著者
能城 修一 佐々木 由香 鈴木 三男 村上 由美子
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.29-40, 2012 (Released:2021-03-17)

近年,コナラ属アカガシ亜属のうちイチイガシの同定が木材組織から可能となり,それをもとに,関東地方で弥生時代中期から古墳時代の木製品を多数産出した7 遺跡を対象として,アカガシ亜属の木材を再検討した。その結果,この時期を通して鋤鍬にはイチイガシが選択的に利用されていた。海岸に近い神奈川県池子遺跡と,千葉県常代遺跡,国府関遺跡,五所四反田遺跡では,鋤鍬の完成品だけでなく,未成品や原材でもイチイガシとイチイガシの可能性の高い樹種が50 ~ 70%を占めており,遺跡周辺で原材の採取から加工までが行われていたと想定された。それに対し,内陸部の埼玉県小敷田遺跡と群馬県新保遺跡ではイチイガシの利用比率が下がり,イチイガシ以外のアカガシ亜属やコナラ属クヌギ節を鋤鍬に用いる傾向が認められた。もっとも内陸部の新保遺跡では,鋤鍬の完成品だけでなく未成品や原材でもイチイガシ以外のアカガシ亜属とクヌギ節がほとんどを占め,イチイガシの鋤鍬は完成品と未成品が少数しか出土せず,これらは関東地方南部から移入されたと想定された。鋤鍬以外の木製品では,神奈川県や千葉県の遺跡でもアカガシ亜属以外の樹種が70%以上を占め,アカガシ亜属の中でもイチイガシの比率は低い。このように,イチイガシが鋤鍬に限定して選択されていた理由は,イチイガシの木材がアカガシ亜属の他の樹種の木材に比べて柔軟性があり,軽いわりに強度があるためであると想定された。
著者
鈴木 有佳 仙田 幸子 本庄 かおり
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.669-676, 2021-10-15 (Released:2021-10-06)
参考文献数
16

目的 出産を経ても就業を継続する女性の割合が増加している。欧米では,女性の特定の職種が出産時・出生後の児の死亡リスクと関連することが報告されているが,日本ではこの関連を検討した疫学研究はない。そこで本研究は,全国調査データを用い,母親の職種による妊娠12週以降出生までの児の死亡リスク(解析1),出生から出生1年後までの児の死亡リスク(解析2)について検討することを目的に実施した。方法 1995, 2000, 2005, 2010, 2015年度人口動態職業・産業調査(出生票,死産票)ならびに1995-96,2000-01,2005-06,2010-11,2015-16年度人口動態調査(死亡票)を用いた。解析1では生まれた児のうち,5,355,881人を対象とし,解析2では同期間に出生した児のうち,5,290,808人を対象とした。説明変数は母親の職種(管理・専門・技術,事務,販売,サービス,肉体労働,無職),目的変数は自然死産(自然死産なし=出生)(解析1),新生児・乳児死亡(新生児・乳児死亡なし=出生1年後生存)(解析2)とし,ロジスティック回帰分析を用いて解析した。また,有職者における職種に起因した自然死産の人口寄与危険割合を算出した。結果 自然死産は61,179人(1.1%),出生した児のうち新生児・乳児死亡は12,789人(0.2%)だった。出産時の母親の職種が管理・専門・技術と比較した,事務,販売,サービス,肉体労働,無職の,自然死産に関する調整オッズ比(95%信頼区間)は,1.24(1.20-1.29),1.48(1.41-1.56),1.76(1.69-1.83),1.54(1.46-1.61),0.95(0.92-0.98)だった。母親の職種と新生児・乳児死亡の関連は見られなかった。また,有職者における母親の職種が事務,サービスの自然死産に対する人口寄与危険割合は7.4%,12.3%だった。結論 本研究の結果,母親の職種により自然死産リスクに差が認められた。とくに,母親の職業がサービス職である場合,自然死産のリスクならびに人口寄与危険割合が最も高かった。一方,母親の職種と出生後の新生児・乳児死亡リスクには関連がみられなかったことから,母親の職種は妊娠期において児の状態に影響する可能性がある。本研究結果により,妊娠期の母親の職業に注意を払う必要が示唆される。
著者
横田 正 大嶽 徹朗 鈴木 里英 衛藤 英男 大嶋 俊二 稲熊 隆博 石黒 幸雄
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 45 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.449-454, 2003-09-01 (Released:2017-08-18)

