著者
河野 行雄 鈴木 富雄 横川 利則
出版者
長野県衛生公害研究所
雑誌
長野県衛生公害研究所研究報告 (ISSN:03879070)
巻号頁・発行日
no.19, pp.57-61, 1997-01 (Released:2011-03-05)

近年の公共水域の汚濁は生活排水が主要な汚濁源となっており,その浄化は重要な課題となっている.今回の調査は,木炭を敷き詰めた木炭浄化槽に合併処理浄化槽放流水を導入し,その水質浄化能について検討した.木炭浄化槽による主要項目の除去率はSS80%,COD14%,BOD83%,TN21%,TP6.3%であり,有機性汚濁物質の浄化に比較的高い効果が,また窒素は懸濁物の他に無機態窒素の除去がみられた.今回の木炭浄化槽ではりんの明確な除去効果はみられなかったが,5年間ほとんど維持管理を行わない場合でも,有機性汚濁物質及び窒素の除去に効果がみられた.
著者
中川 紗江 鈴木 直人
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.181-191, 2013-12-31 (Released:2014-10-29)
参考文献数
32

本研究の目的は,不快感情が喚起されている時に意図的に笑顔を表出することによって生じる主観的な感情と表情の違いが,心臓血管系反応に及ぼす影響を検討することである。42名の実験参加者が2本の短い映像を視聴した。それぞれの群ごとに嫌悪映像(不快刺激群),楽しい映像(快刺激群),中性映像(中性刺激群)を2本ずつ使用した。実験参加者は,一方の映像は意図的に笑顔を表出しながら視聴するよう求められ(笑顔条件),もう一方の映像は自然な表出で視聴するよう求められた(自然条件)。実験参加者が映像を視聴している間,心臓血管系反応測定した。さらに,実験参加者が視聴し終わった後も心臓血管系反応を継続して測定した。その結果,笑顔条件において全ての群の収縮期血圧および拡張期血圧の値が上昇した。しかしながら,心拍数は快群において上昇した一方,不快群では減少した。不快群の心臓血管系反応パターンは,α-アドレナリン作動性収縮によって引き起こされるパターンII反応に類似している。心臓血管系の活動に関する研究において,このパターンはしばしば不適応な反応の指標としてみなされる。したがって,これらの結果は,感情価のズレが不適応的な生理反応を引き起こす可能性を示唆している。
著者
鈴木 努 川本 思心 西條 美紀
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.3-18, 2012-12

Most universities in Japan conduct course evaluation as part of the faculty development program, and many methods to improve course content have been proposed. However, few studies discuss the improvement of omnibus courses. In this paper, we suggest a new method to improve omnibus courses, especially their consistency and relevance. We designed an omnibus course named "Clean Energy Business and Social Acceptance," which consisted of six serial lectures, each conducted by a different lecturer. Prior to the running of the course, we interviewed the lecturers and formulated a conceptual network with regard to the course content. The conceptual network helped lecturers grasp the course content and facilitated the improvement in relations among lectures. At the end of each lecture, we collected students' responses including some keywords pertaining to topics they were interested in. We integrated these keywords into another conceptual network and then examined the consistency and relevance of the lectures. The measures of network analysis were used to compare the keyword network with that of the previous year's course, with regard to which no conceptual network was formulated before the course and no interviews were conducted. The comparison revealed the effectiveness of our method.
著者
沼崎 麻子 湯浅 万紀子 藤田 良治 鈴木 誠 松田 康子 吉田 清隆 斉藤 美香
出版者
北海道大学高等教育推進機構 高等教育研究部 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.73-89, 2014-06

As a place of science communication, museums are being expected to encourage all citizens to avail and participate in its activities. This paper focuses on adults with ASD (Autism Spectrum Disorder) with whom a questionnaire survey was carried out. 80% of them answered they liked museums. There were two main reasons behind this: the appreciation for the museum’s side of satisfying intellectual interests and its less burdening atmosphere and environment for people with ASD who are hypersensitive. On the other hand, it became clear that services for improving learning effect are not being sufficiently used by them. They also face some difficulties when using museums: museums might be inconveniently located, do not match well with their hypersensitivity, and often have hard to understand indications and instructions. The result of the survey reveals that there is an expectation for museums to improve usability to match better with people with ASD’s characteristics. Such improvement will have to take into consideration different positions that people have and obstacles they face, in order to incorporate universal design to museums and develop educational programs that utilize minorities’abilities. On a long-term basis, museums’contribution will be expected for the development of science communication and community.
著者
鈴木 克典 湯川 高志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.414-422, 2013-01-15

