著者
古賀 正則 W.F Menski 金子 勝 山本 一美 山本 由美子 浜口 恒夫 佐藤 毅 中村 平次 山崎 利男 松井 透
出版者
一橋大学
雑誌
海外学術研究
巻号頁・発行日
1985

本年度の研究計画の目的は, 昨年度イギリスにおいて実施した調査によりえられたデータ,とりわけ面接調査票のデータを整理し, 一定の解析をおこなうことによって,今後の調査,研究に役立てることにあった. したがって, 本年度の研究成果はあくまでも中間的総括の域を出ないものであることを,まずことわっておきたい.1.研究成果の概要データの整理,解析によってえられた新たな知見,成果の要点は次の通りである.(1)第二次大戦後,イギリス植民地体制の崩壊にともなって,英領植民地各地に展開していたインド人移民社会は大きな変動を豪り,植民地本国イギリスへの大量の移動をひきおこすとともに,インド亜大陸からイギリスへの移住もまた激増した. こうしたインド人移民の大きな二つの流れに応じて,イギリスにおけるインド人社会の間にさまざまな面で大きな差異がみられることが明らかとなった.(2)イギリスにおけるインド人移民社会の形成,発展の歴史,およびインド人移民社会の構造,インド人移民の組織,政治,経済,社会,宗教活動などを,ある程度解明しえた. 殊にインド人移民のカースト,宗教組織の果す役割の重要性が注目される.(3)インド人移民社会の形成,発展は,イギリスの社会に大きなインパクトを与えつつあるが,他方インド人移民社会は,イギリス社会の影響を蒙り,一定の変容を受けながら,移民社会独自のアイデンティティを形成しつつある. そこにみられるのは,移民社会の受入れ国社会に対する一方的な同化の過程ではなく,多文化社会という新らしい社会の形成にむけての,共存的発展の過程であると考えられる.2.今後の研究の展望これまでの研究によってえられた新たな知見の一つは,インド人移民にとって必らずしもイギリスが最終的な移民先ではなく,かなりのインド人移民がイギリスを経由して,さらに他の英連邦諸国,とりわけカナダ,オーストラリア,あるいはアメリカ合衆国へ再移住しているという事実であった. われわれは今後の研究において,こうした再移住の過程を明らかにするとともに,インド人移民社会それ自体の変容と,受入れ国の社会にあたえるインパクトの解明を試みるつもりである. また,移民の主な送り出し地域の一つであるインドのグジャラート地方の調査を実施することによって,移民送出のメカニズム,海外移民の存在によって,この地方の蒙るインパクトを解明したいと考えている.
著者
小田 桂吾 斉藤 秀之 沼宮内 華子 金森 毅繁 糸賀 美穂 田中 利和 小関 迪
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.491-491, 2003

【はじめに】格闘技は古代から世界各地に様々な民族の文化を反映し存在している。しかし1993年、アメリカでルールの制約がほとんどないUltimate Fighting Championshipが開催され、世界的に総合格闘技という概念の新たな競技が盛んになっており、日本でもPRIDE,修斗,パンクラスなどの興行が人気を集めている。今回総合格闘技の選手の障害,外傷に関する調査をしたのでここに報告する。【対象】プロの総合格闘技選手11名,平均年齢25.7±3歳,平均身長171.6±6cm,平均体重74.1±12kgで全員男性であった。【方法】個別にアンケートにてコンディション,外傷,障害に関する調査を実施した。【結果】対象者の練習頻度は週5.5回、練習時間は2.9時間であった。対象者全員が今までに何らかの外傷,障害を経験していた。複数回答による疾患部位は耳介(カリフラワー状耳),肩関節,腰部,肘関節が8件と最も多く以下、頸部,手指(7件),下腿(すね),足関節,足指(6件),膝関節,鼻,(5件)手関節(4件),顔面,股関節(3件),頭部,上腕,前腕,胸部,大腿部,ハムストリングス(2件)であった。医療機関で確定診断を受けたものについては腰椎分離症,鼻骨折(3件),頚椎捻挫,膝半月板損傷,膝靭帯損傷,肩関節脱臼,足関節捻挫,足関節骨折(2件),手関節脱臼,手関節骨折,肘靭帯損傷,頚椎ヘルニア,腰椎椎間板ヘルニア,肘関節脱臼,大腿肉離れ,足指骨折(1件)等であった。受傷後入院が必要であった選手は3名、手術を行った選手は2名であった。また受傷後の経過として疾患部位の痛みが残存,慢性化しているが59.3%、完治したのが40.7%であったが現在、医療機関でリハビリテーションを行っている選手はいなかった。【考察】総合格闘技は基本的に「目潰し」「噛みつき」「金的攻撃」が禁止され、投げ技,打撃技(パンチ,キック),関節技,締め技の全てが認められている。関節技を例にとれば選手は対戦相手の正常可動域を越えるように技を仕掛けようとする。すなわち外傷,障害を防ぐのは不可能に近い状態である。実際の試合で決まり手となるのは打撃によるKOを除くと、チョークスリーパー(裸締め),腕ひしぎ十字固め,三角締め,足首固め等が多く、疾患部位にダメージを受けやすい傾向にあると考えられる。またグランドでの攻防ではマウント,ガードポジションというポジショニングが重要になってくるが、これは頸部,腰部に対するストレスがかかると考えられる。今回の調査で選手は疾患部位のリハビリテーションをほとんど行っておらず、慢性的な痛みを抱えながら試合に臨んでいると考えられる。競技能力を高める意味でも今後選手の状態に合わせたアスレティックリハビリテーション及びトレーニングの指導が必要であると考えられる。
著者
金子 周司 長島 卓也
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学会年会要旨集 第92回日本薬理学会年会 (ISSN:24354953)
巻号頁・発行日
pp.2-AS1-2, 2019 (Released:2020-03-20)