Lycopene has aroused public interest owing to its role in preventing oxidative damage, cancer and aging, etc. These activities are considered to be due to its high ability of scavenging active oxygen species. In the present work, we have examined the products formed by the photosensitized oxygenation, hydrogen peroxide oxidation, m-chloroperbenzoic acid (mCPBA) oxidation and peroxinitrite oxidation of lycopene. We also isolated two oxygenated lycopenes with a novel five-membered ring end-group from tomato puree. In photosensitized oxygenation (singlet oxygen oxidation), we isolated apo-6'-lycopenal and 6-methyl-5-hepten-2-one. The reaction is supposed to proceed via 1,2 addition of singlet oxygen to 5,6 double bond of lycopene. In hydrogen peroxide and m CPBA oxidation, we isolated oxygenated lycopenes with a novel five-membered ring end-group (2,6-cyclolycopene-1,5-diol, 2,6-cyclolycopene-1,5-epoxide, 1,16-didehydro-2,6-cyclolycopene-5-ol and 1-methoxy-2,6-cyclolycopene-5-ol). It is proposed that the formation for these compounds occurs by rearrangement of lycopene 5,6-epoxide. In peroxinirite oxidation, we could classify the products into three types, 1) oxidative cleavage products, 2) non-cleavage oxidative products that have C40 carbon skeleton, and 3) Z-isomers of lycopene. The reaction pathways to form these compounds will be discussed.
著者
鈴木 隆芳
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 = JOURNAL OF ATOMI UNIVERSITY FACULTY OF LITERATURE (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
no.44, pp.9-28, 2010-03

「言葉とは何か」と問われて、返答に窮して黙りこくってしまう人はそういない。この種の問題については、だれもが自分流の切り口を持っているものだ。だがそんな時、突然、「あなたが今話しているのは、それは言葉そのもののことではありませんね。」と言われたらどうだろう。はっとして振り返ると、自分の言っていたことがなにも言葉に限った話しではないことに気づく。言葉と同じ用途、性質、役割をもったものなど他にいくらでもあるものだと思い至る。\n 言語学が得意としてきたのは実はこうした譬え話である。「言葉のように見えて、ほんとうは言葉でないもの」は「言葉そのもの」よりもよっぽど扱うに易しいからである。\n ここでは、こうした「言葉のように見えるもの」が、言語学にもたらした功罪を考える。なぜなら、それは言語学にとって毒にも薬にもなってきたからである。
著者
瀧口 隆一 鈴木 豊
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.11-18, 2000 (Released:2010-06-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

アシドフィルスグループの乳酸菌3株 (アシドフィルスLA1株: Lactobacillus acidophilus SBT2062, アシドブイルスLA2株: L. acidophilus SBT 2074, アシドフィルスLG株: Lactobacillus gasseri strain Yukijirushi), ブルガリクスLB株 (Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus SBT0164) およびサーモフィルスST株 (Streptococcus thermophilus SBT1035) の人工消化液中での生残性を検討した.アシドフィルスグループ3株は, 人工胃液および人工腸液に耐性を示した.とくに, アシドフィルスLG株はpH2.5の人工胃液中で3時間保持しても生残し, 最も高い耐性を示した.これらは, 人工腸液 (胆汁末を0.1~1.0%含むMRS培地) 中で生菌数が増加したことから, 摂取後も生きて腸内に到達し, そこで増殖すると考えられ, プロバイオティクスとしての適応性が認められた.これに対し, ブルガリクスLB株とサーモフィルスST株は人工胃液に対する耐性が低かったことから, 摂取後は胃中でそのほとんどが死滅すると思われた.また, 生きて胃を通過したとしても, 人工腸液に対する耐性も低かったことから腸内でも死滅するものと考えられた.
著者
鈴木 和将 大畠 誠 川本 克也
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.157-171, 2012 (Released:2012-09-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