企業が技術戦略を策定する際,技術動向を調査・視覚化してその方針決定に役立てる.このような調査に有益なツールの1つとして特許マップがあり,多くの場合,この作成には特許文書に付与されている国際特許分類(IPC)コードが利用される.この特許マップに学術論文の情報を追加することができれば,より有益なツールになると考えられるが,現在学術論文はIPCに基づいた分類が成されておらず特定分野の網羅的な調査には大きな負担がともなう.本稿では,学術論文に自動的にIPC分類コードを付与するシステムの精度向上を目指し,分類手法を構成する3つの要素について高度化とパラメータの最適化を図った.本稿が最適化した3つの要素とは,文書からのキーワード抽出,クエリ拡張,類似特許検索における適合度計算である.これらの要素について,いくつかの方法とパラメータを変化させて実験的に評価し,その最適値を見出した.結果,再現率をほとんど低下させることなく,MAP値を0.199から0.494に改善することができた.A patent map is a technical information map which was made by analyzed patents. It would become more useful if it includes information not only on patents but also research papers. To achieve this, automatic classification of research papers into the International Patent Classification System (IPC) is required, and some systems has been developed. In the present paper, the elemental functions which is consisted in an automatic technical paper classification system are improved and optimized for obtaining higher classification accuracy. The new method that focuses on keyword extraction is proposed and search query is expanded by concept base. In addition, patent document has a specific structure consisting sections represented in different granularity keywords. A method that weighing the score of similarity calculated between each structural element is proposed. Using the methods described above, the optimum value of precision is got by varying parameters. As a result, the MAP value was up to 0.494 from 0.199 in empirical assessment.
著者
鈴木 健太郎 菊池 恵美子 木之瀬 隆
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.23-33, 2007-06-25
被引用文献数
3

車いす移送車両の安全性と快適性の現状と課題を明らかにすることを目的に,利用する障害当事者にアンケート調査を実施した。回答者は119名で,その中で65歳以上の高齢層の症例は79名(66.4%)であった。結果,利用時の事故遭遇者は11名(9.2%),ヒヤリ・ハット体験者は11名(9.2%),乗り心地に何かしらの問題を感じる症例は66名(55.5%)であった。得られた回答を,年齢,身体障害の程度,使用している車いすの種類,添乗者の有無,乗り心地の状況で分析した結果と記述意見から,車いす移送車両やその利用における課題は,車いすを車いす移送車両に固定する方法,車いすと利用者との適合,車体や道路状況の改善とそれに応じた運転の配慮,運転手や添乗者の気配りや理解,対応方法や安全確認にあることが示唆された。
著者
鈴木 克明
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.13-27, 1995
被引用文献数
4

本論では、状況的学習観に基づく算数の問題解決領域の授業を支援するためのバンダービル大学における教材開発研究「ジャスパープロジェクト」を詳細に取り上げ、教室学習文脈へのリアリティ付与について、その可能性と課題を考察した。ジャスパー教材群の中心をなす6つの冒険物語と7つの教材設計原則(ビデオ提示、物語形式、生成的学習、情報埋め込み設計、複雑な問題、類似冒険のペア化、教科間の連結)を紹介し、評価研究のあらましを述べた。3つのジャスパー教材の利用形態(積み上げ式直接教授法、構造的問題解決法、生成援助法)とそれを支える授業観を吟味し、プロジェクト推進者の推奨する「生成援助型」の授業における教師の役割変化について言及した。最後に、授業設計モデルと状況的学習観からのジャスパー批評をまとめ、教室学習文脈のリアリティについて吟味した。
著者
田中(鈴木) 裕子
出版者
美学会
雑誌
美學 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.37-48, 2010-06-30

Denis Diderot examined the notation of the cylinders that were used in barrel organs and explored the possibilities of these instruments in his 'Quatrieme Memoire-Projet d'un nouvel orgue' <<Memoires sur differents sujets de mathematiques>> (1748). His Projet was not regarded as being particularly important at the time and his suggestions were probably never put into practice; they might be dismissed as just another technical proposal in the long history of automatic musical instruments. However, the Projet is important as a documentation of Diderot's attitude towards music and musicians. Diderot criticized those musicians who were satisfied with the status quo and pointed out the advantages of developing automatic instruments which they might have perceived as a threat. On the other hand, he insisted that musicians should not be required to keep rigidly accurate time like a machine or chronometre. Although we see that an analogy is being drawn between musicians and machines, it is clear that he did not believe that one was a substitute for the other. Studying his text, we see that he neither rejected machines nor regarded them with blind admiration.

3 0 0 0 OA 新撰日本文典

著者
鈴木忠孝 著
出版者
興文社
巻号頁・発行日
1899
著者
鈴木 敏則
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.37-47, 1996-04-01