FAERS is a public database that accumulates more than 9 million self-reports of adverse events. In nearly half of the cases, multiple drugs are prescribed, so that potential drug-drug interactions are to be analyzed. Focusing on adverse reactions relating to diabetes mellitus (DM) caused by an anti-schizophrenic quetiapine, we found that concomitant use of vitamin D analogs significantly suppresses the occurrence of quetiapine-induced DM in FAERS. Experimental validation revealed that quetiapine acutely caused insulin resistance, which was mitigated by dietary supplementation with cholecalciferol. In an expression database, several genes downstream of insulin receptor were downregulated by quetiapine. Further experiments clarified that a PI3K regulatory protein gene, pik3r1, was downregulated by quetiapine, which was reversed by cholecalciferol in mouse skeletal muscle. In addition, insulin-stimulated glucose uptake into cultured myotubes was inhibited by quetiapine, which was reversed by pretreatment with calcitriol. These results suggest that vitamin D prevents the atypical antipsychotic-induced hyperglycemia and insulin resistance by upregulation of PI3KR1. Until now, we have obtained several combinations of concomitant medications to reduce specific adverse events by FAERS analysis. This new strategy will pave the way for drug repositioning and clarifying unknown disease mechanisms.
著者
矢尾 浩 金井 達徳 岐津 俊樹 前田 誠司 矢作 満
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.205-206, 1996-03-06

ビデオサーバでは、ストリームの連続性の保証だけではなく、一定数のストリームを供給するために必要となるディスク数とバッファメモリ量といったコスト面や、新ストリームの再生要求に対する応答時間等の操作性も性能評価の重要な指標となる。我々は数百~数千のクライアントに対し同時に映像ストリームを供給可能なマルチメディアサーバ「スマートストリーマ(以下SS)」を開発している。SSは、単純なVODサービスだけではなく、多数の映像データを切替えながらアクセスするオンラインショッピングや映像検索などのサービスでの利用を想定しているため、特に応答時間の短縮が重要課題である。本稿ではSSの制御ソフトウェアについて報告する。
著者
金子 邦彦 藤本 仰一
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30