近年,ごみ焼却施設は,公衆衛生の向上,環境保全といった目的だけでなく,地球温暖化防止,資源・エネルギー消費の抑制等,低炭素・循環型社会に果たす役割が強く求められている。本研究は,ごみ焼却施設の低炭素・循環型社会への適合性を評価する手法の開発を目的として,15の焼却施設に対してLCA等の詳細調査を行い,評価指標の検討を行った。その結果,評価指標として,投入されるエネルギー量,CO2排出量,搬出残渣量等を抽出した。また,施設から外部へ供給する電気と熱という質の異なるエネルギーを同じ尺度で評価できる,外部へのエネルギー供給率を指標として提案した。さらに,これらの指標を用いて,発電効率の高い97焼却施設に適用評価し,ベストプラクティスである焼却施設の実態を把握するとともに,ベンチマーキングの基礎情報を得ることができた。また,これらの結果をわかりやすく示すことができるスコアリングおよび表示方法を提示した。
著者
鈴木 孝弘 田辺 和俊 中川 晋一
出版者
東洋大学自然科学研究室
雑誌
東洋大学紀要 自然科学篇 = JOURNAL OF TOYO UNIVERSITY NATURAL SCIENCE (ISSN:13468987)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.69-82, 2018-03

Elderly dementia would be considered as one of serious social issues in near future inJapan. A nonlinear regression method by support vector machine (SVM) was appliedto search factors related to patient rates of 47 prefectures among 34 kinds of lifestylehabit factors. Fourteen kinds of related factors were obtained; depression, alcohol,hyperlipidemia, hobby, fruits, stress disease, high blood pressure, soy product, cereal,fresh fish, cooking oil, exercise, fresh vegetable, and diabetes. Depression is the mostimportant factors to patient rates, and the relative significance of the related factors tothe patient rates of elderly dementia is discussed on the basis of their sensitivities. Theinformation obtained could be used for serving as a reference to factors which shouldbe verified in cohort or case-control studies for clarifying the causes of elderly dementiain Japan.
著者
鈴木 邦明 渋谷 真希子 長谷 由理 平沖 敏文 木村 幸文 藤澤 俊明
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.116-123, 2017-03

日常臨床において,全身麻酔も,局所麻酔も,高い安全性で実施されているが,全身麻酔薬及び局所麻酔薬の詳細な作用機序や,副作用の機序については,いまだに不明な点が多く残されている.全身麻酔の作用機序の仮説は,大きく,脂質に対する作用を重視する非特異説(リピド説)と,特定のタンパク質に対する作用を重視する特異説(タンパク説)とに分けられる.長年にわたる研究の中で,非特異説に傾いたり,特異説に傾いたりしてきたが,現在でも一致はみていない.本稿では,両説の現状を紹介した後に,非特異説に違いないと考えて著者らが行ってきた研究を紹介したい.局所麻酔薬の作用機構は,Na+チャネルを遮断して神経インパルスの発生と伝導を抑制する,として確定されているが,Na+チャネル以外のさまざまな受容体,イオンチャネルや酵素に作用することも認められている.局所麻酔作用に付随する種々の作用の詳細,あるいは副作用の機序という点では,不明な点も多い.本稿では局所麻酔薬の作用に関する現状を紹介した後,ATPaseを中心に著者らが行ってきた研究を紹介したい.
著者
田村 暢一朗 椎野 泰和 鈴木 幸一郎
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.33-37, 2015-01-01 (Released:2015-01-19)
参考文献数
7
被引用文献数
2

