著者
坂野 翔子 岡本 隆二 鈴木 康夫 山本 彩人 中谷 仁 村田 智博 洪 英在 藤井 英太郎 山田 典一 伊藤 正明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.564-570, 2018-03-10 (Released:2019-03-10)
参考文献数
10

68歳,男性.1カ月以上続く不明熱の原因検索目的で当院に紹介された.各種検査で異常を認めず,詳細な問診で発汗の自覚がないことが判明したため,発汗テストを行った.広範囲で発汗を認めず,特発性後天性全身性無汗症(acquired idiopathic generalized anhidrosis:AIGA)と診断した.炎症反応上昇を伴わず,発汗障害を認める患者には,本疾患を鑑別疾患に挙げる必要がある.
著者
鈴木 佐内
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.171-189, 1988

丹後守藤原為忠とその子たち、特に常盤の三寂、為業寂念、為経寂超、頼業寂然の事歴を、白河院の近臣受領という方面から追い、三寂の発心が、院が特に心をかけた待賢門院一流の勢力の衰退に関わることを考察した。藤原為忠の事歴については、井上宗雄氏が「常盤三寂年譜考 附藤原隆信略年譜」でふれておられるが、表題の示すとおり、為忠の子常盤の三寂についての事歴が主であり、白河院の近臣受領としての為忠をみるには十分ではない。知綱以来、白河院と強い縁で結ばれてきた常盤一族の盛衰が、白河院勢力のそれと深いかかわりをもつのも当然であって、本稿は、為忠の近臣受領としての姿をあきらかにする意味で、井上氏の年譜を拠り所とし、同氏が記述されなかった事歴をも加え、私見を付し、更に、これによって、近臣受領の子という、その子たちの消息から、特に出家の動機を探ってみたい。
著者
鈴木 匡子
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.33-37, 2018 (Released:2018-06-26)
参考文献数
14

【要旨】視覚情報は側頭葉に向かう腹側経路と頭頂葉に向かう背側経路で処理される。腹側経路は形態・色・質感などから対象を認知する際に働き,背側路は視覚情報を行為へ結びつける際に働く。両者はばらばらに機能しているわけではなく,相互に連携しながら働いているものの,その一部が損傷された場合には部位毎に特徴的な症状が出現する。腹側路の損傷では,形態,色,質感が独立して障害される場合があり,それぞれを処理する神経基盤は異なっている。背側路の損傷では,対象を見つけ,到達し、操作する各過程に障害が生じうる。代表的な症状としては,視覚性注意障害,道具の使用障害などがあり,視覚情報を行為に結びつける動的な過程の変容として捉えられる。このように,脳損傷患者の症状の観察から,視覚情報を意味や行為に結びつける過程を垣間見ることができるとともに,個々人における障害の本質を知って適切な対応につなげることができる。
著者
遠山 和大 鈴木 悟郎 佐竹 洋 川田 邦夫 飯田 肇
出版者
日本雪氷学会
雑誌
雪氷 : 日本雪氷協會雜誌 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.319-330, 2005-07-15
被引用文献数
1 5

北アルプス・立山周辺の,標高の異なる3地点(室堂平:海抜2450m・弥陀ヶ原:1930m・雷鳥バレースキー場:1200m)において,2001年3~4月に積雪の断面観測を行い,地面から雪面にかけて連続的に積雪を採取した.また,2000年12月~2001年3月まで,富山市において降水を採取した.これらの試料について,そのδ<SUP>18</SUP>O値を測定した.<BR>各地点の積雪と富山市降水のδ<SUP>18</SUP>O値は大きく違っていたが,各地点における積雪のδ<SUP>18</SUP>O値の鉛直分布と,富山市降水の経時変化パターンは良い一致を示した.富山市降水のδ<SUP>18</SUP>O値の経時変化に見られる極大・極小のそれぞれが,各地点の積雪δ<SUP>18</SUP>O値の鉛直分布における,どの極大・極小に対応するかを同定し,それを元に日付を割り付けた.この事から,2日~1週間程度の分解能で,積雪の全層にわたって堆積時期の推定が可能になった.この方法で得られた日付は,黄砂層によって同定された日付と良く一致した.<BR>同じ日の降水のδ<SUP>18</SUP>O値を標高毎に比較したところ,δ<SUP>18</SUP>O値と標高の間には非常に強い負の相関があり,δ<SUP>18</SUP>O値の変化率は-0.4~-0.2‰/100mという値を取った.しかし,春先に太平洋側を低気圧が通過するとき,両者の相関が悪くなり,変化率も-0.1‰/100mと小さくなる場合があった.このような低気圧の場合,雲の流れが冬期に一般的な富山→室堂平の方向とは異なる可能性が示唆された.
著者
鈴木 雅康 平田 光男
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.205-212, 2016 (Released:2016-04-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