(i)表現型進化の方向性と拘束の理論:触媒反応ネットワークモデルを用いて、大自由度の表現型が進化により低次元に拘束されることを固有値スペクトル解析で明らかにした。さらにそれにより進化の方向が拘束されるがその一方で新たな環境への進化が加速されることを示した。また遺伝子制御ネットワークそして統計力学のスピングラスモデル、またタンパクのデータを用いて、この進化的次元縮減が普遍的であることを示した。(ii)階層進化理論:原始細胞においてその分子数がある程度以上になると遺伝と機能を担う分子の役割が対称性の破れで生じる、つまり分子生物学のセントラルドグマが出現することを発表した。次に細胞と細胞集団の階層では細胞が有用成分をもらすことで多種共生が生じること、最後に個体ー社会の階層に対してはゲーム理論による搾取構造の形成を示し、さらに未開人類社会での婚姻構造の形成を明らかにした。(iii)進化発生対応の理論:発生過程と進化過程の対応関係において、遅く変化する遺伝子発現の意義を調べた。特にエピジェネティック過程を考慮して、発生過程の安定性(homeorhesis)の現れる仕組みを明らかにした。また倉谷班との共同で発生砂時計仮設をサポートするシミュレーション結果を得た。[藤本G]完全変態昆虫のサイズ進化の法則(各種の最終体重は臨界体重に比例)を発見した。ボディプラン(器官の数と空間配置)の進化発生対応では、被子植物の左右対称な花の多様性を包括する発生特性を数理モデルから予測した。加えて、動植物のボディプランに揺らぎを見出した。基部双子葉植物の花器官配置では、らせん状と同心円状の2型のみが同種内で共存し、この拘束された種内多型は発生過程に起因することをモデルから示した。刺胞動物のイソギンチャクでは、器官配置の左右対称性と放射対称性の種内多型を、配置過程の計測を通じて見出した。
著者
島村 聡 金城 隆一 鈴木 友一郎 稲垣 暁 しまむら さとる きんじょう たかかず すずき ゆういちろう いながき さとる Shimamura Satoru Kinjyo Takakazu Suzuki Yuichiro Inagaki Satoru 沖縄大学人文学部 沖縄大学地域研究所特別研究員 沖縄大学地域研究所特別研究員 沖縄大学地域研究所特別研究員
出版者
沖縄大学地域研究所
雑誌
地域研究 = Regional studies (ISSN:18812082)
巻号頁・発行日
no.24, pp.51-62, 2019-10

沖縄本島中南部にある5か所の子どもの居場所等の職員、および、当該居場所を管轄する自治体の担当課の職員に居場所運営についてのインタビューを実施したところ、居場所は自身持つ指向から活動型と支援型に分かれ、行政のスタンスから地域型と機関型に分かれることが判明した。行政におかれた子どもに貧困対策支援員は、位置づけの曖昧さから、これらの居場所のネットワーク拡大には寄与できていない。
著者
金井 郁夫
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.31-41, 1964-06-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1

1960年から1963年までの4年間に調査した,70個のツバメの巣に関するデーターをまとめた結果を次に記す。1.造巣作業中,巣での滞在期間は平均34秒,泥の運搬間隔の平均は73秒で,1時間の回数は平均27回である。仕事は主に午前中行い,造巣日数は平均10日である。2.縦の変異は4.8~12.1cmで平均が7.9cm,標準偏差は1.05である。3.横の変異は7.5~14cmで平均が9.9cm,標準偏差は1.23である。4.縦横差の変異は0~6cmで平均が1.7cmである。5.縦横平均の変異7~13cmで平行が8.9cm,標準偏差は1.09である。6.深さの変異は1.5~5cmで平均が3.2cm,標準偏差は0.27である。7.外高の変異は2~32cmで平均が7.8cm,標準偏差は6.04である。8.巣上空間の変異は4~42cmで平均が10.8cm,標準偏差は2.78である。9.旧巣と新巣の測定差は,縦で0.3cm(3.8%)古巣,横で0.9cm(9.1%)古巣,縦横変異(差)で0.4cm(24%)新巣,縦横平均で1.4cm(16%)古巣,深さでは0.4cm(1.1%)古巣,外高で0.8cm(10%)古巣,巣上空間で2.5cm(23%)古巣の方が大きい。10.屋外と屋内の測定差は,縦で0.1cm(1.3%)外,横で0.4cm(4%)外,差で0.4cm(23.%)外,縦横平均で0.1cm(1.1%)内,深さで0,外高で1.6cm(2.1%)内,巣上空間で4.8cm(44%)外が大きい。11.各調査項目とも一般に旧巣が新巣より大きい。但し,縦横変異は新巣が大である。屋外と屋内を比べると,巣の上面積と巣立ちの空間は屋外の方が大きい。他はすべて屋内巣が大である。12.ツバメの巣は一般に横長である。縦と横は比例し,縦横平均に対し深さは変異の幅が狭い。営巣に必要な空間は6~74cmで平均19cmである。縦横平均と容積指数,深さと容積指数は比例している。
著者
西川 節 金 安明 正村 清弥 井上 剛 中西 愛彦 生野 弘道
出版者
日本脊髄外科学会
雑誌
脊髄外科 (ISSN:09146024)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.221-226, 2012 (Released:2017-05-11)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

Object : To study long-term outcomes of anterior decompression and fusion (ADF) and expansive laminoplasty (ELP).   Materials and Methods : Our study included 120 patients who underwent iliac bone grafting via the modified trans-unco-discal approach (TUD) or ELP with spinous process or ceramic spacers over 5 years ; the neurological symptoms and Japanese Orthopedics Association (JOA) scores of these patients were reviewed.  Results : Neurological symptoms and JOA scores improved in 111 out of the 120 patients (93%), and worsened in 9 patients (8%). There was no significant difference in the rate of improvement of neurological symptoms, and JOA scores in all groups. There was no significant difference in the improvement rates of neurological symptoms and JOA scores between all groups.  Conclusions : ADF and ELP showed comparable rates of improvement in neurological symptoms and JOA scores. It is important to choose the appropriate methods according to the pathophysiological conditions. ADF should be performed only for the appropriate lesions, since the problems pertinent to the adjacent lesions may ensue.