雇用における男女平等は我が国でも大きなテーマとなっていた。憲法第14条では個人の尊厳と両性の本質的平等を法における最高の価値として位置付けると同時に, 男女の性による不合理な差別を一切禁止している。これを受けた労働法規として, 労働基準法第3条の均等待遇の原則, 第4条の男女同一資金の原則が規定されている。これらの規定では「性別」の文言を欠き, これまでの判例でも賃金以外の労働条件に関しては性別を理由とする差別待遇は許されるのではないかという疑問を生じていた。一方, 日本の産業構造の変化も著しく, サービス経済化や事務労働OA化など女子労働力を必要としていた。女子労働者の側からすれば, 家事労働の機械化と子育て期間の早期終了, 女子の学歴高度化, 高収入志向, 住宅ローンや教育費のための共働きなど女子の就労を当然とみる社会的風潮が生まれてきた。こうした様々な背景の中で男女雇用機会均等法が1961年より施行された。この10年間で雇用の分野で性差別をしてはならないという認識が一般化し, 積極的に女性の能力を活用しようとする企業が増加している。しかし, 女性の職場は広がったものの, 男女の賃金格差や採用差別の改善は依然と進まず, 限界が指摘されている。この均等法はもともと成立時から努力義務という性格をもっていて, これに違反しての罰則はないという点で大きな問題点を含んでいた。これらから今秋には婦人少年問題審議会で均等法の見直しが始まることになっている。今後, 均等法は伝統的な固定概念や家事育児の役割を肯定した上での雇用慣行と男女平等の調和をはかるべく検討されなければならない。
著者
鈴木 博章
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では蚊を模倣した超低侵襲微小血糖値分析システムの実現を目的とした。このシステムは、血糖値(グルコース)測定用マイクログルコースセンサ、サンプリング機構、微小針から構成される。本研究ではサンプリング機構につき重点的に検討を行い、特に夜間などに長時間かけて徐々に吸引できるものをめざした。上記のサンプリング機構を実現するために、poly(N-isopropylacrylamide)/acrylic acid共重合ゲルに酵素(グルコースオキシダーゼ)を包括したものを作製した。酵素反応に伴うpH変化をゲルの体積変化の駆動力とした。ゲルの体積変化はシリコーンゴムダイヤフラムを介し、微小流路内の圧力変化に変換され、サンプル溶液が吸引・排出される。センサ作用極上には、妨害物質の影響を低減し、測定可能な濃度範囲を拡張するため、Nafion膜およびpolyHEMA膜を形成した。サンプリング機構は約10時間にわたり、ほぼ一定の流量で外部液を吸引することができた。Nafion膜被覆グルコースセンサの選択性を調べたところ、グルコース比で、アスコルビン酸に対し約1%、尿酸に対し約1%、アセトアミノフェンに対し約33%の応答が認められ、Nafion膜により妨害物質の影響を低減できることが示された。また、polyHEMA膜を拡散制限膜として形成することにより、微小流路中で測定した場合の検量線の直線範囲が30mM付近まで拡張された。微小針を緩衝液を充填したチューブに刺して緩衝液を吸引させ、その後さまざまなグルコース溶液の充填したチューブにシステムを刺し変え、これに対する応答を連続的に調べた。グルコース濃度の変化に対する明瞭な電流値の変化が認められ、このシステムが実際に機能していることが確認できた。
著者
鈴木 覚 河村 雄行
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 (Low temperature science) (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.71-75, 2006-03-22

ナトリウム型スメクタイトの層間水の分子構造と鉱物--水相互作用の関係について分子動力学法に より研究した.層間水の振動スペクトルは3365と3500cm-1 にピークを持ち,赤外吸収測定結果とほ ぼ一致している.後者は粘土表面に向かって配向したO-H 結合に帰属され,前者は配向していない O-H 結合に帰属される.水素結合距離(H...O距離)は,水分子--粘土表面間(0.22nm)の方が水 分子--水分子間(0.19nm)よりも長く,振動数との関係も調和的であった.
著者
大谷 真 岩谷 幸雄 鈴木 陽一 伊東 一典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.239, pp.103-108, 2010-10-14
参考文献数
20

音像定位において頭部伝達関数(HRTF : head-related transfer function)は大きな役割を果たしている。HRTFを用いた音響信号処理により,受聴音に対して仮想的に音像を呈示する聴覚ディスプレイ(VAD : virtual auditory display)の研究開発が行われている。しかし,頭部および耳介形状の個人差に起因してHRTFは強い個人性を持つため,理想的には,3次元聴覚空間の合成には受聴音本人のHRTF測定/計算が必要とされ,HRTFを用いたVADの汎用性の低下を招いている。この問題を解決するためには,耳介形状がHRTFの振幅周波数特性上の山(ピーク)や谷(ノッチ)を生みだす物理的メカニズムを明らかにする必要がある。このために,多くの研究者がHRTFと耳介形状の関連について実頭/擬似頭や耳介レプリカを用いた測定により検討を行ってきた。それに対し,本研究では,耳介表面の音圧とHRTFを境界要素法(BEM : boundary element method)を用いて算出し,耳介形状がHRTFに与える影響について検討を行う。BEMにおける各境界要素上の音圧はその部位からの反射音の強さに相当するため,耳介表面音圧を算出することで,HRTFに対する耳介形状の影響を直接的に観察することが可能である。結果から,耳介の各部位がHRTFに現れるピークやノッチ生成に与える影響の一部が示唆された。さらに,音源仰角に対してその周波数が連続的に変化するノッチであっても,音源仰角に依存してその耳介表面音圧には様々な分布パターンが存在し,その生成メカニズムが多様であることが分かった。