This paper is concerned with the behavior of second-order continuous-time LTI systems with the pulse-width-modulation (PWM) input on sampling instants. The input term of the difference equation describing the state transition is a nonlinear map of the control parameter of the rectangular wave, i.e., duty ratio. It is shown that the nonlinearity can be exactly compensated by varying the center of each rectangular wave as well as its duty ratio.
著者
根岸 友恵 鈴木 利典 濱武 有子 藤原 大
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

痛風の原因物質として知られている尿酸であるが、抗酸化物質として重要な働きをしている。尿酸がどのような酸化ストレスに対して防御作用を示すかを調べ、生物における尿酸の存在意義とその利用価値を示すことを目的とした。ショウジョウバエの尿酸欠損株はタバコ副流煙曝露に感受性が高い。副流煙曝露時の尿酸含量を測定した結果、野生株では尿酸が、尿酸欠損株では前駆体含量は増加した。このことは酸化傷害に対する防御機構として尿酸合成が亢進している可能性を示唆するものである。
著者
鈴木 誠
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 28 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.79-80, 2004-07-30 (Released:2018-05-16)
参考文献数
1

高等学校までの学びと大学での学びの間には、大きな乖離が存在する。最近、これを克服できない学生が増えてきている。それは、学習内容の縮減や学習指導の質の変容といった問題と合わせて、学生の学力低下や学ぶ意欲の欠如といった現象として現れている。また、それを補完する機能を持っていた日常生活の中での自然体験や社会体験は大きく減少した。この乖離を埋めるには、用意周到な授業デザインが大学初年次に必要となる。
著者
鈴木 佳奈実 土肥 美智子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1331-1336, 2020-12-25

COVID-19蔓延は,多くのアスリートに多大な影響を及ぼしている.国際オリンピック委員会(IOC)は,コロナ禍において,アスリートの心理サポートが必要であると報告している.これまでに,女性アスリートは男性アスリートと比較して,精神健康度が低いことが示されており,COVID-19蔓延に伴っても,女性アスリートはより心理的問題を抱えているとの報告がみられた.国立スポーツ科学センターが実施した調査により,女性アスリートは『競技に関する不安』よりも『一般的な不安』を強く感じている可能性が示され,ママアスリートからは,育児に関する不安の声がきかれた.
著者
安岡 孝一 山崎 直樹 二階堂 善弘 師 茂樹 Wittern C. 池田 巧 守岡 知彦 鈴木 慎吾
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

古典漢文における動詞の作用域、すなわち「動詞の後に置かれる項」のまとまりを、自動抽出する手法の開発をおこなった。具体的には、Universal Dependenciesと呼ばれる文法記述手法を用いて、いわゆる四書(『孟子』『論語』『大學』『中庸』)の係り受けコーパスを制作し、これを用いて、古典漢文の形態素解析と依存文法解析(係り受け解析)をおこなうツールUD-Kanbunを作成した。さらに、このツールを発展させて、動詞の作用域を元に返り点の自動生成をおこない、日本語の活用語尾と助詞を自動で付加することで、自動的に訓読をおこなうツールUD-Kundokuを試作した。
著者
鈴木 匡子
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.70-76, 2019-06-25 (Released:2019-07-04)
参考文献数
14
被引用文献数
1