1 0 0 0 OA 実録恋寝刄

著者
鶯亭金升 編
出版者
立田市次郎
巻号頁・発行日
1899
著者
小林 毅 石井 正則 金田 健作 八代 利伸 森山 寛 須藤 正道 関口 千春 五十嵐 眞
出版者
Japan Society for Equilibrium Research
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.507-515, 1994 (Released:2009-10-13)
参考文献数
10

In an effort to determine the mechanism causing motion sickness, various studies have been conducted on the autonomic and central nervous systems. Recently, it was reported that the level of antidiuretic hormone (ADH) rises when motion sickness appears, and the possible involvement of hormones in the manifestation of motion sickness has become a focus of attention.We induced motion sickness by Colioris stimulation in healthy adult volunteers, and examined hypothalamus-pituitary-adrenal hormones and neuropeptides before and after stimulation and during the recovery process.In the high susceptibility group blood levels of ADH, ACTH, prolactin, cortisol, β-endorphin and MET-enkephalin and urinary levels of ADH immediately after stimulation were significantly higher than those in the low susceptibility group. These levels returned to normal after 30 minutes of rest. In the high susceptibility group the motion sickness score immediately after stimulation showed a significant correlations with the blood levels of ADH, ACTH and β-endorphin.These results indicate that ADH, ACTH, β-endorphin and MET-enkephalin are involved in the nausea and vomiting of motion sickness. Moreover, it seems that the mechanism and effects of these hormones may differ from each other. Since the urinary level of ADH is very closely correlated with its blood level, the use of urinary ADH testing is advocated as a simple method with no discomfort.
著者
金 沙織 福岡 安則 黒坂 愛衣
出版者
埼玉大学大学院文化科学研究科
雑誌
日本アジア研究 : 埼玉大学大学院文化科学研究科博士後期課程紀要 = Journal of Japanese & Asian Studies (ISSN:13490028)
巻号頁・発行日
no.8, pp.171-202, 2011

朝鮮半島文化のシャーマンである巫堂(ムーダン)を生業として母親をもつ、ある在日コリアン2世の女性からの聞き取り。語り手のライフストーリーのうち、本稿では、娘の立場から見た「巫堂の世界」に焦点をあてる。中村幸子さん(仮名)は、1935年大阪生まれ、聞き取り時点では日本国籍を取得している。母親は、遠方からも客が訪ねてくるほどの有名な巫堂だった。語り手は、子どものころから、乳飲み子の弟妹たちの子守り役として、頻繁に、母親の祭儀についてまわり、その仕事を間近に見てきた。また、母親に巫堂の力を与えた「神さん」の世界のありようや、祭儀の手続きがもつ意味、「神さん」と人間のあいだに立つ巫堂の役割などについて、語り手は、成育の過程で繰り返し、母親からの説明を聞いている。さらに、語り手自身、「神の使いが降りてきて造花がしゃべった」「息子の交通事故を母親が事前に教えてくれた」不思議の体験をしている。その意味で、母親だけでなく、語り手本人もまた、巫堂の世界観を生きてきた一人である。本稿は、亡くなるときまで「巫堂」をまっとうした母親の姿を、まさに巫堂の世界観に基づいて伝える、娘による物語りである。数々の不思議の出来事が語られるが、語り手のストーリーテリングの能力は高く、ひとつひとつのエピソードの情景が、まるで昨日の出来事のように鮮やかだ。そのなかで、巫堂の「拝み」は、けっして人間の思いどおりに現実を動かすようなものではなく、あくまでも、「神さん」の声を聞き、「神さん」を怒らせている原因を取り除くことで、人間世界に起きている障りを小さくしようとするものだとされる。母親から伝えられた知識や解釈が随所に散りばめられているこの物語りは、その受け手(聞き手/読者)がたとえ巫堂の世界観を共有していなくとも、その世界観を生きる人々がたしかにいる(いた)ことを、了解させる力をもっている。巫堂の世界観を伝える口承伝承ともいえるだろう。なお、「ある在日コリアン2世ハルモニの語り(下)」では、「帰化しても気持ちは朝鮮人」と題して、語り手自身の生の軌跡に焦点をあてて報告する予定である。