著者
森田 哲夫 平川 浩文 坂口 英 七條 宏樹 近藤 祐志
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.52, 2013 (Released:2014-02-14)

消化管共生微生物の活動を通して栄養素の獲得を行う動物は微生物を宿すいわゆる発酵槽の配置により前胃(腸)発酵動物と後腸発酵動物に大別される.消化管の上流に微生物活動の場がある前胃発酵の場合,発酵産物と微生物体タンパク質はその後の消化管を食物とともに通過し通常の消化吸収を受ける.一方,後腸発酵ではその下流に充分に機能する消化管が存在せず,微生物が産生した栄養分は一旦ふりだしに戻り,消化を受ける必要がある.その手段として小型哺乳類の多くが自らの糞を食べる.このシンポジウムでは消化管形態が異なる小型哺乳類を対象にこの食糞の意義について考える. 糞食はウサギ類に不可欠の生活要素で高度な発達がみられる.発酵槽は盲腸で,小腸からの流入物がここで発酵される.盲腸に続く結腸には内容物内の微細片を水分と共に盲腸に戻す仕組みがある.この仕組みが働くと硬糞が,休むと軟糞が形成される.硬糞は水気が少なく硬い扁平球体で,主に食物粗片からなる.一方,軟糞は盲腸内容物に成分が近く,ビタミン類や蛋白などの栄養に富む.軟糞は肛門から直接摂食されてしまうため,通常人の目に触れない.軟糞の形状は分類群によって大きく異なり,Lepus属では不定形,Oryctolagus属では丈夫な粘膜で包まれたカプセル状である.Lepus属の糞食は日中休息時に行われ,軟糞・硬糞共に摂食される. ヌートリア,モルモットの食糞はウサギ類と同様に飼育環境下でも重要な栄養摂取戦略として位置付けられる.摂取する糞(軟糞,盲腸糞)は盲腸内での微生物の定着と増殖が必須であるが,サイズが小さい動物は消化管の長さや容量が,微生物の定着に十分な内容物滞留時間を与えない.そこで,近位結腸には微生物を分離して盲腸に戻す機能が備えられ,盲腸内での微生物の定着と増殖を保証している.ヌートリア,モルモットでは,この結腸の機能は粘液層への微生物の捕捉と,結腸の溝部分の逆蠕動による粘液の逆流によってもたらされるもので,ウサギとは様式が大きく異なる.この違いは動物種間の消化戦略の違いと密接に関わっているようにみえる. ハムスター類は発達した盲腸に加え,腺胃の噴門部に明確に区分された大きな前胃を持つ複胃動物である.ハムスター類の前胃は消化腺をもたない扁平上皮細胞であることや,前胃内には微生物が存在することなどが知られているが,食物の消化や吸収には影響を与えず,その主な機能は明らかとはいえない.一方,ウサギやヌートリアと比較すると食糞回数は少ないが,ハムスター類にとっても食糞は栄養,特にタンパク質栄養に大きな影響を与える.さらに,ハムスター類では食糞により後腸で作られた酵素を前胃へ導入し,これが食物に作用するという,ハムスター類の食糞と前胃の相互作用によって成り立つ,新たな機能が認められている
著者
金沢 謙一 近藤 康生 神谷 隆宏
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

中生代日本産ウニ類はすべて日本固有種からなり、大部分の属がテチス地中海地域と共通で北米との直接関係は疑わしい。白亜紀末へ向けてインド-マダガスカル地域との関連が強くなり、また日本固有の属が出現する。新生代になると始新世-漸新世イベントを経て北西太平洋温帯域に適応した属レベルで他に類を見ないウニ類フォーナが出現した。この独特のフォーナの成立には熱帯域における巻貝による捕食が深く関わっていると考えられる。中新世の温暖化と日本海の出現によってこのフォーナは縮小して一部が日本海に残存し、太平洋側には現世へと続く新たなフォーナが成立した。更新世の気候変動により日本海のフォーナは崩壊し、太平洋側のフォーナに置き換わった。
著者
嵒窟子 (近藤銀次郎) 編
出版者
松双閣
巻号頁・発行日
1897
著者
遠藤 章 沖 雄一 三浦 太一 神田 征夫 近藤 健次郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.210-218, 1997-03-30 (Released:2009-03-31)
参考文献数
35