今回われわれはウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症の2症例を経験したので報告する。【症例1】71歳,女性。朝方自宅で倒れているところを発見された。頭部CTおよびMRI,脳波,髄液検査などで異常所見なく,ウレアーゼ産生菌による尿路感染を疑った。気管挿管,尿道バルーンを挿入,ampicillin/sulbactamの投与を行った。尿培養ではCorynebacterium urealyticumが検出され,ウレアーゼ陽性であった。【症例2】67歳,女性。意識障害を主訴に救急搬送された。ウレアーゼ産生菌による尿路感染を疑い,尿道バルーンを挿入,cefozopranの投与を行った。尿培養ではKlebsiella oxytocaが検出され,ウレアーゼ陽性であった。2症例とも尿閉であった。尿閉患者における高アンモニア血症の原因を鑑別する上で,ウレアーゼ産生菌による尿路感染は考慮されるべきである。
著者
鈴木 由美 箭本 佳己
出版者
都留文科大学
雑誌
都留文科大學研究紀要 (ISSN:02863774)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.67-76, 2012

谷島(2005)は、大学への適応困難な学生が増加しており、その原因として、学力面での困難と並んで、人間関係や社会関係において適応の困難な学生が見られることを指摘している。 大学生は対人関係を持つ能力が低下したのであろうか。最近グループ活動を中心とした授業の中でも、恥ずかしがって話せない学生・また遊びの中でも恥ずかしくて参加できない学生がいる。そこで最近の学生の行動をシャイネスの観点から調査してみようと考えた。対人関係ゲームの恥ずかしさは、シャイネスの認知(自分の行動、他者からの評価などに対する不合理な思考)・感情(情動的覚醒と身体・生理的徴候)・行動(社会的スキルの欠如、回避的行動など)に関係があるのではないだろうか。大学生259名を対象に質問紙調査を行った。その結果は、対人関係ゲーム実施後で39人(15%)が恥ずかしいと答えており、その内容は、初対面の人にお助けカードを渡すこと、走っている姿を見られること、人に触れること、なんとなく等であった。 恥ずかしくなかった群は、恥ずかしかった群よりシャイネス尺度の緊張因子・過敏因子・自信喪失の各因子において平均点が有意に低くなっていた。恥ずかしくない方が、緊張しないで人と話せ、人との関係で自信があることが明らかになった。恥ずかしがらない学生の理由を自由記述で聞いたところ、小さいころよくやっていたから・みんなで遊ぶのに慣れているからなどであった。対人関係ゲームを「楽しかった」「どちらでもない」「楽しくない」と感じた学生では、シャイネス尺度に違いがあるのかを明らかするために、一元配置の分散分析を行った。その結果、5 %水準ではあるが、「楽しい気持ち」があるとシャイネス尺度の緊張因子の得点が低いことが示唆された。
著者
鈴木 昂太
出版者
東京文化財研究所
雑誌
無形文化遺産研究報告 = Research and Reports on Intangible Cultural Heritage
巻号頁・発行日
no.15, pp.118-100, 2021-03-31

Kagura, song and dance performed in prayer to the deities and buddhas, has been transmitted in Japan in various forms. Previous research has pointed out that the function of Jodo (Pure Land) kagura is to hold a memorial service to a departed soul. Iwata Masaru employed the term "Jodo kagura" to focalize the relationship between kagura and memorial service. Following Iwata's research, scholars with a variety of viewpoints have used this term to hold discussions of various types. The purpose of the present paper is to confirm how Jodo kagura has been discussed by researchers, what the term "Jodo kagura" indicates and to follow the trend of research. Results of analysis show that the term "Jodo kagura" has been used in two ways: as a proper noun to refer to a memorial service of a given region and as a common noun to refer to artistic rites related with the spirit of the dead and Jodo. It must be noted that Jodo kagura is a special terminology that consists of two aspects, reality and concept. Additionally, the meaning of Jodo kagura differs from one researcher to another and it is applied widely to different rites in context and characteristics. In future study, it will become necessary to clarify how the user of the term "Jodo kagura" defines it, each in his point of view, and for what purpose he uses it.

2 0 0 0 OA 欧洲快遊記

著者
鈴木定次 著
出版者
賢文館
巻号頁・発行日
1933