of vegitable oils, adhesives, paints, and for cleaning, etc. And, many cases of polyneuropathy due to n-hexane have been reported up to now. Recently, studies on the neurotoxicity and metabolism of n-hexane rapidly progressed in many countries. The present review covers clinical signs and symptoms, pathological changes, metabolism, dose-response (effect) in acute exposure, glue or thinner sniffers, workers, animal experiments. The joint effects and the maximal allowable concentration of n-hexane are also briefly discussed.
著者
越川 義功 高山 晴夫 竹内 康秀 真崎 達也 大城戸 博文 藤井 暁彦 林 健二 渡邉 洋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.II_73-II_81, 2015 (Released:2016-06-01)
参考文献数
30

ダム建設工事では,工事区域での樹木伐採や剥土に伴い,昆虫類の生息場が短期間で広範囲に減少する.施工者による自然環境保全の取り組みのひとつとして,伐採材を活用した木柵(エコスタック)設置により,昆虫類の代替生息場の確保を実施した.設置からわずか1カ月後の調査において,木材に依存するカミキリムシ類、オサムシ類等をはじめとした56種の昆虫類がエコスタックで確認された.その後も季節による変動はあるものの,多くの昆虫類がエコスタックを利用しており,伐採材を利用したエコスタック設置は昆虫類の代替生息場の提供として有効に機能することが確認できた.
著者
森山 茂栄 小汐 由介 福田 善幸 竹内 康雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

ニュートリノが出ない二重ベータ崩壊を観測することにより、ニュートリノの性質を決定するとともに、ニュートリノの絶対質量を測定することが期待されている。本研究の目的は、そのための基礎原理及び技術を開発することにある。本研究では、キセノンに含まれる136Xeが二重ベータ崩壊可能な原子核であるとともに、液体キセノンが良いシンチレーターであることを利用する。特にバックグラウンドを低減するために、常温高圧の液体キセノンを透明な容器にいれ、特殊な光学系で測定することにより、感度の向上を図るものである。ここに含まれる研究開発は、1耐圧アクリル容器の開発、2波長変換材の開発、3常温液体キセノンの発光量測定、4ダブルフォーカス型検出器の開発、5バックグラウンドの見積もり、6プラスチックシンチレータを用いた容器の開発である。本研究で最も重要であったのが、2の波長変換材および3の常温液体キセノンの発光量である。1については、アクリル容器からの水の放出が問題となるため、(2)で開発する波長変換材等の膜により保護することとなった。2については、興味ある一定の成果が得られた。ポリスチレンの母材に、TPB(テトラフェニルブタジエン)を4%混合させることで、49±4%の変換効率が得られた。この効率とは、液体キセノンの発光である175nmの真空紫外線が入射した場合に、可視光として放出される光子の数の比である。この変換は、液体キセノンの発光よりも早く、発光の信号の時定数は、液体キセノンの発光の時定数との違いは見られなかった。残念ながら、この波長変換材を液体キセノンにいれて測定した場合、波長変換材が液体キセノンにより浸食されることがわかり、効率として20%程度に下がってしまうことがわかった。アクリルの保護の役割や、長期安定性などを含めて、今後研究が必要である。3常温液体キセノンの発光量については、大変面白い結果が得られた。圧力5.57MPaG、摂氏3度における発光量と、圧力0.06MPaG,摂氏-100度における発光量とを比較すると、前者が後者の0.85倍という結果が得られた。両者で光の収集効率が異なる可能性がありその効果を現在見積もり中であるが、常温高圧での液体キセノンの発光量を測定するのはこれまでに無く、重要な進展である。4については、装置を作成したところ、検出器内面の反射率が低いことがわかった。今後測定・改良を続けていく予定である。5、6については、4までの成果の延長上にあるため、今後の課題となった。
著者
竹内 康
出版者
東京農業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では,温水パイプの耐久性と電熱シートの簡便性を兼ね備えたハイブリッドタイプのヒーティング装置の開発を行うとともに,ロードヒーティングへの適用性に関する検証実験を行うことを目的としている。平成22年度は,ヒーティングパイプ内に封入するガスの種類およびパイプの形状を変化させた加熱実験を通じたヒーティング装置の開発結果を受け,ガスの種類のうち最も良い効果を示した代替フロンガスHCFCを封入した銅製の多重ループ管(蛇行管)をコンクリート平板に埋設して室内での融雪実験を行った。このときの,温度条件は,妙高市の赤倉温泉郷にて測定した温泉排水温度が30~40℃程度であったことから,融雪実験に際しては水温を15~40℃に設定し,融雪状況の確認を行った。また,加熱部の長さは,ヒーティング装置の加熱実験結果を受け,放熱部の5~10%程度になるようにした。その結果,室内融雪実験では,水温が15℃程度であっても十分に融雪効果が得られることが確認された。さらに,多重ループ管の間隔が融雪特性に及ぼす影響と屋外での融雪効果を確認するため,既往の文献を参考に間隔を10cm,16cmとした蛇行管を埋設した1m×1m程度の舗装用コンクリートと同等の熱的特性を有するモルタル平板を2枚作製し,冬季の長野県飯綱高原にて屋外での融雪実験を行った。その結果,パイプ間隔が10cmで,熱源温度が20℃程度であれば,19~28mm/hr程度の降雪強度に対応できるロードヒーティングシステムが構築できることがわかった。
著者
竹内 康人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.331, pp.19-22, 2003-09-22

ささやき声の安定した収録には多少の工夫を要する。それは呼気の風圧が通常の声よりはるかに大きい、つまり息の量を消費しつつ行われるからである。結果として口に接近したマイクロホンには何らかの風防が必要とる。本研究においては風圧下ないし呼気の脈動する流れの中で広帯域信号採取するために従来概念の発泡体の覆いなどではなく平滑な表面の弱加圧薄膜閉鎖ソナドームを用いて良い結果を得たので報告する。これは本研究会で同時に発表するもう1つの演題に対する必須な支援技術となっている。
著者
パッソス アンデルソン 竹内 康人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.107, pp.11-15, 2009-06-19
参考文献数
5

非可聴つぶやきなどの体内を伝搬する音を検出する事に関して、従来思考の接触型マイクロホンより、超音波ドプラシステムを変位検出器ないし振動検出器として援用する事の方が諸般お点において優れている事を紹介している。
著者
竹内 康 久保 和幸 西澤 辰男 姫野 賢治 松井 邦人 丸山 暉彦 前川 亮太 神谷 恵三
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高速で移動しながら連続的にたわみを計測する試験機は, 各国で開発が進められており,それを用いて舗装の支持性能を評価した結果は,舗装の維持管理に活用されつつある。 このような試験機の開発にあたり, 高速で移動する車両により計測されるたわみの特性を把握することを目的として,既存の車両に変位計を取り付け,いくつかの試験路において連続たわみの測定を行った。また,収集したデータを用いて舗装の健全性を評価する方法について検討を行った. 本研究では, 載荷位置直下のたわみと載荷位置から 45cm 離れた位置のたわみの差を用いて,舗装表面付近の健全性を評価する方法を提案し,比較的たわみの大きい健全な舗装に対して FWD 試験で得られるたわみと相関の高い結果が得られることを確認した。