現在,各国において種々の大強度高エネルギー加速器施設の建設計画が進められており,加速器を利用して得られる様々な放射線を用いた研究が,今後ますます盛んになることが予想される。大型加速器施設では,加速器の運転に伴い発生する高エネルギー放射線と,それにより生成される放射化物などに対する安全対策が重要になるが,原子炉施設とは異なる加速器施設特有の問題もある。本稿では,その一つである高エネルギー加速器施設における放射化と,それに基づく内部被ばくの問題について,加速器施設の安全管理の経験から得られた知見を中心に紹介する。
著者
井口 毅裕 近藤 誠一 久恒 和仁
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR BACTERIOLOGY
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.805-812, 1989
被引用文献数
1

アユ,ウナギ,サケ科魚類のビブリオ属細菌感染症の原因菌の1つとして,<i>Vibrio anguillarum</i>が知られ,本菌は生化学的・血清学的性状の相違により,A, B, Cの3種に型別されている。今回,血清型Bに属する<i>V. anguillarum</i> PT514株のO抗原リポ多糖(LPS)を取り上げ,その化学的性状,特に分子構築について検討した。LPSの全多糖体画分(degraded polysaccharide: DPS)からSephadex G-50ゲルクロマトグラフィーによつて分画したO抗原多糖鎖部分は多量のグルコース(Glc)を含み,PT514株LPSの多糖鎖はグルコースホモポリマーを基本骨格とすることが示唆された。また,LPSの弱酸加水分解によつて多量のフルクトース(Fru)と4-アミノ-4, 6-ジデオキシーグルコース(4-amino-4, 6-dideoxy-Glc)が遊離され,PT514株LPSは他の血清型菌株のLPSとは異なる性状を持つことが示された。多くのグラム陰性菌LPSのコア部分の共通構成糖である2-keto-3-deoxy-octonate (KDO)は常法では検出されず,他のビブリオ科細菌と同様,強酸加水分解によつて初めてKDOのリン酸化誘導体が検出され,リン酸化KDOは広くビブリオ科細菌LPSに分布することが示された。
著者
近藤 唯弘
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.405-423, 1994

ここに一つの折れ線グラフがある。カナダの紙パ専門の業界誌「Papcr Tree」に掲載されたもので, ノースキャン5力国の市販化学パルプ出荷量とNBKPの価格を月別に表している。縦軸の左端は数量で70万tから200万tまで, 縦軸の右端は価格で300ドルから900ドルまでの目盛りとなっている。横軸は1975年から93年までの18年問で, 200カ月以上取ってある。この表を見てすぐ気づくことは, 出荷量が多少の増減を繰り返しながら少しずつ上昇し, 90年前後には毎月170万tラインを行き来しているのに対し, 価格の方は大きく上下にぶれながら推移していることである。そして75年以降93年までの間に5回の底値と5回の天井値を記録していることが分かる。パルプの価格は好・不況といった景気の循環に左右されることはもちろんだが, それが増幅されて非常に神経質な動きをすることはかねてから良く知られている。その理山の一つは, 市販パルプメーカーの中にスウィング・プロデューサー (Swing producer) と呼ばれるメーカーがあるからである。つまり, 製紙一貫のメーカーの中には, 紙の市況が良い時にはパルプを自家用に消費して外販しないが, 紙市況が悪くなると紙の生産を減らして余ったパルプを市販に回すところが出てくるからである。紙の市況がもっと良くなると, 日頃パルプを外販している一貫メーカーが, 外販をやめるどころかパルプの「買い」に回るケースすら出てくる。またカナダなどの生産地で時折りストが発生して需給を逼迫させたり, あるいはストに備えた仮需が出たり, これに投機的要素の加わった思惑買いが出て価格が急騰することもある。<BR>このようなスウィング・プロデューサーの行動がパルプの需給バランスを大きく左右し, 結果として価格の変動幅を増幅させてきた。その構造は現在も基本的には変わってない。しかし, 上例のグラフをよく見ると, 90年後半からの価格の下落が従来になく激しい。この原稿を書いている93年12月現在, 西欧におけるNBKPの価格は, 北部産一級品で400ドル前後であるが (12月から各社40ドルの値上げを打ち出し, 440ドルにすると言っている), この価格は85年の大底とほぼ同じレベルである。名目価格は同じでも, インフレを考慮した実質価格は当時よりも下がっている。価格は85年の底値からにわかに急転し, 以後はほとんど毎四半期ごとに上昇, 実に4年もの間, 棒上げ状態を続けたのである。しかし, 90年第1四半期には天井の840ドルを打った。それからは概ね反落の一途をたどる。4年間で今度は価格が半値以下に落ち込み今日に至った。とりわけ90年末から91年末にかけての落差が大きく, 1年問で40%も下落して500ドルになった。暴落といって良いであろう。その後やや持ち直して92年後半には600ドル近くに上がるがそれ以後再び下降した。メーカー側は操短によって需給の改善を図ろうとしたが効果はほとんど出なかった。このような暴落の背景には, 従来の定説とされてきた不況期の需要不振やスウィング・プロデューサー論では説明し切れないものがあるように思われる。何がこのような異常な事態を招いたのであうか。
著者
近藤 沙妃 畔田 吏 浮田 芳昭 片岡 千和 内海 裕一
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. C (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.130, no.10, pp.1811-1816, 2010