注意機能は,覚醒状態を維持し,状況に応じて脳の機能をどこに優先的に振り分けて,効率的に処理を進めるかを調整するはたらきである.周囲の外的な環境や自己の内的な環境は時々刻々と変わるため,注意はダイナミックに変化する.脳損傷によって注意機能が障害されると,精神運動速度遅延,せん妄,半側空間無視,視覚性注意障害などの症状が出現する.臨床例の観察から,視覚性注意障害においては,視覚対象の動きや内容,課題などにより,視覚性注意の向けられる広がりや個数が大きく変動することが示された.注意機能は多くの認知機能の基盤となるものであり,その性質を理解しておくことは重要と考えられる.
著者
鈴木 博
出版者
一般社団法人 日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究
巻号頁・発行日
vol.3, pp.52-60, 1967
被引用文献数
1

This paper deals with the sacculinization occurred in a male of the pea crab, Pinnetheres sinensis Shen. The specimen was found living commensally within the mantle cavity of the common bivalved shell, Mytilus edulis Linne, obtained on the coast of Tokyo Bay in October, 1964. The body of the adult normal male of Pinnotheres sinensis is rather flat and solid, much smaller than the normal female which has the grobular and soft-shelled body. Even in the largest male, the length of carapace is less than one half that of the fully grown female. In the male, the chela is somewhat thickset compared with that of the female and its propodus furnished with 10-13 setae near the distal end of the anterior border. In second and third pairs of the male ambulatory legs, the carapus is crossed by an oblique row of long feathered hairs, and the propodus fringed with same hairs along the anterior borders. The dactylus of all pairs is claw-shaped and shorter than the propodus. In the female, the dactylus of the last ambulatory leg is rod-shaped and longer than the propodus, furnished with longish hairs along the inner border, with short hairs around the whole surface in distal half. The width of the male abdomen is much narrower than that of the female-about one fifth the length of the carapace, and its sixth abdominal segment has a hook-shaped process on the lateral margin. Of the two pairs of male pleopods, the posterior one has a short flatty exopodite. Of the four pairs of female pleopods, the posterior two are uniramous and has no exopodite (Fig. 1). The external morphological modifications are seen in the male, by sacculinization, as shown in the following: a) The size of the body becomes comparatively larger than in the normal male, and its exoskeleton becomes softend as in the female body (P1. VI). B) The chela becomes somewhat slender and the setae on the propodus are replaced by soft longish hairs, covering the distal surface of both fingers (Fig. 2, 3). C) The long feathered hairs seen on the second and third ambulatory legs are worn out and the dactylus of the fourth ambulatory leg is longer than the propodus, furnished with long hairs as seen in the female (Fig. 2, 1). D) The width of abdomen is broadened; the lateral margin of the sixth segment becomes entire and with marginal hairs (Fig. 3). E) No change of form seems to occur in the first pleopod except for its tip. The carified bridge at the foot of the first pleopod is rudimented. The exopodite of the second pleopod is well developed and covered with long soft hairs. No pleopod is seen in the third abdominal segment, while in the fourth abdominal segment, a uniramous appendage is seen on the right side (Fig. 3 and 4). The internal morphological modifications are seen in testis and midgut gland. These organs are entirely rudimented, being only represented by withered cells. The roots of the parasite glowing thickly around the vas deferens, the midgut gland, the anterior portion of intestine, and the thoracic ganglion. In vas deferens, however, sperms and spermatophores are still seen filling the duct. The penetration of roots of the parasite into the thoracic ganglion has already been investigated by the previous authors (MATSUMOTO K. (1952) and HOSHINO K. (1962)), so the author's present investigation is confined to that of the vas deferens.
著者
鈴木 竜太 谷村 秀彦
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.62, no.499, pp.57-62, 1997-09-30 (Released:2017-02-02)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

The objective of this paper is to understand the interrelationship between the location of convenience stores and socioeconomic data in the vicinity, using the geographical information system(GIS). The discriminant analysis is applied to actual data collected in the City of Tsukuba to explain the existence of convenience stores in each of its 185 districts. We found that the number of households, the volume of traffic, and the number of large scale shopping facilities (such as supermarket or department store) in the district are positively related to the existence of convenience stores, while the number of persons per household is negatively related. This last variable is believed to show a rural characteristic of the neighborhood. The overall ratio of correct prediction by the model is 78 percent. The use of the GIS is effective in graphically displaying the result of analysis as well as in manipulating socioeconomic data as inputs into analysis.
著者
鈴木 竜太
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.16-27, 2014 (Released:2015-04-25)
参考文献数
23
被引用文献数
2