The use of three-dimensional (3D) microstructures is becoming essential attempt to develop next generations' microdevices, to integrate many modules and various functions, and enhance the performance of device. In this paper, we present a new concept for lab on a chip using 3D structure and centrifugal force for high-throughput screening system, which has stacked multiple structures with 3D-interconnection.
著者
近藤 恵美 藏澄 美仁 堀越 哲美
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.75-84, 2014-11

本研究は、暑熱環境における温度変化による体温調節負荷を与える顕著な温度差のある温熱環境を移動させる実験を通して、更年期女性と青年女性を比較検討し、更年期女性の生理的心理的反応の特性を明らかとすることを目的とした。実験は屋外と空調された室内を出入りすることを想定し、屋外想定気温35.0℃の前室から18.0、22.0、26.0、30.0℃の実験室へ移動させ、生理的心理的反応を測定した。結果として、更年期女性は青年女性に比べ、末梢部皮膚温の低下が小さいことが観察された。全身温冷感についても、更年期女性の感覚の鈍さが観察された。末梢部の温冷感は、末梢部皮膚温の変化量の大小に対応しており、更年期女性は末梢部皮膚温が青年女性に比べて変化量が小さいことから、末梢部温冷感の鈍さに影響していると考えられる。

1 0 0 0 発掘五〇年

著者
近藤義郎著
出版者
河出書房新社
巻号頁・発行日
2006
著者
安倍 賢一 長野 靖尚 近藤 継男
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.60, no.573, pp.1743-1750, 1994-05-25
被引用文献数
3

We propose a new two-equation heat-transfer model which is modified from the model developed by Nagano, Tagawa and Tsuji (Proc. ASME/JSME Thermal Eng. Joint Conf., 3 (1991), 233). The main improvement is made by introducing the Kolmogorov velocity scale, u_ε≡(νε)^<1/4>, instead of the friction velocity u_τ, to account for the wall-limiting behavior. After investigating the characteristics of various time scales for the heat-transfer model, we employed a composite time scale which gives weight to a shorter scale among the velocity- and temperature-field time scales. With these modifications, it is shown that the present model quite successfully predicts the turbulent heat transfer in a boundary layer subjected to sudden change of heat flux, and in a separating and reattaching flow downstream of a backward-facing step.
著者
木造 利徳 近藤 邦雄 佐藤 尚 島田 静雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.317-318, 1992-02-24
被引用文献数
1

人間の感性を表現したデザイン画は、人間の価値観や個性によって、多次元的な意味も含んでいる。デザイン画の持つ感性を失うことなく分類整理し、デザイン画作成時に再利用できる画像データベースを構築することが、大量の画像を利用するために望まれている。埼玉県繊維工業試験場には、保有する昔からのデザイン画が、約3000以上も存在する。これらをこれからのデザインの作業に生かすために、デザイン画の分類法を確立し、検索システムを構築することが求められている。デザイン画に対するイメージというのは千差万別であり、一概にこれと決めつけることができない。しかしながら、詳細は違っても大局的な部分で、類似した印象・イメージを感じることができる。本研究では、感性言語とデザイン画の関係を明らかにし、人によって感じ方が異なる曖昧性を持った感性言語による画像検索法を提案する。これによって、多くのデザイン画の中から、イメージにあったものを容易に抽出することができ、デザインの支援になると考えられる。
著者
近藤 修一 坂井 崇人 刀祢 茂弘
出版者
山口県農業試験場
雑誌
山口県農業試験場研究報告 = Bulletin of the Yamaguchi Agricultural Experiment Station (ISSN:03889327)
巻号頁・発行日
no.53, pp.73-74, 2002-03 (Released:2011-03-05)

1.本県錦町産の「島根3号」の種子を播種して得た優良株の選抜と自然交配を繰り返した後、優良な1個体を選抜し、「徳育1号」と命名し、1997年に品種登録申請を行い、2001年3月19日に品種登録された。2.本品種は、生育が旺盛で、根茎の肥大が良く、すりおろした時の辛みは「島根3号」に比べやや強い。3.畑栽培に適した栄養繁殖性品種である。