本論文は,個人の2つの学習行動をもたらす職場の要因について明らかにすることが目的である.具体的には,職場における情報の開放性と凝集性が自分自身の能力や知識を高める個人学習行動と自分の持っている知識や情報を職場の同僚と共有する組織学習行動への影響と,個人学習行動の組織学習行動への効果への影響について実証研究によって明らかにする. 実証研究の結果からは職場の2 つの要因は直接的に2つの学習行動に影響を与えないが,個人学習行動を行う人がより組織 学習行動を行うようになることを促す効果があることが示された.
著者
上野 顕子 鈴木 敏子
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.95-106, 1994-10-31
被引用文献数
1

本調査で,「家庭生活」領域を履修することになっている中学1年生の親とのコミュニケーションの実態と背景を探ったところ次のような結果が得られた。1.6割以上の生徒は,親を理解者としている。そして,父親よりも,母親を理解者としてとらえている。一方,約4割の生徒は,親を理解者ととらえていない。2.約半数の生徒は親と毎日コミュニケーションをとることを望ましいと考えているが,約4割の生徒は日常の親子のコミュニケーションに対して消極的である。3.実際のコミュニケーションについて,挨拶,共有行動,話し合いからみてみると,父親よりも,母親とコミュニケーションをよくとっていることが明らかになった。4.コミュニケーションのとり方には,性別,家族構成,きょうだいの人数,父の帰宅時間,母の職業の有無,子どもが週に習い事・塾へ通う日数,コミュニケーションに対する意識などが影響していることがわかった。以上の結果から,「家庭生活」領域における「家族関係」の扱い方を考えると,次の2つのポイントがあると思われる。第1は,第二次性徴期にいる中学生に,家族の題材を積極的に取り上げてみてはどうかということである。というのは,約4割の生徒は親を理解者としてとらえていない,また,約4割が親子のコミュニケーションは気が向いたときとればよい,特に必要ない,と考えているという結果が得られたが,それは,第二次性徴期に入った中学生が,親に反抗しつつ自立していこうとする姿のあらわれではないかと考えられる。だからといって,この段階の生徒に親子関係についての学習をさせることは難しいので題材設定をしないというのではなく,むしろ積極的に取り上げて,生徒自身に自分が第二次性徴期にいることを自覚させるとともに,そのような自分と親との関係が客観的にとらえられることこそ大人への第一歩であるということを考えさせてみてはどうだろうか。第2は,コミュニケーションのあり方は,現代社会に生きる家族員それぞれの生活や意識が一つの重要な要因となっていることが明らかになったことから,生徒が中学生という自分の発達段階や現代の家族の抱える問題を客観的にとらえられるようになることが必要であると考えられる。特に父子関係が母子関係より希薄になる要因に焦点を当てることによって,社会的な問題をとらえることができるだろう。それらを通して,自分にとって家族とは何か,家族と自分にとってのよりよい家族関係とは,ということを主体的に考える学習過程にしていけるのではないかと思われる。
著者
鈴木 健斗 福井 隆雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>本研究では、「物理的な刺激がないにも関わらず触覚を経験する」現象である擬似触覚(pseudo-haptics)に着目し、VR空間上でも生成可能か検討し、擬似触覚の主観的評価値と個人特性(この場合、自閉症スペクトラム指数)との関連についても調べた。実験では、ヘッドマウントディスプレイを装着し、右手を台の上に置き、VR空間内に提示されるモデルの手腕に自分の手腕を重ねる姿勢をとり、モデルの手腕が触れている白いチューブ上を左から右へと手腕に向かって流れてくる灰色の円筒がモデルの手腕に触れる瞬間に、当初の速度(5.7deg/秒)から0.1~0.9倍に減速する、あるいは速度変化がない条件を設定した。その結果、減速の割合が大きいほど、実験参加者は強い擬似触覚を経験した。さらに、自閉傾向が高いほど擬似触覚を経験する可能性が示唆された。</p>